カフェテリアプランの仕組みとは?導入のメリットや注意点を解説
目次[非表示]
近年、福利厚生の提供方法として「カフェテリアプラン」を導入する企業は増えてきています。
導入を検討している企業のご担当者の皆様の中には、「名前は知っているけれど、どんな制度なのかよく分からない」「導入をしてみたいけれど、イメージがわかない」などとお悩みの方も多いのではないでしょうか。
カフェテリアプランは、従業員一人ひとりのニーズに合わせて提供する福利厚生のメニューを選択することができる、選択型の福利厚生サービスなので、働き方の多様化が進む近年、従業員の満足度を充足させる手段として期待をされています。
本記事では、カフェテリアプランの概要、メリットとデメリット、導入方法や注意点などを紹介していきます。
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら
▼ 人事が知っておくべき「働き方改革」の内容とは?その実現法についても独自の視点で解説!
カフェテリアプランとは?
カフェテリアプランとは、選択型の福利厚生制度のことです。
企業から従業員に対して、一定期間にポイントが付与されます。会社が提示している福利厚生のメニューの中から好きなメニューを選び、ポイントと引き換えに福利厚生を利用していくというものです。
従来の制度とは異なり、各個人のニーズに合わせて福利厚生を提供することができるので、従業員の生活を福利厚生の面からサポートし、満足度を高めることができるのが特徴です。
この制度がカフェテリアプランと呼ばれている理由は、好きな食べものや飲み物と豊富な選択肢の中から自由に選ぶことができる飲食店の形態、”カフェテリア”から来ています。
▼福利厚生に関する記事はコチラ
福利厚生とは? 種類や制度の仕組み、導入のメリット・ポイントを紹介
■カフェテリアプランの仕組み
カフェテリアプランを導入すると、一年などの一定期間ごとに従業員一人ひとりにポイントが付与されます。このポイントの範囲内で従業員は福利厚生メニューを選択することになります。
このポイントの総額が従業員一人が享受できる福利厚生の金額ということになります。労務研究所によると、2020年の従業員一人あたりのポイント配分額の平均は、年額6万5227円だったということです。
金額をポイントに換算していますが、ポイントの単価設定は会社によって異なります。
1ポイント=1円、100円、1000円など、企業によって設定金額にはバリエーションがあるようです。
またカフェテリアプランを導入する企業側としては、福利厚生の各メニューへのポイント設定は重要な観点です。ポイントの設定方法によっては、そのメニューの利用促進につなげることもできるので、戦略的に決めるとよいでしょう。
カフェテリアプランのポイントの利用方法は簡単です。多くの場合、用意されている会員サイトにログインし、利用したい選択メニューを選んで申請を出せばOKです。
選んだメニューによっては必要な手続きを行います。利用したメニューによってポイントが消化されていくという仕組みです。
■現状のカフェテリアプラン
一般社団法人日本経団団体連合会の報告によれば、2019年度のカフェテリアプランの導入者数は104社となり、2015年から100社前後を推移しています。
割合にすれば、経団連会員企業の約17.1%で、2015年度の調査結果には、2002年度時点では導入率は4.3%だったとあるので、17年間で約4倍に増加していることが分かります。
参考:一般社団法人日本経団団体連合会 第64回 福利厚生費調査結果報告
参考:一般社団法人日本経団団体連合会 第60回 福利厚生費調査結果報告
また導入企業の特徴としては、企業規模が1000人以上の企業での導入割合が8割以上を占めていることです。これは運営費用などのスケールメリットを得やすいことからなどの理由が背景にあるようです。
さらに、導入企業の中でのカフェテリアメニューの費用の分布は、従業員一人一ヶ月あたり1000円未満〜5000円以上の開きがあるものの、5000円以上が24社と最も多い結果となっています。
カフェテリアメニューの費用のうち、利用されている割合が高いメニューとしては、「ライフサポート」と「文化・体育・レクリエーション」で、全体の8割を占めていました。
「ライフサポート」の中では、「財産形成」が最も多く、次に「保険」、「食事手当・給食補助」と続いています。「文化・体育・レクリエーション」の中では、「活動」「自己啓発」が主に利用されているようです。
■カフェテリアプランが始まった背景
カフェテリアプランは、アメリカ合衆国で生まれた制度です。近年ではより幅広い意味で「フレキシブル・ベネフィット・プラン」と呼ばれるケースもあります。
