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離職率が高いことによるリスクとは? 計算方法や定着率との違いを解説

皆さんは「離職率」というキーワードにどのような印象をお持ちでしょうか?多くの労力をかけて採用した人材、或いは自社で長く経験を積み重ねた人材が離職をする事は、企業経営の根幹を揺るがす問題にもなり得ます。

また、離職率が適正値より高い状態が続いてしまう事は採用面で不利になる事もあるでしょう。今回の記事では、そんな離職率の定義や改善する為のポイントを事例も交えながら解説していきます。

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離職率とは

■離職率とは?

まず離職率とは、離職率とは、ある時点で仕事に就いていた人数(=分母)のうち、一定期間後に退職した人数(=分子)の割合を算出したもので、その期間においてどれくらいの人がその仕事を離れたのかを表す指標となっています。

一般的には、離職率は少ない方が良いとされますが、「高過ぎる」だけでは無く「低過ぎる」事も問題になり得る数字です。

「高過ぎる」場合は大抵の場合、極端な事業状況の悪化、採用時のミスマッチ、上司のマネジメント不全など何かしらの顕在的課題が生じているものです。そこの解消にパワーを投じる事が大切でしょう。

一方「低過ぎる」状況が継続した場合は人材配置の硬直化、風土の緩みなどの弊害が生じてしまう事もあります。

生物が新陳代謝と言う仕組みで生命活動を維持しているように、適度な新陳代謝は「企業という有機体」には必要不可欠です。

ですので、「低過ぎる」場合も何かしらの組織問題が生じていないかどうかは気にかけておけると良いでしょう。

過去、高度経済成長期の日本企業では「年功序列型」の人事制度を有効活用していました。

経済成長が右肩上がりの時代であれば従業員に対する「金銭報酬(給与や賞与)」や「地位報酬(ポスト)」が提供しやすかったため、「年功序列」で漸進的に報酬が増えていく人事制度の相性が非常に良かった時代です。

会社に長く勤めれば勤めるほど「居心地」も良くなる制度であったため、離職率がそれほど高くなりにくい時代だったと言えます。

一方、転職インフラの充実に伴う人材の「流動化」、生活が豊かになったことに起因する働く価値観の「多様化」による環境変化により、「年功序列型」の人事制度は少しずつ変化を求められました。

成果に比例して報酬を提供する「成果主義」など新たな制度が台頭し、従業員が自らが属する会社を選ぶ「相互選択型」の就労感が高まってきました。

このように従業員から選ばれる企業があるのと同時に、従業員から三行半を突き付けられる企業も増えていく時代背景の中で、ますます「離職率」という概念が注目されるようになったのです。

■定着率との違い

離職率と近しい活用の仕方をされる「定着率」にも触れておきます。

「定着率」という概念は、一般的に離職率の裏返しとして扱われることが多いです。仮に離職率が150%であったとしたら、100から15%を引いた85%が定着率になります。

離職率、定着率どちらにおいても、大切なのは数字の多寡に一喜一憂するのではなく、「自社にとって適切な数字と内容なのか?」という観点で能動的に数字を見ていくことが大切です。

近年の離職率の傾向

■近年の離職率の傾向

厚生労働省の「雇用動向調査(※)」によると、全業種の離職率を平均すると過去10年間の数値を平均すると離職率は「約15%」となっています。この数字が1つの目安になるでしょう。

※引用:統計でみる日本 雇用動向調査

一方、業種によって離職率は大きく異なります。雇用動向調査で最も離職率が高かったのは「宿泊業・飲食サービス業」の約27%。次いで「生活関連サービス業・娯楽業」の約24%と続きます。反対に、離職率がもっとも低かったのは「建設業」「複合サービス事業」「製造業」の約9%となっています。

「宿泊業・飲食サービス業」と「建設業」の比率の差は実に18%にも及ぶことからも、各業界によって大きな差がある指標であることが分かります。そのため、自社の業界平均と自社の離職率を比較することが有効になるでしょう。

■新卒従業員の離職率

厚生労働省による「新規学卒者の離職状況調査(※)」によると、大学を卒業して3年後の離職率は、全体で約30%となっています。すなわち、大卒者で3年後に定着しているのは7割弱であることが分かります。採用活動や初期教育の労力を考えると、高い数字と言えるのではないでしょうか。

