コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 『関係の質』改善のための取り組みとは モチベーションチームアワード2024レポート
「モチベーションチームアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、組織変革に向けた取り組みによってエンゲージメントスコア(従業員エンゲージメントの指数)が上昇した「部署」を表彰するイベントです。
2024年度も、モチベーションチームアワード受賞企業のなかからゲストをお招きしてトークセッションを開催しました。今回は、「『関係の質』改善のための取り組みとは 」をテーマに、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社木村 学氏に登壇いただいたトークセッションの模様をお届けします。
【イベント実施日】
2024年3月22日
【スピーカープロフィール】
・コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 SCM本部 製造統括部
京都・明石工場統括部 明石工場 製造部 4号ライン マネージャー 木村 学 氏
【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション マネジャー 須江 竜字
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諦めが蔓延した組織に直面
リンクアンドモチベーション 須江:本日のテーマは、「関係の質改善のための取り組みとは」です。ダニエル・キム氏が提唱する「組織の成功循環モデル」においては、「結果の質を追求するのではなく、関係の質から改善することが重要だ」とされています。関係の質を向上させるアプローチが、最終的な結果の質を良くするための鍵となります。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 明石工場の取り組みが、この理論を実践した具体的な事例となっておりますので、お話を伺いたいと思います。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、清涼飲料水やアルコール飲料の製造、加工、販売を行っています。私が所属する明石工場では、小型の炭酸飲料や「アクエリアス®」を主に製造しています。
炭酸飲料はみなさんお馴染みのブランド、「コカ・コーラ®」、「ファンタ®」、「リアルゴールド®」、「スプライト®」、「カナダドライ®」などの製造しています。
リンクアンドモチベーション 須江:私たちがいつもお世話になっている飲料がたくさんありますね。取り組み開始当時のエンゲージメント・レーティング(※)はDDDと、組織の決してよいとはいえない状態だったと思います。このような状態では、組織内に諦めの意識が蔓延し、不平不満が多く、雰囲気も暗くなってしまう傾向があります。実際当時の状況はいかがでしたか。
※エンゲージメントの状態をDD〜AAAの11段階で評価した指標
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:私が現在の部署に配属された際は、生産性を重要視して数字を上げることに注力していました。そのため、メンバーは数字に追われており、自分の意見を伝えたり、主張したりすることができず、目の前の生産をこなすだけになってしまっていました。当時は、協調性や一体感が十分でなく、全体的に製造をこなすだけの雰囲気が蔓延していました。
配属直後、メンバー一人ひとりと話す機会を設けましたが、心を開いてもらう状況ではなかったです。雰囲気は決してよいとは言えない状況でした。
「縦の関係」を修復するための、粘り強いコミュニケーション
リンクアンドモチベーション 須江:では、ここから取り組みの内容とポイントをお聞きしたいと思います。関係の質について、上司・部下の「縦の関係」とメンバー同士の「横の関係」のそれぞれで取り組みをされています。まずは、「縦の関係」での取り組みをお聞かせください。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:まず、一人ひとりとの対話を重視しました。普段顔を合わせたら必ず一言声を掛け、仕事以外のことも話せるようにしました。「最近体調どう?」「プライベートは楽しんでいる?」など、個人的な問いかけを一人ひとりに行いました。時間はかかりましたが、少しずつメンバーが心を開いてくれるようになりました。
メンバーが心を開いてくれると、仕事における問題点や悩みについても話しやすくなりました。一人ひとりと時間をかけてコミュニケーションを取ることが最も重要だと感じています。
リンクアンドモチベーション 須江:特に話を聞く上で意識していることはありますか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:メンバーから相談を受ける際には、まずメンバーが求めていることを吸い上げ、すぐに対応できることはその場で解決しました。目の前で解決することで、メンバーに「やってくれた」と思ってもらうことが大切です。また、時間がかかる要望については、進捗状況を定期的に報告し、「いつまでに何ができるか」を伝えることを心掛けました。
リンクアンドモチベーション 須江:具体的にメンバーからどのような声が上がっていましたか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:製造現場なので、生産性に関わることや作業負荷低減に関する要望が多かったです。これらは設備投資が必要で、すぐには対応できないことも多くありました。
リンクアンドモチベーション 須江:その時、メンバーに対してどのようなコミュニケーションを取られましたか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:メンバーからの要望は必ずチェックし、上申できるタイミングで上申しました。対応可能なものは「ここまでできた」「これが実現した」と伝え、時間がかかるものや難しいものについては、「現在ここまで進んでいる」「もう少し待ってほしい」などの進捗を伝えました。最終的に実現できなかった場合も、理由を詳しく説明してメンバーにフィードバックしました。
リンクアンドモチベーション 須江:メンバー一人ひとりで悩みや状況は違うと思いますが、どのような工夫をされましたか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:まずルールとして、出勤したらメールを確認することを定めました。夜勤のメンバーとは直接顔を合わせる機会が少ないため、メールで共有事項や私からの指示を伝えるようにしました。
また、メンバーには色々なタイプがいます。自分でどんどん仕事を進める人もいれば、仕事に対して後ろ向きで、なかなか心を開いてくれない人もいます。時間をかけてコミュニケーションを取り、その人に合った仕事を見つけて任せ、完遂できた時には周囲と共に賞賛することで、本人も自分の価値を見出すことができました。
リンクアンドモチベーション 須江:他にも、目的と背景を丁寧に伝えているとのことですが、詳しく教えてください。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:目的を詳しく伝えることが重要です。トップダウンで指示があった場合、指示をそのまま伝えるだけでは「やらされ感」が出てしまいます。そこで、目的と背景を噛み砕いて伝えるようにしました。
基本的にはメールで指示を出しますが、ミーティングにも参加し、プラスアルファで自分の言葉を伝えることを心掛けています。
リーダーや定時スタッフを軸に「横の関係」の質を改善
リンクアンドモチベーション 須江:では、次にメンバー間の「横の関係」改善についてお聞かせください。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:現場には各シフトに1名リーダーを配置しています。リーダーには、私がいない間の現場の管理やサポート、困った時の対応を担ってもらうようにしています。
リーダーは将来的な管理職候補です。今後、さらに多くのメンバーを率いる立場になるため、様々な責任を持たせ、いろいろな経験を積んでもらうようにしています。
リンクアンドモチベーション 須江:その中で木村様からはどのようなフォローをされていますか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:例えば、リーダーに安心感を与えるために、私が不在であっても現場での判断が難しい時は、いつでも連絡してもらうようにしています。もちろん私の指示を仰ぐだけでなく、リーダー自身も考えた上で対応してもらいます。また、前向きになりにくいメンバーがいる場合には、リーダーがどのようにサポートし、モチベーションを上げるかが重要です。リーダーには、メンバーのフォローとサポートの実践経験を積んでもらっています。
リンクアンドモチベーション 須江:ありがとうございます。その他にも、定時スタッフを配置してコミュニケーションを促進されたとのことですが、この取り組みについて詳しくお聞かせください。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:元々は、現場のメンバーは全員交代勤務をしていました。しかし、明石工場独自の取り組みとして、現場リーダーや私のサポートをする、定時勤務のスタッフを選抜しました。
リンクアンドモチベーション 須江:定時スタッフの配置によるメリットは何でしょうか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:定時スタッフは現場リーダーの手が回らないところをタイムリーにカバーし、サポートしてくれます。また、現場でのトラブル対応などで私が忙しい時にもフォローしてくれます。彼らのサポートにより、私もリーダーも非常に助けられています。
さらに、彼ら自身が様々な経験を積むことで、仕事の幅が広がり、スキルアップに繋がっています。また、コミュニケーションのハブになってもらうことで、現場の関係性も良くなってきています。
ポジティブな現場へと変化し、重要指標も改善
リンクアンドモチベーション 須江:では、これらの取り組みでどのような変化があったのでしょうか。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:メンバー同士が様々な方向性で話し合い、「こうしよう」「ああしよう」と決めていく風土が醸成されたと感じています。私からの指示に従うだけでなく、現場レベルで解決策を話し合い、進めていくことができるようになりました。
メンバーの意識が高まりは私自身も実感していますし、モチベーションクラウドの結果にも現れています。これらの変化は、リーダーや定時スタッフが役割を果たしてくれていることが大きいでしょう。
結果として、生産性が高まっています。昨年や一昨年に比べて安全上のリスクなどが大きく低減しました。また、離職率に関しても、現在非常に低くなっています。風通しの良い風土が数字にも表れていると感じています。
リンクアンドモチベーション 須江:では最後に、私のほうで簡単にまとめさせていただきたいと思います。冒頭でお伝えした組織の成功循環モデルで言えば、もともと「結果の質」を追求していて、組織の雰囲気が良くなかったところから、「関係の質」の改善に舵を切りました。一人ひとりとの対話を重んじ、リーダーや定時スタッフを要に関係性改善に取り組んだ結果、現場のメンバーの思考や行動が変わっていきました。メンバーの皆さんからは、「このラインで働くのが好きだ」「楽しい」といった言葉が増えているとのことで、非常に素晴らしい取り組みだと感じています。
それでは、木村様から最後にお言葉をいただいて、この場を締められればと思います。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 木村氏:まだ道半ばで、100%期待に応えられているわけではありませんが、これからもメンバーの声を吸い上げ、会社の生産性向上に繋げる橋渡しをしていきたいと思っています。
「コカ・コーラ®」、「ファンタ®」、「リアルゴールド®」、「スプライト®」は、
The Coca‑Cola Companyの登録商標です。
「カナダドライ®」は、Atlantic Industriesの登録商標です。
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