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ISO30414とは?人的資本に関する情報開示が求められる背景や取り組みを解説


目次[非表示]

  1. 1.人的資本開示に関する国際標準ガイドライン「ISO30414」
  2. 2.ISO30414に記載されている項目
  3. 3.ISO30414の歴史
  4. 4.ISO30414に注目が集まる背景
  5. 5.ISO30414の目的
  6. 6.ISO30414、人的資本開示に関する動き・取り組み
  7. 7.ISO30414の導入によって期待できる効果・メリット
  8. 8.ISO30414にある項目の具体的な内容
  9. 9.ISO30414や人的資本開示に関する動向は?
  10. 10.ISO30414の認証取得企業
  11. 11.まとめ
  12. 12.ISO30414に関するよくある質問

ISO30414は人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインです。2018年にISO30414が公開されたのを契機に、欧米企業では人的資本に関する情報を開示する動きが見られるようになり、日本でも人的資本経営への関心が高まるきっかけになりました。

今回は、ISO30414の内容や注目される背景、人的資本に関する具体的な開示項目などについて解説していきます。

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▼ISO30414日本第一号取得企業が語る「人的資本開示」の義務化に向けて行うべきこととは

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人的資本開示に関する国際標準ガイドライン「ISO30414」

ISO30414は人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインで、2018年にISOが公開したものです。

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ISOとは?

そもそもISOとは、スイスのジュネーブにある非政府機関「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」のことで、商取引をおこなうためのルールを標準化している機関です。

このISOが定めているのが国際規格であるISO規格であり、グローバルスタンダードなビジネスの「ものさし」とも言えるものです。様々なISO規格があることで、国際間での商取引を円滑かつ安全におこなうことができます。

代表的なISO規格としては、製品そのものに関する規格である「ISO68(ねじ)」「ISO5800(フィルム感度)」「ISO7010(非常口マーク)」や、マネジメントシステムに関する規格である「ISO9001(品質マネジメントシステム)」「ISO14001(環境マネジメントシステム)」「ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)」「ISO22000(食品安全マネジメントシステム)」などがあります。

ISO30414とは?

上述のとおり、ISO30414は人的資本に関する情報開示のガイドラインで、ISOのマネジメントシステム規格の一つです。組織が自社の従業員に関する人的資本の情報を定量化し、開示するための国際的な指標として設けられました。

人的資本開示とは?

人的資本とは、企業を構成する人材について、投資することで価値を生み出すことができる「資本」であると捉えた概念のことで、英語では「Human Capital」と言われます。また、人的資本を重視して、人材の価値を最大限に引き出す経営手法は「人的資本経営」と言われます。

昨今は、投資家が投資判断をする際にも、企業の人的資本に着目するようになっており、人的資本に関する情報を開示する企業も増え始めています。ISO30414が制定されたのも、人的資本開示の要請が高まっていることが一つの背景となっています。

項目
内容

コンプライアンスと倫理


①苦情の件数と種類
②懲戒処分の件数と種類
③コンプライアンス・倫理に関する研修を④外部に解決が委ねられた係争
⑤外部監査で指摘された事項の件数、種類、要因

コスト

①総労働力コスト
②外部の労働力コスト
③総給与に対する特定職の報酬割合
④総雇用コスト
⑤一人あたり採用コスト
⑥採用コスト
⑦離職にともなうコスト

ダイバーシティ

①年齢
②性別
③障害者
④その他
⑤経営陣のダイバーシティ

リーダーシップ

①リーダーシップへの信頼
②管理職一人あたりの部下数
③リーダーシップ開発

組織風土

①エンゲージメント/従業員満足度/コミットメント
②従業員の定着率

健康・安全・幸福

①労災により失われた時間
②労災の件数
③労災による死亡者数
④健康・安全に関する研修の受講割合

生産性

①従業員一人あたりEBIT/売上/利益
②人的資本ROI

採用・異動・離職

①募集ポストあたり書類選考通過者
②採用従業員の質
③採用にかかる平均日数
④重要ポストが埋まるまでの日数
⑤将来必要となる人材の能力
⑥内部登用率
⑦重要ポストの内部登用率
⑧重要ポストの割合
⑨全空席中の重要ポストの空席率
⑩内部異動率
⑪幹部候補の準備度
⑫離職率
⑬希望退職率
⑭痛手となる希望退職率
⑮離職理由

スキルと能力

①人材開発・研修の総コスト
②研修への参加率
③従業員一人あたりの研修受講時間
④カテゴリ別の研修受講率
⑤従業員のコンピテンシーレート

後継者計画

①内部継承率
②後継者候補準備率
③後継者の継承準備度

労働力

①総従業員数
②総従業員数(フルタイム・パートタイム)
③フルタイム当量(FTE)
④臨時の労働力(独立事業主)
⑤臨時の労働力(派遣労働者)
⑥欠勤

関連リンク:https://www.motivation-cloud.com/hr2048/c314

ISO30414に記載されている項目


ISO30414の歴史

近年、企業価値に対する見方が変わり、企業価値に占める人的資本のウエイトが大きくなってきました。このような変化を受け、ISOは国際人事標準作成の検討をするために、2011年にTC260を発足させました。さらに、2017年には、米国の機関投資家がSEC(米証券取引委員会)に対して人的資本に関する情報開示を求めるロビイングを開始します。そして翌2018年には、世界初の人的資本に関する情報開示のガイドラインとして「ISO30414」が発行されたのです。

ISO30414に注目が集まる背景

ESG投資への関心の高まり

ISO30414に注目が集まっている背景として挙げられるのが、ESG投資への関心の高まりです。ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取った言葉です。

従来の投資判断は財務情報、つまり「儲かっているかどうか?」が基準とされてきました。しかし、VUCAと言われる、将来の予測が困難な時代において、財務情報だけで投資をするのはリスクが高いと考えられるようになりました。

企業が持続的に成長していくためには、短期的な利益だけを追求するのではなく、環境や社会、企業統治に関する課題と向き合い、その課題解決に貢献していかなければいけないとい考えられるようになり、投資家サイドも、ESGにどれだけ配慮し、どれだけ社会に貢献している企業なのかという点に注目して投資をするようになりました。これがESG投資です。

ESG評価が高い企業は、投資家から「持続的な成長が期待できる企業」という評価を受けやすくなっています。ESGのなかでも「Social(社会)」「Governance(企業統治)」は人的資本との関連性が高いため、人的資本に関する情報開示のガイドラインであるISO30414に注目する企業も増えているのです。

人材版伊藤レポートの発表

2020年9月、経済産業省は「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書(人材版伊藤レポート)」を発表しました。

人材版伊藤レポートとは、人的資本経営についての取り組みや、人材戦略に関わる経営陣、取締役、投資家の役割などの方策などを検討する研究会の報告書です。一橋大学の特任教授である伊藤邦雄氏を座長とする研究会であることから、通称「人材版伊藤レポート」と呼ばれています。

このレポートにおいては

「持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である」

としており、そのうえで、

「これまでも、人的資本に関しては定性的な評価や従業員数等の一部の数値が開示されてきたが、人的資本が競争力の源泉となる時代においては、経営戦略との連動という観点で人的資本、人材戦略を定量的に把握・評価し、ステークホルダーに開示・発信することが求められる」

としており、人的資本開示の重要性が記されています。

※参考:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~|令和2年9月 経済産業省

人材版伊藤レポートの発表は、日本企業が人的資本に関する情報開示に関心を持つきっかけになったと言われています。そして同時に、人的資本に関する情報開示の国際ガイドラインであるISO30414にもスポットが当たることになりました。

2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂

現時点において日本では、人的資本に関する情報開示について法令上の義務はなく、開示するかどうかは各企業の判断に委ねられています。しかしながら、2021年に東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを改定したことによって、上場企業には人的資本に関する情報開示が迫られることになりました。

2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改定では、以下のような補充原則が新設されています。

▼補充原則 2-4①

上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

▼補充原則 3-1③

上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

▼補充原則 4-2②

取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。

※参考:コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)|株式会社東京証券取引所

ISO30414の目的

ISO30414が策定された目的としては、大きく以下の2点が挙げられます。

組織や投資家が人的資本について把握するため

ISO30414が策定された目的の一つとして、組織や投資家が人的資本について正しく把握することがあります。これまでも、統合報告書などに人的資本に関する情報を記載する日本企業はありましたが、人的資本に関する内容は定量的に記載するのが難しいため、定性的に記載されることがほとんどであり、企業によって項目も書き方もバラバラでした。

しかし、ISO30414によって人的資本に関する指標が明確にされたほか、多くの指標に計算式が設定されているため、定量的に記載しやすくなります。そのため、過去比較や他社比較もしやすくなります。これにより、企業側も投資家側も、より客観的かつ詳細に人的資本に関する情報を把握できるようになります。

企業の持続的な成長を支援するため

企業が人的資本に関する情報を開示するためには、まず人的資本を可視化しなければいけません。人的資本を可視化するためには、ISO30414に定められている項目に関するデータが必要になるため、データ収集のための仕組みや制度を整える必要があります。

こうしてデータを収集し、モニタリング・分析することで、自社の人的資本が組織の成長にどのくらい貢献しているのかということが分かるようになるため、より効果的な人材戦略を講じることができるようになります。効果的な施策・戦略によって人的資本を強化できれば、生産性や競争力が高まり、持続的に企業価値の向上を図っていくことができます。

ISO30414、人的資本開示に関する動き・取り組み

ISO30414、人的資本開示に関する動き・取り組みについてご説明します。

欧米諸国における動き・取り組み

▼2014年 ・欧州議会が、欧州委員会が提示していた企業の非財務情報開示の義務化に関する会計指令の改正案に合意 ▼2017年 ・米国のサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が、投資家向け非財務情報開示のガイドラインとして「SASBスタンダード」を公表 ・米国で25の機関投資家が人的資本マネジメント連合を結成し、米国証券取引委員会(SEC)に対して人的資本の情報開示の拡大を要望 ・欧州で従業員500人以上の上場企業に対して人的資本情報の開示を義務化 ▼2018年 ・国際標準化機構(ISO)が人的資本の情報開示に関するグローバル標準のガイドラインである「ISO30414」を公表 ▼2019年 ・米国の大手資産運用会社「ブラック・ロック社」が、重視する投資判断基準の一つとして人的資本マネジメントを採用 ▼2020年 ・米国証券取引委員会(SEC)が、企業の情報開示項目に人的資本を追加し、上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化 ▼2021年 ・国際統合報告評議会(IIRC)が、国際統合報告フレームワーク改訂版を公表

日本における動き・取り組み

企業に経営環境の変化に応じた人材戦略の構築を促し、中長期的な企業価値の向上につなげる観点から、人材戦略に関する経営陣、取締役、投資家それぞれの役割や、投資家との対話の在り方、関係者の行動変容を促す方策等を検討するため、2020年1月、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」が発足しました。この研究会の報告書は、通称「人材版伊藤レポート」として2020年9月に公表され、日本企業において人的資本経営、人的資本開示への関心が高まる契機になりました。また、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードには、人的資本に関する記載が盛り込まれました。 しかしながら、海外に比べると人的資本に関する日本企業の取り組みは後れをとっており、コーポレートガバナンス・コードへの対応を形式的なものにしないためにも、一歩踏み込んだ、具体的な行動が求められていました。そこで、経産省は2021年7月に「人的資本経営の実現に向けた検討会」を設置し、持続的な企業価値の向上に向けて、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかという議論を重ねてきました。そして、2022年5月にその報告書として、通称「人材版伊藤レポート2.0」を公表しています。 人的資本開示のグローバル基準であるISO30414への関心も高まっており、日本においては、株式会社リンクアンドモチベーションが国内で初めて認証を取得し、その後、豊田通商株式会社やModis株式会社も認証を取得しています。 ISO30414発効に対する企業への影響・課題などについては、以下の記事で詳しく解説しています。 >> ISO30414発効に対する企業への影響・課題とは?リリースの背景についても解説 https://www.motivation-cloud.com/hr2048/39774

