【前編】サイバーエージェント×ネクスト “モチベーションカンパニーの創り方” 「事業よりも先に取り組むべきこと」
2016年に第6回目を迎えたBest Motivation Company Awardは、リンクアンドモチベーションが毎年開催している社員モチベーションが高い企業を讃えるイベント。モチベーションサーベイ実施企業の中から、最も優秀な取り組みを行った2社の代表者として当時サイバーエージェント執行役員・現シーエー・モバイル代表取締役社長石井洋之氏、ネクスト代表取締役社長井上高志氏、そしてリンクアンドモチベーションからは代表取締役会長小笹芳央、モデレーターを務める執行役員麻野耕司の4名が登壇し『モチベーションカンパニー創りの過程から組織創りの秘訣を紐解く』と題してパネルディスカッションを行った。
【イベント実施日】
2016年3月10日
【登壇者】
株式会社シーエー・モバイル 代表取締役社長 石井洋之 氏
株式会社ネクスト 代表取締役社長 井上高志 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹芳央
株式会社リンクアンドモチベーション 執行役員 麻野耕司
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内発的モチベーションこそが、事業を維持する原動力となる
麻野耕司(以下、麻野):今年のBest Motivation Company Awardでは最もワークモチベーションの高い企業として、モチベーションサーベイを実施している企業の中から、サイバーエージェント社とネクスト社を選出させていただきました。
今回はそれぞれの代表者として石井洋之氏・井上高志氏の2人にご登壇いただき、どのような施策を行い、どのような成果を上げてこられたのか、たっぷりとお話しを聞かせていただきたいと思います。また同時に、リンクアンドモチベーションの小笹には、モチベーション事業を推進する側から、2社の事例を解説してもらいます。
では、そもそもお聞きしたいのですが、なぜ社員のワークモチベーションを高めることに注力するのでしょうか。
井上高志氏(以下、井上氏):ネクストは私が26歳のときに一人で創業したのですが、私たちは創業期から『日本一働きたい会社』を目指してきました。つまり、ずっと社員のワークモチベーションを大切にしてきたのです。
「働く人のワークモチベーションが高ければ、業績も上がる」ということは合理的な結果、必然的な結果、と言っても過言ではないでしょう。現に多くの経営者の方々は、社員のワークモチベーションを高く維持したいと考えているはずです。ワークモチベーションと一口に言っても、その根源となるものは人それぞれですし複雑な要因が関係しています。
そこで、ワークモチベーションを外発的な要因と内発的な要因という、2つに分けて考えています。
外発的要因とは、具体的には給与や物質的報酬といった外部から与えられるものです。外発的要因は社員のワークモチベーションを短期間でグッと高めるのには有効ですが、外部リソースに依存しているので、長期間安定して維持し続けるのは難しい面もあります。
一方、内発的要因とは自己実現や自己成長、社会貢献など、自分自身の内部にもつ達成目標のことです。ワークモチベーションが内発的に高い状態にあれば、たとえ壁にぶつかって失敗しても、そこから学びを得てさらに突き進んでいくことができます。外発的要因を効果的に使いながらも内発的な要因をしっかりと醸成していくことが、業績を維持していくうえでいかに重要であるかは、言うまでもないですね。
組織の可能性を知った原体験
麻野:井上さんが創業のころから内発的な要因を強く意識していたのは、なぜなのでしょうか。
井上氏:最初のきっかけは、京セラ株式会社創業者稲盛和夫さんの書籍でした。「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という有名な経営理念があるのですが「人類、社会の進歩発展」の前に「全従業員の物心両面の幸福」がなければならない、と彼は言っています。
京セラを築いた大人物ですら、経営者一人が強いビジョンを持つだけでは不十分で、社員一人ひとりの中に心から湧き上がる原動力が必要だと語っているのです。
創業当時から知識としてワークモチベーションの重要性を認識してはいましたが、それを実感として理解していったのは、リンクアンドモチベーションと出会ってからです。リンクアンドモチベーションが提案するメソッドを少しずつ取り入れてみたところ、実際に業績にも変化が現れ始め、徐々に大きな施策へと展開していくようになりました。
麻野:ありがとうございます。石井さんは組織と経営の関係についてはどのように捉えていらっしゃいますか。
石井洋之氏(以下、石井氏):私が新卒で入社した当時から、サイバーエージェント代表取締役である藤田は社員のワークモチベーションを上げることに力を入れていました。
私自身、ワークモチベーションの重要性は強く感じていましたが、そうした考え方は、学生時代の原体験からきています。幼い頃からチームスポーツをやっており、リーダーを務めることが多かったのですが、中学、高校の部活や大学のサークルでは、メンバーのモチベーションを高めることで組織全体のパフォーマンスが数倍以上に跳ね上がることを、何度も実感したからです。
次世代を成長し続ける企業を経営していくためには、ワークモチベーションを維持できる組織であることは大事な要素だと考えています。
小笹芳央(以下、小笹):私の原体験もチームスポーツにあります。私はラグビーを通じて、幼少期からチームスポーツの空気や雰囲気を感じていました。「最近チームがピリッとしているな」「なんだか気持ちが緩んでいるな」というように、目に見えないけれど結果に影響を与える空気の存在を感じていたのです。
事業はPLやBSといった形で数字に表すことができますが、その数字を作り出す要素には目に見えない文化や風土があります。「目に見えないものに投資をすることが結果に現れる」「目に見えないことが大事だ」と訴え続けてきたのは、それが理由です。
これから先の組織人事において大切な2つのこと
麻野:では視点を変えて、組織に対する投資はどう捉えていけばいいか聞いてみたいです。事業が伸びていれば必然的にワークモチベーションは上がります。すると、わざわざ組織そのものをターゲットにして投資をする必要は、どの辺りにあるのでしょうか。
小笹:私が今まで携わってきた企業を例に挙げると、リクルート・ユニクロ・楽天といった企業はワークモチベーションが高かったし、多様なワークモチベーションを束ねていました。つまり、一人ひとりが使命感を抱いているんですね。使命というのは“命を使う”と書きます。
つまり、大きく成功する組織というのは、自分の命を使うに価する社会貢献、顧客価値を感じている人が多いということです。
私は新卒でリクルートに入社したのですが、いわゆるリクルート事件が起きたのが3年目のことでした。各メディアを始めとして多くの批判を浴びましたし、リクルートの社章を付けていると、道行く人からも非難の目を向けられているような気さえしました。
だんだんと社内のワークモチベーションも下がっていき、会社を辞める人が目立ち始めたときでした。会社のミーティングルームに社員を集め、これからどうしていくべきか、とことん話し合いました。
そして「社会に様々な価値を提供していく」という使命感を社員全体で改めて持つことができたとき、不思議と周囲からの批判も減っていきました。自分たちに自信と誇りを持つことで、揺るぎない会社に変わったのです。会社を絶対的な危機から救ったのは、間違いなく一人ひとりのワークモチベーションでした。ワークモチベーションは永続的な発展に必要だと感じました。
麻野:内発的モチベーションがあれば、たとえ外部環境が悪くなっても自分たちで高いワークモチベーションを維持し続け、新たな事業を創っていけるということを、リクルート時代の体験は物語っています。だからこそ、事業よりもまず組織に投資すべきということなのですね。
小笹:これから先の組織人事において、ますます重要性が高まっていくポイントは2点あります。1点は、いかにして社員に選ばれる会社になるか、つまりいかに労働市場に適応するかということです。
IT化・技術の高度化が進んだ現代においては、ヒット商品はすぐに模倣され陳腐化するため、商品市場で優位性を保持し続けることは非常に困難です。そんな中、戦略を生み出し実行に移すのは、他ならぬ社員一人ひとりです。新しいものを生み出し、短サイクルで変化する商品市場に適応できる組織力の強化が必須になってきます。
もう1点は、人を束ねる経営のビジョンや方針の旗印を創ることです。昨今、働き方の革命が注目されており、働く時間や場所は更に自由になっていくでしょう。そうした多様性を受け入れたうえで、組織としての強みを発揮するために、より強いビジョンが必要とされています。
こうした背景から、リンクアンドモチベーションは組織に着目してきましたし、これからも組織の観点から企業をサポートし続けたいと考えています。
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