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【前編】ベストモチベーションカンパニーアワード2021(中堅・成長ベンチャー)レポート 株式会社LIFULL (ライフル)  エンゲージメントは「挑戦の原資」コロナ禍のピンチをチャンスにする取り組み

「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(社員の会社に対する共感度合いを表す指数)が高い企業を表彰するイベントです。

2021年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー部門」の2部門制で表彰をおこないました。今年度、「中堅・成長ベンチャー部門」受賞企業のなかでも、特にエンゲージメントスコアが高く、かつこれまでのスコアの変化度合いが大きい2社をゲストにお招きしてトークセションを開催。株式会社LIFULLの執行役員で人事本部長の羽田幸広氏と、株式会社メッセホールディングスの専務取締役、宮本茂氏にご登壇いただきました。

「モチベーションカンパニーづくりの秘訣とは」をテーマに、エンゲージメントを大事にするようになったきっかけ、2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大による影響、コロナ禍におけるエンゲージメント向上の取り組みなどをお話しいただきました。

【イベント実施日】
2021年3月9日

【スピーカー】
・株式会社LIFULL 執行役員 CPO 人事本部長 羽田 幸広 氏
・株式会社メッセホールディングス 専務取締役 宮本 茂 氏
・株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役社長 坂下 英樹

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション 中堅・成長ベンチャー企業向けコンサルティング事業 責任者 白木 俊行

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従業員エンゲージメントは「挑戦の原資」

リンクアンドモチベーション 白木:LIFULL様は、1997年に創業された企業様で、不動産情報サービスの「LIFULL HOME'S (ライフル ホームズ) 」など、海外も含め幅広く事業を展開されていらっしゃいます。従業員数は約1,500名、売上高は約400億に迫る勢いで成長されていらっしゃる企業様です。

十数年前から弊社のエンゲージメントサーベイを導入していただいており、2017年度はベストモチベーションカンパニーアワードの1位を獲得され、2021年度は3位にランクインされています。直近5年間のエンゲージメントレーティング(※)も、一度を除いてすべてAランクを超えていらっしゃいます。

※エンゲージメントレーティングはエンゲージメントスコアを11段階で格付けしたものです。「A」「AA(ダブルエー)」「AAA(トリプルエー)」は11段階中、上位3つのレーティングです。

LIFULL様にはまず、「なぜ、組織づくりにおいてエンゲージメントを大事にしようと思われたのか?」という点についてお伺いしたいと思います。

LIFULL 羽田氏:エンゲージメントは、「挑戦の原資」だと考えています。

当社はあらゆるLIFEをFULLにするために、基幹事業である不動産情報サービスをベースに、海外展開、新規事業の立ち上げなどを積極的におこなっています。挑戦の原資であるエンゲージメントを高め、増やすことによって、社員からの新規事業提案や改善提案が沢山なされることを期待しています。

よって、経営理念を実現するためにエンゲージメントへの取り組みは必要不可欠となっています。

そして、社員のWellbeingの観点でも、エンゲージメントは重要だと考えます。

Wellbeingは、良い人生を送る、人生の充実といった意味合いがあります。

この実現のためには、仕事の充実感も大切で、仕事の充実感のためには内発的動機(人の内側から出る「これをしたい」という欲求)をもとに働くことが大切だと考えます。

内発的動機に基づいて仕事をしてもらった結果、社員が自発的に楽しくワクワク仕事ができるようになり、エンゲージメントの数字が上がる。

そして、思い切り仕事ができるとWellbeingにつながる。このように経営理念の実現のため、そして社員がWellbeingになるために、エンゲージメントを高めようと考えています。

エンゲージメントの高さは、「変化対応力」に現れる

リンクアンドモチベーション 白木:二つ目の質問として、2020年のコロナ禍で、事業・組織にどのようなインパクトがあったのかをお伺いしたいと思います。

LIFULL 羽田氏:コロナ禍になり、事業に関連することと組織に関連することの2つの動きがありました。

まず、昨年の4月に緊急事態宣言が発令されたタイミングで、業績予想の下方修正を早めに出すことを経営陣で決定しました。

緊急事態宣言が延びると、基幹事業のLIFULL HOME'Sをはじめ海外事業にも影響があると考えたためです。

ただ、社内では「ピンチをチャンスに」と声をかけ合いながら、このタイミングだからこそ前向きにオンライン化をはかって事業を伸ばしていこうと考え、たとえばLIFULL HOME'Sでは、住まいを探すお客様や不動産会社様の安全も守るために、物件見学や契約手続きをオンラインでおこなえるサービスを積極的にご提供していきました。

2つ目のインパクトとしては、ハイブリッドワーク(オフィス勤務と在宅勤務の混合)です。

緊急事態宣言中は原則として在宅勤務とし、今後、宣言が解除された後についても、基本的にはオフィス勤務3日、在宅勤務2日と、ハイブリッドワークを継続していく予定です。