ISO30414の導入によって期待できる効果・メリット

上述したISO30414の目的と表裏一体になりますが、ISO30414を導入することで以下のような効果が期待できます。

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ステークホルダーに透明性の高い人的資本情報を提供できる

ISO30414に則って情報開示をすることで、投資家をはじめとするステークホルダーは、企業の人的資本の状況を定性・定量の両面から把握することができます。そのため、従来以上に適正な評価を受けることができるはずです。

また、ISO30414に則って開示した情報は比較しやすいため、転職者が企業選びをする際も、人的資本に関する指標に優れた企業を選びやすくなります。労働市場においても差別化を図れるポイントになるでしょう。

人的資本の価値を効率的に高めていける

ISO30414に則って人的資本の状況を定量化し、それを分析することで、人的資本に関する課題も見えやすくなりますし、課題に対する改善施策も打ちやすくなります。経年でデータをとることで施策の効果測定もできるので、より効果的な取り組みや投資をすることができます。

ISO30414というものさしを基準にして、人的資本に関する課題改善、投資を繰り返すことで、人的資本の価値を効率的に高めていくことができるでしょう。

HRテクノロジーの推進

HRテクノロジーを推進することも、ISO30414の目的になり得ます。ISO30414の根幹にあるのは、人的資本を定量化してレポートすることです。たとえば、企業風土などの定性的な要素も、エンゲージメントスコアなどの定量的な指標を用いて説明することが求められます。

このように、従来であればデータ化するのが困難だったものも、昨今ではHRテクノロジーを活用することでデータ化でき、定量的に把握することができる時代になっています。定量的なデータに基づいて人事戦略を策定・実施し、成果を測定して改善するというPDCAサイクルを回すことは、ISO30414においても不可欠な取り組みになるはずです。そして、その基盤になるのがHRテクノロジーなのです。

ISO30414にある項目の具体的な内容

ISO30414は、コンプライアンスやダイバーシティ、生産性や後継者計画など、ステークホルダーの関心が高い11項目・58指標を網羅的にカバーしています。

すべての指標を開示することが推奨されているわけではなく、大企業と中小企業という分類に加え、社内に開示するのが良いか、社外に開示するのが良いという分類がされています。各項目・各指標を見ていきましょう。

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1. コンプライアンスと倫理

①苦情の件数と種類

不満や相談などを含む苦情の件数、および内訳。苦情に対する企業の取り組みを測る指標です。

②懲戒処分の件数と種類

懲戒処分の件数と内訳。違反・不正行為に対する企業の取り組みを測る指標です。

③コンプライアンス・倫理に関する研修を受けた従業員の割合

組織の行動規範、倫理、コンプライアンスなどに関する研修を受講した従業員の割合。倫理・コンプライアンスに対する企業の取り組みを測る指標です。

④外部に解決が委ねられた係争

外部の第三者に解決が委ねられた内部係争の数。内部係争に対する企業の取り組みを測る指標です。

⑤外部監査で指摘された事項の件数、種類、要因

外部監査で指摘された事項の数、種類および発生源とそれらへの対応。外部監査の指摘事項に対する企業の取り組みを測る指標です。

2. コスト

①総労働力コスト

組織が従業員に対して支出した金額。労働力の財務価値を測る指標です。

②外部の労働力コスト

コンサルタント、監査法人、派遣労働者、ギグワーカーなど、外部の労働力に関する費用の総額。企業が外部の労働力をどれだけ活用できているかを測る指標です。

③総給与に対する特定職の報酬割合

全従業員の総給与額に占める特定層の報酬割合。企業が、職種や階層にかかわらず公平な待遇を提供しているかを測る指標です。

④総雇用コスト

給与や諸手当など、従業員のために企業が負担した費用の総額。企業負担の保険料や人材育成、雇用、福利厚生などにかかる費用も含まれます。従業員の雇用にかかる費用を網羅的に測る指標です。

