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「事なかれ主義」の意味とは?日系企業の上司が陥る心理とは?


目次[非表示]

  1. 1.事なかれ主義とは?
  2. 2.事なかれ主義の類義語・対義語は?
  3. 3.事なかれ主義が起こる事例
  4. 4.事なかれ主義が起こる心理・環境
  5. 5.事なかれ主義に伴うリスク
  6. 6.事なかれ主義を予防するためのポイント
  7. 7.記事まとめ


「あの人は事なかれ主義だから、、、」こんな言葉を職場で耳にしたことはないでしょうか?

もしこんな言葉を聞いたことがあったら、あなたの職場は組織としてもっと良くなることができるかもしれません。

事なかれ主義の正しい意味や、起こってしまう原因、正しい対処方法を理解すれば、あなたの職場の問題が解決するかもしれません。

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事なかれ主義とは?

事なかれ主義とはものごとに対し、波風が立たないように対応することを指します。

事なかれ主義の人たちは、争いや喧嘩を嫌い、何よりも平穏を望む傾向にあります。

事なかれ主義の語源は、「事」と「なかれ」と「主義」の2つから構成されています。

「事」は様々な意味がありますが、ここでは「重大な事態」という意味がふさわしいでしょう。また、「なかれ」は「行ってはいけない」「するな」という意味です。

最後に「主義」は、「その人の持つ思想や方針」のことを指します。

この3つが合わさって、事なかれ主義という言葉が成り立っています。事なかれ主義という言葉が最初に使われたのは、一説では大正時代と言われています。

日本の経済学者である「和田垣謙三」が、「兎糞録(とふんろく)」という作品中で、最初に使ったとされています。

事なかれ主義とは、一見波風が立たないよう、穏便に収めようとすることは、配慮ができているようですが、一方で、言いたいことがあるのに相手に自分の意見を言わずに問題を放置する姿勢は、無責任とも言えます。

職場の人や取引先の関係者と、険悪なムードになったり揉めそうになったときに、自分が折れてうまくまとめようとすることは平和主義とも言えます。

争いを望まず、平穏を望む点では平和主義と事なかれ主義は似ていますが、事なかれ主義の場合は、「喧嘩するくらいなら黙っていよう」「揉めごとを起こしてまで言いたいこともないし」という消極的なニュアンスも含まれている表現です。

引き続き「事なかれ主義」の定義を掘り下げた後、「事なかれ主義」が起こる5つの要因5つのリスクを紹介し、最後に回避する4つのポイントを詳しく説明します。

事なかれ主義の類義語・対義語は?

事なかれ主義の意味を理解するために、似た言葉、反対の意味の言葉を確認してみましょう。

■【類義語】

・官僚主義

官僚主義とは、規則に対して執着し、柔軟な考え方ができないことを指します。組織が大きく、古い場合に生じやすく、公務員や政治家など大きな組織に所属する人に多いという印象があります。

事なかれ主義と似ている点としては、どちらもトラブルを避けたい傾向にあるという点です。

・保守的

保守的とは、昔から続けられてきた行為や決まりごとを重要視する姿勢のことを指します。広義では、新たしいことを好まず、これまでの方法を曲げないことを意味します。

従来のやり方を重んじるがゆえに、新しいことを好まないという点では事なかれ主義と似ている印象がありますが、保守的な人が常に消極的というばかりではありません。

過去の歴史を大切にするために積極的に活動することもあるからです。この点では、保守的という言葉と、事なかれ主義という言葉は異なっています。

■【対義語】

・進取果敢

進取果敢(しんしゅかかん)とは、自ら進んでことをなし、決断力が強く大胆に突き進むことです。

消極的で、自分から行動を起こすのを諦めている事なかれ主義とは逆で、自分から発言し、問題を解決していく積極性を意味する言葉です。

・事大主義

事大主義の意味は、全体に対する見通しがなく、些細なことを誇大に騒ぎ立てるという意味です。

問題が起こらないように穏便に済まそうとする事なかれ主義とは逆に、小さなことを大げさに騒ぎ立てることを指す表現です。

事なかれ主義が起こる事例

事なかれ主義は、日常の様々なシーンで起こっています。

例えば、夫婦問題や嫁姑問題で問題を見てみぬふりする夫や、問題を先送りにし自分では解決しようとしない彼氏など家庭内、プライベートでも起こります。

そして職場内でも事なかれ主義を見かけることが多いのではないでしょうか。トラブルに目を伏せる上司や、誰にでもいい顔をして一貫性のないリーダーなど、あなたの周りにもいるかもしれません。

