
チームビルディングとは?目的やメリット・パフォーマンス向上の取り組み事例もご紹介
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メンバーひとりひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できるチームを組まなければ、ビジネスにおいて成果は残せません。
また「良いチーム」といっても、目的や環境により、その目指すべきチーム像は異なります。一方で、どのようなチームであったとしても、意識すべき共通点もあります。
今回は、一様には捉えにくいチームというものに対して、どのようなチームにおいても必要となる「チームビルディング」をテーマに紐解いていきたいと思います。
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チームビルディングとは
■チームビルディングの意味は?
チームビルディングというものを考える以前に、チームというものに関してご紹介します。
チームを理解する上で、チームに似た概念であるグループ(集団)との対比を通じてその特徴を紹介します。スティーブン・ロビンスは『組織行動のマネジメント』において、チームとグループの違いを下記4つの観点から説明しています。
- 目標(Goal):チームは「集団的な業績」であることに対して、グループは「情報共有」
- 相互影響(Synergy):チームは「積極的」であることに対して、グループは「消極的」
- 説明責任(Accountability):チームは「共同的」であることに対して、グループは「個人的」
- メンバーの能力(Skills):チームは「補完的」であることに対して、グループは「バラバラ」
上記の通り、グループが「集合体としての人の集まり」であるのに対し、チームには「目的」が存在していることがわかります。古くは人類が飢えを凌ぐため、大きな獲物を狩るためにチームを組織したように、チームを考える上では、共通の目的の存在が欠かせません。
また、チームが成立するための条件は、共通の目的以外にも存在します。チェスター・バーナードは組織の成立要件として「共通の目的」「協働意思」「コミュニケーション」の3つを挙げています。
これらを踏まえ「チームビルディング」を考えることが重要です。チームビルディングは日本語訳すると「 チームを作る(構築する) 」という意味です。
チームビルディングによって、共通の目的に対する認識を揃えること、円滑なコミュニケーションのための心理的安全性を高めること、協働意思を高めるための相互理解を深めることなどがポイントとなります。
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■チームビルディングの対象者は?
チームビルディングは、
-内定者・新入社員
-中堅社員・チームリーダーなどのロワー・マネジメント層
-管理者(係長など)などのミドル・マネジメント層
-社長・役員などのトップ・マネジメント層
など、会社組織における全ての人が対象となります。
チームビルディングの目的
チームビルディングの目的は、1人では到底達成できないような大きな目標を、チームで取り組むことで達成を実現させることにあります。
そのため、メンバーひとりひとりのスキルや能力・経験を最大限発揮できなければ、大きな目標は達成できないでしょう。
ここではより具体的に、その目的の例を紹介します。
①チームのパフォーマンスの向上
チームビルディングの最大の目的は、 チームのパフォーマンスを向上させることです。
先述の通り、チームビルディングはメンバーがそれぞれの能力を主体的に発揮しながらも、一丸となって目的達成を目指す組織づくりのことです。そのような組織になることで、チームの課題解決力はアップし、結果、チームのパフォーマンスを向上させる事に繋がります。
②組織のビジョンやミッションの浸透
新しい期のスタートや新プロジェクトのキックオフなどで、チームビルディングを導入するケースも増えていますが、その主な目的は、新しい期の目標や新プロジェクト達成に向けての一体感を醸成することです。
また組織のビジョンやミッションを共有し、組織内で競争や対立するのではなく、協力して目標達成を成し遂げるマインドを作り上げる 目的があります。
③コミュニケーションの活性化とマインドセットの醸成
現代はダイバーシティが叫ばれ、属性や雇用形態など様々なメンバーが混在する組織になっています。そのため、個人の多様性を活かすためには、 組織のコミュニケーション力向上が必須です。
そうする事で、メンバー同士での建設的なディスカッションが増え、組織の変革が起こりやすい土壌を作ることができます。
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④適切な人的配置
チームビルディングをおこなうことで、コミュニケーションが活性化するだけでなく、メンバーの価値観や考え方も理解することができます。
メンバーの価値観や考え方、得意分野などを事前に理解しておくことで、リーダーは最適な人員配置や役割分担を実現することが可能になるでしょう。
チームビルディングの効果・メリット
次に、チームビルディングの効果やメリットについてご紹介します。
■チームのパフォーマンスが向上する
一番の効果はチームのパフォーマンス向上です。チームにおけるパフォーマンスは単純な足し算にならないことがあります。チームメンバーが相互に弱みを補い合い、強みを活かし合うことで、チームとしての相乗効果が生まれます。
チームの相乗効果を高めるためには、相互理解を深め、お互いの強みや弱みを知ることがポイントです。
ダニエル・ウェグナー氏が提唱した、組織内の誰が何を知っているのかという情報が共有された状態である「トランザクティブメモリー」が有効活用されているチームは、パフォーマンスを高めることができるでしょう。
■個人のパフォーマンスが向上する
チームビルディングが進むとメンバー同士の信頼関係が深まるため、相互に協力し合い、また切磋琢磨しながらゴール達成に向けて考えて行動するようになります。
これにより、メンバーそれぞれのモチベーションが向上し、意欲的に仕事に取り組むようになるため、パフォーマンスが高まり、効率的な行動や生産性向上にも繋がります 。
■新しいチャレンジやイノベーションを生む
チームビルディングによってアイデアを出し合って解決した成功体験のなかで、メンバー同士で取り組む楽しさや一体感、自分ひとりでは経験できない達成感を体感することで、チームの協力関係を一層強化させることができます。
このように、個の力が集まって生まれる相乗効果は、過去に経験のない新たなチャレンジやイノベーションの創造 といった効果をもたらすことでしょう。
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チームビルディングの5段階プロセス
ここでは、チームビルディングを効果的におこなうために「タックマンモデル」をご紹介します。
「タックマンモデル」とは、チームの状態を5段階に分け、次の段階を目指すために、チームビルディングにおいて何が必要かを表したモデルです。
この「タックマンモデル」を活用することによって、チームの現段階を把握することができ、目標達成のための施策を考えるうえでも、非常に役立ちます。
ここでは、「タックマンモデル」の5段階プロセスについて詳細をご紹介します。
①第1段階:形成期
チームが結成され、まだ間もない段階です。
メンバー間の相互理解はなく、チーム目標も明確でないため、メンバー同士は、様子を見ながらお互いのことを遠慮気味に知ろうとしている状態です。
次の第2段階へ移行するためには、メンバー間の相互理解が必要となります。
②第2段階:混乱期
メンバー間で対立が生まれている段階です。
チームが誕生し少し時間が経つと、メンバー間の考え方の相違によって、組織内で混乱が生じやすくなります。
次の第3段階へ移行するためには、対立を越えた対話を行い、お互いの考えを認めることが求められます。
③第3段階:統一期
メンバー同士の価値観や考え方を相互に理解し、チームの安定期に入ろうとする段階です。
チームの目標やメンバーぞれぞれの役割が組織内で共有されており、団結力が見られる状態です。
次の第4段階へ移行するためには、メンバーの特徴に基づいた役割分担、組織内の全員が納得感を持った目標設定などが必要となります。
④第4段階:機能期
メンバーがそれぞれの役割を果たし、相互フォローし合う体制ができている段階です。
各自が同じ目的意識を持って能動的に動いており、チームの団結力はこれまでで最も高い状態です。また、機能期はチーム目標の結果が生まれ始める段階でもあります。
このチームのパフォーマンスを保つためには、リーダーによるメンバーサポートや団結力を高めるための取り組みが欠かせません。
⑤第5段階:散会期
プロジェクトが終わったり、メンバーが異動したりすることで、チームの活動が終了する段階です。
解散を惜しんだり、メンバー間で称賛し合ったりする光景が見られれば、チームビルディングは成功したと言えるでしょう。
このように、チームビルディングは形成期に始まり、散会期に終わります。
タックマンモデルを利用して、自分のチームがいる段階を確認することで、目標達成のためのポイントや、効果的な施策を検討することができます。
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チームビルディングを行う際のコツや注意点
■チームビルディングを行う際のコツ
①チーム目標の明確化
チームの目標が明確に定まっていれば、各メンバーが目標達成に向けて行動を起こすことができます。目標が抽象的だったり、メンバーに浸透していなかったりすれば、チームワークを発揮することは難しいでしょう。
②メンバーの役割の明確化
チームで成果を出すためには、各メンバーの役割が明確になっていることが重要です。メンバーの役割を適切に設定するうえでは、各人のスキルや経験、強み・弱みなどを見極めながら、役割を明確化する必要があります。
そうすることで、各人が目標に向けて無駄なく動きやすく、適切な役割を果たしていくことで、チームの目標が達成しやすくなります。
③多様な価値観の受容
チームには、それぞれ異なる価値観を持ったメンバーが所属しています。そのため、まずはリーダー、そしてメンバー同士が、各自の考え方や価値観を、理解しなければなりません。この相互理解が進まないチームは、団結力が低下し、やがて業務にも支障が出てしまいます。
■チームビルディングを行う際の注意点
①強制的な目標設定
「やらされ仕事」と感じるメンバーが多ければ、チームのパフォーマンスも低下してしまいます。そのため、目標設定の際は強制せず、メンバー各自が能動的に取り組める目標にすることがポイントです。
チームビルディングを行う際には、メンバー同士で、取り組みたいことを自由に発散させたり、事前にヒアリングしてみるのが良いでしょう。そこから目標につながる要素を抽出できるかもしれません。
②メンバーへの丸投げ
一方、メンバーの仕事に対して自由度を与えることも大切ですが、ただ丸投げで業務を渡せば、次第に方向性に迷い、モチベーションも低下していきます。
そのためミッションや業務の意味を丁寧に接続し続けるなどの取り組みが求められます。
③人数合わせのチーム編成
チームを編成するうえでは、単に人数が足りていればいいというわけではありません。誤った適性の配置によって、メンバー同士の対立やチーム内のパフォーマンス低下を生むことにも繋がり兼ねません。
そのため大切なことは、各メンバーのスキルや能力、関係性を考えてチームづくりを行うことです。
チームビルディングの取り組み事例
最後に、チームビルディングの取り組み事例についてご紹介します。
<研修>
研修を通じてチームビルディングを行う場合、チームの目的や状態にあわせて内容をカスタマイズすることができます。
例えば、まだチームができて間もない状態のときには、メンバーの相互理解のレベルは高くありません。その時期においては、メンバーの相互理解を促すような研修実施がポイントとなるでしょう。
手法としては、自分自身の人生の紆余曲折を話し、自分の人となりや価値観を周囲と共有する、といった「自分の歴史共有会」などを行うと相互理解を生みやすくなるでしょう。
また、メンバーに外国籍の方など、異なる文化やバックグラウンドを持つ方が所属する場合は、相互が持つ「暗黙の前提」に対する認識の違いを理解することがポイントになります。
異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とするエリン・メイヤーは、主に国ごとに文化が異なることによってもたらされる活動や人間関係の違いとして下記8つの前提の違いを提唱しています。
①コミュニケーション:ローコンテクスト vs ハイコンテクスト
②評価(ネガティブフィードバック):直接的 vs 間接的
③説得:原理優先 vs 応用優先
④リード:平等主義 vs 階層主義
⑤決断:合意志向 vs トップダウン式
⑥信頼:タスクベース vs 関係ベース
⑦見解の相違:対立型 vs 対立回避型
⑧スケジューリング:直線型 vs 柔軟型
他にも研修で行うチームビルディングとして、そもそもチームに求められる「共通目的」「意思疎通」「貢献意欲」の重要性を理解してもらうという内容を実施することも可能です。
有名な手法としては、マシュマロタワーやペーパータワーなどといった簡易ゲームに取り組みながら、共通の目標を持つ重要性やコミュニケーションの重要性、お互いに協力することの重要性を感じてもらうといった研修を組むこともできます。
<社内イベント>
社内イベントを活用してチームビルディングを図ることもできます。社内イベントであれば、参加者が身構えずに素の自分を出すことで、深い相互理解に至れる場合があります。
例えば、季節ごとのイベントを企画したり、スポンサーをしているスポーツチームの応援に行ったりと、いつもの業務とは離れてイベントを設計することで、素の自分で周囲のメンバーと接することができます。
仕事のシーンでは見えてこなかった意外な一面が見えることで、新たな強みを知り、チーム編成に活かすといったこともできるようになるかもしれません。
このように、一見業務に関係なさそうなところにも、チームビルディングのチャンスが眠っている事も多いです。 様々なイベントを積極的に企画、参加してみて、相互理解を深めることが、通常業務のパフォーマンスをより高めるきっかけになることも、意識してみてはいかがでしょうか。
<ビジネスゲーム>
ビジネスゲームをチームビルディングで用いる場合、実際に仕事に近しい場面で相互がどのような判断軸を持って意思決定をするかが見えやすいという利点があります。
どうしてもスピード感が求められる判断においては「独裁」「多数決」の手法が採られるケースもあるかと思いますが、メンバーのモチベーションを考えると、比較的多くの組織が「合議」の形式を採っているのではないかと思います。
合議においてポイントとなるのは判断軸をすり合わせることです。選択肢そのものに対する議論も大切ですが、判断軸をすり合わせるコミュニケーションをとることで、意思決定におけるメンバーの納得度を高めることができます。
一方で、各々の判断軸は過去経験に紐づく価値観から生まれてきている場合が多く、すり合わせには時間とパワーがかかってしまいがちです。ビジネスゲームを通じてお互いの判断軸を認識することで、メンバーが大事にしたい価値観を比較的短時間で知ることができます。
このように、チームビルディングはその方法ごとに特徴が異なります。自分のチームの状態にあったチームビルディングの手法を取り入れることがポイントとなります。
記事まとめ
いかがでしたでしょうか。
働き方の多様化などで、チームのあり方が日々変化する中、チーム作りにおいて課題を持つ方も多いでしょう。
今回ご紹介したように、チーム状況に合わせた、最適な「チームビルディング」をおこなうことで、チームが上手く機能するかもしれません。
絶対解のないチームビルディングにおいて、本記事が、最適なチームづくりの一助となれば幸いです。