
選ばれる組織へ~自治体の共通課題と解決策~ 自治体に共通する3つの組織課題
若手職員の退職や休職が増えている現状を踏まえて、総務省は「職員のエンゲージメント向上」の要請をしているが、自治体における取り組み事例はごく僅かである。
一方、民間企業では10年以上前から先行的な取り組みが行われており、当社も12,650社のエンゲージメント向上を支援してきた。また直近5年間で15の自治体に対してエンゲージメント調査を行ってきた。今回は調査結果から見えてきた、自治体の組織課題の共通点をご紹介する。ぜひ、エンゲージメント向上の取り組みのヒントにしていただきたい。
当社では、エンゲージメントを「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」と定義している。エンゲージメントは営業利益率や労働生産性の向上、退職率の低下と相関があり、事業指標と相関のある唯一の人的資本指標として注目されている。
エンゲージメントサーベイは大手民間企業で56.5%と過半数が実施する一方で、自治体ではわずか数%程度の実施に留まる。自治体はまずエンゲージメントサーベイを導入し、組織状態を把握することから着手したい。
■エンゲージメントが低い自治体の共通点
では、エンゲージメントサーベイを実施している自治体では、どのような傾向が見られるのだろうか。全体の傾向として、民間企業に比べ自治体はエンゲージメントが低い組織が多い。その要因として、次の3つの共通点が挙げられる。
①仕事のやりがいを感じていない
公共心を持った職員が減ってしまい、作業的に仕事をこなしてしまっている。また、上司も部下に対して、仕事の目的や意義を十分に伝え切れていない状態になっている。
②上司と部下の関係が希薄になっている
上司は部下へのハラスメントに怯え、コミュニケーション頻度を減らしている。また、部下もワークライフバランスを重視し、業務時間外のコミュニケーションを避ける状態になっている。
③部署間の協働意識が低い
部下に負担をかけたくないがあまり、部署同士で仕事を押し付け合っている。また、お互いにストレスにならないよう、過度に気を使い合う状態になっている。
これまで、エンゲージメント向上に向けた採用・育成・制度・風土の取り組みもこれまでご紹介してきたが、いずれもこの3つの課題に紐づいている。それらも参照していただきつつ、次回以降は組織改善の取り組みについて詳しく紹介していく。
※本稿は、『都政新報』2025年6月27日付「選ばれる組織へ 実践編 〜自治体の『人材確保・育成』改革〜」に寄稿した記事を再編集したものです。
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