事業を成長させ続けるのは、「属人」ではなく「仕組み」で戦う組織。クルーズ株式会社
「組織偏差値急上昇の成長企業が実践するマネジメントの秘訣とは」というテーマで迎えるゲストは、クルーズ株式会社取締役の最高人事責任者である対馬慶祐氏。
メイン事業を5回も転換し、事業部を子会社化させるなど、時代に合わせて大きく変化してきたクルーズ社。変化を支えるのは、「仕組み」を駆使してつくられた組織だった。
【プロフィール】
クルーズ株式会社 取締役 最高人事責任者CHO 対馬 慶祐(つしま けいすけ)氏
株式会社リンクアンドモチベーション MCSカンパニー カンパニー長 近藤 俊弥
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変化に強いクルーズ、事業を転換しながら成長を続ける。
近藤 俊弥(以下、近藤):本日は、クルーズ株式会社の対馬さんをお迎えして、「組織偏差値急上昇の成長企業が実践するマネジメントの秘訣とは」という本日のテーマでお話しいただきます。どうぞよろしくお願いします。
対馬 慶祐氏(以下、対馬氏):クルーズ株式会社でCHO(最高人事責任者)を務めております、対馬と申します。当社は、2001年に代表取締役の小渕が立ち上げた会社です。
私が入社したのは会社設立3年目で、従業員30~40名ほどの頃でしたが、現在は連結で約250名に成長。2007年には上場し、本社は純粋持株会社になっています。
2018年5月10日には、元々あった事業部をすべて、子会社化しました。
メイン事業は「SHOPLIST.com」で、レディースからメンズ・キッズまで、幅広いジャンルのファストファッションブランドのアイテムをまとめて購入できる通販サイトです。
実はクルーズは、メイン事業を5回以上転換している歴史があります。私が入社した頃は、受託開発をしていましたが、その後に人材ビジネス、次に検索エンジンをつくりました。更に、Eコマースにソーシャルゲームと、時代に合わせて変化してきました。
17年間で様々な事業を展開し、売上最高更新回数は14回にもなるのですが、営業赤字は一度も出したことがありません。変化に強いのがクルーズの特徴だと思います。
エンゲージメントスコアの低い部署は、部署の雰囲気も良くないという現実。
近藤:クルーズ社のエンゲージメントサーベイの結果を見て行きましょう。今回のエンゲージメントスコアは「59.3」です。エンゲージメントスコアは組織の偏差値のようなものです。平均の50を大きく上回っていますね。
合計3回エンゲージメントサーベイを実施されていますが、一年ほど前のスコアは「55.9」。段々とスコアが上がっていることがわかります。スコアの点数によって、部署毎の雰囲気にも差はありますか。
対馬氏:ありますね。スコアが40点台の場合は、肌感覚としても、部署の雰囲気が良くありません。
近藤:なるほど、ありがとうございます。具体的な中身に入って行く前に、サーベイの見方について触れたいと思います。
右上のINTERLINKという枠に反映される項目は、期待度が高く満足度も高いものです。そのため、組織における「強み」と言えます。また、左上のICEBLOCKという枠に反映される項目は、期待度は高いものの満足度が低いものなので、「弱み」と表現しています。
クルーズ社の強みは、「仕事内容」や「人的資源」です。これは、自分の仕事が面白く、一緒に働いている仲間が好きだということを示しています。
一方で、弱みに該当した項目はひとつで、「組織風土」です。例えば、社内の意思疎通が弱いというようなイメージでしょうか。クルーズさんの場合は、項目が右肩上がりに分布していて、左上の青の部分、つまり弱みとされる領域に該当する項目はほぼない、バランスの良い分布だと言えます。
補足として一点お伝えしたいことは、すべての項目の満足度を高くする必要はないということです。
期待度が高い項目に対して満足を提供できていれば良いのであって、期待度が低い項目は不満足であっても、今すぐに組織に何かしらの影響を与える要因にはなりにくいと言えます。
では、実際のサーベイ結果をもとに、具体的にどのような取り組みをされているのか、うかがっていければと思います。
事業成長だけ追い求めた組織の転換のきっかけに、モチベーションクラウドがあった。
対馬氏:実は、私が入社して15年になりますが、ずっと売上と利益を重視してきた会社でした。「エンゲージメントスコアを高めたところで、売上が上がるのか」と思っている方も多いのではないかと思いますが、私も実はそうでした。
しかし、売上や利益だけに注力するだけではなく、組織についてもPLやBSと同じように、定量的な目標を数値化してしっかり考えようと、モチベーションクラウドを導入させていただきました。
私たちのように、はじめて、本格的に組織のエンゲージメントスコアを追いかけることになった会社の場合、最初の課題が「トップが本気になること」です。
モチベーションクラウドは組織コンサルの観点から設計されたHR Techのソリューションです。ですので、結果に非常に納得感があり、トップも組織改善に向けて本気になりました。
まず、エンゲージメントスコアを役員評価に組み込みました。役員報酬なのでそもそもの金額が大きいのですが、—20%〜+30%の間で報酬を変動させることにしています。
また、定時取締役会では、各子会社の代表や役員が、各会社で出たスコアを毎回報告します。もちろん、スコアの数値を追いかけるだけでなく、実際にどう上げていくのかも重要なので、月一回は社長同席の上で現場の社員を巻き込んで、何をどう行動するのかディスカッションする場を設けています。
基本的には任せていますが、著しくスコアが低い部署には人事が介入して、改善にあたるようにしています。結果として各組織の雰囲気が良くなっているので、実施して良かったです。
担当役員にとっても、数値が上がるという成果は分かりやすいので、これくらいしっかり施策を行うところまでやっても良いのではと思いました。
「全体会議」と「事業部子会社化」で組織が変わる。
近藤:強み・弱みの項目ベースではどうでしょうか。
対馬氏:項目ベースでは、強みに挙がっていた「内部統合」にかかわる施策を実行しました。
多くの会社で社員総会は実施されていると思いますが、私たちも「全体会議」で、表彰や懇親会を行っています。
せっかく一日間集まるのなら有意義な場にしようということで、半期に一度、同日同時刻、全社員で目標共有をやろうということになりました。
各パート・部署ごとに分かれて、「この次の半期の目標ってなんだっけ」・「じゃあ次はそのアクションをしよう」という風に話し合っています。
また、社内の一番優秀なファシリテーターを、全社員300人の前に登壇させて、ファシリテーションさせることにしました。と言うのも、マネジャーの中にも、目標設定が上手い人・下手な人は絶対いて、そのばらつきがサーベイの満足度に影響してしまうので、その差を埋めようということが狙いでした。
近藤:300人の前でファシリテーションされるんですね。
対馬氏:そうです。目標設定が苦手そうなマネジャーのところに、目標設定の上手いファシリテーターをつけることで、少しスコアが上がったと思います。
近藤:次の取り組みも、強みに挙がった項目「仕事内容」ですね。
対馬氏:クルーズは元々の事業部を子会社化しています。事業を幅広く展開する中で社員数が増えているので、社員のタイプも様々なんですね。
極端な例ですが、服を販売している事業にかかわる社員と、ゲームの事業にかかわる社員というのは、全然違うんです。
であれば、部署毎子会社化して、その子会社毎に目標や顧客へのバリュー、すなわち「私たちが何を提供するのか」を明確にしようということになりました。
元々あった事業部を全部子会社化したことは、非常に大きな出来事でしたが、事業毎に組織を整えたことで、ここからさらに、エンゲージメントスコアは上がるんじゃないかと思っています。
子会社ごとに制度やミッションなどを自由に設計して良いとしているので、意思決定のスピードも上がってくると期待しています。
組織課題は、個人の力ではなく仕組みで解決する。
近藤:ありがとうございます。お聞きしていて最も印象に残ったのは、仕組みで解決するという方法です。
対馬クルーズは、「ただただみんなで一生懸命やろう」というよりは、「誰がやっても回る仕組みを入れないとワークしない」と考えます。社員に任せるという部分ももちろんありますが、会社として仕組みなどで対処していった方が、実際の成果にはつながりやすいと思います。
例えば、事業転換を行う際には、どうしても退職者が増えてしまう状況がありました。しかし、モチベーションクラウドを導入してからは、社員がどこに不満を持っているのか、どんな仕組みが必要だと思っているのかが見えやすくなったので、今後は変わってくるかなと考えています。
近藤:なるほど。当社もM&Aを繰り返していますが、基本的にはエンゲージメントスコアをもとに項目改善をして、利益率を改善させるというパターンをとっているので、似ているなと思います。
それから、先程の全体会議の実施方法が面白いと思いました。全体会議を実施されている企業様は多いですが、目標設定までやるというのは珍しいですね。
対馬氏:そうですね。社長がこの半期を振り返ってビジョンを説明することや、表彰式や懇親会の場というのは、以前からありました。ただ最近は、せっかく全社員が集まるならば、「会議を開いて、みんなで目標設定をしよう」というモードですね。
ともすると手を抜きがちなチームも、周りの真剣な様子を見て、「やらなければ」と真剣になります。
近藤:サーベイでは、ある項目の満足度がスコア全体に影響する場合もあります。そのような項目のひとつとして「評価・給与への納得感」があります。
目標設定を上司の力に頼るのではなく、組織の施策として担保し、従業員全員が評価・給与に納得しやすいような仕組みをつくっているということですね。
対馬氏:そうですね。ただ、社員にいきなり目標をつくらせるのではなく、まずは会社の目標を発表し、その次に各社毎の目標を発表します。
その上で一斉に、「今からチームの目標をつくろう」と投げかける。そういう風に自分たちで設定した目標なので、納得感が高いのかなと思います。
近藤:個別の力に頼りすぎることなく、仕組みで目標設定はもちろん運用までサポートしていく。具体的な取り組みをご披露いただきました。本日は、どうもありがとうございました。
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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。