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昇給とは?ベースアップとの違いや昇給実施率について徹底解説


目次[非表示]

  1. 1.昇給とは?昇格・昇進との違いも解説
  2. 2.昇給の種類
  3. 3.定期昇給とベースアップはどう違うのか
  4. 4.定期昇給制度のある企業の問題点とは
  5. 5.日本企業における昇給制度と実施率
  6. 6.企業規模別にみた昇給の平均金額・相場
  7. 7.高卒・大卒で昇給額はどのくらい異なる?
  8. 8.アルバイト・パートにも昇給は必要なのか
  9. 9.昇給を行う際の注意点
  10. 10.昇給はモチベーションを上げる一つの要素
  11. 11.組織改善ならリンクアンドモチベーション
  12. 12.まとめ
  13. 13.昇給に関するよくある質問

会社を選ぶ上で主に気になることの1つと言えば、「その会社の賃金制度がどうなっているか」ではないでしょうか。企業においても従業員のモチベーション向上のために様々な賃金制度を採用し、従業員の出した成果や持っている能力に応じて報酬を還元しています。

そして賃金制度の中でもより従業員が身近に感じやすいのが、昇給制度です。適切に昇給を考えて運用することでより従業員の業務に対するモチベーション向上や、スキルアップのきっかけになります。

本記事では基本的な昇給についての情報や注意点についてご紹介します。

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昇給とは?昇格・昇進との違いも解説

昇給とは、その名の通り「給与の金額が増額すること」です。昇給の条件は企業によって様々ですが、勤続年数のような「従業員が在籍した期間」や成果・能力のような「従業員の発揮したパフォーマンス」などに応じて設定される場合が多いでしょう。また、昇格した際に給与がアップすることも昇給に含まれています。


昇格・昇進との違い

昇給と共によく使われているのが「昇格」や「昇進」ですが、それぞれ下記のような意味があり異なるものを指しています。


・昇給:在籍期間やパフォーマンスに応じて給与の金額が増額すること

・昇格:能力や役割に応じて設定されている「等級」や「グレード」が上がること

・昇進:企業の中で設置されている「役職」が上がること


昇給が「給与の金額が上がること」であるのに対して、昇格・昇進は「企業内での役割範囲が広がること」だと言えるでしょう。


また、一般的には昇格や昇進をしたタイミングで昇給も発生することが多いでしょう。


昇給の種類

一口に「昇給」といっても、実は様々な種類があるので、どのような昇給があるのかを確認していきましょう。


種類①:普通昇給

従業員の技能や職務遂行能力が向上した際に行われる昇給です。次にご紹介する「特別昇給」と分類する意味で「普通」という言葉が使われています。「一般的な理由による昇給」という意味合いがありますが、後述する考課昇給とも範囲が曖昧になっている場合が多く見受けられます。


種類②:特別昇給

通常ではない、特殊な業務や特別な功績のような普通昇給の範囲外である特別な理由に対して行われる昇給です。通常業務とは異なる業務を担う際や、企業としてモデルケースにしたいパフォーマンスを発揮した際に適用されます。


種類③:臨時昇給

企業の業績が好調な場合や給与体系の見直しを行うなどに臨時で行われる昇給です。特に時期は定められていません。企業として得た利益を従業員に還元することができるので、業績向上や支払う理由を一緒に説明することで、従業員が全社視点で考える姿勢を醸成することが期待できます。


種類④:自動昇給

年齢や在籍年数などに応じて自動的に行われる昇給です。個々人のパフォーマンスに関係なく全ての従業員に適用されるものです。自身のパフォーマンスとは比較的関係の無い昇給でもあるため、あまり従業員のモチベーションに繋がりにくい昇給でもあります。


そのため、「長く働いてくれている人に報いたい」「在籍期間に応じてこういうスキルを身につけてほしい」といった、昇給の背景にある想いや期待を説明すると昇給への見方が変わるでしょう。


種類⑤:考課昇給

企業が定める評価基準に応じて決められる従業員の評価によって行われる昇給です。査定昇給とも呼ばれており、従業員それぞれの評価によって昇給金額が変動します。


そのため、定められた評価期間での自身のパフォーマンスを給与と直結して考えやすいため、金額の変動が従業員のモチベーションの変化に大きく繋がります。


種類⑥:定期昇給

企業が定める時期に応じて定期的に行われる昇給です。自動昇給のように毎年自動的に支払われるのではなく、企業の業績状況によってはその年の定期昇給の有無やその金額が変更される場合があります。