リンクアンドモチベーション 坂下:エンゲージメント経営の本質とは「変化対応力」なんです。その意味で、緊急事態宣言を受けてすぐに判断、変化できるLIFULL様は、まさにエンゲージメント経営が根付いている企業だと思います。

「エンゲージメントを高めて何がプラスになるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり、60台、70台のエンゲージメントスコアを出されている企業様は変化対応力が際立っています。判断スピードが早いのはもちろん、その根底には社員が付いてきてくれるという自信もあります。そのあたりは、羽田様のお話からすごく感じましたね。

社員を大切にすることで、コロナ禍でもエンゲージメントを維持・向上できる

リンクアンドモチベーション 白木:LIFULL様はコロナ禍においてもエンゲージメントスコアを維持・向上させていますが、どのような取り組みをされていたのでしょうか?

LIFULL 羽田氏:一言で説明すると、社員を大切にしました。

たとえば、去年の春に休校要請が出たときに、即座に子育て中の社員を支えるために特別有給制度を設けたり、お子さんと一緒に出社することを許可したりしました。

もともと育児・介護・自分の病気などの理由があれば在宅勤務を認めていましたが、2020年の春から、全社員が在宅勤務できるようルールを変更しました。

また、在宅勤務への変更に伴う通勤交通費等のコスト改善を踏まえ、正社員の月例給与を約10%増額する等、社員の給与のベースアップをおこないました。

緊急時の体制変更に、即座に対応してくれた社員に対して、僕ら(会社)も応えていくよというスタンスで、社員を大切にしてきました。

在宅勤務の懸念を払拭する、「新しいコミュニケーションのルール」を設定

LIFULL 羽田氏:ハイブリッドワークに伴い、在宅勤務をベースとした勤務ルールも新たに策定しました。

在宅勤務になると、短期的には体調不良者が出たり、目標設定や評価設定をどうするのか?と悩む方もいると思います。

もう少し長期的な視点で考えると、社員の心理的安全性が減少していく懸念も出てきます。

また、在宅勤務では、社内での出会い頭で発生していたコミュニケーションがなくなり、雑談や部門を超えた知と知の交流も減少します。

そこで、在宅勤務のコミュニケーション量を全社で揃えるために、スライドにあるような「新しいコミュニケーションのルール」を策定しました。

特に、オンライン推奨の「サークル活動」は70を超えるサークルが立ち上がり、予想以上に人気でした。

在宅勤務の中でも、部門の壁を超えたコミュニケーションを生むことができると実感したと共に、安定した情報流通量を確保できたと思っています。

「一貫」「自律」「信頼」を大切にする

リンクアンドモチベーション 白木:最後に、エンゲージメントの高い会社を作る秘訣についてお伺いしたいと思います。

LIFULL 羽田氏:エンゲージメントを高めるためにはどうしたらいいか?と、普通に考え、正面から取り組むのが秘訣だと思います。

「普通に」というのは、とてもシンプルで「自分がやられたくないことはやらない」といった考え方です。

逆に、「コロナ禍では社員は何をしてもらったら嬉しいかな」と普通に考え、一つずつできることを一生懸命にやっていく。

それを継続していくことが、エンゲージメントの高い企業を創るうえで大事なことだと思います。

「普通に取り組む」を、もう少し嚙み砕いてご説明すると、経営理念に対して「一貫」した経営をおこない、一貫した採用をおこなうことが大切だということです。

経営理念を実現するために会社をつくっていますので、その経営理念を実現するための戦略や組織を創り、それに共感してくれる同志を採用する。

企業カルチャーも、経営理念実現に必要なカルチャーを策定したうえで育てていきます。

もし経営陣が言っていることと、実際の業務の実態が異なっていれば、社員に「聞いていたことと違う」「一貫性がない」と感じられてしまい、社員のやる気も下がってしまいます。

自分たちが掲げた看板に対して、一貫した経営と採用をおこなうことが、何より大事だと思っています。

そのほかにも、人間は基本的に、自ら選択して自らの意思で仕事を進めていけるとやる気が高まると思いますので、「自律」を促すことは重要だと思います。

また、自律を促すためには、会社と社員、そして社員同士が「信頼」し合っているという点がとても重要です。

一貫性のある経営をおこない、社員の自律を促し、社員と会社、社員同士の信頼関係を構築することが、エンゲージメントを高めるポイントだと思っています。

リンクアンドモチベーション 白木:「普通に考える」って、簡単なようでなかなか難しいことだと思います。羽田様のなかにLIFULLの理念が入り込んでいて、普通に考えれば理念に基づいて言葉が出てくるようになっているのが、本当にすごいところだなと思いました。

最後にひと言、お願いします。

LIFULL 羽田氏:私たちも日々試しながら、組織づくりに挑戦しています。組織に完成系やゴールはなく、常に揺らぎがあるものだと思います。これからもいろんな挑戦をしながら、あるべき姿を求め続け、事業の成長・成功につなげていければと思っています。

リンクアンドモチベーション 白木:本日はありがとうございました。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。



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