日本ユニシスが実践する「エンゲージメント経営」 組織状態の可視化と「ファーストペンギン組織」が8,000人の大企業を動かす

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設立から60年以上の長い歴史を持つ日本ユニシス株式会社。
中期経営計画で大幅な変革を打ち出した同社は、どのように業界特有のマインドを根本から変え、エンゲージメント経営を実現させるに至ったのだろうか。
執行役員 業務部長である白井久美子氏をゲストに迎えて、その全容に迫る。

【プロフィール】
日本ユニシス株式会社 執行役員 業務部長 白井 久美子氏
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 川内 正直

注目を集める「エンゲージメント経営」とは

川内正直(以下、川内):今回は「日本ユニシスが実践するエンゲージメント経営とは」というテーマでお送りしますが、最初にエンゲージメントについて、また私どもが開発している「モチベーションクラウド」について簡単に説明させていただきます。エンゲージメントとは、「従業員と企業が相互理解の上で強く結びついている状態」のことを言います。従業員が満足するものを企業が提供するだけでなく、企業が従業員に期待することを伝え、従業員がその期待に応えて行動するという「双方向のやりとり」が成されていることが大きな特徴です。

組織の課題を解決し、エンゲージメント経営を実現するために、私どもはモチベーションクラウドというサービスを提供しております。モチベーションクラウドではまず組織の現状把握をした上でPDCAサイクルを回すことが目的であり、実績としては3,840社90万人※と国内最大級のデータベースを保有しています。このデータベースを基に、組織状態を偏差値的に捉えることができる「エンゲージメントスコア」によって数値化を可能にしています。エンゲージメントスコアが高ければ高いほど、組織の状態がよくエンゲージメント経営が実現できているというわけですね。また業績とも相関関係があるという分析結果も出ております。

定期的に社員のエンゲージメント度合いをはかるサーベイを行うことで組織状態が可視化・数値化され、改善のためにはどんな施策を打てばよいのかといった点が分かるようになってきます。それではここで本日のゲスト、日本ユニシスの白井さんより会社の紹介と事業内容、そして日本ユニシスがどのような取り組みをされているのかをお話ししていただきたいと思います。

エンゲージメントサーベイで組織状態を把握しながら、変革のための組織施策を実行

白井久美子氏(以下、白井氏):日本ユニシスの白井と申します。日本ユニシスは1958年に創立し、18社のグループ企業、従業員8,000名からなる企業です。クラウドやアウトソーシングなどのサービスにかかわるビジネスやネットワークサービスといった、いわゆるシステムインテグレーターの仕事を中心に60年以上にわたり事業展開してまいりました。システムインテグレーターとは、お客様から「こんなシステムを作って欲しい」という要望を伺い、実装して納める受注型の仕事です。

しかし、それでは今後お客様と一緒にビジネスを作っていくことや新しい未来を創造していくことができないのではないか、という危機感が社内で生まれ始めました。お客様と共に社会課題を解決できるような企業を目指すためには、思い切った変革が必要で、そのためにはビジネスモデルも変えるということを中期経営計画で設定しました。

具体的な取り組みのひとつとして、VPP(バーチャルパワープラント)の実証事業に参加しています。家庭やビルなどの小規模な蓄電を一括制御して有効活用し、ひとつの仮想発電所のように機能させる仕組みの構築を目指すものです。他には電気自動車の充電スタンドを高速道路などに配備してネットワーク化する充電インフラシステムサービスや、保育の質向上を目的としたクラウド型保育支援サービスにも取り組んでいます。

川内:長い歴史を誇る日本ユニシスさんですが、人事の取り組みにおいてもさまざまな施策を推進されていらっしゃいます。詳しくお話しいただけますでしょうか。

白井氏:まず中期経営計画「Foresight in sight® 2020」では、ビジネスエコシステムを作る中核となり、デジタルトランスフォーメーションを実現するプラットフォームを提供することで、お客様やパートナーと共に社会を豊かにする価値を提供し、社会課題を解決する企業になることを目指しています。この大きなビジネス変革に伴う、もうひとつの大きな柱として「風土改革」、具体的には「組織・人財改革」「働き方改革」「ダイバーシティ推進」そして「業務プロセス・制度改革」を推進しております。