ここでは、職場内で起こる事なかれ主義にフォーカスして話を進めていきます。

事なかれ主義が起こる心理・環境

組織の中でどうしても発生してしまう、視界のズレ。

経営と現場の橋渡しをする中間な管理職層、マネージャー達が、リーダーシップを持つことが、視界のズレを解消するためには重要です。

リンクアンドモチベーションでは、リーダーシップを「ある一定の目的に向けて人々に影響を与え、その実現に導く行為」と定義しています。

ビジョンや目的の達成のために、リーダーの選択肢は無数にあります。

この選択肢の中から最適な行動を決めていく中で、リーダーは常に葛藤に直面しています。互いに相克する対立軸を統合していく活動がリーダーシップといえるのです。

事なかれ主義に陥ってしまっているリーダー達は、この葛藤を諦めてしまい、相克する事項の統合ができていない状態なのです。

ここではリーダーが直面する典型的な葛藤を5つご紹介します。

①「効率vs能率」

リーダーが目指す成果は、「組織としての最大効率の追求」と「個々人のモチベーションの極大化」を同時実現することです。

組織としての成果を追い求めすぎてもいけませんし、従業員個々人の都合に合わせすぎてしまってもいけません。どんな意思決定でも組織にも個人にもメリットのあるように意識をしなければなりません。

②「受容vs支配」

リーダーは、変わり続ける社内外の環境変化に柔軟に適応しながらも、環境に対する支配力も持ち合わせていなければなりません。

どんなときも環境に合わせているだけではなく、自社のビジョンや価値観など重要な部分は妥協することなく、一貫性を持つことも重要です。

③「短期vs長期」

リーダーは常に、短期的な視点と、中長期的な視点の療法をバランスよく持っていなければなりません。その意思決定が短期的に利益を生んだり、問題が起きないとしても、中長期的には問題があることもあります。

短期、長期の両方の視点から物事を判断する判断力が必要です。

④「論理vs感覚」

リーダーは物事の判断にあたって、「論理や合理」を軸に判断を下さなければなりません。

しかし、時には「感性や感覚」で人の感情を動かしたり、誰にも思いつかないようなアイデアを生み出すことも必要です。

どちらかではなく、論理と感覚の両方を使いこなすことができれば、リーダーとして一歩抜きん出ることができるでしょう。

⑤「分化vs統合」

組織をデザインする上で、規模の拡大に伴い専門分化を進める必要があります。一方で、分化が進むにつれて組織全体の意識統合、一体感が弱まってしまいます。

リーダーは、この分化と統合のバランスを常に取りながら、組織構造や組織施策を実施することが求められます。

▼リーダーシップに関する記事はコチラ
リーダーシップとは?今の時代に求められるスタイルは?

事なかれ主義に伴うリスク

上記で説明した5つの葛藤をリーダーが避けてしまい、どちらかに偏った判断をしてしまった場合に起こるリスクについて紹介します。

①「効率vs能率」

リーダーが、「組織としての最大効率の追求」だけをしてしまうと、組織のメンバーは必ず疲弊してしまいます。

一方で、「個々人のモチベーションの極大化」ばかりを進めても、それは個人への甘やかしにしかならず、組織としての成果が生まれにくくなってしまいます。

例えば、個人のモチベーション向上を目的に、福利厚生の拡充を推し進めたとします。福利厚生によるサポートが増えることで、従業員個々人のモチベーションは高まるかもしれません。