⑤一人あたり採用コスト

一人あたりの採用にかかるコスト。採用活動の効率を測る指標です。

⑥採用コスト

採用にかかる内部および外部の総コスト。採用活動の効率を測る指標です。

⑦離職にともなうコスト

自発的離職にともない発生するコストの総額。離職にともなう費用や機会損失額を測る指標です。

3. ダイバーシティ

①年齢

年齢層ごとの労働力の分布を測る指標です。

②性別

男女がどのくらいの割合で雇用されているかを測る指標です。

③障害者

障害者の労働力を活用できているかを測る指標です。

④その他

従業員の国籍や勤務年数など、ダイバーシティの実践度を測る指標です。

⑤経営陣のダイバーシティ

経営陣の性別や年齢、障害など、経営陣のダイバーシティの実践度を測る指標です。

4. リーダーシップ

①リーダーシップへの信頼

従業員サーベイなどのツールを用いてリーダー・管理職のパフォーマンスや従業員からの評価を測る指標です。

②管理職一人あたりの部下数

一人の管理職が直接管理している部下の数から、マネジメント効率を測る指標です。

③リーダーシップ開発

リーダーシップ研修などに参加したリーダーの割合。リーダー育成の実践度を測る指標です。

5. 組織風土

①エンゲージメント/従業員満足度/コミットメント

従業員サーベイなどのツールを用いて従業員のエンゲージメントや組織に対するコミットメントの度合いを測る指標です。

②従業員の定着率

企業が従業員をどれだけ定着させられているかを測る指標です。

6. 健康・安全・幸福

①労災により失われた時間

業務に起因して発生したケガや病気により失われた労働時間。労働環境の良し悪しを測る指標です。

②労災の件数

業務に起因して発生したケガや病気の件数。労働環境の良し悪しを測る指標です。

③労災による死亡者数

業務に起因して発生した死亡者数。労働環境の良し悪しを測る指標です。

④健康・安全に関する研修の受講割合

健康・安全に関する研修を受講した従業員の割合。健康・安全に関する知識の習得度合いを測る指標です。

7. 生産性

①従業員一人あたりEBIT/売上/利益

従業員一人あたりの業績。企業の生産性を測る指標です。

②人的資本ROI

人的資本に支払われた金額から得られたリターンの割合。人的資本に対する投資効率を測る指標です。

8. 採用・異動・離職

①募集ポストあたり書類選考通過者

募集したポストあたりの書類選考通過率、および全応募者のうちの書類選考通過者の数。企業の採用効率や採用力を測る指標です。

②採用従業員の質

採用した従業員のパフォーマンスを入社前の期待と入社後の評価で比較。質の高い人材を採用できているかどうかを測る指標です。

③採用にかかる平均日数

募集開始日から求職者の応募を受け入れる日までの平均日数。採用効率を測る指標です。

④重要ポストが埋まるまでの日数

重要ポストについて、募集開始日から求職者の応募を受け入れる日までの平均日数。重要ポストの採用効率を測る指標です。

⑤将来必要となる人材の能力

将来必要になる人材の能力に関する説明。中長期的な人材育成の方針を測る指標です。

⑥内部登用率

空席ポストに対して内部登用を通して埋まったポストの割合。企業内で有能な人材を育成・確保できているかどうかを測る指標です。

⑦重要ポストの内部登用率

重要ポストに対して内部登用を通して埋まったポストの割合。企業内で有能な人材を育成・確保できているかどうかを測る指標です。

⑧重要ポストの割合

企業全体に占める重要ポストの割合を測る指標です。

⑨全空席中の重要ポストの空席率

全空席ポストにおける重要ポストの空席数の割合。重要ポストへの人材の充当がうまくいっているかどうかを測る指標です。

⑩内部異動率

地域や機能を越えた組織内の異動の割合。企業内の人材の流動性を測る指標です。

⑪幹部候補の準備度

将来、重要ポストに就く可能性がある幹部候補の能力と準備度合い。重要ポストに対する後継者を育成できているかどうかを測る指標です。

⑫離職率

解雇、人員削減、転職、定年など、理由を問わず離職した従業員の割合。従業員の定着度合いや職場環境を測る指標です。

⑬希望退職率

