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【後編】売上5兆円、従業員17万人のグローバルメーカー、株式会社デンソーの「強いチームづくり」 〜必勝法のない時代に求められる、これからの人事〜

連結売上収益5.4兆円、従業員17万人を超える世界屈指の自動車部品メーカーである株式会社デンソー。同社では、創業以来受け継がれてきた価値観や信念を明文化した「デンソースピリット」を、全社員の行動指針にしていますが、その一つが、「総智・総力」。つまり「チームの力」です。

今回の記事では、デンソーにおける「強いチームづくり」の秘訣や、そもそもなぜチームを大切にする組織風土が根付いているのか、について、デンソー人事部長 加藤晋也氏に、リンクアンドモチベーション 大手企業向けモチベーションクラウド事業責任者 大澤雷大がお話を伺いました。

【プロフィール】
株式会社デンソー 人事部長  加藤 晋也氏
株式会社リンクアンドモチベーション 大手企業向けモチベーションクラウド事業責任者 大澤 雷大

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時間は有限な資源 チームづくりに時間を投資するためにできること

株式会社リンクアンドモチベーション 大澤 雷大(以下、大澤)

デンソーにおける「強いチームづくり」の第一歩は「対話」ということでしたが、難しさを感じるところはありますか?

株式会社デンソー 加藤 晋也氏(以下、加藤氏)

一番は時間の捻出です。時間は有限ですから、対話に投資してもらう分、何かを減らさないといけません。幸い、働き方改革の流れもあり、時間の有効活用は全社の関心事です。

今まで遅れていた分、ITのアップデートを急速に進めており、テクノロジーの力を借りて時間を捻出しています。他にも、今一度、必要なことと不要なことを見直しています。

社長が口癖のように「やめることを決めよう」と言い続けているのですが、不要なものはきっぱりと絶つことを全社的に奨励しています。意思決定プロセスのシンプル化についても改革しています。

職場でも「これは本当に必要なプロセスなのか?」という声が聞こえるようになってきました。全社的に時間に対する意識は高まっているように感じます。

大澤:意思決定プロセスのシンプル化とはどのようなことでしょうか?

加藤氏:これまでは、決議事項に対して意思決定者の人数が膨れ上がっている職場がありました。それを明確に3段階で決めることを徹底する、「クイック3(スリー)」に取り組んでいます。

大澤:なるほど。3段階で決めることが徹底できると、階層間の意思疎通が向上しそうですね。今、デンソーさんの一部署でモチベーションクラウドをご活用いただいていますが、そこでも、確かに「階層間の意思疎通」における期待度と満足度のギャップが表れていたと記憶しています。

リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドのデータベース (※5,020社、116万人以上の国内最大級のデータを保持)によると、

日本企業で社員のモチベーションを下げている要因になっている第一位が「階層間の意思疎通」が不十分なことです (※参照:ホワイトペーパー『日本企業が取り組むべき“働き方改革”』) 。

特に、歴史のある企業様ほど顕著に出るのですが、まさにそこへの取り組みを全社的にも開始されているのですね。

自動車業界 変革の時代に求められる、新規と既存の両立

大澤:対話を深めていくほどに、社員の皆様からの難しい問いも増えるのではないでしょうか?

加藤氏:そのとおりです。そのため、管理職への支援を強化していくことが重要です。しかし、これがなかなか難しい。

今、自動車業界はCASEの時代(※注:「Connected:コネクティッド化」「Autonomous:自動運転化」「Shared/Service:シェア/サービス化」「Electric:電動化」の4つの頭文字をとったもの)と呼ばれており、変革の時代を迎えています。

そのため、どんどん新しい技術が出てきていますが、だからといってガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどがすぐになくなるわけではないんです。

つまり、電動化対応や水素社会、自動運転などの領域は先行投資しないと将来生き残れない一方で、ガソリンやディーゼルの既存技術も守っていかなければいけない。

新規技術の領域と既存技術の領域では、求められるスキルが全く異なっているんです。既存技術の領域は経験がモノを言う世界、逆に新規技術の領域はむしろ経験などない方がよい。

