
ボトムアップとは?トップダウンとの違いから最適な意思決定方式の決め方について解説!
ボトムアップは現場の意見を積極的に吸い上げ、それをもとに意思決定をするスタイルのことです。よくトップダウンと比較されますが、ボトムアップとトップダウンのどちらが優れているということはなく、どちらにも良し悪しがあります。
今回は、ボトムアップとトップダウンの違いや、ボトムアップの意思決定をする際のポイントなどについて解説していきます。
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ボトムアップの意味とは?
ボトムアップ(bottom up)を直訳すると、「底上げする」「下から上げる」という意味になります。企業経営においてボトムアップと言ったら、経営陣などの上層部が現場の従業員の意見を積極的に吸い上げ、それをもとに意思決定していくスタイルのことを言い、日本語では「下意上達」と表現されます。
ボトムアップを取り入れることで、現場の声を活かした意思決定や組織運営が可能になります。
ボトムアップとトップダウンの違いとは?
ボトムアップの対極にあるスタイルが「トップダウン」であり、日本語では「上意下達」と表現されます。
ボトムアップが、現場から吸い上げた意見をもとに意思決定していくスタイルであるのに対し、トップダウンは、経営陣などの上層部が決めたことを下層部に指示し、それに従い現場の従業員が動いていくスタイルです。
一見正反対のアプローチに見えるボトムアップとトップダウンですが、どちらの場合についても管理職が「結節点」として機能することが重要です。
トップダウンの場合は経営の方針を汲み取り現場に落とし込む機能を担い(下図参照)、ボトムアップの場合は現場の声を経営に届ける役割を担うなど、経営と現場をつなぐ「結節点」として管理職が機能することがどちらの場合においても重要です。
またトップダウンとボトムダウンはバランスが重要です。トップダウンのみでは現場の反発を招く可能性があり、ボトムアップのみでは迅速な経営判断が行えない可能性もあるためです。
ではどのようにバランスを取ればよいのか事例を交えて解説します。リンクアンドモチベーションでは「コニュニケーションクラウド」という社内イントラを活用し、経営から定期的にメッセージを発信しています。
この発信にはメンバーも返信することができ、経営サイドに感想や意見を直接届けることが可能です。経営サイドからの方針共有に対し、メンバーも意見ができる環境を作ることでトップダウン・ボトムアップのバランスを上手く取っています。
上記のトップダウンとボトムアップの違いを踏まえた上で、ここからは具体的なボトムアップの特徴をご紹介していきます。
■ボトムアップは全社レベルの意思決定には向かない
会社の規模や従業員数などにもよりますが、ボトムアップは現場の意見を吸い上げる必要があるため、全社レベルの意思決定に採用されるケースは多くありません。どちらかと言うと、部署レベル・組織レベルの意思決定に適したスタイルだと言えるでしょう。
一方、トップダウンは基本的に上層部の一存で現場を動かしていくため、全社レベルの意思決定にも採用されます。
■ボトムアップは従業員の主体性やモチベーションを高める
トップダウンのスタイルは「一方的」「高圧的」「頭ごなし」といった印象を与えやすく、現場の従業員の反発や不満を招くことがあります。
さらに、「上の言うことは絶対」という風土が生まれてしまうと、従業員は上からの指示を待ち、上から言われたことだけをするようになってしまいます。いわゆる「指示待ち人間」が増えやすいのは、トップダウンのデメリットだと言えるでしょう。
一方で、ボトムアップは現場の従業員が主体的に声を上げてくれる期待が持てます。指示待ちではなく、自分で考える従業員を育てやすいのはボトムアップのメリットだと言えるでしょう。
■ボトムアップは意思決定のスピードが遅れがち
トップダウンとボトムアップでは、意思決定のスピードが変わってきます。トップダウンの場合は、最初に上層部が意思決定をしたら、あとは決定事項を現場に落としていくだけなので、意思決定のスピードは早くなります。
一方で、ボトムアップは現場の従業員の意見を吸い上げることから始めるため、そのぶん意思決定に至るまでの時間は長くなります。
■トップダウンとボトムアップのバランスはどのように取るのか
ここまでボトムアップの特徴をお伝えしてきました。繰り返しお伝えしているようにトップダウンとボトムアップはバランスよく使い分けることが重要です。一方で業界や会社によってそのバランスを見極めることが必要です。その観点を簡単にご紹介します。
リンクアンドモチベーションではチームを4つに分類しており、縦軸は「環境の変化度合い」、横軸は「人材の連携度合い」としてチームを4つの類型に整理しています。
サッカー型(環境の変化度合い大、人材の連携度合い大)
サッカー型はスマートフォンのアプリ開発チームが例として挙げられます。スマホアプリは人気ランキングが日々入れ替わる非常に変化の早いビジネスであり、環境の変化度合いは大きいチームと言えます。
人材の連携についてもプロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアが密に連携・議論をしながら進めていく必要があり人材の連携度合いが大きいチームと言えるでしょう。
柔道団体戦型(環境の変化度合い大、人材の連携度合い小)
柔道団体戦型は生命保険の営業チームが例として挙げられます。生命保険の営業では多種多様な顧客に合わせて訪問、提案、契約のサイクルを柔軟に回していく必要があり、環境変化度合いは比較的大きいと言えるでしょう。
人材の連携については基本的に訪問から契約まで1人の営業パーソンで完結するため、人材の連携度合いは少ないと言えるでしょう。
駅伝型(環境の変化度合い小、人材の連携度合い小)
駅伝型組織はメーカの工場の生産チームなどが例として挙げられます。メーカーの工場では中長期的な視点で生産計画を立てられることも多く、短期的に状況がコロコロ変わることはありません。
人材の連携についても「誰がどの工程を担当するのか」が明確に決まっているため、人材の連携度は比較的低いチームと言えるでしょう。
野球型(環境の変化度合い小、人材の連携度合い大)
野球型は飲食業の店舗スタッフチームが例として挙げられます。店舗を作るには一定の時間がかかるため、頻繁に立地や内装が変わることは少なく、比較的変化が少ない環境であると言えます。
人材の連携に関してはキッチン、ホール、レジなど様々なメンバーが連携する必要があるため、人材連携度合いは大きいチームだと言えるでしょう。
この4つのチーム分類を踏まえ、トップダウンとボトムダウンのバランスを考える上では、環境変化度合いが大きいサッカー型と柔道団体戦型はトップダウンの比率を高め、駅伝型と野球型についてはボトムアップの割合を高めると良いでしょう。
チームには絶対解があるわけではなく最適解のみが存在します。自社やチームに最も適した形を模索することが重要と言えるでしょう。
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ボトムアップの意思決定をする際のポイントとは?
ボトムアップの意思決定をする際は、前提として以下の2点を意識するようにしましょう。
■現場が声を上げやすい雰囲気をつくる
ボトムアップの大前提になるのが、現場の従業員が遠慮なく意見を上げてくれることです。上司に気を遣ったような意見や周囲に合わせたような意見ではなく、忌憚のない率直な声がたくさん上がってこなければボトムアップは機能しません。
そのためには、常日頃から従業員が声を上げやすい雰囲気をつくることが重要になってきます。
■現場の意見・提案を尊重する
当然ですが、ボトムアップによって吸い上げた意見のすべてを取り入れることはできません。しかし、ボトムアップを採用する以上、吸い上げた意見はできるだけ尊重する姿勢が大切です。
意見を集めるだけ集めておいて、それを取り入れる姿勢が見られなかったり、最終的に上層部の意見で決まったりすると、従業員はモチベーションを失ってしまいます。
「声を上げても無駄だ」と、それ以降、意見が出にくくなってしまうこともあるので注意が必要です。
まとめ
「トップダウンか?ボトムアップか?」という議論は常にありますが、正解はなく、どちらにも良し悪しがあります。とはいえ、時代が変わり、従業員の価値観が多様化したことで、従来のトップダウン経営に行き詰まりを感じている会社は少なくないようです。
「トップダウンが機能しなくなってきた・・・」と感じているなら、ボトムアップを取り入れるべきタイミングかもしれません。