【後編】ベストモチベーションカンパニーアワード2021(中堅・成長ベンチャー)レポート 3年間でスコア175%向上!中堅企業エンゲージメント日本一を実現した「大家族主義」経営
「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(社員の会社に対する共感度合いを表す指数)が高い企業を表彰するイベントです。
2021年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー部門」の2部門制で表彰をおこないました。今年度、「中堅・成長ベンチャー部門」受賞企業のなかでも、特にエンゲージメントスコアが高く、かつこれまでのスコアの変化度合いが大きい2社をゲストにお招きしてトークセションを開催。株式会社LIFULLの執行役員で人事本部長の羽田幸広氏と、株式会社メッセホールディングスの専務取締役、宮本茂氏にご登壇いただきました。
「モチベーションカンパニーづくりの秘訣とは」をテーマに、エンゲージメントを大事にするようになったきっかけ、2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大による影響、コロナ禍におけるエンゲージメント向上の取り組みなどをお話しいただきました。
【イベント実施日】
2021年3月9日
【スピーカープロフィール】
・株式会社LIFULL 執行役員 CPO 人事本部長 羽田 幸広 氏
・株式会社メッセホールディングス 専務取締役 宮本 茂 氏
・株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役社長 坂下 英樹
【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション 中堅・成長ベンチャー企業向けコンサルティング事業 責任者 白木 俊行
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従業員の幸せを追求する、「大家族主義」経営
リンクアンドモチベーション 白木:続いて、メッセホールディングス様についてご紹介させていただきます。メッセホールディングス様はパチンコ事業を中核事業として、東京を中心に店舗を展開されています。また、人々が集いたくなる居場所づくりを掲げ、パチンコ事業以外にも多角的に事業を展開されているエンタテインメント企業様です。
弊社のモチベーションクラウドを導入していただいて、わずか3年でエンゲージメントスコアを約40も上昇させた稀有な企業様で、今回のベストモチベーションカンパニーアワード(中堅・成長ベンチャー企業部門)でも見事1位に輝かれました。
まず、「なぜ、組織づくりにおいてエンゲージメントを大事にしようと思われたのか?」についてお伺いしたいと思います。
メッセホールディングス 宮本氏:10年ほど前に業界の規制が変更されたのですが、そのときに弊社は売上が大幅に減少しました。売上が下がったので利益を出さなければいけないと、その際に他の企業に倣っておこなったのが早期退職制度です。
早期退職制度によって一時的には経費は圧迫され、事業的にも持ちこたえることができたのですが、社内の雰囲気は一気に暗くなってしまいました。
このことが、経営の目的を問い直すきっかけになりました。当時、社長と副社長と私の役員3人で会議をおこなった結果、経営の大方針として掲げたのが「大家族主義」です。
会社を経営していくうえでもちろん利益は必要ですが、これはあくまで手段でしかありません。会社の目的を問い直したとき、行き着いたのは従業員の幸福でした。そして、手段と目的を履き違えてはいけないということをあらためて確認し、従業員の幸せを追求する「大家族主義」という経営方針を打ち出すことにしました。
従業員の幸福とエンゲージメントはほぼイコールの話ですから、経営方針を実現するためにエンゲージメントの向上に努め、今日に至っています。
緊急事態宣言を受けて休業した2ヶ月間も給与は全額支給
リンクアンドモチベーション 白木:基幹事業であるパチンコ事業はコロナ禍で大きな影響を受けたと思いますが、あらためて2020年のコロナ禍で、事業・組織にどのようなインパクトがあったのでしょうか?
メッセホールディングス 宮本氏:我々は、緊急事態宣言が出た当日に全店休業の判断をしました。全店一斉休業ということで2ヶ月休みましたので、その間の売上はゼロです。しかし、この2ヶ月間、アルバイトも含めて全社員にそれまでと変わらない100%の給与をお支払いして雇用を守りました。
売上はゼロですが、人件費と地代はほぼ変わらないので、創業以来の大赤字に陥りました。それに輪をかけて、パチンコ産業に対してネガティブな報道もあり、事業的には大きな苦境に立たされた時期でしたね。
備えていたからこそできた、コロナ禍でのエンゲージメント向上
リンクアンドモチベーション 白木:非常に苦しい時期だったにもかかわらず、メッセホールディングス様はコロナ禍においてもエンゲージメントスコアを上昇させています。具体的に、どのような取り組みをされていたのでしょうか?
メッセホールディングス 宮本氏:そもそもの話になりますが、危機的状況でないときに、いかに資金と組織力を蓄えておけるかが重要だと考えています。休業期間中、弊社が全従業員の給与を保証でき、エンゲージメントスコアを高められたのも、そのおかげだと思います。
危機ではないときに、いかに危機に備えられるかが経営の要諦だということは、我々が尊敬する稲盛和夫さんも仰っていますし、私自身もまさにコロナ禍で身をもって感じたことでした。
もう一点、弊社が休業中に取り組んだのが社員の自己啓発です。休業期間を「自己育成期間」と定義し、経営理念の理解に通じる推薦図書を共有し、社員に自己啓発に努めてもらいました。
経営者自身が経営理念を体現し、周囲に伝播させていく
リンクアンドモチベーション 白木:エンゲージメントが高い現場の様子を知るべく、メッセホールディングス様の店舗を取材し、動画にまとめさせていただきました。ぜひこちらをご覧ください。
リンクアンドモチベーション 白木:動画を見ると、社員の方だけでなくアルバイトの方も経営理念を意識し、経営理念をもとに判断・行動されているようにお見受けしますが、どうしたらここまで理念を浸透させられるのでしょうか。
メッセホールディングス 宮本氏:端的に言えば、自分自身が経営理念を体現して、それを見せていくことに尽きるのかなと思っています。
そうすることで、私の直下の部下から最前線のスタッフに伝わり、それがその先にいらっしゃるお客様にまで伝わって、今日の事業が成立していると理解しています。時間はかかりますが、率先垂範することが大事だと思いますね。
リンクアンドモチベーション 坂下:スタッフのみなさんが、内発的な動機を持って入社されているのが、メッセホールディングス様の大きな武器だなと感じました。一人ひとりのスタッフが、「なぜ、メッセホールディングスなのか?」という理由を明確に持っていますよね。これって強い組織を作るにおいての大前提だなと、あらためて思った次第です。
自分に問いかけた、「娘と同じくらい社員を大切にできているか」
リンクアンドモチベーション 白木:最後に、エンゲージメントの高い会社を作る秘訣についてお伺いしたいと思います。
メッセホールディングス 宮本氏:経営者がなぜ会社を経営しているのかを問い直し、社員にも深く理解してもらうことだと思っています。
我々は、稲森和生さんを尊敬し、京セラ様と同じ経理理念を掲げています。「全従業員の物心両面の幸福を実現し、人類社会の進歩発展に貢献します。」という経営理念なのですが、この理念をブレイクダウンした経営指針を策定しており、経営指針の一つに「家族のように仲間を大切にする」というものがあります。
ただ、「社員を大切にする」といった理念や指針は、どの組織も理想として描いていると思うんです。今になって分かってきたのが、「じゃあ、どのくらい大切にするの?」という、程度の問題です。
仲間と家族、どっちが大事なのかと言えば、もちろん家族のほうが大事だということはみんなで共有しています。そのうえで、家族に限りなく近い形で仲間を大事にしていこうと、自分にも周りにも言い聞かせています。
私は娘がいるのですが、いつも「娘と同じくらい部下を大事にできているか?」と自問自答しています。娘のことは厳しくも温かい目で見ている一方で、従業員に対しては「甘くなっていないか?」「冷たくしていないか?」と、自分の態度や関わり方を日々見直し、「もっと大切にできるはずだと」と日々反省しています。このような日々の繰り返しが、最前線のスタッフにも伝わってエンゲージメントに反映されていったのかなと解釈しています。
リンクアンドモチベーション 白木:「社員は家族だ」とおっしゃる会社さんは多いのですが、それが本当にできているかを検証している会社さんはほとんどありません。それを検証するために、経営者自身がご自分の娘さんと同じように社員と接しているかを問い続けていくというのは、素晴らしい判断基準だなと思いました。
組織に完成形はない、常に変化させていく
リンクアンドモチベーション 白木:それでは、質疑応答に移りたいと思います。メッセホールディングス様には「管理職育成でどのようなことを変えられましたか?」という質問が届いていますが、宮本様いかがでしょうか。
メッセホールディングス 宮本氏:弊社の経営指針のなかに「業界ブランドを引き上げる」というものがあります。業界ブランドを引き上げるということを考えたとき、もう業界の中だけを見ていては太刀打ちできないと思いましたので、他の業界と比較しながらブランドの引き上げに取り組んでいくことを決めました。
そこに関して、私も部下のことを諦めませんでしたし、部下も理念に対して諦めることなく、必死に食らいついて努力してくれています。このような取り組みが、管理職の育成につながっているのではないかと思っています。
リンクアンドモチベーション 白木:お時間が来てしまいましたので、最後にひと言お願いします。
メッセホールディングス 宮本氏:引き続き、世界一の組織を目指して頑張っていきたいと思います。本日はありがとうございました。
リンクアンドモチベーション 白木:ありがとうございました。
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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。