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選ばれる組織へ~自治体の『人材確保・育成』改革~③組織変革に正解なし


目次[非表示]

  1. 1.組織症例
  2. 2.自治体特有の「病」
  3. 3.組織変革に「正解」なし
  4. 4.おわりに

組織症例

「部下にアドバイスしたいけど、ハラスメントが怖くて指導やコミュニケーションができない」
「コミュニケーションを取る機会になっていた飲み会が少なくなったから、先輩がどういう人か分からない」

前回は、自治体組織に共通する組織症例のうち、職員全般に見られる「意義目的不足症」と、特に新しく採用された職員に多い「ワーク・ライフ・バランス偏重症」について解説し、民間企業をロールモデルとして捉える重要性をお伝えした。

今回は、管理職と職員の間で起こりがちな二つの組織症例と、組織変革を行う上で押さえておきたい考え方について解説する。

自治体特有の「病」

当社が提供しているエンゲージメントサーベイ(働きがいや愛着の意識調査)の結果を見てみると、管理職と職員の間では二つの組織症例が傾向として見られた。

一つ目は、ハラスメント恐怖症である。これは管理職にハラスメント対策などコンプライアンス意識を過度に求めた結果、部下とのコミュニケーションが取りにくくなり、マネジメントが行き届かなくなってしまう症例である。

二つ目は、相互信頼不足症で、職員同士のコミュニケーションが希薄になり、お互いに価値観を理解していない状態で働いているため、何かトラブルが起きると「人のせい」にしてしまう症例だ。これは、相互信頼を深めるために寄与していた飲み会などのコミュニケーション機会が減少したことも一因だと考えられる。

組織変革に「正解」なし

こうした症例が見られる自治体で組織を変革するには、どうすれば良いか。民間企業をロールモデルにすると解決の糸口が見えてくる。

民間企業では、大手企業の約半数がエンゲージメントサーベイを導入しており、従業員1人当たりの研修費用として平均約3万円を投資するなど、自治体の状況とは大きな差がある。自治体においても、最近では民間企業を参考に組織変革に取り組み、一定の成果を上げているケースが現れている。例えば神戸市は、民間企業と組んで採用制度改定や中途採用比率の引き上げを行っている。当社にも自治体からの問い合わせが増えており、「2〜3万人規模の民間企業がどのように組織づくりをしているのか教えてほしい」といった具体的なリクエストもある。

昨今の民間企業が当たり前のように取り組んでいるのが、エンゲージメントサーベイを活用した組織の「診断」と、採用・育成・制度・風土など自社の課題に対応した組織の「変革」だ。

前述のように自治体特有の組織の「病」はあるものの、自組織において具体的にどの「部」や「課」に課題があるかが明らかにならなければ、適切な打ち手の対象や取り組みの効果も分からない。だからこそ、まずは自組織の状態を「診断」することから始める必要がある。その上で、組織状態に合った「変革」への最適解を導くことが、組織変革に向けた重要なポイントである。

また、組織変革の取り組みに「正解」はない。民間企業をロールモデルとしつつも、自組織の状態に合わせて、徐々に組織変革の波を起こしていかなければ、組織風土は変わらない。
そして、取り組みを進めたら状況を改めて確認することで、職員と対話しながら継続することが何よりも重要である。

自治体の『人材確保・育成』改革③組織変革に正解なし


おわりに

今回お伝えしたように、「診断」と「変革」のサイクルを根付かせることが、採用競合である民間企業に負けない組織をつくるための一歩目となるのだ。

次回は、まず取り組むべき「診断」でよく聞く「エンゲージメント」について解説し、なぜ重要で、どのように取り組むべきかをお伝えしたい。

※本稿は、『都政新報』2025年2月7日付「選ばれる組織へ 自治体の『人材確保・育成』改革 」に寄稿した記事を再編集したものです。

※発行元の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

執筆者:依光宏太
執筆者:依光宏太
【プロフィール】 2013年、新卒で株式会社リンクアンドモチベーションに入社。 中小・ベンチャー企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。 全社アワード受賞後、プロジェクトマネジャーとして顧客の上場支援や組織変革を担当。 2021年からは地方展開を担う部門を立ち上げ、現在は官公庁のエンゲージメント向上にも取り組む。

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