1970年代にアメリカ合衆国の医療コスト上昇と従業員ニーズの多様化への対策として一部の企業に導入され始め、1978年に内国歳入法によって規定されたことで、一般的に普及した制度です。
日本では、日本初のカフェテリアプランが1995年にベネッセコーポレーションによって導入されました。
同社の公式サイトによれば、「いざという時の支援(セーフティネット)」「個人の自助努力促進」「育児・介護支援」を視点に組み立てられており、
社員の自立を通じた生活向上のサポート、生活リスクに対する備え・支援を行うことで、働きやすい労働環境を提供することを目的としています。
現在の日本で、カフェテリアプランの導入が増加している背景には、大きく2つの時代背景があります。
・従業員のライフスタイルの多様化
少子高齢化や晩婚化、共働き世帯の増加、リモートワークなど、社会の変化にともなって従業員の生活様式も変化し続けています。
従来の画一的な福利厚生制度では、本当に従業員の生活を支援できる制度とは言い切れなくなっているのです。
・正規雇用と非正規雇用の従業員に対する待遇差の是正
同一賃金同一労働の実現に注目が集まってきていることもあり、正規雇用者と非正規雇用者との間の待遇差の是正が求められています。
カフェテリアプランでは、付与されたポイントの中であれば自分で福利厚生を選ぶことができるので、不満や不合理な待遇差を少なくすることが期待できるのです。
■パッケージサービスとの違い
カフェテリアプランと似ている福利厚生サービスとして、「パッケージサービス」があります。名前から連想できるイメージは似ていますが、内容は全く異なるため、正しく理解することが必要です。
カフェテリアプランは、企業から付与されたポイントを使って、自分の好きな福利厚生メニューを利用することができる「選択型の福利厚生サービス」です。
一方で、パッケージサービスは、企業側が定額制で従業員一人あたりの費用を支払い、従業員は予めパッケージ化されているサービスを利用することのできる、「定額制の総合型福利厚生サービス」です。
両者の大きな違いは、選択肢の自由度です。パッケージサービスでは、福利厚生アウトソーシング会社が予め用意しているパッケージの中にある福利厚生メニューしか選ぶことができませんが、
カフェテリアプランでは、アウトソーシング会社が用意したメニューに加えて、自社独自のサービスを組み合わせることができます。
つまり、カフェテリアプランではより従業員一人ひとりに即したサービスを提供できるということなのです。
カフェテリアプラン導入のメリットとデメリット
■カフェテリアプランのメリット
カフェテリアプランの主なメリットは以下の4つです。
・福利厚生費の管理がしやすくなる
カフェテリアプランでは、従業員一人ひとりに対して一定のポイントを事前に付与し、その中で従業員自身が選んだ福利厚生メニューを受けるという方式です。
そのため、従業員が受けた福利厚生メニューによって福利厚生費が変動することがないので、予算をオーバーしてしまうといったリスクがないことが利点として挙げられます。
・従業員の多様なニーズに答えられ、満足度向上につながる
これまでの福利厚生制度は、会社が決めたメニューを与えられるという受動的なものでした。
しかし、カフェテリアプランでは予め用意された福利厚生メニューの中から自分で選択をするため、多様なニーズに対応ができます。
また、従業員本人が選択をしているため、納得感も高まり、満足度向上に繋がります。
・福利厚生の格差を小さくできる
近年注目を集めている、「同一労働同一賃金」の観点からも、従業員の雇用形態や性別などで会社からの待遇に格差があることは問題視されています。
そういった観点からも、従業員の多様なライフスタイル(女性、子育て世代、地方勤務など)を踏まえて用意された福利厚生メニューを組むことで、不公平感の解消が期待できます。
・企業のメッセージを社内外に発信できる
どんな福利厚生制度が用意されているかは、社内の従業員へも、社外の転職希望者などのステークホルダーに対しても発信されるメッセージになります。
社内に対しては、用意された福利厚生メニューの内容から、会社が従業員へ求めていることや、従業員への思いを伝えることができます。更に、社外へのメッセージとしては、主に転職市場への発信ができるでしょう。
福利厚生が充実していることや、カフェテリアプランという社員一人ひとりに合った福利厚生を用意しているということは、求職者へのアピールポイントとなります。
■カフェテリアプランのデメリット
カフェテリアプランには、以下のようなデメリットもあります。
・運用コストがかかる
カフェテリアプランの運用のためには、一定のコストがかかります。まず、カフェテリアプランのポイントを管理するシステムの導入に加え、導入後も管理のための人員と費用がかかります。