日本ユニシスグループにおけるエンゲージメント経営では、中核として組織改革・人財改革・働き方改革があります。どれかひとつだけを実行するのではなく、まずエンゲージメントサーベイを実施し、そのスコアをベースに同時並行的に施策を推進しているのがポイントですね。グループ全体でサーベイを実施しているので、どの組織がどのような状態なのかをすべて把握した上で施策を推進していくことが可能になります。

弊社の代表的な施策としては、例えば「ユニシスCDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)」。キャリアパス・スキルディクショナリをもとに従業員のキャリアデザイン・キャリア開発・育成そしてレビューを行い、この1サイクルを1年かけて回して、翌年以降もずっと繰り返していきます。

また、コーポレートステートメント「Foresight in sight」の頭文字をとって「F-POINT」という社内プラットフォームの運営も行っています。例えばお客様への提案を支援したときや、プレゼンを成功させたときなどに10ポイント、といった形で、従業員同士、マネジャー同士、あるいは経営陣と従業員で、感謝の気持ちとして「F-POINT」を贈り合います。社長からもポイントをもらえることもあります。ちなみにポイント管理のシステムにはブロックチェーン技術を使用しています。

他には働き方改革として「Connected Work™」を提唱しています。自宅や病院など、どこでいつ働いても社会と繋がるようなプラットフォームの提供により、働き方を「見える化して、つないで、広げていく」コンセプトです。
具体的にはテレワークを進めていったり、フリーアドレスにしたり柔軟な働き方ができる環境を整備し、さまざまなIT ツールやサービスを組み合わせ、業務効率を図っています。

部門のエンゲージメントスコアと業績は連動して向上

 

白井氏:弊社では毎年6月に全社約8,000人を対象にしたエンゲージメントサーベイを行い、その結果を受けて特定部門を対象に業務改革実践ワークショップを行っています。このワークショップには対象部門のマネジャーが参加し、どのようなアクションプランを実行するのか宣言してもらいます。実践した結果はワークショップで共有し、情報交換や見直しを行った上でまた実践する。また、半年後にもう一度サーベイを実施し、どのようにスコアが変動したか、仕事の成果や効率性と連動しているかを見ています。

結果としてエンゲージメントスコアは着実に上がっていき、業績も連動しています。間接的ではありますが、スコアを上げることはやはり業績指標の達成において非常に貢献していると考えております。

具体的なアクションプランとしては、例えばお客様のもとに常駐するシステムエンジニアでも本社従業員と円滑にコミュニケーションをとれるよう、サイト拠点間のコミュニティ企画・立ち上げなどを行いました。また先ほどもお話ししましたが、お客様と一緒に新しいビジネスを作っていくためのビジネス変革の取り組みも行いました。これらを特定の部門を対象に実施したところ、スコアが半年間で大幅に上がっていることを評価していただき、2017年に「Moivation Team Award」を受賞しました。この部門は約750名が在籍していますが、風土改革が実現されて業績も着実に向上しています。

会社を変えるにはまず「ファーストペンギン組織」を生み出す

川内:ここからはいくつか質問をしたいと思います。まずは取り組みの「成功の定義」として、KPIをどう設定したかという点をお伺いします。どのような定量的な目標を置きながら取り組まれていたのか、ということですね。

白井氏:中期経営計画には当然業績を達成するという全社目標があるので、掲げている営業利益率を達成することは明確な「成功の定義」のひとつでした。かつ二つ目の「成功の定義」としては、中期経営計画を掲げる前の年度から3年後に生産性(営業利益÷従業員数)が30%アップしていること。正直、最初は高すぎる目標ではないかと思っていましたが、施策を進めるうちに手ごたえもあり、スコアの値も変わってきて「これならいけそうだ」と感じられるようになりました。三つ目の「成功の定義」はモチベーションクラウドのエンゲージメントスコアを一定の値まで高める、という目標を設定していました。

川内:具体的・定量的な目標を経営にコミットしながら、改革を推進されたということですね。

白井氏:人財育成で難しいのは、短期的な目標を掲げてもなかなか成果を出しづらいということ、数字で経営にコミットすることです。しかし経営層を納得させて施策を実行するには、具体的な目標や数字が求められます。

