SaaSって?PaaSやIaaSとの違いやAPTとの連携について解説
目次[非表示]
- 1.SaaSって?
- 2.PaaSって?
- 3.IaaSって?
- 4.SaaSモデルって?
- 5.SaaSとAPIの連携について
- 6.まとめ
企業におけるクラウドサービスの利用率は6割に達していると言われています(出典:総務省「企業におけるクラウドサービスの利用動向」)。顧客情報や資料の管理などでクラウドサービスを導入、または導入の検討をされている方も多いのではないでしょうか。
一方で様々なサービスや専門用語があり、その内容をしっかり理解するのは難しくなっています。本記事ではSaaSやPaas、IaaSといった代表的な言葉の意味やその特徴などをご紹介します。
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SaaSって?
SaaSは「Software as a Service」を略したもので、「サース」や「サーズ」と読みます。クラウドサービスが提供される以前はユーザーは「それぞれの端末にソフトウェアをインストールして使用する」ことが一般的でした。
イメージとしては、Excelをそれぞれのパソコンでインストールして作業するものです。他者との共有はそのファイルをメールやチャットで送付で行っていました。
それに対してSaaSではユーザーはインターネット上で提供されているソフトウェアを利用します。自社でソフトウェアの開発を行わない企業では最も使われているプロダクトの形態とも言えます。
イメージとしては、Googleスプレッドシートで、インターネット上でファイルを編集するものです。複数の端末で同じファイルを編集しつつ、リンクを知っている他者へ即時共有・同時編集が可能です。
■SaaSのメリット
・ソフトウェア導入のコストが低い
SaaSはインターネットで利用するソフトウェア自体が提供されるため、開発やセキュリティの設計を自分で行う必要はありません。開発に伴う人的リソースや費用・時間をかける必要がないため、導入するまでのコストを低く抑えることができます。
また、ソフトウェアを使用する従業員の変更が必要になった場合でも1回1回購入し直すのではなく、利用アカウントを変更することで対応が可能です。そのため、初期導入も利用方法の変更もコストが比較的かからないと言えます。
・ソフトウェアの管理の手間がかからない
自社で開発したソフトウェアやインストールする形式のパッケージ型ソフトウェアでは、バージョンの更新やセキュリティの変更などの対応はユーザーがそれぞれ行わなければいけません。
SaaSではソフトウェアを提供する側が開発を行い、バージョンアップやセキュリティの強化などを担います。そのため、最新状態に保つための手間がかかりにくく快適に使用しやすいでしょう。
■SaaSのデメリット
一方で、ソフトウェアの自由度は低くなりやすい傾向があります。実装する機能の決定や開発は提供者側が行うため、ユーザー側は提供されている以上のものは利用できません。カスタマイズ性が豊富なサービスもありますが、何でもできるわけではありません。
使いこなすためには、ある程度ソフトウェアの機能に合わせて業務プロセスや内容を変更したり、ソフトウェアを利用するポイントを絞ったりする必要もあります。
もちろん、現状で必要にも関わらず実装されていない機能は提供者側の開発を待つしかありません。ユーザー側もリクエストをすることはできますが、開発には優先順位もあるため時間がかかる場合が多くなります。
柔軟かつ、比較的即時の対応を求める場合はこの後にご紹介するPaasやIaaSを検討する必要があるでしょう。
■SaaSサービスの代表例
SaaSには多くの方が身近に利用しているサービスが多くあります。SaaSサービスの代表例には以下のようなものが挙げられます。
- GmailやYahoo Mail、Outlookなどのメールサービス
- Microsoft Office365のような総合ビジネスパッケージ
- Googleドキュメント、スプレッドシートなどのオフィスソフト
- Salesforceのような営業支援、顧客管理システム
- DropboxやOnedriveなどのオンラインストレージサービス
PaaSって?