定期昇給とベースアップはどう違うのか

昇給が従業員それぞれの給与を条件によって変化させることに対して、ベースアップは「従業員全員の給与を一斉に」引き上げます。賃金に対する法律改正や社会状況の変化に応じて適用されることが多く見受けられます。


例えば、新型コロナウイルスの流行によりリモートワークが広まった時には「自宅で勤務する際に発生する光熱費や通信費を補助する」という意味合いでベースアップが行われたケースもあります。


従業員の生活をしっかりサポートできるため、自社に対する感謝やエンゲージメントの向上に繋がりやすい一方で、従業員全体の基本給を上げることになるため固定費が増大します。固定費の増大は経営における負担にもなるため、しっかりその適用についてはメリット・デメリットを検討することが大切です。


企業での昇給の機能やメリット

ここまで昇給の基本的な情報やその種類についてご紹介してきました。これらの昇給は企業において果たしている機能やメリットがあるため、代表的なものをご紹介します。


機能①:在籍期間や能力への対応

同じ等級や役職で基本給が同水準の場合でも、従業員ごとに在籍期間や能力の変化にはタイミングや内容にばらつきがあります。そのような場合に、しっかりと従業員それぞれの変化に合わせて給与を対応させることができます。


機能②:労働意識の刺激

特に考課昇給のようにパフォーマンスに応じて昇給が生じると、自身の目標に対してどのような行動をしたら良いのかをより真剣に考えるようになります。昇給の条件が明示されていると、従業員それぞれが自分が身につけるべき能力や求められている成果についても、より明確に考えられるため労働意識が刺激されるでしょう。


機能③:生活水準の上昇への対応

先述した社会状況の変化の他にも、年齢やライフステージの変化によって生活の水準は変化します。そのような場合に昇給を活用することで、従業員の生活を支えることができます。


機能④:企業経営の安定

個々人のパフォーマンスや企業の利益をしっかりと従業員に還元することで、「この会社は自分達のことを考えてくれている」という意識が芽生えます。人的資源を活性化させることで企業経営の安定化を図ることができるでしょう。


定期昇給制度のある企業の問題点とは

定期昇給は従業員の給与を定期的に向上して生活を安定させることができるメリットがあり、日本企業の多くが定期昇給制度を採用してきました。しかし、昨今ではこの定期昇給制度を見直そうという動きもあります。


定期昇給制度は企業が定める期間で自動的に昇給が行われるため、


・成果主義が必要な企業と相性が悪い

・出した成果と賃金にギャップを感じる

・他人の給与への不納得感を感じる

・固定費が増大し、財務面での圧迫がある


といった問題点があるためです。


ただし、ここで気をつけておきたいのは「他の企業が廃止しているから自社も廃止した方がいい」という考え方で人事制度を見直すことは必ずしも上手くはいかないということです。


企業における昇給ひいては人事制度は「経営から従業員に向けたメッセージ」であるとも言えます。(参考:人事評価制度とは?目的や導入方法は?メリット・デメリットを徹底解説


そのため、下図のように自社の目指す姿から人材に対する考え方である「人事ポリシー」を整理した上で制度の変更を考えなければ、せっかく定期昇給制度を変更しても「なんでこの給与になるかが分からない、納得できない」という気持ちが従業員に芽生えてしまいます。そうなると、結果として期待した効果を得られない可能性があります。


(参考:人事制度の考え方)


「自社の目指す方向やビジネスモデルを考えると、定期昇給が合っている」という場合ももちろんあるため、上記を踏まえて検討するのが良いでしょう。


日本企業における昇給制度と実施率

日本経済団体連合会と東京経営者協会が2021年に発表した、「2021 年1~6月実施分 昇給・ベースアップ実施状況調査結果」では、


・2014年から2019年まで「昇給・ベースアップともに実施」した企業は5割超で推移

・2020年は39.2%、2021年は30.9%に減少

・「昇給のみ実施」した企業が69.1%であり、2014年から8年連続ですべての回答企業が定期昇給や賃金カーブ維持分の昇給、ベースアップなど、何らかの方法により月例賃金の増額改定を実施


という調査結果になっています。


(出典:「月例賃金引上げの実施状況 ―組合員平均―」)


