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「グローバル基準>日本基準」という現実。日本企業も日本人も、このままでは生き残れない。

2017年度版働きがいのある会社ランキング第1位(Great Place to Work® Institute主催)に選出された、株式会社ワークスアプリケーションズ。また、調査開始以来10年間連続で「ベストカンパニー賞」も受賞し、同社の組織づくりへの手腕は注目を増すばかりだ。

経営コンサルタントの波頭亮氏も、同社の共同創業者のひとりである牧野正幸氏について「本気で人材に投資している経営者」だと称賛する。

牧野氏の考える、「グローバルマーケットにおける、日本の立ち位置」とは何か。すべての経営者必読の、金言で紡がれた全3回シリーズ、後編。

【プロフィール】
株式会社ワークスアプリケーションズ 
代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸氏
【インタビュアー】
株式会社リンクアンドモチベーション 
執行役員 モチベーションクラウド事業責任者 麻野 耕司

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優秀な人材を採用したければ、マーケットプライスよりも給与を高く設定するべき。

牧野 正幸氏(以下、牧野氏):給与は高ければ高いほどいいっていう話をしましたが、グローバル採用を続ける中でわかっていることは、優秀な人は給与が高いってことなんですよ。優秀だけど給与が低いなんてあり得ません。

ところが日本では、優秀だけど給料を低く抑える方法論がある。それがベンチャーで働く、やりがいとか文化ですよね。それはとても重要なことだと思います。

けれど、日本でも長い目で見たらやりがいだけで優秀な社員を惹きつけ続けることは不可能だと思うし、グローバルでは絶対に無理です。

麻野 耕司(以下、麻野):ワークスアプリケーションズさんは給与が高いというイメージが、一般的には強いと思いますが。

牧野氏:実際に給与を上げる努力をしているので、間違ってはいませんが、利益を還元するという考え方で給与を上げてきたわけではありません。そうではなくて、高い給与を支払わなかったら、優秀な人材は定着してくれないとわかっているからです。

グローバル水準で一番高い給与を設定できれば、優秀な人材は給与を理由にして辞めることはないでしょう。

もちろん、人は金銭報酬だけでは働かないから、どれだけ金銭報酬が高くても、そこでの仕事が苦痛であれば続かないでしょうし、事業に社会的意義を感じられなければ働きたいと思わないかもしれません。

ただ、ひとつ言えることは、仕事の内容に満足していて社会的意義を感じられたとしても、給与が低ければ続かないということ。だからこそ、給与は世界水準に引き上げなければならないと思うんです。

十分な給与を支払っていなければ、優秀な人材が不足するのは当たり前です。ともかく、マーケットプライスより給与を高く設定するべきというのは、会社の戦略として絶対に大切なことだと思いますね。

麻野:なるほど。採用に躓いて、ベンチャーがメガベンチャーになれないというお話がありましたが、御社は7千名規模になっておられます。そこはどうやって乗り越えてこられたのでしょうか。

牧野氏:やはりリクルーティングにおいては、リクルートという最大の成功事例があるように、優秀な人材を採用するために惜しみなくお金を使い続けることができた会社だからこそ、急成長できたわけです。

私自身も、自社にとっての優秀な人材を集めるために、惜しみなく投資することは、絶対に必要不可欠だと思っています。

麻野:私もリクルート創業者の江副さんの経営からは多くのことを学ばせていただいています。江副さんは、勿論やりがいをつくりだすことを重視されていましたが、高い水準の給与もしっかりと支払っていたんですね。そういった部分でも、牧野さんと重なります。

牧野氏:優秀な人材には高い給与を払うということは絶対に大切です。ですが、起業直後から無理をする必要はありません。

やりがいを理由についてきてくれる人材がいるでしょう。ただ一定規模を超えて成長していくときに、優秀な人がたくさん必要となったら、やはりマーケットプライスを超えていかないければいけません。

やりがいだけでは引っ張れないと思いますね。ましてや、グローバルでは絶対に無理です。

グローバルにおける日本の問題は、若い人の給与の低さ。

麻野:より本格的に世界の企業と戦っていく中で、牧野さんから見た世界との距離感というのはどの程度のものなのでしょうか。

牧野氏:シリコンバレーはバブル状態なので、給与水準では相手にできない。なので、アメリカの拠点はロサンゼルスに置いています。

シリコンバレーとロサンゼルスだと、報酬だけでも20%以上違います。シリコンバレーは、家賃も食べるものも、何もかもが高いので給与も高くせざるを得なくなってしまっているんです。