自発的に離職する従業員の割合。従業員の定着度合いや職場環境を測る指標です。

⑭痛手となる希望退職率

離職による損失が大きい従業員が自発的に離職した割合。痛手となる離職の度合いを測る指標です。

⑮離職理由

離職理由ごとの割合を測る指標です。

9. スキルと能力

①人材開発・研修の総コスト

人材開発や研修、OJTにかけた総費用。従業員の教育にどのくらい投資をしているかを測る指標です。

②研修への参加率

研修に参加した従業員の割合。従業員にどのくらい能力開発の機会を提供しているかを測る指標です。

③従業員一人あたりの研修受講時間

従業員一人あたりの研修の平均受講時間。従業員にどのくらい能力開発の機会を提供しているかを測る指標です。

④カテゴリ別の研修受講率

研修のカテゴリごとの受講率。従業員が職種や役割に応じた研修を受講できているかを測る指標です。

⑤従業員のコンピテンシーレート

従業員のコンピテンシーについて、評価ツールやチェックリストを使ってアセスメントした結果の平均値。従業員のコンピテンシーを測る指標です。

10. 後継者計画

①内部継承率

重要ポスト数に対する、内部登用者の割合を測る指標です。

②後継者候補準備率

重要ポスト数に対する、後継者候補者数の割合を測る指標です。

③後継者の継承準備度

計画的に後継者を育成・確保できているかを測る指標です。

11. 労働力

①総従業員数

フルタイム、パートタイムにかかわらず、直接雇用されている従業員の数。直接雇用の労働力を測る指標です。

②総従業員数(フルタイム・パートタイム)

直接雇用の従業員数を、フルタイムとパートタイムに分けて算出した指標です。

③フルタイム当量(FTE)

フルタイムの人員に換算したときの総従業員数を測る指標です。

④臨時の労働力(独立事業主)

個人事業主の外部労働者数。外部の労働力をどのくらい活用できているかを測る指標です。

⑤臨時の労働力(派遣労働者)

外部の組織が雇用する外部労働力数。外部の労働力をどのくらい活用できているかを測る指標です。

⑥欠勤

病気、ケガ、個人的な事情など、突発的な欠勤の発生率を測る指標です。

ISO30414や人的資本開示に関する動向は?

ドイツをはじめとするEU各国の大手企業では、ISO30414に則った人的資本の情報開示が進んでいます。また、2020年8月には、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対する人的資本の情報開示の義務化を発表しました。これを受け、米国では人的資本のマネジメントに関するレポート(Human Capital Report)を開示する企業が増加しています。 現時点では、日本において人的資本に関する情報開示は義務付けられていませんが、今後は情報開示への気運が高まると考えられており、その際のフレームとしてISO30414の活用が見込まれています。

投資家たちも「人的資本」開示の充実化を望んでいる

ISO30414の策定に後押しをされ、企業からの人的資本のマネジメントに関するレポートの開示が増えてきていると同時に、投資家たちの「人的資本」開示に対するニーズも高まっています。 株式会社リンクアンドモチベーションにて、機関投資家100名を対象とした「非財務資本の開示に関する意識調査」を実施したところ、下記のような現状が分かりました。 参考:機関投資家の非財務資本開示に関する意識調査結果を公開 企業の非財務資本の開示状況に、「非常に満足」もしくは「満足」している投資家は全体の3割となり、殆どの投資家たちが非財務資本のさらなる開示を求めていることが分かりました。

さらに、今後、より開示が必要だと思う項目についての質問結果は上記のようになりました。
非財務資本の中で、今後より開示が必要だと思う項目については、エンゲージメントやダイバーシティ&インクルージョン、人材開発を含む「人的資本」が最も高く(70%)、
次いで、特許や著作権、ソフトウェア、権利等の知的財産権を含む「知的資本」が高い(62%)という結果となりました。近年注目を集める気候変動対策を含む自然資本(29%)を大きく上回る結果から、「人的資本」への注目度の高さがうかがえます(図2)。

