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株式会社晃商 疑念が共感に変わった、8年間の理念経営の軌跡 ベストモチベーションカンパニーアワード2024(中堅・成長ベンチャー)レポート

「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(従業員エンゲージメントの指標)が高い企業を表彰するイベントです。

2024年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー企業部門」の2部門制で表彰をおこないました。「中堅・成長ベンチャー企業部門」受賞企業の中から、2社をゲストにお招きしてトークセッションを開催。1位を受賞された株式会社晃商からは専務取締役の新井丈博氏にご登壇いただき、「懐疑的な意見が共感に変わった、8年間の理念経営の軌跡」をテーマにお話しいただきました。

【イベント実施日】
2024年3月22日

【スピーカープロフィール】
・株式会社晃商 専務取締役 新井 丈博 氏

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント 山口 健介


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入社して感じた従業員との心の距離

リンクアンドモチベーション 山口: まずは、御社をご紹介いただけますでしょうか。

晃商 新井氏:弊社は京都に本社を構え、主にエンターテインメント業を展開しています。具体的にはパチンコホールの運営を中心に行っています。また、もう一つの事業の柱としてフードサービスがあります。主なブランドは「焼肉の名門 天壇」で、焼肉店を運営しています。

さらに、三重県ではスーパー銭湯と野菜工場の二つの業態を展開しています。野菜工場は「名張シティファーム」という名前で、室内で野菜を栽培するビジネスを行っています。

リンクアンドモチベーション 山口:ありがとうございます。では早速ですが、晃商様のエンゲージメントスコアの変遷を振り返っていきたいと思います。初めてサーベイを実施いただいたのが2015年で、当初はエンゲージメント・レーティング(※)CCCからスタートし、8年かけて美しい右肩上がりの変化を遂げています。

ただ、決して順風満帆ではなく、様々な苦労や悩みがあったかと思います。本日はその辺りを深掘りしていきたいと思います。

※エンゲージメントの状態をDD〜AAAの11段階で評価した指標

晃商様の8年間の歴史を、大きく3つのフェーズに分けてご紹介します。まずは最初の一歩を踏み出した「転換期」。次に非常に長いですが、諦めずにやり続けた「不屈期」。そして最後にそれが花開いた「好転期」です。まずは転換期、レーティングがCCCだった当時のご様子についてお聞かせください。

晃商 新井氏:はい。まず、私は2005年に新卒で晃商に入社しました。祖父が創業し、父が2代目として引き継いでいる会社です。私自身、会社への憧れや大学まで進学させてもらった感謝があり、会社に恩返しをしたいという思いで入社しました。創業者である祖父や父からは従業員を大事にする姿勢を感じており、その愛情が従業員にも届いていると信じていました。

しかし、入社してみると従業員と会社の間に心の距離があるように感じました。最も不安になったのが、本社の朝礼で全員がミッションを唱和するシーンです。ベテランの従業員が唱和する順番になった時、スラスラと言えず、「えっと、次なんやったっけ」と周囲の助けを借りながらやっと唱和している姿を見て、大きな不安を感じました。

会社のミッションは全員に浸透し、言語化できているのが重要だと考えています。そのため、このときから「いつか大きく変革しなければならない」と漠然と感じていました。

スコアへの納得と組織開発の始まり

リンクアンドモチベーション 山口:ありがとうございます。では、専務にご着任された転換期についてもお聞かせください。

晃商 新井氏:2015年に1回目のエンゲージメントサーベイを実施しました。それまでの組織開発は手探りで、何をするにも根拠があまりなく不確実な状態でした。そこでリンクアンドモチベーション様に出会い、基幹技術であるモチベーションエンジニアリングに触れて、非常に納得感がありました。最初のレーティングはCCCで、もちろん残念でしたが、詳細に出てきたサーベイ結果に納得できました。この結果に基づいて組織開発を進めていけば、きっと良くなると感じました。

まず取り組み始めたのは、対話をすることです。エンゲージメントスコアが低かった組織のメンバーと時間を作って、とにかくコミュニケーションをとりました。また、コミュニケーションをとりやすくする組織づくりも進めました。

次に経営幹部、特に部長たちを集めて、今後の方向性をすり合わせました。「一致団結をするところからリスタートしましょう」と意識を合わせ、ここから組織開発が本格的に始まりました。

リンクアンドモチベーション 山口:なるほど。様々な取り組みをされたかと思いますが、このあたりで何かポイントやこだわりはありましたか。

晃商 新井氏:1回目のスコアが40台で、その1年後の2回目のスコアが56程度でした。全国平均の50を超えたのをきっかけに、理念をもう一度作り直しました。

こういった取り組みや対話を繰り返すことで、エンゲージメントの高いチームが生まれ始めました。そのチームは、以前と比べて距離感が目に見えて変わりました。具体的には、以前は私が現場に足を運ぶと席を外し、物理的な距離をとるメンバーがいました。しかし、スコアが高くなると、健全に私とコミュニケーションをとってくれるメンバーが増えてきました。転換期はこのような目に見える変化が見え始めた時期でした。

理念を刷新し、その解釈を深めた不屈期

リンクアンドモチベーション 山口:ありがとうございます。不屈期は決して低くないスコアですが、やや横ばいに見えます。この時期のご状況はいかがでしたか。

晃商 新井氏:2017年に全社総会を初めて開き、新しい理念を発表しました。それ以降が不屈期です。この時期はまだサーベイや理念に対して懐疑的な従業員もいました。理念は大事だと理解しつつも、「理念で飯は食えない」という意見も耳にしました。ネガティブな意見に対して、完全に説得できるほど理念への深い理解や考えが備わっていなかったのも事実です。

「ココロをみがき、明日をつくる。」という理念に対する解釈を深めるため、毎日取り組みました。社内でアウトプットの機会がたくさんあり、理念に対する私なりの解釈や表現をどんどん磨きました。自信を持ってアウトプットできるまでが、不屈期かと思います。

リンクアンドモチベーション 山口:なるほど。3年間毎日、理念がなぜ重要なのか、どうすればメンバーに伝わるのかを考え続けられたのが本当に印象的です。具体的なエピソードを教えていただけますか。

晃商 新井氏:従業員に対して私が直接会社の理念について講義をする時間があります。その中で、企業理念は北極星のようなもので、「絶対に」必要なものであると強く伝えています。リーダー層にもサーベイのフィードバックを行う際、一緒にワークを行い、自分が理念をどう置き換えられるかを考えた結果、「北極星」という表現が生まれました。

理念には綺麗な言葉が並んでいますが、それがただのお飾りになってしまう企業もあります。弊社もそうでした。なぜ企業理念が重要で必要なのかを考えた時に、ぶつかったのが「利益」という言葉です。会社には絶対に利益が必要であり、その利益と理念をどういう優先順位で置くべきかに悩みました。その時に出会ったのが二つの言葉です。

一つは、二宮尊徳さんの「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉です。道徳なき経済、つまり理念なき利益は罪悪であると感じました。社会的に色々な企業の不祥事が取り沙汰されるのは、まさしく優先順位のバランスが崩れた結果です。

二つ目は、渋沢栄一さんの『論語と算盤』の中の「道義に伴った利益を追求しなさい」です。「道義に伴った」という言葉が先に来ているのがポイントであり、理念に伴った利益を追求することが重要です。理念≧利益というバランスで理念と利益を捉えて企業運営をしていくべきだと思います。

不屈期を乗り越えて好転期へ

リンクアンドモチベーション 山口:ありがとうございます。不屈期を経た後、どのような変化がありましたか。

晃商 新井氏:エンゲージメントスコアが72程度になったあたりから、良い意味で大きな変化が起こりました。私が先頭に立ってリーダーたちを焚き付けて何かをするというよりは、共感者が増えて自動的に良いパフォーマンスが出るようになりました。私自身も理念について堂々と解釈を伝えられるようになりました。

リンクアンドモチベーション 山口:ありがとうございます。3年前からレーティングがAAAになり、伸び続けているのが現在の好転期ですが、印象的な変化はありましたか。

晃商 新井氏:好転期はちょうどコロナ禍と重なっています。弊社はサービス業なので、コロナの影響を大きく受けました。パチンコ業界自体も世間やマスコミからの批判がありました。従業員の不安を払拭するため、給与の補填や生活を守る施策を打ち出し、会社への信頼感を高める努力をしました。

その結果、会社やチームのために自発的に動いてくれる従業員が増えました。業務をこなすだけでなく、自分のチームや会社をどうしたら良くできるかを考えて行動してくれるようになりました。

現場主導の組織改善を実現する仕組みづくり

晃商 新井氏:従業員が参画意識を持ちながら日々の業務に取り組んでくれているので、事業拡大も視野に入れています。従業員から「もっとこうしましょう!」という提案が増えており、組織としても活性化されてきていると感じています。

従業員の声に耳を傾けて形にしていくことが組織開発の要であり、新しい事業につながるかもしれません。それが弊社の理念でもありますので、従業員の声を反映させて会社の発展につなげたいと考えています。

ベストモチベーションカンパニーアワードでもまた1位を取りたいと思っていますが、それが目的ではありません。あくまで従業員のため、これからの会社のために必要な施策を実行していきたいです。そして、それが結果としてスコアに反映される。その結果から問題点を抽出し、悪いところは改善し、良いところは伸ばすといった愚直なことをコツコツと繰り返していきたいです。

リンクアンドモチベーション 山口:ありがとうございます。ご覧の皆様へのメッセージはありますか。

晃商 新井氏:ご覧になっているのは経営陣や人事の方が多いかと思います。弊社は40台というスコアから組織開発を始め、本当に色々なことが起こりました。つらいこともたくさんありましたが、その度に立ち上がって乗り越えてきました。一人ではなかなか太刀打ちできませんでしたが、組織は多くの人が関わるもので、まずはたくさん仲間を作ることが大切です。

「すべての組織は必ず変えられる」。これは、リンクアンドモチベーションの方からいただいた言葉で、それを信じて取り組んできましたし、これからも取り組んでいきます。組織は必ず変えられるというのは事実です。それぞれの企業様が持つ理想の未来に向かって、チームワークをもって手を取り合って進んでいけば、必ず良い方向に変わっていけると思います。

私は1位という座にあぐらをかくつもりはありませんし、組織に対して愚直に向き合う姿勢も変えるつもりはありません。一発逆転のパンチや必殺技、魔法のようなものはなく、本当にコツコツと細かいところに目を向けて変えていくしか、組織改善の方法はないと感じています。細かいところも諦めずに、見落とさずに向き合い続けていく。そういった取り組みを続けると、必ず明るい未来が待っていると思いますので、一緒に頑張っていきましょう。 ​​​​​​​


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