また、一度作成したカフェテリアプランのメニューも、時間が経てば再考が必要です。
企業のステージによって、従業員のニーズも変化するため、メニューごとの利用率や従業員へのヒアリングを参考にしながら定期的にメンテナンスをしましょう。
【参考資料のご紹介】
エンゲージメント向上に成功した企業・部署のトップが実際に語った事例資料「日本一働きがいのある会社~部署が変われば企業が変わる~」はこちらからダウンロードいただけます。
カフェテリアプランの導入から運用までの流れ
カフェテリア皇蘭を実際に導入し、運用するまでの流れを簡単に説明します。
流れは、「導入」と「運用」の大きく2つに分かれています。
■導入フェーズ
導入フェーズは、自社に合ったカフェテリアプランを構築し、システムを開発するまでのフェーズを指します。
導入フェーズでは以下2つのステップがあります。
STEP①:制度設計
カフェテリアプランの制度設計のために、カフェテリアプラン導入の目的を明確化し、現行の制度や新たなニーズを踏まえて、福利厚生のメニューを選定していきます。
また、付与ポイントや対象、課税・非課税など運用にあたってのルールも策定します。
STEP②:システム開発
STEP①で決定したメニューと運用ルールに合わせたシステムを開発します。多くの場合は、福利厚生制度のアウトソースサービスを使って、企業にあったシステムを構築することが多くあります。
■運用フェーズ
制度の運用がスタートしてからは、きちんとカフェテリアプランが活用されるよう現場にアプローチし、管理をしていく必要があります。
STEP③:社内告知&利用促進
カフェテリアプラン導入にあたって、新しい福利厚生制度の説明やシステムの使い方を現場へ案内をする必要があります。
また、福利厚生の利用を促進するために、活用事例の紹介や福利厚生を利用することが認められる組織の雰囲気作りも重要です。
STEP④:運用管理
従業員がカフェテリアプランの申請をシステムで行うため、その運用のサポートを行います。なるべく現場社員に負担をかけないよう、システムの管理業務を担当部署で代行したり、アウトソースサービスで代行するケースもあります。
STEP⑤:分析・改善
カフェテリアプランの運用が軌道に乗ったあとも、定期的に利用状況を分析することで、従業員のニーズの変化に適応していくことが必要です。
カフェテリアプランの注意点
カフェテリアプラン導入にあたっては、注意すべき点がいくつかあります。
■カフェテリアプランのポイントは課税になる場合がある
カフェテリアプランのポイントが課税対象なのか非課税対象なのかは、迷いやすいポイントです。
国税庁によれば、カフェテリアプランの課税・非課税については以下のような見解を示しています。
・カフェテリアプランのポイントは、メニューによって課税・不課税を判断する
“従業員に付与されるポイントについては、現に従業員がそのポイントを利用してサービスを受けたときに、その内容に応じて課税・非課税を判断するものとして差し支えないと考えられます。”
・職務上の地位や報酬額でポイントが異なる場合は、一律課税対象となる
”ただし、企業の福利厚生費として課金されない経済的利益とするためには、役員・従業員にとって均等なものでなければならないことから、
役員・従業員の職位上の地位や報酬額に比例してポイントが付与される場合には、カフェテリアプランのすべてについて課税対象となります。”
・ポイントを現金に換金するメニューは、課税対象となる
”課税されない経済的利益は企業から現物給付の形で付与されるものに限られますので、ポイントを現金に換えられるなどの換金性のあるカフェテリアプランは、その全てについて課税対象となります。”
参考:国税庁「カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合」
課税・非課税の区別は、様々な観点があるため、課税・非課税についてはしっかりと理解した上でカフェテリアプランを運用しましょう。
例えば、一口に換金性のあるメニューといっても、イメージしやすい金券やギフト券、チケットなどの購入補助もあれば、同じ費用補助メニューでも健康診断や医療費の補助などは非課税対象となる場合があります。
■ポイントの期限切れへの不満がでる場合がある
カフェテリアプランで付与されるポイントには、有効期限があります。
多くの企業では単年度精算方式を採用しているため、ポイントが付与されてから一年のうちに使わなければ、ポイントは消滅してしまうため、従業員の不満につながるケースがあります。
単年度精算方式は、毎年ポイントをゼロリセットすればよいため、ポイント管理がシンプルになるというメリットがあります。しかし、次年度にポイントが繰り越せないことへの従業員の不満を認識しておく必要があります。