川内:経営陣をどのように説得されていたかについても聞かせて下さい。

白井氏:エンゲージメントを高めるには、ただ施策を実施するのではなく、戦略を練ることが重要です。今まで働いてきた環境や慣習を変えるのに抵抗がある人は多いので、全組織を一度に変えるのではなく、お手本となる「ファーストペンギン組織」をつくる。そしてその組織のトップである役員に、執行役員会で「私はこういうことをやります」と宣言してもらいます。経営層が直接宣言をし、そして現場も巻き込んでいきながら、あとはその「ファーストペンギン組織」の改革が成功するよう、支援を行っていきます。そこから全社へ展開させ、最終的な結果はサーベイで確認します。役員が先導して実行することで組織や働き方がよくなった、という好事例が全社を動かすと思います。

川内:いきなり全体ではなく、まずターゲットを絞って改革を進めると。成功している企業では、やっぱり社内で成功事例を伝えていくのが上手いですね。最後の質問として、どのように現場を巻き込んでいったかについても教えてください。

白井氏:「可視化」というところに非常に重点を置いています。例えば働き方改革の一環で「残業メリハリ活動」というものがあり、1ヶ月あたりの残業が5時間以内の月を年間1回以上は作らなければならない施策。全社員の勤務データを集計してグラフにし、どこの部が達成していて、どこの部が遅れているかを可視化できるようになっています。

人事制度の見直しも行い、働き方改革に関する貢献度合いもマネジメントの評価軸に加えました。褒めて伸ばす文化を醸成していけるよう、マネジメント層にコーチング研修を行うなど、マネジメント文化をマインドから変えていったのは、現場に大きな影響を与える施策のひとつだと思います。

川内:可視化と管理職のマインドの変化に注力されたと。ありがとうございます。会場の方からもぜひ質問をお受けしたいなと思いますが、いかがでしょうか。

 

質問者:エンゲージメントと業績の向上について、業績が良くなったからエンゲージメントも上がったということも考えられると思います。結果なのか原因なのかわかりにくいところがあると思うのですが、業績が上がった理由として明確なストーリーがあったのでしょうか。

白井氏:結果なのか原因なのかということですと、仰る通り両方考えられると思います。最初は「こんなことやって業績よくなるの?」という反応もありましたが、先ほどのファーストペンギン組織のように変革を目に見える形で進めていくと、社員の意識も変わってきます。それがサーベイの結果にも出てくると、「もっと良くしよう」と変革が加速します。そこにたどり着くまでの、最初のPDCAを1回転させるところですごくパワーが必要になりますね。変革が進めば業績指標や生産性、女性の管理職の数など、いろいろな変化が目に見えてきます。そうした部署は連動してエンゲージメントも上がっているというように、その繰り返しをどうやって作っていくかがポイントなのかなと思います。

川内:「上手くいっているから、このまま信じて推進すればいい」と言える材料として、数値・定量的なものを提供し続けたというのがポイントですね。

組織状態を数値化し改善のためのPDCAを回していくことが、エンゲージメント経営の肝

川内:それでは最後、会場の皆さんに向けて一言コメントをお願いします。

白井氏:弊社はグループ18社・8,000人に対して毎年サーベイを実施しておりますが、以前は2年に1度の実施でした。結果は経営会議などにも報告されるのですが、当初は具体的な施策が十分には伴っていませんでしたし、施策を実行した後の結果を活かす取り組みも不足していました。それを中期経営計画にあわせてPDCAのサイクルを実行したことで、変革を推し進められました。

やはりサーベイを行った後には、「何をやったらどう変わるのか」を可視化すると従業員に対しても経営陣に対しても非常に励みになると思います。更にはそれが業績指標や株価に連動してくれば、経営陣がもっと加速するよう号令をかけてくれます。そのようにして大企業も風土・文化・経営を変えていくのが、エンゲージメント経営の肝になるのではと思っております。

川内:やはりPDCAサイクルをしっかりと回していくこと、自分たちの取り組みが正しいと信じられることがポイントになってきますね。本日は貴重なお話どうもありがとうございました。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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