
ビジョン・ミッションで束ね、事業も組織もスケールさせる。株式会社レアジョブ
「組織偏差値急上昇の成長企業が実践するマネジメントの秘訣とは」というテーマで迎えるゲストは、株式会社レアジョブ代表取締役社長の中村岳氏。
正社員比率では日本人よりもフィリピン人の方が多い同社だが、ビジョン・ミッションを重視する組織戦略により、創業以来の事業成長も実現している。複雑性の高い組織は、どのようにビジョン・ミッションで束ねられるのか。
【プロフィール】
株式会社レアジョブ 代表取締役社長 中村 岳(なかむら がく)氏
株式会社リンクアンドモチベーション MCSカンパニー カンパニー長 近藤 俊弥
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら
▼ エンゲージメントを可視化し、組織改善を行うサービス【モチベーションクラウド】はこちら
レアジョブ創業以来10期連続増収という成果を支えたのは、ビジョン・ミッションで束ねられた組織。
近藤 俊弥(以下、近藤):レアジョブの中村さんをお迎えして、組織偏差値急上昇の成長企業が実践するマネジメントの秘訣をおうかがいしていきます。
中村 岳氏(以下、中村氏):株式会社レアジョブで代表を務めております、中村と申します。どうぞよろしくお願いします。レアジョブは2007年に誕生した会社で、オンライン英会話サービスの事業を行っています。
フィリピンの人たちが先生となり、日本人の生徒さんに対して、スカイプやwebのインターネット通信を使用した「マンツーマンの英会話レッスン」を展開しています。
そのため、日本とフィリピンにそれぞれ会社があります。日本人の正社員がおよそ100人、フィリピン人の正社員がおよそ200人と、フィリピン人の正社員が日本人の正社員に比べ、倍近くの人数になっています。
そして、レアジョブが正社員とは別枠で採用している「インディペンデントコントラクター」は、フィリピンの先生たちでおよそ4,000人います。そのため、日本の組織・フィリピンの組織・インディペンデントコントラクターから成り立つ組織というような形で、組織が複雑化していることも、特徴のひとつです。
また、ビジョン・ミッションを非常に重視しています。グループビジョンは「Chances for everyone, everywhere.」。つまり「あるゆる人と場所にチャンスを届け、世界中の人々が国境や言語の壁を越えて活躍できる社会を創造していきたい」ということです。
サービスミッションには、「日本人1,000万人を英語が話せるようにする。」を掲げています。このビジョン・ミッションを全社一丸となって達成するため、社内の合言葉にして、様々なサービスを行っています。
実際に、お客様のご満足いただいた顔や英語力が向上する様子を見ることができるので、このビジョン・ミッションも実感しやすいと思っています。
事業としては創業以来10期連続増収を達成しており、今では年商およそ30億円の会社に成長しています。他社との提携等も様々行っており、例えば三井物産との資本業務提携やリップルキッズパークの子会社化などがあります。
国内では大阪・名古屋・福岡に支社を開設し、海外ではフィリピンで子会社を立ち上げました。今後は、日本と海外を行き来するような人材の採用・育成がひとつ大きな課題でもあり、やりがいでもあると考えています。
エンゲージメントスコアを向上させたのは、ビジョン・ミッションを信じる社員の存在。
近藤:では早速私から、レアジョブさんのエンゲージメントをご紹介します。2015年4月が初回で、当時のスコアは「51」です。その後、4回計測を続けられ、直近の2018年4月の実施では、10ポイントもスコアを上げられて「62.7」となっています。
エンゲージメントスコアは、偏差値をイメージして設定されていて、一般的なレベルが50です。なので、62.7は高いスコアと言えます。
また、サーベイ結果の見方ですが、上にプロットされるほどに期待度が高く、右にプロットされるほどに満足度が高くなっているとご理解ください。ですので、右上のINTERLINKという枠に入っている項目を「強み」、左上のICEBLOCKという枠に入っている項目を「弱み」と表現しています。
レアジョブ社の結果を見ていくと、「理念戦略」「事業内容」などが強みと言えます。これは、社員の皆さんが理念や成長性などを含め、事業の意義を十分に感じられているということだと思います。
一方で、「組織風土」が弱みに挙がっています。これは、物理的な距離があることから、人と人のリアルなかかわりが持ちにくいということかもしれません。
中村氏:そうですね。レアジョブは理念で束ねられている会社です。様々な戦略発表の場面で、ビジョン・ミッションについて必ず触れていますし、採用の場面では、できるだけ英語や教育に興味を持ってくれる人を選ぶようにしています。
だからこそ、ビジョン・ミッションに共感してくれている社員が多いのだと思います。
エンゲージメントスコアが上がってきている最大の要因は何かと考えると、採用を強化したことだと思います。その結果として、周りを引っ張っていける人や組織風土をつくっていける人が入社してきました。それがスコアの上昇につながったのかなと考えています。
レアジョブの採用戦略・組織施策のベースには、ビジョン・ミッションがある。
近藤:実際に取り組まれた、強みを伸ばす施策についてもぜひお聞かせください。
中村氏:戦略共有のための「RareJob Strategy Day」を行っています。3月が決算期なので、これまでは4月・10月の頭に2時間ほどかけて、部署毎の戦略を発表していました。
しかし、戦略の納得感・発信伝達を高めるためには、2時間では足りないということで、丸一日かける施策になりました。
初年度の内容は、ビジョン・ミッションについて考えるグループワークの後に、会社がどのように成長してきたかを振り返るものでした。
「レアジョブはこうやって成長してきた」「課題をこんな風に乗り越えてきた」から始まって、「今はこのように成長している」といった、過去から現在をたどるイメージです。
振り返りを行うことで、新しく入社した社員に対しては、「過去にこういうことがあったから、今このような仕組みになっているんだ」と、深く理解をしてもらえる機会になったと思います。
また副次的ですが、幹部陣に対しても良い施策だったと思います。戦略をしっかり発表できるようにとつくり上げていく中で、幹部陣の一体感ができあがっていきました。
他の取り組みとしては、全社に向けて戦略発表する以外にも、スモールミーティングを行っています。集めた質問に回答したり、私や取締役と少人数の社員で直接話せる場を設けたりと、わからないことは全て解消するようにしています。
また、ビジョン・ミッションの先にある「行動規範」として、「RareJob Way」を新たに作成しました。「やりたいことをやろう」「ストーリーを語ろう」「変化を生み出そう」というものです。
私はもちろん社員も、普段からこれらのメッセージが描かれたTシャツを着用することで、行動規範を社内に浸透させ、一体感の高まりや判断基準の統一を目指しています。こうした施策の積み重ねによって、全体的なスコアも上がってくるのではないかと考えています。
近藤:先ほど、「スコアが上昇した一番の要因は、採用を強化したこと」とおっしゃっていましたが、どれくらい変わったのでしょうか。
中村氏:例えば社員数は約100人で、新しく入社した社員は20人ほどです。ビジョン・ミッションに反対している人は採用しませんし、採用面接の際に迷ったら、我々のオンライン英会話サービスを利用したかどうかを聞きます。
そこで、真剣かどうか、ミッション・ビジョンに共感してくれそうかを判断します。
一方で、英語のサービスを提供しているので「英語が絶対に必要だ」と思われやすいのですが、実際はそうでもありません。
英語力ではなく、英語に対する抵抗感がないか。自分の英語力を伸ばしていきたいという姿勢があるかどうかを見ています。特にこの一年は、スキル以上にマインドの強い人、ビジョン・ミッションに共感してくれる人を採用するという方針を続けています。
近藤:ありがとうございます。応募者がミッション・ビジョンに共感しているかを、面接を通じて見極めるというのは、簡単ではないと思います。BtoCの企業であれば、応募者は「サービスの中でこれを実現したい」と投影しやすく、企業側もサービスとの親和性をはかることが可能です。
BtoBの場合は、ミッションへ共感してくれるかどうかを、企業側がコミュニケーションを通じて見極めるというやり方もあります。つまり、採用プロセスにおいて候補者に共感させるということ。御社の場合は、どちらのやり方でもアプローチできそうですね。
本日は組織づくりにおけるリアルな事例を率直にご披露いただきました。どうもありがとうございました。
※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら