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ベストモチベーションカンパニーアワード2021(大手)レポート 4年連続日本一!佐竹食品グループ モチベーションカンパニーづくりの秘訣とは

「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア (従業員エンゲージメントの偏差値) が高い企業を表彰するイベントです。2021年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー部門」の2部門制で表彰を行いました。今年度、「大手企業部門」受賞企業のなかでも、特にエンゲージメントスコアが高く、かつこれまでのスコアの変化度合いが大きい、佐竹食品株式会社の代表取締役 梅原一嘉氏をお招きしてトークセションを開催しました。

「モチベーションカンパニーづくりの秘訣とは」をテーマに、エンゲージメントを大事にするようになったきっかけ、新型コロナウイルスの感染拡大による影響、コロナ禍におけるエンゲージメント向上の取り組みなどをお話しいただきました。

【イベント実施日】
 2021年3月9日

【スピーカープロフィール】
・佐竹食品グループ 代表取締役社長 梅原 一嘉 氏

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 川内 正直

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「手を打たなければ会社が危ない」という危機感がエンゲージメント向上のきっかけに

リンクアンドモチベーション 川内:佐竹食品グループ様は、総合食料品スーパーマーケット「satake」、生鮮特化型業務スーパー「TAKENOKO」を大阪・関西圏中心に展開されています。梅原様が代表に就任されてからは業績が右肩上がりに伸び、近年はエンゲージメントスコアも非常に高い水準で推移しています。

最初に、なぜエンゲージメントを大事にしようと思われたのかを教えていただけますか。

佐竹食品 梅原氏:僕はもともと、理念やビジョンには大反対だったんです。毎朝、朝礼で念仏のように理念を唱えて売上が上がるなら世話はないと思っていましたからね。

そんなとき、ある店舗に行ったら、野菜売り場に灰色の商品が置かれていました。「灰色の野菜って何だろう?」と近づいてみると、カビの生えたアスパラガスだったんです。しかも「1束10円」の値札が出ていました。すぐに主任を呼んで理由を聞いたら、「安かったら売れますよ」と言うんです。そのときに、何か手を打たなければ会社はどんどんおかしくなっていくと、大きな危機感を覚えました。

ちょうどその頃、リンクアンドモチベーションさんに出会い、初めてエンゲージメントというものを知りました。「エンゲージメントを上げるために大切なものは何ですか?」と聞いたら、「理念です」と来たわけです。

「それ、嫌いなんだけどな」と思いながら話を聞いていると、「梅原さんは、理念もビジョンもすでにお持ちですよ」と言われました。カビの生えたものを安く売るのではなく、美味しいものを安く売ることが大事だとか、普段から意識している「商売において大切なこと」をきちんと言葉にしたものが理念やビジョンなんですと言われて、腑に落ちたんです。従業員が理念に共感して会社とつながっている状態をつくりたいと思い、それからエンゲージメントを大事にするようになりました。


「日本一楽しいスーパー」をつくりたい

佐竹食品 梅原氏:弊社は2年に1回、全社員を集めて「ありがとう総会」という社員総会をおこなっているのですが、第1回のときに初めて「日本一楽しいスーパーをつくりたい」という理念を全社員の前で語りました。そのときを境に、従業員の理解が得られたように思います。

リンクアンドモチベーション 川内:今、簡単にお話しされていますが、理念を浸透させるにはかなりの時間を要したのではないでしょうか?

佐竹食品 梅原氏:そうですね、理念を浸透させるのには何年もかかっています。僕はよく「日本一楽しいスーパーはこういうスーパーだ」という話をするのですが、それを聞いた年配の従業員に「やっぱりそうですよね。想いは変わってないですね」と言われたことがあります。そのとき、同じことを何度も発信し続けることってすごく大事なんだなと実感しました。


コロナ禍でも、スーパーは止まってはいけない

リンクアンドモチベーション 川内:2020年のコロナ禍では、事業や組織にどのようなインパクトがありましたか?

佐竹食品 梅原氏:いわゆる「巣ごもり需要」で、人々がスーパーくらいしか行くところがないという状況でしたから業績は伸びました。ただ、別のところでいろんな問題が起きましたね。店内に人が多ければ「密になっている」とお叱りの電話が鳴りますし、「スーパーで働くのは危ない」といった家族の反対でナイトクルー(夜間のアルバイト)やパートの方の退職者も増えました。

ただ、僕はずっと「日本一楽しいスーパーにはライフラインとしての使命もある」と伝え続けてきました。ですから、特に理念が沁み込んでいる古いメンバーは「我々が止まってはいけない」という志を持って業務に取り組んでくれました。それは非常に嬉しかったことですね。

コロナ禍では、お叱りもたくさんいただきましたが、応援してくれるお客様もたくさんいらっしゃいました。「これ、レジの方で使ってください」と、マスクを5枚入れたジップロックを持ってきてくれたお客様もいたりして、すごく勇気づけられましたね。


理念浸透を続けたことで、アルバイトが「働いていて楽しい」と言ってくれるように

リンクアンドモチベーション 川内:佐竹食品様は、コロナ禍においてもエンゲージメントスコアが少しずつ上がっていますが、具体的にどんな取り組みをされていたのでしょうか。

佐竹食品 梅原氏:コロナ禍でも、理念などのメッセージはきちんと伝えていく必要がありますので、昨年は「ありがとう総会」をオンラインでおこないました。

また、「ありがとうTV」という社内向けの動画配信をスタートして、月1~2本くらいのペースで配信しています。表彰された従業員に密着した動画や、うちの専務に密着した動画、お客様に「我々のスーパーをどんなふうに見ているのか?」を取材した動画など様々ですが、今までと違った情報発信ができており、従業員からも好評です。

また、コロナ以前は従業員20~30人を集めて研修をしていたのですが、コロナ禍ではこのような集合教育ができません。ですから、派遣型教育に切り替えました。教育課のメンバーが各店舗を回り、1対3や1対4で、会社の理念や大切にしたいこと、スキルアップしてもらいたいことなどを従業員に直接伝える研修です。

コロナ禍では、高校生・大学生を中心としたナイトクルーに研修をおこなったのですが、彼ら・彼女らはすごくモチベーションが高くて、嬉しかったですね。ある高校生のナイトクルーに「スーパーは人気産業ではないけど、うちが日本一楽しいスーパーをつくることで人気産業にしていきたい」という話をしたら、彼は「えっ?人気産業じゃないんですか?僕たちめっちゃ楽しいですよ」と言うんです。そのときは、地道に研修をやってきて良かったなと思いましたね。

▼佐竹食品グループの現場取材ムービーはこちら


目の前の損得ではなく、理念で商売をすれば結果がついてくる

リンクアンドモチベーション 川内:最後の質問になりますが、エンゲージメントの高い会社をつくる秘訣についてどのように思われますか。

佐竹食品 梅原氏:コロナ禍を経験したことで、損得ではなく良し悪しで商売をしていかなければいけない時代になったのかなと思うようになりました。

たとえば目の前に、理念とはズレるかもしれないけど儲かることがあるとします。弊社は理念の一つとして「正直」であることを掲げているのですが、もし僕が「ちょっと正直じゃないけど儲かるからいいや」というジャッジをすると、きっと従業員は違和感を覚え、クエスチョンマークが浮かぶでしょう。そういう意味でも、やはり損得より理念を優先して商売をすることがいちばん大切なことだと思っています。

ナイトクルー向けの研修をする際は、自分自身がナイトクルー役になってすべての研修を受けてみて、修正を加えながらプログラムをつくり上げていきました。やはり、そこまでしないとエンゲージメントは上がりません。うちの場合は、やはり僕が先頭に立って取り組んでいかないと上がらないのかなと思っています。

もう一つ言うなら、やり続けることではないでしょうか。エンゲージメントサーベイってすごく怖いんです。いつもドキドキしますし、結果を見たら腹が立つこともあります。ですが、出た数値を一つでも改善できれば、従業員がもっと楽しく働けるようになるわけなので、そこを見つめながらやり続けることが大切ですよね。


経営トップの100歩よりも現場100人の1歩が大事

リンクアンドモチベーション 小笹:佐竹食品様のお話を伺っていて、「経営トップの100歩よりも現場100人の1歩が大事」というフレーズを思い出しました。現場で働く一人ひとりの「あと半歩」「あと1歩」の工夫や思考、行動などが組織全体の強みになるんだとあらためて感じました。

大手企業になるほど、組織の「分化」が進んでいきます。階層も、役割も、職種もどんどん分化していきます。10~20人のスタートアップなら、分化が起きても経営トップのパーソナリティなどで「統合」することができるでしょう。しかし、従業員数が100人を超え、1,000人、2,000人となってくると、ますます分化が進み、大きな力がなければ統合できなくなってきます。この統合する力になるのが理念やビジョンですし、ひいてはそれがエンゲージメントの向上にもつながっていくのだと思います。

佐竹食品様も規模の拡大にともない組織の分化が進んでいたはずで、従業員数が増えていくことに対しての怖さもあったと思います。ですが、分化の度合いに合わせて、現場100人の一歩、現場1,000人の一歩を引き出すような取り組みをされてきました。それが、今日の佐竹食品グループをつくっているのだと実感させていただきました。


ワーカーを探しているのではなく、仲間を探している

リンクアンドモチベーション 川内:続いて、質疑応答に入ります。「採用活動において、自社のエンゲージメントの高さをどのようにアピールしていますか?」という質問が届いています。

佐竹食品 梅原氏:一応、情報として公開はしていますが、アピールと言うほどのことはしていませんね。というのも、学生のみなさんは「本当のところはどうなんですか?」という実態を知りたがります。ですから今は、現場を見てもらっています。実際に店舗に行って、そこで働く従業員とお客様の関係性や、従業員同士の関係性をリアルに見てもらうことで、多くの学生がエンゲージメントの高さを感じてくれているのかなと思っています。

また、採用活動をする際、僕は学生に「ワーカーを探しているのでなく、仲間を探している」と伝えています。仲間が増えていかないと日本一楽しいスーパーは実現できないと思っているので、そういった思いに共感してくれる人に入ってきてほしいということは必ず伝えていますね。


エンゲージメントを測っていなければ、今のうちの会社はない

リンクアンドモチベーション 川内:ありがとうございます。最後に、モチベーションカンパニーをつくりたいという方々に向けて、一言ずつお願いします。

佐竹食品 梅原氏:2008年にリンクアンドモチベーションさんと出会い、エンゲージメントを測り始めましたが、腹が立つこともありましたし、やめようと思ったこともありました。ですが今は、続けてきて良かったなと心の底から思います。もし続けてこなかったら、今のうちの会社はないと思います。

つい先週も、エンゲージメントスコアが出るのが怖くて、下がっていたらどうしようとドキドキしながら結果を聞きました。エンゲージメントを求め続ける限り、こういうストレスがなくなることはないでしょう。ですが、本当に従業員が楽しく働ける組織を目指したいなら、取り組む価値は大きいと思います。

リンクアンドモチベーション 川内:最後に小笹さん、一言お願いします。

リンクアンドモチベーション 小笹:近年、エンゲージメントという言葉が徐々に市民権を得ています。おそらく時代が逆戻りすることはなく、今後はますます非財務指標としてのエンゲージメントスコアは重要度が高まっていくはずです。投資家からも求められる指標になりますし、就職活動・転職活動をする方からも注目される数値になろうかと思います。

私どもも、もう一度原点に立ち返り、モチベーションカンパニーを目指す多くの企業に貢献できるよう尽力して参りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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