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【前編】ベストモチベーションカンパニーアワード2022(中堅・成長ベンチャー)レポート 株式会社ジリオン エンゲージメントの向上に努めるのは、スタッフの未来に責任を持ちたいから

「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(社員の会社に対する共感度合いを表す指数)が高い企業を表彰するイベントです。

2022年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー企業部門」の2部門制で表彰をおこないました。今年度、「中堅・成長ベンチャー企業部門」受賞企業のなかでも、特にエンゲージメントスコアが高く、かつこれまでのスコアの変化度合いが大きい2社をゲストにお招きしてトークセッションを開催。株式会社ジリオン、代表取締役社長の吉田裕司氏と、株式会社ノースサンド、代表取締役社長の前田知紘氏にご登壇いただき、「エンゲージメント向上の秘訣」をテーマにお話しいただきました。

【イベント実施日】
2022年3月10日

【スピーカー】
・株式会社ジリオン 代表取締役社長 吉田 裕司 氏
・株式会社ノースサンド 代表取締役社長 前田 知紘 氏
・株式会社リンクアンドモチベーション 常務執行役員 川内 正直

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション 田中 允樹

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街のエナジースタンドを目指す飲食企業、株式会社ジリオン

リンクアンドモチベーション 田中:はじめに、ご登壇いただく株式会社ジリオン様について、私から代表の吉田様のご経歴、および会社の概要を紹介させていただきます。

吉田様は学生時代から約25年間、飲食業に携わっていらっしゃり、2014年に株式会社ジリオンを設立されました。事業概要は飲食店の運営ということで、都内、目黒区を中心に15店舗を展開されています。ビル地下という条件の悪い立地環境から繁盛店を育て上げ、業界では「目黒の奇跡」とも言われ、今非常に注目を集めている企業様です。

ジリオン様のこれまでのエンゲージメントスコアと従業員数の推移をスライドでご紹介します。

コロナ禍である直近2年間は、エンゲージメントスコアが下がった時期もありましたが、再び持ち直し、高いスコアを維持されていらっしゃいます。

従業員の成長や未来に責任を持たない業界を変えていきたかった

リンクアンドモチベーション 田中:はじめに、ジリオン様がエンゲージメント向上に注力した背景についてお聞かせいただけますか。

ジリオン 吉田氏:僕は、飲食業が好きでいくつかの素晴らしい会社で働いてきましたが、飲食業界には、ESを指標に掲げ、大切にしている会社はほとんどなかったと思っています。働くスタッフの成長や未来に対して、僕らは責任をとってこなかったなということをすごく感じていました。このような業界の慣例を変えたいという思いは、僕らがエンゲージメント向上に取り組むベースになっています。

飲食店って、CSがいちばん大事じゃないですか。このCSを追求するために大切なのがESだと思っていて、ESが最高の状態をつくり出せればCSにもうまく循環していけると思っています。

「給料が上がるから頑張れ」というような動機づけは、僕らの業界ではあまり意味を持ちません。飲食業界には、売上や利益などの定量的な目標がいちばん大切だと思って働いている人ってあまりいなくて、好きなことで生きていきたいとか、好きだから頑張れるという人がほとんどです。ですから、モチベーションやエンゲージメントを指標に入れずに経営するのは少し違うなと思っていました。

スタッフのエンゲージメントを高めることが、この業界が変わる大きなきっかけになるのではないかと考え、そこに取り組み始めたという感じですね。

市場価値の高い人材を輩出することがジリオンの存在意義

リンクアンドモチベーション 田中:続いて、組織づくりでこだわっているポイントをお伺いしたいと思います。スライドには「Be → Do → Haveのストーリーで組織の成長を実現する」とありますが、詳しく教えていただけますか。

ジリオン 吉田氏:たとえば、上場という目標を掲げた場合、やらなければいけない「Do」としては、売上や利益を上げることや店舗数を増やすことになってきますよね。これが働いているスタッフのモチベーションに火をつけることになるのかと言うと、飲食業界ではならないと思うんです。

「Do」は、あくまでも「Be」、つまりジリオンの存在意義やフィロソフィーから派生したものでなければいけません。「Have」から逆算した経営をするとなると、どうしても売上や利益にフォーカスせざるを得なくなります。ですが、それを目指して10年、20年、一緒に頑張っていく組織って飲食業界にはほとんどありません。飲食業界で働く人は、3年、5年というスパンで次のステージに進んでいくのが当たり前なので、売上や利益などの定量的な目標を掲げてもスタッフのためにはならないというのが僕らの考え方です。ですから、ジリオンは「年間で何店舗出す」「何年以内に年商何億」といった目標を掲げたことはありません。


会社で働くことは、結婚と同じだと思っています。なぜその人と結婚するのかって、その人のことが好きだったり、大切にしているものに共感できたりするからじゃないですか。会社も同じで、考え方や大切にしていることに共感できるかどうかがいちばん大切ですよね。

リンクアンドモチベーション 田中:「市場価値の高い人材の輩出」というBe(組織の使命)を掲げるに至った背景は、どんなところにありますか。

ジリオン 吉田氏:飲食業界で働いている人は、プロ野球選手と似ているところがあります。飲食スタッフもプロ野球選手も現役でいられる時間、言い換えると肉体労働で稼げる時間は限られています。ただ、今は70歳まで働く時代なので、たとえば40歳で現役を引退したら、その先のほうが長いし大変ですよね。にもかかわらず、「その先は勝手にやってね」というのが僕らの業界なんです。

肉体的に優れている若手のほうが価値があると考えられているので、知識や経験があっても、それをマネジメントサイドで活かせる人でないと生き残っていけません。業界として、その先の人生まで責任を取ったりサポートしたりということがないんですね。このような慣例を変えていくために、ジリオンは市場価値の高い人材を輩出することを存在意義としています。

ただ、これをやろうと思ったときに、共感度が低いメンバーとやろうとしても良い結果が出ませんでした。ですから、僕らがやろうと思っていることや大切にしていることに共感してくれる人材を採用するのは、非常に重要だなと思っています。

飲食業界に限らず、将来どこに行っても通用する人材になってほしい

リンクアンドモチベーション 田中:続いて「Do」に移ります。「ジリオンでしか実現できない成長機会の提供」にこだわっていらっしゃるということですが、具体的に教えていただけますか。

ジリオン 吉田氏:スタッフの人間力を高めていこうというのがジリオンの考え方で、そのためにおこなっている施策の一つが「ジリオンアカデミー」です。ジリオンアカデミーは付加価値の高いスキルを学べる場で、考え方や行動の仕方など、飲食業とは関係のないことも含めて様々な角度からスタッフの成長をバックアップしています。普通の飲食の会社はPLのつくり方などは教えませんので、そのあたりは特徴的なところかなと思いますね。

うちのスタッフには、ずっと飲食業界で生きていかなくても、将来どんな会社に行っても通用する人材になってほしいと思っています。彼らが飲食業界を選んだことではなく、ジリオンを選んだことがそこにつながるようにしていきたいですね。

リンクアンドモチベーション 田中:ジリオンアカデミーの内容は、開業ノウハウや組織マネジメント、ワインスペシャリストや計数管理など、幅広いですね。

ジリオン 吉田氏:そうですね。ただ、もちろん計数管理に関心のないスタッフもいます。僕らは、苦手を伸ばす必要はないと思っていて、その人の才能や得意なことを伸ばしていきたいと思っています。ですから、スタッフがやりたいことや知りたいことを選んで参加する形にしています。

リンクアンドモチベーション 田中:もう一つの取り組みとして、「エンゲージメントスコア向上に取り組む責任者が各店舗の組織づくりを支援する」という内容があります。これは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。

ジリオン 吉田氏:飲食業界では、マネジメントに関心がないスタッフも少なくありません。うちの場合も、マネジメント志向のあるスタッフは全体の1~2割程度です。組織にいる8~9割がマネジメントに関心がないのに、「マネジメントを目指せ」と言うのは違います。

一方で、そのようなスタッフの価値を上げたり、やりがいをサポートしたりするのはすごく大事なことだと思っています。じゃあ、どうしたら市場価値を上げながらやりがいを持って働くことができて、うちの会社にも貢献してもらえるのかと考えました。

上に立って管理するのではなく、リーダーを支えたいという子たちは、コンサルティングやサポートという部分ですごく高い能力を持っているんです。ですから、その子たちには、店舗で起きている問題の解決を図ったりコンサルティングをしたりして、リーダーが意思決定しやすい環境をつくるという役割を担ってもらっています。

リンクアンドモチベーション 田中:組織のエンゲージメントを高めるためにそういった役割を設けたわけではなく、スタッフに成長環境を提供したり、マネジメント以外のキャリアパスを示したりするために、組織づくりとリンクさせているということですね。

業界平均を大きく上回る75%の再来店比率を実現

リンクアンドモチベーション 田中:「Be」「Do」に続いて、最後の「Have」になりますが、「Energy Creator」というビジョンを掲げていらっしゃいます。このビジョンについても詳しくお伺いできますか。

ジリオン 吉田氏:「Energy Creator」というのは、お客様や仲間に元気を届けられる魅力的な人材のことであり、そういう人材で満ち溢れた組織になりたいと思っています。10年後、うちにいるメンバーのほとんどは卒業していたり独立していたりすると思います。その子たちが、ジリオンにいたことによって、違う場所でもエナジーを提供できる人材になってくれることが僕らの目標です。

「Energy Creator」を目指すことでスタッフの生産性が上がれば、ジリオンの生産性も上がりますし、スタッフのサービス力が上がれば、お客様の満足度も上がります。「Energy Creator」を目指すことは、結果的に、僕らがいつでもやりたいことをできるようにするということなんですね。そのためには、スタッフのエンゲージメントが高い状態になければいけません。

リンクアンドモチベーション 田中:取り組みの成果として目を引くのが75%という再来店比率です。やはり、エンゲージメントが高い状態だと業績につながりやすいという実感はありますか。

ジリオン 吉田氏:はい、これは絶対につながりがあると思います。飲食店の再来店比率は、業界平均で25%くらいなのですが、そのなかで僕らは75%という高い数値を出すことができています。スタッフのエンゲージメントが高い状態にあるとCS向上にもつながって、結果として来客数が伸びています。生産性や人時売上高も上がりますし、たとえば「この電気、無駄じゃない?」など、コスト削減を意識するような発言が自然に出てくるような組織になってきますよね。

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