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組織戦略で掴み取った、Bリーグ初代チャンピオン。 プロバスケットボールチーム、リンク栃木ブレックス優勝の舞台裏。

Bリーグ初代チャンピオンに輝いた「リンク栃木ブレックス」。チーム創設から今までの約10年間、チームづくりに情熱を注ぎ続けてきた人物が、取締役副社長の藤本光正氏だ。

「栃木では無理だ、やめておけ」という逆風の中、マンションの一室で生まれたチームは、いかにしてチャンピオンへと駆け上がったのか。

日本で一番有名なバスケットボール選手:田臥勇太選手の獲得をはじめ、低迷期を経てから現在まで右肩上がりに黒字が続く球団経営のエピソードから見えてきたのは、スポーツという枠にとどまらない、組織づくりにおける経営者の苦悩と喜びだった。

組織戦略によって実現されたブレックス優勝の軌跡を綴った、前編。

株式会社栃木ブレックス 取締役副社長 藤本 光正氏

インタビュアー
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 モチベーションクラウド事業責任者 麻野 耕司

取材日
2017年9月1日

愛されるチームは、強くなる。

麻野 耕司(以下、麻野):まずはBリーグ初代チャンピオンおめでとうございます。全社をあげて応援していました。優勝の瞬間は社内も湧き上がりました。優勝できる強いチーム・組織をつくれた要因はなんだったのでしょうか。

藤本 光正氏(以下、藤本氏):応援、本当にありがとうございました。そうですね、昨シーズンはBREX NATION(ブレックスという国家)という言葉を掲げて戦ってきたんですが、まさにそれが体現できたからだと感じました。

BREX NATIONというのは、リンク栃木ブレックス(以後、ブレックス)というチームを中心としながらも、ファンの方々や行政、メディアや協会・スポンサー、様々なステークホルダーをまとめた呼び方ですが、本当にみんなで一体となって戦ってきた結果の優勝という感覚でしたね。

ファンやサポートしてくれる人々の熱気を、私をはじめとした運営側だけではなく、選手も感じていたと思います。相手チームも、その熱気に圧倒されているように見えました。

今回のチャンピオンシップは、準々決勝と準決勝は栃木で、ファイナルは代々木で開催されたんですが、準々決勝からほとんど全ての試合が接戦につぐ接戦で、本当に奇跡的な試合展開でした。

私も長くバスケットボールに関わっていますが、過去に経験したことがないような試合展開、勝ち上がりでした。これは偶然起きたものではなく、ブレックスを応援してくださった多くの人が生み出した熱気があのムードをつくりだしたのだと思います。

圧倒的なホーム感の中で、ブレックスの選手たちは一層気合が入っていただろうし、相手選手は相当やりづらかったと思います。

これまで見たことがない位に、一つひとつのプレーに熱がこもり迫力がありました。運営している側なのに、プレーをしている選手を見て涙が出てきてしまうような、そんな気迫に包まれた時間でした。

そんな風にファンをはじめとした関係者を巻き込めたことで、選手たちも組織としてまとまりました。外部のファクターを使って、内部のモチベーションを上げるというとイメージしやすいでしょうか。

ブレックスは「強く愛されるモチベーションあふれるチーム」という理念を掲げています。

「強く」というのは分かりやすくて、日々の練習をはじめとしたオンコートのことですが、一方で「愛される」ということも、チーム設立当初からずっと追求してきたことでした。

ブレックスは、これだけ多くの人たちに支えられているチームなんだということが、BREX NATIONという形を通じて見えた。「愛される」ということが「強く」に大きな影響を与えるんだということを実感したシーズンでした。

スポーツチームの経営は、チームを強化する機能とファンを集める機能が分離していて、互いの間に溝ができてしまうケースも珍しくありません。

でもやっぱりそうあるべきではない。ファンを大切にし、増やしていくことはチーム強化にもつながる。もちろんその逆も同じです。そういったことを最も強く感じた優勝でした。

スポーツビジネスの経営と、チームの強化は強くリンクしている。

麻野:ブレックスは今回でトップリーグでは2度目の優勝だと思います(2009-2010シーズンに、JBLで優勝)が、前回の優勝との違いはありますか。

藤本氏:まず、今回の優勝によって、経営とチームの強化はリンクしていることをより強く実感しました。当たり前のことですが、チームが強くなるほどに魅力が高まる。

つまりは価値が高まることで、売上も上がって、選手の強化に再投資ができる。するとまた魅力が高まって、売上げアップに繋がり・・・。このように循環するものです。

正直なところ、初優勝のときは「勢い」という要素も大きかったと思います。チーム設立3年目の新参者が優勝できるなんて、誰も思っていなかったと思うし、私たちにも絶対的な自信はなかった。

だからこそ、前回優勝した後の経営には苦労しました。周囲の期待が上がって、その期待を超えなければいけないけれど、経営資源が追いつかないという実態がありました。

しかも、追い打ちをかけるように、2011年の東日本大震災に見舞われました。震災の影響で、ホームゲームが4試合分なくなって、数千万円の損失が出ました。

栃木県も被災地だったので、ブレックスが地域をなんとかして元気付けなくてはいけない立場だったにもかかわらず、ブレックス自体も相当なダメージを受けてしまったんです。

麻野:観客動員数も低迷している時期ですね。

藤本氏:そうですね。暗黒期と言いますか。プレーオフに出られない状態が3シーズン続いたこともあって、チームの士気も下がってフロントの経営もどんよりとしていて。資源がない・売上が伴わないと、こんなにも環境が悪くなっていくのかということを肌で感じました。

生々しい話ですが、売上が厳しくなると、プロモーションのために選手をイベントやファンとの交流等に頻繁に駆り出さなければならなくなります。

プロスポーツ選手にとっては体を休めることも大切な仕事なので、休み返上の稼働が増えると、チーム強化という観点では利益相反になります。選手としては「勝ちたい」のでバスケに集中したい。

しかしフロントとしては売上の確保のために、選手にもっとプロモーションに協力して欲しい・・・ブレックスでも、そういう状況が続き、フロントとチームの間に溝ができてしまっていました。

転機になったのは、チームメンバーの変更です。優勝後は、優勝メンバーをなるべく残し続けるという体制に固執していたところもあったんですが、2013年に一気に選手の若返りを図りました。

若手〜中堅の新メンバーとともに、「選手個々も成長し、チーム全体も成長していく」というストーリーを描き始めることができました。

会社経営の方も2012年に数千万円レベルの経常赤字を出して、経営的にかなり厳しい状態に一度転落しましたが2013年に回復し、それからはずっと現在まで黒字でこれています。

こういった辛い時期を乗り越えての優勝だったので、前回の優勝のときよりも何十倍も嬉しく感じました。

長くブレックスに関わってきた私はもちろん、在籍が長い田臥選手(キャプテンを務める田臥勇太選手)も同じ気持ちだったと思います。

日本のバスケ界自体が、FIBA(国際バスケットボール連盟)から国際試合への出場停止という制裁を受けて、混沌としていたことを考えると、Bリーグが開幕し未来を向いていこうという機運が高まっている中で優勝できたことは、非常に大きな意味があったと思います。

麻野:チームの新陳代謝が、転機になったということですね。

藤本氏:そうですね。良い意味で、チームの過去を知らないメンバーが加入してきたことが大きかったと思います。同じメンバーで長くやっていると、「以前は良かった」という、過去の良い時との比較を、どうしてもしてしまいます。

でも新しいメンバーは、「今年は絶対にプレーオフに出よう!」「次は優勝を狙おう!」と、前だけを見ていきますから。

麻野:企業の組織変革と同じだなと思います。モチベーションクラウドのスコアが上昇し、組織変革に成功しつつある経営者に、何がポイントだったのかを聞くと、「未来のことを話すルールにした」と話すことがあります。

それから、組織を変えたいときに未来のことを話すこともそうですし、「陰口・悪口禁止」ということも有効だったりします。飲みの場でしか言えないことは意味がないですから。

「批判的な意見でもいいから、正面切って提案してきてください。それができないのであればここから去ってください」というメッセージは、必要です。

一人ひとりがどのような影響を及ぼしあっているのかを認識することは、組織づくりにおいて非常に重要です。自分が周囲に発信する影響力を適切にコントロールしなければ、組織は良くなっていきません。

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本編の後編となる『メンバーが変わっても、組織のDNAは変わらない。ブレックス「らしさ」で魅力のあるチームづくりを目指し続ける。』はこちら

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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