■一人あたりのコストが割高になる場合がある
カフェテリアプランは従業員に一定のポイントを付与しますが、ポイントの設定金額によっては、一人あたりのコストがカフェテリアプラン導入前よりも割高になってしまう場合もあります。
導入前にきちんとシミュレーションを行い、従業員にとっても企業にとってもメリットのある制度設計をしましょう。
よくあるカフェテリアプラン
■一般的なカフェテリアプラン
カフェテリアプランで用意されるメニューは企業毎に異なっています。カフェテリアプランでは、企業に所属している幅広い年齢層、性別、家族構成など、ライフスタイルが異なる従業員に対するニーズを満たしやすい制度です。
そのためカフェテリアプランは様々なニーズに合わせて、多種多様なメニューを用意しておく必要があります。
例えば、「育児」に関するメニューを充実させたとしても、単身者や子供のいない家庭にとっては意味のないサービスとなってしまいます。
そういったことのないように、カフェテリアプランでは様々なニーズに合わせたメニューがあります。ここではその一例をご紹介します。
・住宅:家賃補助、住宅融資利子補給、家持援助など
・財産形成:財産貯蓄奨励金、持株会奨励金など
・健康/医療:健康づくり・フィットネス利用援助、各種検診・健診補助など
・育児:育児関連費用補助など
・介護:介護関連費用補助など
・生活支援:社員食堂・食券利用補助、子供教育費用補助など
・余暇支援:宿泊・旅行費補助、チケット・イベント・レジャー施設利用補助など
カフェテリアプラン導入企業例
■ベネッセコーポレーション
ベネッセコーポレーションでは、日本で最初にカフェテリアプランが導入されました。同社の福利厚生制度は、「いざという時の支援(セーフティネット)」、「個人の自助努力促進」、「育児・介護支援」という3つの観点から構成されています。
社員の自立性や、生活向上の支援、生活リスクに対する備えを提供することで、従業員が働きやすい環境を作ることを目指しています。
ベネッセコーポレーションのカフェテリアプランでは、従業員一人ひとりの多様な価値観や生活状況に応じて、できるだけ有意義な福利厚生が提供できるよう、メニューが設定されています。
例えば、住宅補助、出産・育児、子供の教育・療育、医療・健康促進、財産形成、ボランティア活動補助などです。
■SUBARU
SUBARUでは、2007年から個人の自己啓発を進めるためにカフェテリアプランを採用しています。
カフェテリアプラン型福利厚生制度「マイビジョン」に含まれているメニューは、介護や育児、子供の教育支援などの生活支援、人税設計のセミナーや相談機会を得られる人生設計、スポーツクラブや宿泊施設、
パック旅行、文化鑑賞、スポーツ観戦、レジャー施設等の利用が含まれるリフレッシュ、さらに社内製品の購入や系列販社の車検修理などを受けられる自社製品のカテゴリなどで構成されています。
同社でのカフェテリアプランの特徴は、会社が指定する公的資格の取得を目的としたセミナーや受験費などが、カフェテリアプラン型福利厚生制度「マイビジョン」に含まれていることです。
従業員一人ひとりの専門技術が成果のもととなる同社らしいカフェテリアプランの設計です。
■日立製作所
日立製作所では、カフェテリアプランを平成12年(2000年)に導入しています。
同社は、従業員の価値観やライフスタイルの多様化に応えるため、カフェテリアプランの導入を決めたとしています。
さらに社会的な課題である育児・介護への従業員の対応を支援し、福利厚生の適正化と公平性を担保することを目指すともしています。
同社のカフェテリアプランでは、各従業員に400ポイント(約50000円相当)を付与し、従業員は育児・介護、自己啓発に関わる費用や保養施設、体育・レジャー施設利用料等の29種のカフェテリア・メニューから希望するメニューを選択します。
さらに、35~45際の従業員に対しては、「ポジティブ・ユース・ポイント(自己投資加算)」というポイントが加算されます。
これは、この年齢をライフステージの見直しの転機と位置づけ、スキルアップや新たな能力開発のための自己啓発、生活面でのリフレッシュをするためのものとして設定されています。
参考:HITACHI「カフェテリアプラン制度の導入について」
記事まとめ
いかがでしたでしょうか。従業員の価値観やライフスタイルの多様化により、企業が提供する福利厚生制度は、一人ひとりのニーズに対応し切ることが難しくなってきています。
従業員の企業に対する満足度を保ち、彼らのモチベーションを高めるためにも、企業からの福利厚生は見直される必要があるでしょう。
新しい福利厚生制度の形として、カフェテリアプランの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら