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サイバーエージェント 曽山氏と語る組織論。「エンプロイーエンゲージメントを高めれば、組織は変わる」

日本を代表するCHRO(最高人事責任者)のひとりが、サイバーエージェント取締役の曽山哲人氏だ。自社用に開発した従業員のコンディション把握ツール「GEPPO」が多くの会社に導入されるなど、同社の仕掛ける人事施策は注目を集める。

国内初の組織改善システム「モチベーションクラウド」を立ち上げた、リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司と語るのは「なぜ、サイバーエージェントの施策は組織を変えられるのか」。全2回シリーズの前編。

【イベント実施日】
2018年7月25日

【プロフィール】
株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括 曽山 哲人氏
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 / 株式会社ヴォーカーズ 取締役副社長 麻野 耕司

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エンゲージメントを高めれば、トラブルが減る

麻野 耕司(以下、麻野):サイバーエージェントの曽山さんが語る組織論。本日のテーマは、「組織を変えるために必要なたった一つのこと」です。

曽山 哲人(以下、曽山氏):本日はどうぞよろしくお願いします。サイバーエージェントで人事責任者をしている曽山です。

私は1999年に入社したのですが、その時4億円だった年商は今、4,000億円に。約20年かけて、1,000倍になりました。また、20名だった従業員数は、有期雇用者を含めると9,000名にまで増えました。

麻野:20名から、正社員で4,500名/計9,000名のステージまで経験されているのは、非常に稀ですね。

曽山氏:そうかもしれません。ちなみに今日は、幾つかの施策をご紹介しますが、成功しているものばかりです(笑)。2000年の退職率は30%もありましたし、しかもそれが3年も続きました。決して美談ばかりではなくて、失敗も苦労もあった中であることもお伝えしておければと思います。

麻野:益々本日のお話が楽しみになってきました。ずばり、組織を変えるために必要なことを一つ挙げるとしたら何でしょう。テーマに掲げておきながら難しいですけども(笑)。

曽山さんとは、これまでに何度もセッションをさせていただいていますし、著書も読ませていただいています。お話ししたいキーワードはたくさんあります。ですが本日は、ひとつの切り口を深めてみたいなと思います。

曽山氏:いいですね。どうしましょうか。

麻野:そこで、「エンプロイーエンゲージメント」を挙げたいと思います。私は、年に1〜2回はアメリカへ、HRの最新状況の視察に行っているのですが、ここ数年、エンプロイーエンゲージメントは中心的なテーマになっています。

恐らく日本でもそうなると思っていて、ぜひ曽山さんと議論を深めていけたらと思います。

エンゲージメントとは、直訳すると婚約ですが、具体的には、「企業と従業員の相互理解の深さ」や「会社への愛着」「仕事への情熱」と言い換えられます。

相思相愛度合いや共感度合いを高めることで、様々な問題の解決に繋がるんじゃないかと考えています。

エンゲージメントに関して理論的な部分を私がお話ししながら、曽山さんからは具体的な実践面での事例をご紹介いただければと思いますので、よろしくお願いします。

曽山氏:私自身は、普段はエンゲージメントという言葉を使ってはいませんが、非常によくわかります。「信頼」とも言えると思うのですが、常に信頼関係の重要性をメッセージしているほどです。

信頼関係があれば、トラブルの発生が減りますし、トラブルが起きたとしてもその報告が早くなる。サイバーエージェントの場合は、信頼関係をつくるために、従業員同士が仲良くなるための投資をしました。

具体的には、飲み会代の負担や、部活動のコーディネートです。従業員同士が仲良くなることは、会社への愛着が高まるということ。

何もかもが筒抜けで『ばれる』時代だからこそ、エンゲージメントが重要

曽山氏:また、これからは信頼関係が『ばれる』時代だと思うんです。

麻野:『ばれる』とは、どういうことですか?

曽山氏:全てのマネジメントがばれていると言えばいいでしょうか。

例えば、サイバーエージェントでは毎年、新卒採用の最終面接該当者が400名ほどいるんですが、私が面接の場でどんな質問をしたかが、ばれてるんです。数名でLINEのグループを作って、情報共有をしているそうなんですよ。

何が言いたいかと言うと、パワハラ・セクハラは当然だめですが、そういった面接をしていれば必ず明るみになりますし、学生さんに対して真面目に向き合っている会社は支持されて、競争率は上がっていくということです。

麻野:面白いですね。私は最近、「口コミサイトの、Vorkersを見て良いなと思いました」と、面接の場で言われることが多いです。

これまでの採用は、企業が提供した情報に基づいて応募者が判断していましたが、従業員が会社をどう思っているのかが共有されているので、新たな目線が増えたと言えますよね。

曽山氏:そうですね。さらには、退職者がどういう情報を共有するかによって、評価が変わってくるんです。従業員のことだけケアしていれば良いのではなく、退職者の会社に対する印象すらも重要になっているということです。

麻野:まさに、何もかもが『ばれる』時代ですね。

曽山氏:つまり、従業員との間にエンゲージメントがある会社とそうでない会社が、如実に分かれる時代になってくるんじゃないでしょうか。

麻野:飲食店を選ぶときを考えればわかりやすいですよね。「食べログ」の評判を気にする人も多いと思いますが、これも顧客と企業のエンゲージメント度合いが明らかにされているということですから。

これまでのお話を受けて改めてですが、企業は、ふたつの市場から選ばれないといけなくなってきていると言えます。

ひとつ目が「商品市場」で、顧客から選ばれる必要がある。そしてふたつ目が「労働市場」で、人材から選ばれなければいけません。

曽山さんからは、会社に対する印象が共有されるようになったことで、エンゲージメントを高めなければ、悪い情報が世の中に流出していってしまうという、労働市場における新たな変化についてお話しいただきました。

これからの企業経営において重要なのは、従業員からの共感度合い

麻野:そして、商品市場においてはビジネスのソフト化が進んできています。これまでの日本は製造業が支えてきましたが、その競争力の源泉は工場や設備といったハード面でした。

人材は脇役で、工場を動かすために必要だった。その時代に重要視されたのは、従業員のエンゲージメントよりも、工場に何人配置できるかというヘッドカウントだったわけです。

でも、ソフト化が進むほど、従業員のコンディションによって、パフォーマンスに差が出てくる。だからこそ、コンディションを高めたり、会社や商品自体を好きな気持ちを高めたりしないと、パフォーマンスは上がらなくなってきているんですよね。

労働市場においては、終身雇用や年功序列が崩れている中では、共感を生み続けることが非常に大事になっていると思います。

以前は社会全体が貧しかったので、働く理由が給与や昇格でした。でも今は、仕事のやりがいや自己成長・職場のつながりなど、人によって共感ポイントが違っていて、共通項が見出しにくくなっています。

だからこそ、従業員からの共感をどれくらいつくれるのかが、企業経営において非常に重要になってきていると言えると思います。

曽山氏:まさにその通りですね。人事でも、従業員の感情を踏まえて様々な施策を設計しているのかそうでないのか、二分しているように感じます。風土づくりは人事の仕事のひとつですが、行動に移せるかどうかは、従業員のセリフまでイメージできているかどうかだと思うんです。

例えば、新規事業が生まれやすい風土をつくりたければ、やるべきは、入社1年目の従業員に「うちの会社って、新規事業を生み出す風土ある?」と聞くことです。

フレッシュな視点を持つ彼ら・彼女らの答えがずばり、現在の会社の風土なんです。

「新規事業のチャンスがある会社だ」いう答えを引き出すためには、事例が必要なんです。事例が増えれば、従業員のセリフは追いついてくる。

多くの従業員の口からそのセリフが出るようになれば、学生や求職者・取引先など、外部の人たちは、「サイバーエージェントは新規事業のチャンスがある会社だ」と理解してくれます。これが文化ですよね。文化をつくるためにも、感情をつくることは大事。

中でも、従業員のセリフをイメージしてセリフをつくりだすことです。

麻野:感情を動かし共感を生み出すことは大事ですが、抽象度の高い話になってしまってアクションが取りづらい。でも、セリフをつくりだすというのは具体的で良いなと思いました。

感情を動かし共感を生み出すことで、相思相愛度合いが高まると、どんな良いことがあるのか。一般的には、生産性が向上するとか退職率が低下するとか、戦略実行度が上がるなどの効果が検証されています。曽山さんのご実感としてはどうですか。

感情をマネジメントし共感を生み出すのは、合理的で効率的な手法

曽山氏:従業員同士の関係性が良くなる、つまりエンゲージメントが高まることで良いこととしては、先ほどお話ししたように、トラブルが減ります。仲間を裏切れないとか迷惑をかけたくないという気持ちが働くので、トラブルが起きても報告が早くなる。

それから、サイバーエージェントの業績が伸びたのは、従業員同士が仲良くなってからです。業績に寄与するということも、間違いありません。ちなみに、「TRUST FACTOR」という書籍に書かれているのですが、信頼関係と業績には相関関係があるんです。面白いですよね。

麻野:経営者の方の中には、ビジネスに感情を持ち込むべきじゃないとおっしゃる方もいます。

曽山氏:え、本当ですか。

麻野:はい。でもそれも一理あると思うんです。プロフェッショナルは感情を持ち込むべきではない。でも、持ち込むべきじゃないとわかっていても持ち込んでしまうのが人間です。

なので、ビジネスに感情を持ち込まないというのは一見合理的ですが、実は非合理的。感情は持ち込まれると認めた上で、対処を考えたほうが、合理的だと思います。

実際、事実や論理に基づいた評価をされたとしても、嫌いな上司からの評価であれば納得できないという経験をしたことがある人もいるはずです。また、商品が好きでなければ、自信を持ってお客様に提案できず、顧客満足度が下がるというケースもあり得るでしょう。

一見、非合理に見える感情をきちんとマネジメントして共感を生むことは、結局の所、合理的であり効率的。感情に投資することで、後々のコストが下がるんですよね。

サイバーエージェントさんが、飲み会をはじめとした、上司と部下・従業員同士の信頼関係をつくる施策に非常に投資していることも、非効率に見えるようで効率的な施策だと言えると思います。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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本編の後編となる『サイバーエージェント曽山氏と語る組織論。「エンゲージメントを高めるのは、言行一致の経営」』はこちら

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