しかし、個々人のモチベーションが高まるだけで、組織として費用がかさんでしまったり、組織運営に支障をきたしてしまっては意味がありません。

常に、組織と個人の両方にどんな影響があるのかを意識する必要があります。

②「受容vs支配」

外部環境の変化としての、顧客貢献や顧客のニーズの受容を怠れば、組織や商品は顧客から選ばれなくなってしまいます。

しかし、市場や顧客に対する支配力を手に入れなければ、市場の中での自社の存在価値は薄れていってしまうでしょう。

例えば、受容と支配の葛藤は商品価格を決めるときのスタンスに表れます。商品サービスの市場相場を基準に価格を設定すると、一見外部環境に適応しているようにも見えますが、市場への支配力は弱いということになります。

支配力をきちんと発揮するのであれば、自分たちの商品サービスの価値や利益を基準にした価格決定方法を取るとよいでしょう。

③「短期vs長期」

短期利潤の追求をしているだけでは、将来の環境変化への備えが不足してしまい、結果的にあとから大きな不利益を被ることになるでしょう。

逆に、中長期的視点だけを持っていても、現在の利益を逃して企業の存続が危ぶまれてしまうので危険です。

例えば、戦略を考える際、緊急度の高いことばかりに着手していないでしょうか。今必要なことをするのももちろん重要ですが、喫緊性は低いが、重要度の高い事項も同時に抑えて置かなければ、中長期的な組織の発展は難しくなってしまいます。

④「論理vs感覚」

論理や合理によって導き出された「正解」は、往々にして独自性に欠けています。要はもうすでに世の中に出ているか、他の誰でも思いつくことができるものである可能性が高いのです。

一方で、感性や感覚だけを頼りにした「決断」は、永続性や再現性に欠けます。その人だけにしかできないものは、組織として持続的に価値を出し続けるには、取り扱うのが難しいのです。

例えば、あなたやあなたのした意思決定の理由を、論理的に説明ができるでしょうか。

これができなければ、リーダーが変わるたびに会社としての意思決定が変わる、一貫性のない組織になってしまいます。

リーダーには、「論理に裏付けられた感性」や「感性の奥に潜む合理性」が求められるのです。

⑤「分化vs統合」

組織が拡大している中で統合を怠ると、組織の意識や戦略はバラバラになってしまいます。逆に、組織が大きくなっているにも関わらず分化をしないままでいると、組織拡大のスピードが鈍ってしまいます。

常に分化と統合を繰り返し続けるという前提意識が必要です。

(参考)モチベーションとは何か?維持する方法やメリット、ビジネスでのマネジメント成功事例について解説

事なかれ主義を予防するためのポイント

事なかれ主義を予防するためには、前述したリーダーの葛藤を乗り越える手段を知ることが必要です。

リーダーが葛藤を乗り越えるには、対立した意見の持ち主同士を説得したり、自分自身や組織メンバーの考え方や行動を変えていくことが必須です。

人を変えるためには、どんなことをすればいいのでしょうか。そのためにはまず、「人間」の捉え方から変えていく必要があります。

■前提:人間は「限定合理的な感情人」である

人間の振る舞いは、限られた場面では合理的ですが、決していつでもどこでもそうということではありません。人間の判断や行動には、経済的利得だけではなく、感情的な側面が大きく関わっています。

例えば、戦略を実行する際、「戦略」と「行動」の間には、「感情」が生じます。

100%完璧な戦略が立てられたとしても、「いやあこの戦略なんか納得いかないなあ」「あの人のやり方は嫌だな」といった「感情」が入ることによって、100%であった戦略は簡単に50%ほどの効力に減ってしまいます。

これが私たち人間に起こりうることです。行動経済学においても、人間の行動の分岐点は、「合理」ではなく「感情」であると捉えられています。

※参照:行動経済学/ダニエル・カーネマン『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』、リチャード・セイラー『セイラー教授の行動経済学入門』