Paasは「Platform as a Service」を略したもので、「パース」と読みます。SaaSがソフトウェア・アプリケーションが提供されるのに対して、PaaSはソフトウェアが動くために必要なデータベースやOSのようなプログラム実行環境といった「プラットフォーム」が提供されます。
「プラットフォーム」はいわゆる「開発キット」のようなものであり、ユーザーはインターネット上でそのキットを使ってソフトウェアの開発を行うことができます。
■PaaSのメリット
・開発環境を整える手間がかからない
PaaSはインターネット上で開発に必要なツールや環境が提供されているので、ソフトウェア開発に必要なOSやデータベースといったものを1から準備する必要がありません。SaaSがソフトウェアを使い始めるまでのコストを削減できるのに対して、PaaSは開発を始めるまでのコストを削減できます。
開発環境を1から準備し、整えることはとても手間がかかります。加えて開発を進めていく中で環境に不具合が生じた際も原因を調べて改善する工程も開発者が行わなければいけません。この膨大な手間を抑えることができると、開発者は目指しているソフトウェアの開発に集中することができるでしょう。
・維持管理をするコストが抑えられる
PaaSでは開発環境の整備や更新をサービス提供者が行うので、ユーザーはプラットフォームの維持管理に人的リソースや費用・時間を抑えることができます。また、万が一プラットフォームに不具合やトラブルが生じた場合でもサービス提供者側が修正対応を行ってくれます。
開発にかけるコストを比較的低く抑えられるため、開発する自社ソフトウェアで早期にコストを回収することが望めるでしょう。
■PaaSのデメリット
・開発の自由度が低い
PaaSは開発環境を比較的容易に整えてくれるものですが、開発環境自体の自由度は低くなることがデメリットとして挙げられます。サービス提供者が用意した開発環境以上の自由度は得られないためです。
特に開発を担うエンジニア人材が使い慣れたプログラミング言語やOSに対応していない場合や、開発するソフトウェアで必要な要素が実装されていない場合もあります。結果として開発スピードが落ちてしまうことや、開発するソフトウェアの機能を制限しなくてはならないこともあるでしょう。
・セキュリティ面でのチェックが必要
開発するためのプラットフォームのセキュリティ対応はサービスを提供している側に任せることになります。そのため、万が一トラブルが生じた際はプラットフォーム内に保存している顧客データ、機密情報の漏洩に繋がってしまう可能性があります。
加えて、セキュリティトラブルが発生した場合には自社で開発したソフトウェアの顧客提供も一時的に中止せざるを得ない状況になってしまいます。その際には金銭的な損失だけではなく、自社ソフトウェアへの信頼も失う結果になりかねません。
PaaSを利用する際には、サービス提供者が公開している個人情報取り扱いのポリシーをチェックしたり、セキュリティで心配な部分がサポートされるかを調べたりすることが重要です。
■PaaSサービスの代表例
PaaSサービスでは下記のものが代表的です。
- Amazon Web Services(AWS)
- Google App Engine(Google Cloud Platform)
IaaSって?
IaaSは「Infrastructure as a Service」を略したもので、「イァース」または「アイアース」と読みます。PaaSでは規定のものが提供されていた「開発環境」そのものを設計するのに必要な「インフラ」をIaaSでは提供されます。
「インフラ」とは、仮想サーバーやハードディスク、ファイアウォールなどの「環境設定ツール」です。ソフトウェアを作るための開発環境も自らで整えたい場合に利用します。
■IaaSのメリット
・開発の自由度が高まる
IaaSは開発環境自体を設計できるため、PaaSに比べて開発の自由度は高まります。開発したいソフトウェアに応じて必要なインフラやプラットフォームを選ぶことができるので、PaaSと比べて工数はかかりますが自由に開発を進めることができるでしょう。
1から自分で必要なツールやシステムを探すのではなく、ある程度のラインナップの中から選択ができるので開発が止まってしまうことも少なくすることができます。
・柔軟なサービスを受けられる
IaaSを利用すると、仮想サーバーのCPUやメモリ、必要な分だけ必要なものを使うことができます。各種ツールやインフラをどの程度利用するのかもユーザーが選んで利用することができるため、必要に応じた柔軟なサービスを受けることができます。
ソフトウェアの開発中にも使う側のニーズに合わせて利用するものの追加・削減を適宜行うことができることも大きなメリットとなるでしょう。
・コストを削減できる
IaaSは従量課金制なので、使った分だけ料金を払うことになります。そのため、コストを必要最低限に抑えることができます。また、自社でインフラを整えるとその分費用がかかりますが、提供されているサーバーやシステムを活用できるのでその部分でもコストを抑えることができます。
■IaaSのデメリット
・必要な専門知識のレベルが高くなる
自由度が高い分、ソフトウェアの開発のためにどのようなインフラを整えてどのようなプラットフォームを導入するかは開発者が考えて実行しなければいけません。開発環境を整えて実際の開発を開始するためには利用者に必要な専門知識はより高度なものが求められます。
・運用・管理コストがかかる
IaaSでは、PaaSでサービス提供者が管理していたデータベースやOSといったプラットフォームを開発者が管理しなければいけません。実装した開発環境の更新やトラブルが生じた際の対応なども開発者が担うことになります。
開発チームの人数が少なかったり、経験が少ない場合には開発中にメンテナンスや修正にとられる時間が多くなる可能性があります。
・セキュリティ対策を行う必要がある
開発者が自由に扱えるというメリットがある反面、その分セキュリティ面で不安な部分が大きくなります。特にオンラインでアクセスがしやすいという利便性は、「誰でもアクセスがしやすく、不正に利用されやすい」という危険性を孕んでいます。
利用する開発者、ユーザーに対するセキュリティ意識の向上を同時に行う必要があるでしょう。
IaaSサービスの代表例
IaaSサービスでは下記のものが代表的です。
- Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)
- Microsoft Azure
- Google Compute Engine(GCP)
SaaSモデルって?
SaaSモデルとは、先述したインターネット上で利用するソフトウェアを「サブスクリプション形式」で提供するビジネスモデルのことです。
世界のSaaSモデルの市場規模は年々拡大しており、今後も期待されています。日本国内での市場も同様に成長しており、多くのスタートアップ企業の参入やSaaSモデルの新規事業の立ち上げが盛んになっています。
(出典:総務省「レイヤー別にみる市場動向」)
ではなぜSaaSモデルは急激に成長をしているのでしょうか。注目されている点は、「長期的に安定する収益構造」です。
SaaSモデルが生まれる前の多くの収益構造はいわゆる「ワンショット型」でした。顧客に発注を貰い、買い切りの商品・サービスを制作・提供を行うビジネスモデルです。このモデルで収益を上げるために設定する指標は主に、
- 単価の向上
- リピート率の向上
- 原価率の最適化
などでした。
情報化社会が発展してくると、一度ヒットした商品でも安価な模倣品がすぐに市場に溢れてしまい、売れ続けることが難しくなってきました。その中でワンショット型のビジネスモデルだけでは1回1回発注を獲得する必要があるため、安定的な収益を得ることが難しくなります。
それに対してSaaSモデルはサブスクリプション(月額制)の収益構造を採用している場合が多く、導入した顧客の満足度を高めることで長く安定的な収益を見込めます。指標もワンショットモデルが1回1回の「売り方」であるのに対してSaaSモデルは下記のような「続け方」を設定しています。
- LTV(Life Time Value):顧客が長期的に支払ってくれる対価
- ARR(Annual Recurring Revenue):年間での月額費の合計
- MRR(Monthly Recurring Revenue):月間での月額費の合計
参考:リンクアンドモチベーションの例
組織人事コンサルティングサービスを提供するリンクアンドモチベーションは、ワンショット型ビジネスのみの収益構造からSaaSとワンショット型を組み合わせた収益構造にモデルチェンジを果たした企業の一つです。
リンクアンドモチベーションでは「売上は顧客の支持の共感の総量である」という哲学を全社で共有しており、これまでの単発のコンサルティングサービスだけではなく、継続的に顧客に価値を提供するために、組織改善クラウド「モチベーションクラウド」を開発しました。
SaaSで享受できる事業的なメリットはもちろんのこと、顧客に継続して価値を提供するためにビジネスモデル転換を行った例の一つということができるでしょう。
■SaaSモデルのメリット・デメリット
安定した収益を期待できるSaaSモデルですが、もちろんメリット・デメリットの双方があるので確認していきましょう。
SaaSモデルのメリット
- 買い切りの商品よりも比較的安価にしやすいサブスクリプションを採用することで、ユーザーも導入しやすくなる
- 月額での収益傾向を元にして先々の予測が立てやすく、事業計画を見通しやすくなる
- 実際に顧客が使ってみる体験を提供しやすいので、アップグレードも薦めやすく単価の向上も見込める
SaaSモデルのデメリット
- 損益分岐点が先になり、資金繰りに気をつける必要が出てくる場合がある
- 顧客満足度が継続率に大きく影響するため、カスタマーサクセスに注力する必要がある
- 機能の更新やセキュリティ管理を行い続ける必要がある
SaaSとAPIの連携について
■APIって?
APIは「Application Programming Interface」を略したものです。この中にある「インターフェース」とは「境界」や「接点」を表す単語であり、「ユーザーインターフェース」や「ハードインターフェース」といった使われ方もされます。
例えば、ユーザーインターフェースは「ユーザーとの接点」という意味になり、スマートフォンの画面やパソコンのキーボードなどがこれにあたります。
APIはアプリケーションやプログラム同士の接点という意味になり、API連携は「ソフトウェアやアプリケーション同士を連携させる」という意味になります。
例えば、
- 顧客にアンケートを取るソフトウェアA
- アンケート結果を収集・分析するソフトウェアB
がそれぞれあるとします。
API連携を行っていない場合は、
①まずソフトウェアAを動かして結果を出し、
②それをソフトウェアBで読み込める形に調整
③そして分析を行う
といった作業をユーザーが担わなければいけません。ソフトウェアの数が3つ、4つと増えていくと工数は増大していき、ミスも起こりやすくなります。
API連携を行うことで複数のソフトウェアでデータを共有しつつスムーズに結果を出すことができます。
■連携するメリット
ソフトウェア同士の連携を実現できるAPIですが、もちろんSaaSでAPI連携を行うことでもメリットがあります。
- 導入したSaaS同士でデータを共有・統合ができるようになる
- データを統合することで1つ1つのソフトウェアから収集する手間が省け、データからの考察がしやすくなる
- 業務が効率化でき、他の業務に時間を回すことができる
■SaaSとAPIを導入する際の注意点
SaaSでAPI連携をする際には、「ソフトウェア同士のデータの受け渡し方」と「仕様の変更」に注意することが大切です。
・ソフトウェア同士のデータの受け渡し方
ソフトウェア同士でデータを共有するため、出力するデータの形がソフトウェア同士で異なると重複したデータが存在してしまう場合があります。
・仕様の変更
複数のSaaSを活用している場合、1つのソフトウェアの仕様が変更されると他のソフトウェアと連携ができなくなる場合もあります。顧客に提供している商品・サービスの機能が停止してしまうことにも繋がってしまうため、仕様の変更には注意して全体が正常に作動するかを確認する必要があります。
まとめ
現在注目されているSaaS、PaaS、IaaSについてとそれに伴うビジネスモデルについてご紹介しました。サービスを導入する際には、自社で必要としているレベルを元にそれぞれの特徴と照らして検討しましょう。
また、新たなビジネスモデルを始めようとしている方も扱うサービスのことを理解した上で自社らしいモデルをお考えください。
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら