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「組織づくりに絶対解はない」。300年企業 中川政七商店の組織づくり。

創業は享保元年。300年を超える歴史を持ちながらも革新を続けるのは、老舗ベンチャー中川政七商店だ。十三代:中川政七氏は入社後、工芸業界初のSPA(製造小売業)を確立。

社長就任後の売上を10倍以上に伸ばした事業家としての手腕だけでなく、2015年には、独自の優れた戦略を持つ企業に贈られる「ポーター賞」を受賞し、その組織運営にも注目が集まっている。伝統と革新の両面を併せ持つからこその変革ストーリー、組織編。

セミナー実施日
2018年1月30日(火)

プロフィール
株式会社中川政七商店 代表取締役会長 十三代 中川 政七氏

株式会社リンクアンドモチベーション
EASTカンパニー カンパニー長 白木 俊行

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あるべき姿に向けて、組織改革に妥協しない。

白木 俊行(以下、白木):伝統を受け継ぎながら、どのように組織を発展させてきたのか。「成熟期の組織変革のポイント」をおうかがいしていきたいと思います。

中川政七商店さんの組織のつくり方については、一部書籍で触れられてはいるものの、語られてこなかった部分でもありますので、非常に楽しみです。

歴史の長い企業を変えていくにあたっては、セクショナリズムが働いて部門間の連携が進まなかったり、変革の旗印を立ててもなかなかメンバーが動かなかったりと、変えにくい側面が多いと思います。

中川 政七氏(以下、中川氏):そうですね。まず赤字だったから、現状否定をして変えやすかったのだと思います。これが黒字だったら、このままでいいじゃないかという作用は働いたと思いますから。

とはいえ、社内に危機感があったかというと、そうでもありませんでした。ただ、既存勢力との確執があったのではと聞かれることも多いですが、それはほぼなかったです。

もともと父親がやっている商売と、私が始めた商売は別物で、4億円の売上と7名のメンバーを率いる部隊に入ったのですが、7名中6名が、私の着任後一年ほどで退職しました。

以前の中川政七商店というのは、ただの奈良の田舎の中小企業だった。働くということへの意識が低く、どれだけ仕事が残っていたとしても17時半になったらタイムレコーダーの前に並ぶような、そんな状況でした。

私自身は、入社するときからずっと、ちゃんとした会社にしたいと思っていたので、そんな雰囲気の中で、あるべき論を説いて回りました。

でもその6名の社員の答えは、「言ってることはわかるけど、そこまで働く気がない」でした。そして、退職することになりました。

白木:あるべき論で変えていくという手法は非常に大事だという一方で、今振り返ってみて、もう少し穏便に組織を変えていけたとも思われますか。

中川氏:いえ、今の経験値を持って15年前に戻ったとしても、あのやり方でよかったと思います。採用は非常に大切。ある時期以降、ビジョンにコミットした人たちが入社してくれるようになってから、非常に経営がしやすくなりましたから。

とはいえ、ほぼ全員が退職したときは、業務は大変でした。私自身に業務知識が全くない状態でしたから。

一方で、もうITに頼るしかないとはっきり思っていました。どこの会社でも、ベテラン社員が辞めてしまうと、その知識や経験をどう覚えるのかという話になると思います。もちろん私たちもそうでしたが、そこで生産管理なんかをIT化していくわけです。

実際、雑貨を扱う世界で、部材一つひとつに至るまでITで管理している会社は、日本ではほぼないと思います。

白木:あるべき論を掲げながらも、社員が離れていく現実を目の当たりにして、社員側に寄せようかと心が揺れることはなかったですか。

中川氏:心が折れそうになる瞬間は、おそらく何度もあったと思いますが、「まぁいっか」と思ってしまったらおしまい。そう思って、一人で戦っていたように思います。

組織づくりに絶対解はない。何度も変更を繰り返して、特殊解をつくる。

白木:なるほど。もう少し踏み込んでうかがっていければと思います。中川さんは、普段からよく「組織づくりは特殊解である」というお話をされています。

中川氏:そうですね。私自身は7名でスタートして、どんな風に組織をつくるのだろうと考えながらやってきました。何かしら正解の形があるのだろうと思って、本も読み漁りましたが、なかなか見えてこない中で、毎年何かしら組織にテコ入れしてきました。

そんな頃に、何がきっかけかは忘れてしまったのですが、組織に正解はないのだと気づけたんです。サッカーと似たようなことで、絶対的に強いフォーメーションがあるわけではなくて、今いるメンバーでより良い戦いをするためのフォーメーションがあるはずだと。

それまでは、毎年組織変更をしていること自体が心苦しかった。自分の力不足で、組織の正解が見えないから組織変更を繰り返しているのだと思っていました。

でも、絶対解がないと気づけてからは、堂々と組織変更ができるようになりました。

白木:特殊解をどのように見つけるのかがポイントになりそうですが。

中川氏:特殊解という解答があるかのようにも思われるかもしれませんが、そうではありません。基本的に、今現在の会社の流れややり方がうまくいっておらず、ストレスを抱えているわけです。それをよりよく変えていくために、組織を変える。

その変え方・方向性そのものがメッセージになってメンバーに届き、メンバーの意識や行動が変わる。その繰り返しです。

白木:一発で正解をつくろうとするというよりは、何度も変更を繰り返すことを通じて、組織のPDCAを回していくということですね。ぜひ具体的な施策についてもおうかがいさせてください。

先ほど、「採用は非常に大切」だというお話もありましたが、採用力を上げるために、具体的に何かされたのでしょうか。

中川氏:一冊目の書籍「奈良の小さな会社が表参道ヒルズにみせを出すまでの道のり」を出したときは、もちろんコンサルやります宣言だったのですが、採用に効くのではないかという思いもありました。

実際に出版をしてみて、最も意味があったのは対社内でした。普段伝えていることを書いただけなのに、社員から「社長が何を考えているのか、どうしていきたいと考えているのか、やっとわかりました」という声が多く聞こえてきたんです。

これには驚きましたが、なるほどなぁとも思いました。本という形式をとることで、客観的なメッセージになって、受け取りやすくなったことが理由のようでした。

コミュニケーションというのは、言ったら伝わると思ったら大間違いで、いかにして伝えるのか。相手が腹に落とし込めるよう、考えなければいけない。そういう学びもあった書籍出版でした。

組織改善施策をどんなタイミングでやるべきか。

白木:他にも、皆にフェアな人事制度。つまりは、年齢や性別に影響をされないフェアな人事制度を導入されるなど、様々な取り組みをされています。最初から、何をどんな順で取り組むのかなど、整理できていたのでしょうか。

どこから手をつけるのかという判断は、皆さん迷われるところかと思います。

中川氏:そうですね。どこから手をつけるのかは難しく、様々な状況判断があると思います。売上・利益が足りていないときには、費用がかかる施策はできませんし、そういう意味では、人事制度は後回しになりがちです。

その瞬間瞬間で、ベストだと思うことをやるしかない。ただ、振り返ることが大切だと思います。振り返ると整理されるし、整理されると、次に何が足りていないのか・どういう視点が必要なのかが、またわかってきます。常に会社が整理されている感覚です。

白木:私どもがお客様に提供している組織の5M(ファイブエム)というフレームでいうところの、Mission・Membering・Monitoringについては、何から手をつけたらいいのかというご相談を、私もよくお受けします。

先にビジョンをつくるのか、採用ページが先なのか、それとも人事制度に着手すべきなのか。中川さんはご自分なりのセオリーがありますか。

中川氏:何のヒントにもならないと思いますが、しかるべきタイミングでしか答えは出てきません。例えば、2003年頃から、ビジョンは何だとずっと考えていたけれど、形になったのは結局2007年です。4年間も悶々と考えていたことになります。

でも、考えているだけではなく、他の取り組みはやっていました。皆さん同じだと思いますが、短期・中期・長期の案件を様々抱えながら、毎日考えるしかない。ただ、何の積み残しがあるのかということを、中期経営計画の作成を通じて意識しています。

手を打てていない積み残し事項を認識はしているので、ずっと頭のどこかにある状態なのですが、誰かとの出会いや新しい情報を知ることを通じて、一気に考えが進んで解決することもあります。

そういう意味では、毎年中期経営計画を書くことは、ものすごく大切な気がします。

モチベーションクラウドのエンゲージメントスコアがあれば、踏み込んだマネジメントが可能になる。

白木:中期経営計画と照らし合わせることは、5MのMotivationの部分についての、検証方法のひとつとも言えると思います。

弊社が提供しているサービス「モチベーションクラウド」を、経営判断の際に役立てていただいているとのこと。どのようにご活用いただいているのでしょうか。

中川氏:そもそもなぜモチベーションクラウドを導入したかと言うと、社員が180名ほどになってきたときに、全社員分の人事考課をひとりで見きれなくなったからなんです。

肌感覚でわからなくなって、自信が持てなくなってしまった。これまでであれば、組織変更をする際に、新しいこのポジションはAさんがいいなとすぐに人が思い浮かんだのに、それが難しくなってきたことに気づき、その感覚を補うためにモチベーションクラウドの力を借りようと思いました。

白木:組織の現状把握のツールとしてご活用いただいているということですね。

中川氏:そうです。組織変更を頻繁に行うので、そういった状況に対してストレスを感じているのかどうかも、なんとなく見ることができます。

私自身が全てを見ることはできない中で、上長がキーマンになってくるわけですが、どの上長が組織をマネージできているのかもわかります。

実際、ある部署の数値が、他の部署と比較して明らかに悪かったのですが、それは私自身の印象ともリンクしていました。ただデータがない状態では、「組織、うまくいってないんじゃないのか?」と聞いたところで「ちゃんとやってますよ」と返事をされたら、それ以上踏み込めなかった。

ただ、モチベーションクラウドのエンゲージメントスコアがあれば、数値としても出ていることなので、非常に話がしやすくなりました。

白木:ありがとうございます。成熟期の組織変革についておうかがしてきましたが、ポイントは3点あったと思います。

まず、「最初から多少の反発は出ると覚悟した上で進むこと」。そして、「一度では正解にたどり着かない。組織は、何度もPDCAを回しながら変えていくもの」。最後に、「中期経営計画のような形で目標を持った上で、現在地との差を把握すること」。

そして、これら3点を繰り返していくことですね。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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本編の前編となる「『売上よりも大切なビジョンとブランド』。300年企業 中川政七商店の事業づくり。」はこちら

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