大澤:新しいことに挑戦するには、若くて経験がない、過去慣性にとらわれない人の方が適任ですよね。

加藤氏:そうなんですよ。新規領域と既存領域では、必要な人材もタレント・マネジメントの手法も全然違うんです。成熟した製品、つまり既存領域の製品というのは、ピラミッド型の組織でうまくマネジメントできます。

しかし、新規領域の製品、特に先端領域は、フラット型の組織の方が良い。だからといって、それぞれの事業部毎に人事制度を作っていけば良いかというと、そうでもありません。

私たちの会社は事業領域が広く、既存領域でも造っている製品ごとに職場風土が異なりますし、新規領域の中でも個々人の価値観は異なります。

制度を量産するのはきりがないですし、不毛です。多様なニーズに手数以外で応えていく手腕が、人事も経営陣も求められています。

大澤:悩ましい状況ですね。何か方向性はありますか?

加藤氏:私たちも手探りではありますが、デンソーという会社のアイデンティティを保ちつつも柔軟性のある制度を用意し、それを社員のニーズに合わせて使いこなせるマネージャーを育てる、というのが大きな方向性です。

例えば、管理職の教育。管理職として必要最低限のベースはしっかりと培いながら、追加で必要なスキルアップは個々人が選択する仕組みを考えています。ベースの育成は、私たちが今までもかなり力を入れてきた部分です。

例えば、階層別の教育体系はものすごくしっかりしています。その仕組みの中で、デンソー社員として必要なスキルや考え方が標準化されていき、課長になるころには大体皆が同じような発想、仕事の進め方、問題解決スキルを持つようになります。

既存領域には、これが生産性を高めることに繋がっていました。

ただ、時代が変わってきて、そのような型にはまった方法だけでは、問題解決をするのが難しくなってきているのが現状です。そして、それはマネージャーたち本人が一番感じとっています。

直近でも、自分たちは厳しく叱られて育ってきたため褒めることが苦手だ、という意見がありました。同時に、部下のアンケートからも「ポジティブ・フィードバックを受け取る割合が少ない」という声も聞こえてきました。

そこで早速、希望者を募って実践的な「褒める研修」を開催してみました。結果的には非常に好評だったため、追加開催もしています。他のテーマでも幾つか開催しており、効果的だったものは継続し、不評だったものは廃止しています。

大澤:マネージャーの方々には、継続して学び続けることが求められますね。

加藤氏:もちろんです。それは全ての社員に言えることですが。管理職に期待することは、その学びを組織の発展や部下育成に活かすことですね。

人事もニーズに応えていくだけでは受け身になるので、マネージャーを刺激するようなメールマガジンの配信も始めています。

不確実な時代こそ、人事も社員と対話を

大澤:お話を伺っていると、上司部下だけでなく、人事と社員の対話も大切にされているように感じました。

加藤氏:それはとても大事にしています。ビジネスの不確実性があがっているのと同時に、人事の領域においても必勝法がなくなりました。事業戦略も今までの十倍速でアップデートされていきます。

最初から長期計画を決めきってしまうのではなく、そういった変化に機敏に反応し、同時に社員の声をよく聴き、何度も軌道修正をして進んでいく。これが、これからの人事の姿だと思っています。

大澤:そうですね。今、組織のモノサシとしてモチベーションクラウドも使っていただいていますが、実態をちゃんと見て、プランして、実行してチェックアクションして、というサイクルを継続的に回していく必要がありますね。

あとは、「失敗を恐れずにやってみる」ということも大事だと思います。私たちリンクアンドモチベーションでも、100%組織施策が成功するわけではありません。

施策を一つずつやりきって、トライ&エラーを繰り返してくのが大事だと思います。

加藤氏:同感です。その繰り返しの中で組織が強く成長していくのだと思います。多様性がもたらす難しさをお話ししてきましたが、活かせればダイバーシティは大きな力になります。

イノベーションには欠かせないと言っても過言ではありません。だからこそ、過渡期は大変でも、前向きに取り組んでいきたいと思っています。

大澤:デンソーさんのようなグローバルリーディングカンパニーが果敢に挑戦されていらっしゃるということがわかり、とても勇気づけられました。今回は貴重なお話、ありがとうございました。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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