※引用:厚生労働省 新規学卒者の離職状況

さらには中学卒、高校卒、短大卒の方は10人採用すると3年以内に4〜7人が辞めてしまうというデータも出ています。

労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった、仕事が自分に合わない、賃金の条件が良くなかったなど、退職の理由はさまざまで、年齢が低いほうが離職率が高い傾向にあるようです。

また、学歴に関わらず、3年のうち、1年目で離職する割合が最も高いというデータもあります。

だからこそ、早期離職を防止したいと考えている場合は採用活動や入社後のオンボーディングを見直して見ると良いかと思います。

離職率の算出方法

自組織が「公的機関」なのか「企業」なのかで算出方法に違いがあるので、それぞれの内容を以下に記載します。

・公的機関の場合

公的機関の場合は、ある時点で仕事に就いていた人数(=分母)のうち、一定期間後に退職した人数(=分子)の割合を算出したもので、その期間においてどれくらいの人がその仕事を離れたのかを表す指標となっています。

「離職率=離職者数÷年初時点での従業員数×100」で算出されます。ですので、例えば社員数200人の企業で4名が退職した場合は、4÷200×100=2%、という計算になります。

■企業の場合

企業の場合は、一定期間に退職した人数を、起算日に在籍していた人数で割るというものです。4月1日を期初としている企業では、4月1日を起算日として計算します。

例えば、5年前に入社した新入社員の離職率を計算する場合、5年前の4月1日の在籍人数が100人、5年間で10人が退職したとすると離職率は10%となります。

ただし、年度の途中で入社した人数は除外します。「一定期間」にも規定がありません。「一定期間」を1年間とすることも可能です。先ほどの在籍人数100人の企業の場合、1年間の退職者が1人だった場合、離職率は1%になります。

この方法ですと「意図して離職率を低く計算する」ことも可能になります。そのため離職率を見る際は、「計算方法や期間(光の当て方)によって数字が変わる」という前提で数値に接することが大切になります。

離職率が高くなる原因

離職率は、その企業の労働環境や雇用条件、働きやすさの目安となります。

離職率が高いということは、(人が流動しやすい職種や業界の場合もありますが)通常は働きにくい、労働者にとって魅力がない職場である可能性があります。

ちなみに弊社の調査では「エンゲージメントの高さ」と「離職率」に負の相関(エンゲージメントが高ければ離職率は減り、エンゲージメントが低ければ離職率は高まる)があることがデータとしても算出されています。

では、例えばエンゲージメントが低い企業にはどのような特徴が出ているのでしょうか?大きく6つの要因があります。


①未来への「不安感」

会社の将来への方向性が見えず、イメージ出来ない事からくる不安です。

会社の将来像を明示出来ていない場合だけでなく、それが個々人の将来像と繋がっている感覚を持てない場合にもこの不安感が大きくなることがあります。

②仕事への「閉塞感」

仕事そのものがつまらない、やらされ感を感じる事からくる閉塞感です。

仕事に対して行き詰まり、自身の成長が実感できない場合や、会社の行っている事業の将来に見通しがつかず事業規模が縮小する状態において蔓延します。

➂風土への「既決感」

組織内で既に決まっていることが多く、「あきらめ」の心理が蔓延している事からくる既決感です。

組織の風通しが悪く、「どうせ何を言っても無駄だろう」という諦めの感覚や、「既に決まっているから・・」と皆が消極的になると、負のスパイラルに入り組織の活力がどんどん減っていきます。

④待遇への「不満感」

評価・処遇・勤務実態などに納得できず、不満が溜まっている事から生じる不満感です。

自分自身のパフォーマンスと、その報酬が釣り合っていないと感じる社員や、評価制度、休日休暇、終業時間、オフィス環境に対する不満足からも生じることがあります。

⑤上司への「失望感」

上司だからこそ、と期待していたにもかかわらず、その期待を裏切られた事からくる失望感です。

期待していた上司が思いのほか頼れなかったという落胆や、上司を「非の打ちどころのない人間」と期待しがちな部下が期待を裏切られたと感じる際に生じるケースが多いです。

⑥職場への「無力感」

職場に対して働きかけをしても、どうせ無駄であると思っている事からくる無力感です。

職場への一員として、自分寺院の貢献実感を得られないことに起因したり、職場に対いて提案などの働きかけをしても、十分な反応が得られない時にも蔓延していきます。

離職率が向上する要因(=エンゲージメントが低下する要因)は大別すると上記6つに集約されるため、離職率を改善したい場合はどの項目に注力するべきか?を検討できると良いでしょう。

また、また世の中の調査で挙がっている退職理由を抽象化すると、退職理由のナンバーワンは「人間関係」であることも理由としてあげられています。

適切な人間関係が構築できていないからこそ、上記6つの離職要因を感じ易くなることも十分ありえます。常日頃から良好な関係を育んでおくことが最も大きな離職対策になるでしょう。

離職率が高いことによる企業側のリスク

離職率を0にする必要はないですが、適正値より離職率が高い企業にはリスクが生じます。以下に生じるリスクを記載しましたので、見ていきましょう。

■コストの増大

退職者が1人発生し、外部から大体社員を調達する場合には約450万円のコストが生じると言われています。

採用に関わる広告費、人材紹介会社への紹介料、選考活動に割いた時間、育成面での再インプットなど、直接的にも間接的にも大きなコストを支払うことになります。

■組織エンゲージメントの低下

離職者が出ることで、同じ職場の人間のエンゲージメントが低下することがあります。同僚が居なくなることで残っている人間に物理的、精神的な負荷がかかり、連鎖的に離職が発生するケースもあります。

■企業ブランドの低下

離職率が高い企業は採用活動で大きなハンディキャップを持ちます。(コンサルティング業界や投資銀行業態など、それが前提となっている企業を除く)一度ついた負のイメージを払拭するには10倍のパワーがかかるため、長期において労働市場の中で競争力が無い状態に陥ってしまいます。


■事業計画の遅れ

企業の戦略を考えるのもそれを実行するのも「人材」であるため、離職率が高い場合は計画した事業計画通りに事業活動が進まないことが多いです。

役員や上級管理職、専門性を持った人材などが離職をした場合は育成に相当な年月が必要になるため、その傾向が更に高まると言えるでしょう。

離職率を抑えるための方法

従業員が企業に属する際には、必ず何かしらの期待(目的)があります。それが得られると感じるからこそその企業に所属を続けますし、それが得られないと感じた場合はその企業から離脱する(離職する)という構図です。

だからこそ、従業員が「何に期待してこの会社に属しているのか」という期待把握、すなわち「モチベーションマーケティング」がすべての起点になります。モチベーションマーケティングの実施を「入社前」と「入社後」に分けて考えてみましょう。

■入社前の「エントリーマネジメント」の実践

入社前に応募者の「モチベーションマーケティング」を実施し、応募者が働く上で欲しているものと、企業が提供できるものを擦り合わせることを「エントリーマネジメント」(入社時のモチベーションマネジメント)と呼びます。

また、応募者が欲しているものを理解するためのフレームワークとして、社会心理学の「4つのP」を覚えておけると良いでしょう。


ビジョン(理念・戦略)、活動内容(事業・仕事)、構成員(人材・風土)、特権(制度・待遇)の頭文字のPをとって「4つのP」と称していますが、従業員の期待は必ずこの中のどれかに包含されます。

応募者がどの要素を求めており、その価値観はどのように形成されたのか?をしっかりと把握するための選考活動を行う事、加えて「自社だとどのような魅力を提供することが出来るのか、それは何故かを説明する事」によってしっかりと「入社前の期待値調整」を行うことが可能になります。

ポイントは「提供出来ない魅力は、その旨をしっかりと伝える」事でしょう。

海外で働くことを期待している応募者に対して、海外で働く機会が無い企業が「働けます」と言ってしまうと入社後にミスマッチが生じることは想像に難くないかと思います。

自社が提供できる魅力とそうではない魅力を切り分けて伝えることが、将来的な離職率の低下に繋がる行為だと言えるでしょう。

■入社後の「リテンションマネジメント」の実践

上記の従業員の期待把握は入社前だけしていれば良い訳ではありません。なぜならば、従業員が企業に求めるものは年齢や勤続年数、ライフスタイルの変化によって移ろうものだからです。

可変的なものだからこそ、企業は入社後にも従業員が求めているものを理解し、そこに対応をし続けていく必要があります。これを「リテンションマネジメント」と呼びます。

定期的に上長が1on1を実施することも、従業員満足度調査を行うことも、社員の声を拾うためのあらゆる組織施策も、「期待の再把握」をするために実施している、という理解のもと実行をしていることが大切だと言えます。

離職率の改善例

前述の「モチベーションマーケティング」や「従業員との期待値調整」を駆使する事で、離職率を大幅に改善した企業を2社紹介いたします。

■株式会社グッドパッチ

「デザインの力を証明する」をミッションに掲げ、企業のデザインパートナーとして、リンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」やニュースキュレーション・アプリ「Gunosy」、家計簿アプリ「MoneyForward」などの UI/UX デザインなど設計を行った実績もある「株式会社グッドパッチ」。

ほとんどの社員がデザイナーとエンジニアというデザイン組織であり、クライアントワークを主事業としています。数年前には「50人の壁」に大きくぶつかり、採用した社員の離職率40%、役員層が全員退職。そのような状況に陥っていた時期がありました。

マネジャー不在のまま拡大を続けたていた状況を打開するために「プレイングスキル重視」での登用をしたこと、採用時もスキル最優先での採用を継続した結果「会社の成長や発展に興味関心が無い」人が要職についてしまうという状況に陥り、結果として離職率は40%を超えることに。

その状況を打開するため、「グッドパッチの社員が信じられるコアバリューと企業文化を再構築する」という決断をしたグッドパッチ。

30名ほどの有志と一緒にミッション・ビジョン・バリューを再構築することにしました。

また、その内容が社内に浸透するためにも浸透チームを立ち上げ、浸透チームとマネジャーが一体となって組織施策を実行し、組織の雰囲気が大きく変わったといいます。

「会社の成長や発展を自分の喜びとする人」だけが属している状況になった今、離職率は8%程度と32%程度の改善に繋げることが出来ています。

※参照:離職率40%から8%への道のり、組織崩壊の状態からグッドパッチが立ち直れた理由

■ラクスル株式会社

「仕組みを変えれば世界はもっと良くなる」をミッションに掲げ、印刷物を全国の印刷会社の余っているキャパシティの機械を利用して印刷し、お客様に届ける「ラクスル」というサービスを提供しているラクスル株式会社。

最近では物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」広告のプラットフォーム「ノバセル」という新たな事業にもトライしています。

また今では200人を超える企業になりIPOも果たしましたが、2004年当時は正社員が15〜20名という規模にも拘らず退職率が30%に至っていました。

採用では、スキルと会社へのフィットで言うと、スキルベースで人を採っていったので、会社に対する理念の浸透や愛着という部分が弱く、結果的に退職、退社に繋がっている場合が多かったとのことです。

当時特に困っていたのが、経営者とそれ以外の人材の情報量や成長スピードに差が出てしまい、意思疎通が上手くいっていなかったという課題。それを払拭するために、経営者の考えを明文化し、それを結節する人材を育成するという取り組みを行いました。

具体的にはマネジメント層がビジョン・ミッション・バリューを徹底的に議論し、4〜5ヶ月程度考え抜くというプロジェクトの立ち上げ、ビジョン・ミッション・バリューを1泊2日の合宿形式で伝えるシェアリングデイを実施。

更にはビジョン・ミッション・バリューを現場レイヤーに自分の言葉で語るマネジメント層を育成するための研修プロジェクト、バリューをコンピテンシーに組み込んだ人事制度の構築などを経て、会社の考えが伝達率高く浸透している状態を創りました。

結果として30%の離職率は10%程度まで下がり、順調に事業を伸ばすための強固な組織を創ることに成功した事例になります。

※参照:退職率30%からの組織改革。ラクスルの成長を支えた人事制度・カルチャーづくりとは?

記事まとめ

いかがでしたでしょうか?離職率を下げるためには常日頃からエンゲージメントが高い状態、すなわち「会社と従業員の信頼関係」を築いておくことが最も効果的な方法かと思います。

「この会社であれば自分の期待しているものが手に入る」「この会社にもっと貢献したい」そのような意欲が高まるのと比例して、離職率は下がってくるもの。

そのような「エンゲージメント経営(エンゲージメントを軸にした経営手法)」推進の一助として、今回の記事が役に立ったのであれば幸いです。

坂上 進一郎
坂上 進一郎

【プロフィール】 2010年リンクアンドモチベーション入社。 大手、中堅・スタートアップ企業などあらゆる規模のコンサルティングに従事。 「理念策定・浸透」「採用戦略構築」などを主な領域としながら、 のべ200社を超える企業のエンゲージメント経営支援の経験を持つ。

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