また、賃金の決定にあたって主に考慮した要素は「企業業績」が67.0%(前年63.8%)、「世間相場(社会、業界、グループ関連会社等)」が36.2%(前年36.0%)、「経済・景気の動向」が25.4%(前年25.0%)であり、多くの企業は自社の業績状況に合わせると共に社外の状況を加味して賃金を決定していることが分かります。


(出典:賃金決定にあたって主として考慮した要素(2つ回答))


一方で「人材確保・定着率の向上」は2.9%減少し、「雇用の維持・安定」は5.6%増加していることから、比較的「人材の流出防止」というものから「今いる人材の満足度向上」に賃金を決める目的に変化していることが考えられます。


企業規模別の昇給実施率

また、東京商工リサーチによる調査では「賃上げを実施する」と回答した割合は、


・大企業:77.2%

・中小企業:70.8%


となっています。

(出典:東京商工リサーチ「2022年度 賃上げに関するアンケート」


業界別の昇給実施率

産業別に見ると「製造業」が78.8%で最も高く、卸売業74.7%、建設業73.2%、情報通信業69.4%と続いています。最低は、金融・保険業の45.3%でした。


定期昇給の停止年齢

日本で多く採用されている定期昇給ですが、昇給を停止する年齢を定めている企業もあり、定期昇給の停止を採用している企業で停止の平均年齢は48.9歳だと言われています。(出典:公益財団法人日本生産性本部「第14回 日本的雇用・人事の変容に関する調査」)


ただし、あくまで平均年齢なので「これに合わせたほうが良い」というものではありません。自社の財務状況や計画と、従業員への給与の還元方法、そしてその昇給を通じてどんなことを意識してほしいのかのバランスを加味して考えると良いでしょう。


企業規模別にみた昇給の平均金額・相場

では、実際に平均でどの程度昇給金額が支給されるのでしょうか。調査に基づいて企業規模ごとにその相場を確認していきましょう。


大企業

日本経済団体連合会が2021年に発表した「2021年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果(最終集計)」では、大企業では昇給率は平均で1.84%であり平均昇給額は6,124円とされています。


また、昇給率の高かった「製造業」と「それ以外の産業」の平均を比べると


・製造業:平均昇給率1.87%、平均昇給額6,153円

・非製造業:平均昇給率1.68%、平均昇給額5,959円


となっており、製造業が比較的昇給率、昇給金額共に高い傾向があることが分かっています。


中小企業

同様に日本経済団体連合会の調査である「2021年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果(加重平均)」だと、中小企業では昇給率は平均で1.68%であり平均昇給額は4,376円とされています。


こちらでも昇給率の高かった「製造業」と「それ以外の産業」の平均を比べると


・製造業:平均昇給率1.75%、平均昇給額4,633円

・非製造業:平均昇給率1.57%、平均昇給額3,971円


となっており、こちらも製造業が比較的昇給率、昇給金額共に高い傾向があることが分かっています。


また、更に詳細な規模別で見ると


・100名未満:平均昇給率1.66%、平均昇給額4,162円

・100名〜300名未満:平均昇給率1.65%、平均昇給額4,267円

・300名〜500名未満:平均昇給率1.72%、平均昇給額4,529円


の分布になっており、平均昇給金額で見ると従業員規模が大きい企業は金額も大きくなる傾向があります。


公務員

公務員の給与は「行政職俸給表」で定められています。これはいわゆる「号俸制」と呼ばれるものであり、下図のように企業で言う等級である「級」ごとに昇給額が定められています。


(参考:行政職俸給表(一))


平均昇給金額は概ね7,000円程度であると言われています。


昇給額・昇給率の計算方法

次に昇給額・昇給率の計算方法を確認しましょう。昇給額と昇給率はそれぞれ、


・昇給額=昇給後の給与ー昇給前の給与

・昇給率=昇給後の給与÷昇給前の給与


のことを指しています。また、昇給率が分かっているとどれくらいの昇給額になるかも分かり、その際は


昇給額=昇給前の給与×昇給率


で計算ができます。中小企業の平均昇給率である1.68%を例にすると、昇給前の給与が20万円の場合は「200,000×1.68%=3,360(円)」となります。


高卒・大卒で昇給額はどのくらい異なる?

2006年時点での調査にはなりますが、高卒・大卒の平均昇給率はそれぞれ


・大卒:男性「約2.9%」、女性「約3.3%」

・高卒:男性「約2.3%」、女性「約2.0%」


という結果であり、一般的に大卒の昇給率は高卒のものよりも高い傾向があります。それに応じて昇給額にも学歴で差が出てくることが分かります。


このような差は学歴の違いが知識や技術の獲得度合いにも影響することを加味されて生まれている場合が多く見受けられます。


アルバイト・パートにも昇給は必要なのか

厚生労働省が発表している「パートタイム・有期雇用労働法」では、労働者に対して「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つの事項について、文書の交付により明示することは義務付けられていますが、昇給する義務は定められていません。


しかし、昇給をしない場合は正社員と比べた待遇への不満から期待する業務のパフォーマンスが出にくくなることが懸念されます。


昇給を行う際の注意点

では、実際に昇給を行う際にはどのようなことを注意すれば良いのでしょうか。


昇給を行う際には「その昇給に対する納得感を生み出すこと」が大切です。そのためには


・昇給の条件をあらかじめ明示する

・昇給のタイミングで評価の理由を本人に伝える


ことが重要です。例えば、「どうしたら昇給できるか」が曖昧になっていると「なぜあの人は給与が上がって自分は上がらないのか」といった不満に繋がります。このような不満は「特定の人が贔屓されている」というような噂話や陰口を生み出して企業の雰囲気やチームワークを損ねる恐れがあります。そのため、「どのような評価基準で昇給をする」といった条件を人事制度内で明示することが大切です。


また、人事評価のような昇給するかが分かるタイミングではその評価の理由を説明しない場合は、評価者である上司や企業に対する不信感を生み出す懸念があります。


せっかくの昇給の機会で逆効果を生み出してしまわないようにしましょう。



昇給はモチベーションを上げる一つの要素

ここまで、昇給について説明をしてきました。従業員にとっては働く理由やモチベーションアップのきっかけにもなる、賃金の支給の仕組みを工夫することは、従業員のパフォーマンスにもつながる重要なポイントと言えるでしょう。

一方で、最後にお伝えしたいのは、従業員のモチベーションを高める要因には、賃金などの「経済的報酬」だけではないということです。

「経済的報酬」ではなく、従業員のモチベーションの源泉になりうるもの、それは「感情報酬」です。感情報酬とは、仕事のやりがい、獲得できるスキル、一緒に働く仲間との関係性、ミッションへの共感など、個々人にとって、意味や価値が大きく異なる性質を持っています。


例えばAさんにとっては魅力的でも、Bさんにとっては全く気にならないこともあります。

この「意味報酬」を上手く会社がコントロールし、従業員の心をつかむことができれば、経済的な報酬の何倍もの魅力を提供できます。いうなれば、「原価ゼロの報酬」とも考えられるでしょう。


従業員のモチベーションを上げるためには、給与、昇給といった経済的報酬と、無形な「感情的報酬」の両面を設計し、戦略的にアプローチをすることが重要です。

今後の日本経済が持続的に発展し、一人ひとりがモチベーション高く生き生きと仕事に取り組めるような社会を実現させていきましょう。


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・業績が上がらず、組織にまとまりもない

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まとめ

昇給には様々な種類があり、昇給金額も企業規模や業界、学歴で異なります。その状況下で最も大切なのは、「従業員が納得する昇給である」ということです。そのためにも、「何に対する昇給なのか」「なぜ昇給をするのか」といった、昇給の意図・背景をしっかりと考えて従業員に伝えることが重要です。

自社らしい成長を促進できるような昇給の仕組みを運用し、より組織を活性化させましょう。

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昇給に関するよくある質問


Q1:昇給は伝えなければいけませんか?


A1:定期昇給が賃金規定で定められている場合は昇給を通知する義務はありません。しかし、先述しているように昇給の理由を適切に伝えることは、従業員のモチベーションを向上させるきっかけになるためしっかり活用すると良いでしょう。


Q2:昇給と昇格は違いますか?


A2:異なります。それぞれ下記のような意味があり異なるものを指しています。


・昇給:在籍期間やパフォーマンスに応じて給与の金額が増額すること

・昇格:能力や役割に応じて設定されている「等級」や「グレード」が上がること



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執筆者:LM編集部
執筆者:LM編集部
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