さらに、人的資本が企業の成長に影響を与えると思うかについて聞いたところ、「はい」と回答した投資家は8割を超え(図3)、また、人的資本が投資判断にどれくらい影響を与えるか聞いたところ、「とても影響する(31%)」「まあ影響する(38%)」と約7割の投資家が、人的資本が投資判断に影響することを認めています(図4)。
上記の結果からも、非財務資本やその中での人的資本開示に対する注目度やニーズが高まってはいるものの、3割の投資家たちが現状の開示情報には満足をできていないことを鑑みると、非財務指標において信頼性の高い指標を未だ見出せていないということが言えるのではないでしょうか。
このような流れの中で、リンクアンドモチベーションが創業以来20年間蓄積してきた、企業と個人の相互理解・相思相愛度合いを偏差値化した「エンゲージメントスコア」は、まさに社会が求めている人的資本を測るための指標の一例です。
リンクアンドモチベーションが提供する、「モチベーションクラウド」は、8,740社、237万人のデータベースをもとに組織状態を診断し、従業員エンゲージメントを向上するクラウドサービスです。
2016年にリリースして以降、業界を問わず、従業員のエンゲージメント向上を目指すリーディングカンパニーに導入いただいており、売上4年連続1位 (※) を獲得しています。
サービスの中では「組織状態の診断」に留まらず、「組織変革の並走」、さらには企業の組織状態を資本市場に向けて発信するために開発したエンゲージメント・レーティングによる「組織状態の公表」までを一貫してサポートしています。
(※出典:ITR「ITR Market View:人事・人材管理市場2021」従業員エンゲージメント市場、ベンダー別売上金額およびシェアで連続1位(2017〜2020年度予測))

ISO30414の認証取得企業

DWS、ドイツ銀行

2021年1月、ドイツ銀行グループのアセットマネジメント会社であるDWSが、世界で初めてISO30414の認証を取得しました。同年3月には、ドイツ銀行も人的資本に関する情報を開示した「Human Capital Report 2020」の評価を受け、ISO30414の認証を取得しています。

リンクアンドモチベーション

株式会社リンクアンドモチベーションは、2000年の創業以来、組織人事コンサルティングのパイオニアとして、基幹技術「モチベーションエンジニアリング」を基盤に多くの企業変革を実現してきた企業です。2021年より、ISO30414の認証取得に向け、社内プロフェッショナルの育成をはじめとした準備を進め、2020年3月、世界で5番目、日本・アジアでは初となるISO30414の認証取得企業となりました。​​​​​​​​​​​​​​

まとめ

人材版伊藤レポートの発表やコーポレートガバナンス・コードの改定など、日本においても人的資本経営、および人的資本開示に対する関心が高まっています。

ISO30414の日本語訳版が発刊されるなど、人的資本開示の流れはますます加速していくと考えられているため、後れをとらぬよう、情報収集と準備を進めていきましょう。

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ISO30414に関するよくある質問

Q:「人的資本」と「人的資源」の違いは?

人的資本とは、企業を構成する人材を、投資をすることで価値を生み出すことができる「資本」と捉えた概念のことで、英語では「Human Capital」と訳されます。一方で、人的資源とは、企業を構成する人材を「資源」と捉えた概念のことで、英語では「Human Resource」と訳されます。

人的資源の考え方では、人材はあくまでも「コスト」として消費されるものであり、できるだけ最小限に抑えて効率的に管理すべきだとされます。一方、人的資本は、人材を利益や価値を生み出す源泉と捉えているため、人材に要する出費はコストではなく「投資」として認識されます。

Q:ISO30414を取得するには?

ISO30414の認証を取得するためには、まずISO30414の58項目の指標に従って必要なデータを揃えることからスタートする必要があります。ある程度、データを収集できたところで、ISO30414の認証機関に申し込み、審査を受ける形になります。

Q:ISO30414を取得するメリットは?

ISO30414の認証を取得する最大のメリットは、社会的信頼を獲得できることです。外部の第三者である認証機関から証明(第三者認証)を受けることで、組織内外に対する説明責任を果たすことができ、それによって社会的信頼を得ることができます。統合報告書などで開示することで、投資家からもポジティブな評価を得ることができるでしょう。

また、人事部門の変革を促すことができるのもメリットだと言えるでしょう。企業がISO30414の認証を取得することで、人事部門の取り組みがどの程度、経営に貢献しているかが可視化されるようになります。人的資本に関するデータを効率的に収集するためにはHRテクノロジーが不可欠であり、体制構築を通して人事部門のDXを推進することができます。こうした取り組みによって、より経営に貢献できる人事部門へと変革を遂げることができるでしょう。

執筆者:LM編集部
執筆者:LM編集部
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