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エンゲージメントは業績を高めるのか-66万人のデータから明らかになった2つの関係-

社会システム論や心理学、行動経済学など各種の学術的理論と、実践的な経営コンサルティングの知見を融合させた独自技術=モチベーションエンジニアリングを進化させ、

それに基づく経営技術や商品サービス開発を行っている、リンクアンドモチベーショングループの唯一の研究機関:モチベーションエンジニアリング研究所。

今回は慶應義塾大学ビジネス・スクール(KBS)岩本研究室との「エンゲージメントと企業業績」に関する共同研究結果をレポートする。

【執筆者】
モチベーションエンジニアリング研究所 所長 大島 崇

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「エンゲージメント」は労働生産性向上のための最重要課題

昨今、政府主導の働き方改革推進の流れにおいて、長時間労働の撲滅といった量に関するテーマだけではなく、労働生産性向上といった質に関するテーマにも注目が集まっています。

そして、労働生産性向上のための最重要課題として、従業員との「エンゲージメント」が取り上げられることが増えてきています。エンゲージメントとは、言いかえれば「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」のことです。

リンクアンドモチベーションでは、これまで約2,700社660,000名に対してエンゲージメント調査を行ってきました。

労働人口の減少・人材の流動化が進む現在、従業員に選ばれ続ける企業かどうか、従業員との相思相愛状態を維持できる企業かどうかが、業績だけに留まらず、企業の存続自体に影響する環境となっています。

だからこそ「エンゲージメント」に注目が集まるのでしょう。

今回、弊社の開発した組織サーベイである「エンプロイーエンゲージメントサーベイ」のデータを活用し、KBS岩本研究室との共同研究により、エンゲージメントは企業の業績に寄与しているのかどうかの分析を行いました。

企業としてエンゲージメント向上に投資する価値があるのか、その判断の一助となれば幸いです。

データから明らかになった「エンゲージメント」と「業績」の関係

弊社のエンプロイーエンゲージメントサーベイは、様々な項目について、従業員が会社に何をどの程度期待しているのか、またどの程度満たされているのかの2つの観点で質問を行っています。

そして、その回答結果からエンゲージメントスコアという、言うなればエンゲージメントの偏差値的な指標を算出して、A~Eの段階に分けています(Aが高くEが低い)。

そのエンゲージメントスコアを用いて、「エンゲージメントが高いと、その次の年に売上や純利益が伸びるのか」の分析を行いました。その結果が下のグラフです。

(対象:2013~17年にエンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した企業のうち、売上・利益データを取得できた企業194社)

縦軸が「売上/純利益の伸長率」、横軸が「エンゲージメントスコアの段階」です。
グラフに示したとおり、売上/純利益の伸長率とエンゲージメントスコアとの間には、右肩上がりの関係性が見られました。

なお、今回の分析では、取得できた企業データのうち、サンプル数が多くなる純利益額を用いています。純利益には、本業である営業利益の他にも様々な要素が関連します。

ただし、様々な要素が関連する純利益額においても、エンゲージメントスコアと右肩上がりの関係性があったということは、営業利益等にも同様の(あるいはより強い)右肩上がりの関係性があるのではないかと推察されます。

今後、統計的に厳密な分析を行っていく予定ですが、エンゲージメントスコアが高い企業は、翌年の売上/利益の伸びが大きくなる可能性が示されています。

実務的にわかりやすく編集すると「エンゲージメントスコア向上は売上/利益向上に効果的」だということです。

また、各エンゲージメントスコアの段階による売上/純利益の伸長率の「バラつき」に着目すると、エンゲージメントスコアが低いほど「バラつき」が大きく、高まるにつれて「バラつき」が小さくなる傾向が見られました。

すなわち、エンゲージメントスコアと、翌年の売上/純利益の伸びの安定性が関連する可能性があるということです。

こちらも、実務的にわかりやすく編集すると「エンゲージメントスコアが低い企業は業績が安定しない傾向があり、逆にエンゲージメントスコアが高い企業は、その高さが安定した業績を支えている可能性がある」のかも知れません。

今後、分析対象企業を増やしながら統計的な手法を活用してさらに分析の精度を高め、エンゲージメントスコアが企業パフォーマンスに与える影響を検証していきたいと考えています。

エンゲージメント向上=じっくり継続したい漢方薬的な取り組み

「エンゲージメント向上は売上/利益を高める可能性があり、かつその安定性を高める可能性がある」ということは、

新事業/新商品開発やコスト削減と言った比較的即効性を期待した外科的な「大物狙い」の捉え方でエンゲージメント向上に取り組むべきではないということを示唆しているのかも知れません。

エンゲージメント向上を「流行」という側面から捉えるだけではなく、「じっくりと継続的に取り組むことで企業の内面から改善を図る」という「漢方薬的」な捉え方が大切だということを、今回のデータ分析結果は示してくれているのではないでしょうか?

研究者
株式会社リンクアンドモチベーション 組織開発本部 企画室 マネジャー 大澤 陽樹
同 企画室 人材開発チーム リーダー 野々山 果純
同 モチベーションエンジニアリング研究所 強矢 桃子
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本 隆氏
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 研究員 新改 敬英氏
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 研究員 藤居 裕晃氏

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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