ただ、グローバルで見たときの日本の一番の問題点は、間違いなく、若い人の給与が低いことでしょうね。

グローバルでは、若い人の給与は高いし、活躍している人が多い。年功序列を頑張って廃止してきたものの、日本はやはり未だに年功給なんですよ。年功給から脱却しない限り、今の日本の企業に優秀なグローバル人材は来ません。

日本企業では、日本語や日本文化の壁があり、外国人が働きづらい環境なので、日本式のやり方が守られているようなものですが、今後はそこから脱却していかなければならないでしょう。

普通に考えて、日本のマーケットから外に出て行かなければいけない時代に来ていることを考えると、日本人か外国人かなんてことを言ってはいられなくなる。だからこそ、今の日本の給与体系だと、優秀な人はいなくなると思いますよ。

年齢に関係なく優秀な人に高い給与を払うというのは、世界では常識です。にも関わらず、日本だけが違う考えでいるんです。

大手企業とは違って、ベンチャー企業で働いている人たちは、イノベーション型の人が多い。彼ら・彼女らを惹きつけ続けるためにも、給与を十分に支払って、尚且つその人の成長にとって必要な難度の高い仕事もやらせる。

そういった様々なことが全部合わさって初めて、働き続けてくれるんだと思います。

日本人の優位性は、日本語が話せることだけかもしれない。

牧野氏:それからもうひとつ。海外採用を続ける中で10年くらい前から悩んでいることがあります。それは、日本の教育レベルが低すぎるということ。日本人と外国人の採用比率として、どんどん日本人は少数になっていくでしょう。それはなぜかと言うと、日本人は仕事に向いてないんですよ。 

麻野:どんなところでそう思われますか。

牧野氏:自分で考える力がない。もともとその力がなくて生まれてきたわけではありません。中学校くらいまでは、受験勉強もあるので一生懸命勉強してきている。

でも大学の講義って高校の延長のようなもので、考える機会がほとんどないんですね。自分の力で考える人を輩出できる仕組みになっていないんです。

新興国に目を向けると、日本の受験戦争なんて比にならないほど、勝ち抜くために小学生の頃から死に物狂いで勉強していますよね。

そして、大学に入っても尚その勉強は続いていくんです。新興国の彼ら・彼女らは、大学では考える教育をひたすらやるわけです。

ハーバードでやっているような、自分が考えた論理を展開し、議論するということを延々とやっている。将来のキャリア形成についても、自分で考えています。

当社に入ってくる外国人社員の上位半分は、半年間で日本人の4〜5年目くらいまでに成長します。この差はすごいです。自分で考える力を持っているので、様々な問題に対して自分で考えて何とか解決しようとするんです。これは、多くの日本人にはすぐにはできないんですよね。

そうなってくると、日本人の優位性というのは、日本語が話せることだけ。

入社後に全員が受ける、スターターミッションという突破型の新人研修があるんですが、それを突破するのに日本人は4ヶ月くらいかかるのに対し、外国人は1か月半で突破していきます。

外国人社員は、入社時点から自分で考える力が十分に備わっています。大学の4年間、さらには大学院まで含めた6〜7年という期間の中で培われているんですね。

麻野:数年前にすでに牧野さんは、日本人よりも外国人を採用した方がいいというお話をされていましたね。

牧野氏:日本人採用0というわけにはいかないですけどね。日本国内のマーケット規模に応じて一定数絶対必要になります。

営業やコンサルなんかは、日本語のコミュニケーションが必要ですから。ですが、開発や企画の仕事は、日本人である必要はないかもしれません。

麻野:ありがとうございます。本音は、いつまでもお話を聞いていたいという気持ちです。そして、たくさんのベンチャー企業の経営者に、牧野さんのお話を聞いてもらいたいなとも思いました。

牧野氏:ベンチャー企業経営者と話をすることは好きなので、そのような機会があればぜひ。

麻野:ぜひ、よろしくお願いします。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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