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2021.3.24

「企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係」に関する研究結果を公開

株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央、証券コード:2170、以下当社)の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所(以下当研究所)は、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)と共同で「企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係」に関する調査を行いましたので、結果を報告いたします。

調査背景

2021年3月9日(火)に開催された当社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード2021」では、多くの受賞企業が、従業員エンゲージメントの向上に伴い業績が向上するなど、従業員エンゲージメントと営業利益の相関が再確認された。

一方で、企業にとっての守りともいうべきコンプライアンスと従業員エンゲージメントの関係はどうなっているのだろうか。

本レポートでは、日本総研の持つ企業不祥事の事案件数ならびに企業体質評価データと、当社の持つ従業員エンゲージメントのデータを基に、企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係について調査し、コンプライアンス強化のための本質的な解決策を提言したい。

調査概要

本調査では、日本総研の企業不祥事の事案件数ならびに企業体質評価データと、当社エンプロイーエンゲージメントサーベイの総合満足度4項目、エンゲージメントファクター16項目、詳細64項目の関係を重回帰分析により調査した。

【日本総研による不祥事に関する企業体質評価の概要】

日本総研では企業の不祥事を収集し、事案を5段階に分類・評価した上で、その件数や発生からの経過時間を考慮し企業体質を3段階(「重篤」「管理」「注視」)に評価している。

本調査では、企業体質評価を「重篤=3」「管理=2」「注視=1」と数字に変換し分析を行った。

【エンプロイーエンゲージメントサーベイの概要】

社会心理学を背景に、人が組織に帰属する要因をエンゲージメントファクターとして16領域に分類し(※1) 、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか(=期待度)」「何にどの程度満足しているのか(=満足度)」の2つの観点で質問を行う。

エンゲージメントファクターにはそれぞれ4つ、計64の項目が設定されており、回答者はそれぞれの期待度、満足度を5段階で回答する。

また、総合満足度4項目(会社、仕事、上司、職場)についても回答する。

その回答結果から「エンゲージメントの偏差値」であるエンゲージメントスコア(以下ES)を算出する。

【分析対象】

2015年1月から2019年5月にエンプロイーエンゲージメントサーベイを実施した上場企業のうち、日本総研による企業体質評価も実施されていた128社

※重複している場合は最新データのみを使用

調査結果

■「従業員エンゲージメントが高ければ不祥事が減る」とは一概に言えない可能性がある。

【1】企業体質評価、不祥事の事案件数とESの関係

日本総研による企業体質評価および不祥事の事案件数とESの相関関係を重回帰分析により調査した結果を表1に示す。(P<0.05で有意性を判定)

表1 企業体質評価、不祥事事案件数とESの相関関係
 

表1より、企業体質評価、不祥事の事案件数とESには相関がないことがわかる。

「従業員エンゲージメントが高ければ不祥事が減る」とは一概に言えない可能性があるということだ。

従業員エンゲージメントが高くとも、例えば、会社に対して忠誠心が高すぎる状態では不祥事が起こりやすくなる可能性もある。以下では、詳細の項目を調査し、従業員エンゲージメントとの関係を深く考察していきたい。
 

■不祥事発生のリスクを減らすには、会社満足度の向上や制度待遇の充実だけでは不十分である。

【2】企業体質評価、不祥事の事案件数とエンプロイーエンゲージメントサーベイの総合満足度、エンゲージメントファクターの関係

日本総研による企業体質評価および不祥事の事案件数とエンプロイーエンゲージメントサーベイの総合満足度およびエンゲージメントファクターの差分(満足度ー期待度)の関係を重回帰分析により調査した結果、相関があると判明した項目を表2に示す。 (P<0.05で有意性を判定)

表2 エンプロイーエンゲージメントサーベイの総合満足度およびエンゲージメントファクターの差分(満足度ー期待度)のうち、企業体質評価、不祥事の事案件数と相関のある項目
 

表2より、企業体質評価、不祥事の事案件数ともに、総合満足度のうち「会社満足度」が、エンゲージメントファクターのうち「制度待遇」が正の相関関係にあることがわかる。

これは、会社満足度が高いほど、また、制度待遇への満足度が高く、期待度が低い(≒現状に満足している、変化を求めていない)ほど、企業体質評価が悪化し、不祥事の事案件数が多くなる、ということである。

よって、不祥事発生のリスクを減らすには、会社満足度の向上や制度待遇の充実だけでは不十分であると言える。会社に飼い慣らされているような状態になっている従業員が多いと不祥事が起こりやすいということであろう。
 

■話題性や知名度があり社会的な影響力が大きく、基盤の安定を想起させる企業や、教育支援制度は充実しているものの、日頃から責任ある仕事を任せるなどの部下の自立に向けた育成が十分でない企業ほど、不祥事が起こる可能性が高い。

【3】企業体質評価、不祥事の事案件数とエンプロイーエンゲージメントサーベイの各項目の中で正の相関がある項目

日本総研による企業体質評価および不祥事の事案件数とエンプロイーエンゲージメントサーベイの詳細64項目の差分(満足度ー期待度)の関係を重回帰分析により調査した結果、正の相関があると判明した項目を表3に示す。 (P<0.05で有意性を判定)

表3 エンプロイーエンゲージメントサーベイの詳細64項目の差分(満足度ー期待度)のうち、企業体質評価、不祥事事案件数と正の相関のある項目 ※赤字は共通する項目
 

表3より、「話題性や知名度」「社会的な影響力」「顧客基盤の安定性」の項目が挙がっていることから、話題性や知名度があり社会的な影響力が大きく、基盤の安定を想起させる企業ほど、不祥事が起こる可能性が高いと言える。

従業員が多く機能分化していると、仕事の全体像が見えておらず不祥事に関与していることを認知できなかったり、不祥事を認知しているものの、話題性や知名度があるからこそ、それを明るみに出すことをためらう可能性も否定できない。

また、「研修制度の充実度」「部下の強みや持ち味の把握」の項目が挙がっていることから、教育支援制度は充実しているものの、日頃から責任ある仕事を任せるなどの部下の自立に向けた育成が十分でない企業ほど、不祥事が起こる可能性が高いと言える。

コンプライアンス研修などを充実させたとしても不祥事が減るとは言えないということだ。
 

■従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚できている企業や、自社の事業に優位性があり、新たな提案などを行える開かれた組織風土を持つ企業ほど、不祥事が起こる可能性が低い。

【4】企業体質評価、不祥事の事案件数とエンプロイーエンゲージメントサーベイの各項目の中で負の相関がある項目

【3】と同様、日本総研による企業体質評価および不祥事の事案件数とエンプロイーエンゲージメントサーベイの詳細64項目の差分(満足度ー期待度)の関係を重回帰分析により調査した結果、負の相関があると判明した項目を表4に示す。 (P<0.05で有意性を判定)

表4 エンプロイーエンゲージメントサーベイの詳細64項目の差分(満足度ー期待度)のうち、企業体質評価、不祥事事案件数と負の相関のある項目 ※赤字は共通する項目
 

表4より、「歴史や経緯の共有」、「業界内での影響力」の項目が挙がっていることから、従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚できている企業ほど、不祥事が起こる可能性が低いと考えられる。

会社の歴史や、顧客や他社などの外部環境を認識することで、不祥事発生の影響をイメージすることができ、不祥事につながりかねない行動を自ら止めることができるのであろう。

また、「期待を上回る提案・対応」の項目が挙がっており、差分ではなく満足度のみの結果では、「自社の事業優位性」も負の相関となっていたことから、自社の事業に優位性を感じることで顧客の期待を上回る提案や対応ができ、新たな提案などを行える開かれた組織風土を持つ企業ほど、不祥事が発生する可能性が低いと言える。

他社と差別化できていない事業では市場での競争が熾烈を極め、その中で顧客の期待に応えたり、目標を達成するためには、不祥事を起こしてしまう状況に陥るのかもしれない。

 

結論

企業のコンプライアンス強化のためには、従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚し、自立した個として顧客や社会と接続している状態を創ることが重要だ。

会社全体の取り組みとして、企業理念の浸透や組織文化の共有、風土の改善に着手し、従業員一人ひとりの意識改革を促すことこそ本質的な解決策である。

 

本レポートでは、日本総研の持つ企業不祥事の事案件数ならびに企業評価データと、当社の持つ従業員エンゲージメントのデータを元に、企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係について調査した。

まず、ESと不祥事の関係を調べてみたが、ESとの相関関係を見出すことはできなかった。しかし、エンプロイーエンゲージメントサーベイの総合満足度やエンゲージメントファクター、詳細の64項目を調査すると有意義な示唆を得ることができた。

それぞれの調査結果から、会社に従順すぎるような社員が多い企業ほど、不祥事が発生するリスクが高くなると言える。従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚し、「自立した個」として顧客や社会と接続しながら、仕事に向き合っているかどうかが、不祥事の発生を左右する重要なポイントとなるのであろう。

さらには、 変化が激しい時代だからこそ、「適応するための拠り所となる判断基準を持つことが重要」とも言えそうだ。

企業がどんな歩みを大切にしてきたのか、企業としての判断基準は何か。歴史や経緯の理解などを通じて、自社の理念やアイデンティティについて改めて「腹落ち」するプロセスを重視することも、重要な要素だと言えるのではないだろうか。

そして、本質的な解決策は、従業員一人ひとりの意識改革にある。多くの企業はコンプライアンス研修や、ルール整備を実施しているであろうが、それらだけでは本質的な解決にはならない。

肝心なことは、従業員を手厚く保護することではなく、社内外の様々な人材や情報と触れる機会を設けたり、会社の歴史を共有したりして、目の前のことや自分しか見えていない従業員の視界を、時間的にも空間的にも拡げることだ。

制度待遇や研修制度の整備などを行う前提として、従業員に対する理念の浸透に加えて、組織文化の共有、風土の改善に日常的に取り組むことが重要だと言えるのではないだろうか。

 

発行責任者のコメント

2021年3月9日(火)に開催された当社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード2021」では実際の顧客事例においても従業員エンゲージメントと営業利益の相関が確認された。

本レポートでは、株式会社日本総合研究所様の保有する、企業体質とも言うべきコンプライアンスに関するデータと、当社の従業員エンゲージメントに関するデータとの関係を探った。

発見事実を端的に言えば、従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚し、ビジネスパーソンとして自立・自律すること、言い換えると“One for All, All for One”の実現が企業コンプライアンス遵守にも繋がるということだろう。

従業員エンゲージメントが高ければコンプライアンス遵守レベルも高いという単純な話ではないものの、企業価値向上の一端を担う営業利益の向上と、コンプライアンス遵守を水と油のように捉えるのではなく、従業員エンゲージメント向上を中核に据えて対応していくことの重要性を示唆しているのではないだろうか。

モチベーションエンジニアリング研究所 所長  大島 崇  Takashi Oshima
大島 崇 (おおしま たかし)
株式会社リンクアンドモチベーション
モチベーションエンジニアリング研究所 所長

【略歴】
2000年 京都大学大学院エネルギー科学研究科卒業
2005年 住商情報システム株式会社を経て株式会社リンクアンドモチベーションに入社
2010年 モチベーションマネジメントカンパニー 執行役部長に就任
大手企業向けの組織変革や人材開発で多くのクライアントを担当
同時に商品統括ユニット、モチベーションエンジニアリング研究所を兼任し、新商品を開発
2015年 モチベーションエンジニアリング研究所 所長に就任

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