この人間に対する前提にたてば、人を動かすためには彼らの感情も考慮しなければいけないことが理解いただけたかと思います。

リーダーが葛藤を乗り越えるためには、「限定合理的な感情人」である人間が陥りがちな4つの「バイアス」を意識することがポイントです。

人が意識や行動を変えるために障害となる4つのバイアスを克服することを意識すれば、葛藤を乗り越えやすくしたり、事なかれ主義を予防することができるでしょう。

■ポイント①:現状維持バイアス

人はなにか新しいことをはじめたり、これまでずっと続けて来たことをいきなり変えることを受け入れにくいという特性があります。

この特性を踏まえると、いきなり「こう変えよう!」と変化を強要したとしても、人はついてこないでしょう。

現状維持バイアスを乗り越えるためには、①Unfreeze(解凍) ②Change(変化) ③Refreeze(再凍結)の3つのステップを順に経ていくことが望ましいのです。

①Unfreeze(解凍)

まず、相互不信、役割責任意識、過去の慣性を解くためのアプローチをします。

感情的なアプローチをすることで、このあとの変化を受け入れやすい土壌を作るイメージです。

②Change(変化)

Changeでは、向かうべき方向を提示した上で、それに対する社員の共感や納得を醸成し、更に変化に対する「促進要因」と「阻害要因を」共有します。

このステップは、①Unfreezeとは逆に、理性的なアプローチと言えます。

③Refreeze(再凍結)

前のステップで起こした変化が逆戻りしないように、変化した状態を固めるステップです。

新しい取り組みや価値観を体現している理想人材やシンボルをつくったり、新しい仕組みを埋め込んだり、新しい言語を生み、流通させていくことなどができます。

■ポイント②:近視眼バイアス

近視眼バイアスとは、将来よりも現在を重視してしまうバイアスのことです。目先の小さな利益に目を奪われて、将来の大きな利得を失ってしまうことなどを指します。

この近視眼バイアスがかかったままでは、いくら説得をしても、固定観念に縛られてしまい納得感を得られません。

近視眼バイアスから解き放つためには、「時間のマジック」と「空間のマジック」を活用するのが効果的です。

「時間のマジック」で、時間軸を長く取られられるようにしたり、「空間のマジック」で、より広い視点、異なった視点から物事を見ることができるようにすることで、これまでの固定観念から解き放つことができます。

新たに提示された「時間×空間=世界」が、組織や個人のUnfreezeを促すのです。

■ポイント③:参照点バイアス

参照点バイアスとは、参照点との比較で判断をしてしまう人のクセのことです。人は絶対的な水準ではなく、参照店からの変化で評価をしてしまいます。

例えば、他社に勤める友人と給与を比較して、自分の給与がいたずらに低いと感じてしまうことなどです。参照点バイアスから解き放つためには、「目標のマジック」と「安心のマジック」を活用するのが効果的です。

「目標のマジック」で、変化の方向性(=新たな目標)の魅力を高めることで変化を促し、「安心のマジック」で変化を阻む要因を取り除き、安心感を醸成することで変化を促すことができます。

■ポイント④:同調性バイアス

同調整バイアスとは、他者の選択に依存してしまうバイアスのことです。

自分と他者の利得の差が小さいこと(≒公平であること)を求めてしまう傾向が人にはあります。例えば、みんなが協力するのなら協力するが、みんなが協力しないのに自分だけ活動するのは嫌だと思うケースなどがあります。

同調性バイアスから解き放つためには、「習慣のマジック」と「集団のマジック」を活用するのが効果的です。

「習慣のマジック」で、新たな行動を習慣にすることで変化を固めたり、「集団のマジック」で組織としての施策や会議体に取り入れることで集団の影響力を活用して変化を固めることなどができます。

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記事まとめ

どんな組織でも事なかれ主義は発生しうるものです。

事なかれ主義に陥ってしまう組織としてのメカニズムや原因を理解し、事なかれ主義を予防するためのポイントを日々の組織運営に取り入れてみてはいかがでしょうか。

組織のメンバーが事なかれ主義で組織の問題を諦めてしまうのではなく、主体的に解決のために行動ができるようになれば、必ず組織は良くなっていくはずです。

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執筆者:N.E
執筆者:N.E
【プロフィール】 リンクアンドモチベーショングループ新卒入社。 以降、モチベーションクラウドのカスタマーサポートとして、 主に大手企業の支援に従事。

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