グッドパッチ社 前人未到、デザイン会社初の上場
新時代を勝ち抜く経営方法【後編】

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プリのマネーフォワードやニュースアプリのGunosy(グノシー)などの創業期にデザイン領域で関わり、またコロナ禍で高まる、高速通信やクラウド、人工知能(AI)などを事業に活用する『デジタルトランスフォーメーション(DX)』の促進に大きく貢献している、グッドパッチ社。

グッドパッチ社は、少数の天才に依存するようなデザイン会社と異なり、組織にナレッジを蓄積し再現性を高める組織づくりにより人材育成のプロセスを体系化。優秀なデザイナーを継続的に生み出す仕組みを整えており、実際に多くの人材が数多くのメディアに出演しています。

また、今年の6月にはデザイン会社として史上初となる新規上場 (IPO) を果たしました。上場までの道のりで、グッドパッチがどんな経営をしてきたのか?成功や失敗を経験される中で見出した法則を、新時代の経営手法としてお話いただきました。

【セミナー実施日】
2020年10月8日 (木)

【スピーカープロフィール】
株式会社グッドパッチ 代表取締役社長/CEO 土屋尚史氏

【モデレーター】
株式会社リンクアンドモチベーション 中堅・成長ベンチャー企業向けモチベーションクラウド事業責任者 田中允樹

【ライター】
株式会社リンクアンドモチベーション  沖田慧祐
株式会社リンクアンドモチベーション  岩崎健太

ミドルステージにおける経営哲学① 「経営者が非を認める」

リンクアンドモチベーション 田中:ここからは、ミドルステージについてお伺いさせてください。

グッドパッチ 土屋氏:従業員数が、50人〜100人の時、組織が大崩壊しました。具体的に起きたことや解決策については過去の登壇 (編集注:【前編】「経営陣への不信」から始まった組織崩壊 デザインカンパニーグッドパッチが直面した組織崩壊と2年間の逆転劇) を参照ください。

当時は、あまりにも多くの社内問題が出てきていて、何が問題のコアか分かりませんでした。一個解決しても全体が改善する気配がなかったというのが、正直なところでした。「一体、何なんだ、この気持ち悪さは」と当時思ってたんですけど、ある時に「これ、たぶん経営陣がまったく信頼されてないんだ」ということに気づいたんです。社員が役員のことまったく信頼してないなと思って、その次の週に全社員を集めて、今起こってる問題の根本的な本質の課題が何かっていうのが分かったと伝え、それはこれですって言って、スクリーンに出しながら、役員と社員との間の信頼関係が壊れているということを、全社員に話したんですね。こういう状態になって本当に申し訳なかったと。俺はこの状態を改善したいので、全社員と一人一人話をさせてほしいということを言って、100人の社員と3カ月かけて1on1をしました。でも、最終的にはその1on1って根本解決にはならなかったんです。一瞬、良くなった雰囲気が出たけども、根本的なところは間のマネジャーや役員層に問題があったので、根本解決にはならなかったんです。それでも、今残っている当時いた社員は「あのとき土屋さんが経営陣に非があるってことを認めたところから、信じはじめました」ということを言ってくれています。

リンクアンドモチベーション 田中:なかなかできないですよね、非を認めるって。「それ見たことか」っていう風にあおられるっていう恐怖もあれば、非を認めたっていうことは、何か事業の将来とかを不安にさせるリスクになるんじゃないかとか、いろんなところを考えて不安になられると思うんですよね。

グッドパッチ 土屋氏:でも、これをやらなきゃいけない会社はめちゃくちゃあると思うんですよ(笑)。

リンクアンドモチベーション 田中:よく「組織はリーダーの写し鏡だ」といわれます。組織で起こってることは、大体リーダーの日頃の行動の写し鏡で、跳ね返って出てくるよと。参考までに、なぜ土屋さんは自分の非を認めることができたのか、教えてもらえますか?

グッドパッチ 土屋氏:僕は、いまだにそうですけど、変なプライドなかったんですよね。経営者とかタイトルとかが付き始めると、要らないプライドが出ますよね。それは、祭り上げられてるっていうことを自分でメタ認知しないといけないですし、僕は基本的に問題をオープンにしたいタイプの人間だったんです。でも当時、役員とかはやっぱりそういうのは嫌だったわけです。自分たちが非があるってことを認識されるって、当然嫌じゃないですか。僕は、でもそれを明らかにしないと前に進まないって思ったんです。

ミドルステージにおける経営哲学②
「失敗を市場にオープンにする」

リンクアンドモチベーション 田中:なるほど。自分自身を、会社が実現したいことのための手段のひとつ、と捉えると、うまくいくかもしれませんね。続いて、「失敗を市場にオープンにする」についても教えてもらえますか?

グッドパッチ 土屋氏:社会のためと思いながら、オープンにしていました。当時、組織崩壊した、という状態からは改善してたんです。改善はしてたんですけど、マーケットでは、「グッドパッチは組織状態が良くない」という話が出回っていたんです。でも、既にそのフェーズは越えているということを、世の中に明らかにしたかったというのと、あとはやっぱりこういった情報は世の中に出てこないと思ったんです。それほど悪い状況を、皆、見たことはあると思うんですけど、それを乗り越えた会社ってあまりないのかなと思って。これは社会にとって価値あるなと思い、組織再構築の過程を発信しました。

ミドルステージにおける経営哲学③④
「天才は要らない」「言語化文化」

グッドパッチ 土屋氏:デザイン会社だけじゃなくて、どこの会社も天才的なタレントを集めたいですよね。でも、僕はタレント人材に頼らない組織を作らないといけないと考えています。一部のタレント人材に頼って、その人目掛けて仕事が来たりだとか、その人が社内のクオリティーを守っていたりとかすると、その人がいなくなった瞬間に一気に崩れるじゃないですか。そういう状態はサステナブルじゃないと思っているので、しっかりと社内にナレッジを残していく。仕事のナレッジをちゃんと残して、みんながそれを同じように追体験できて、学びの総量を上げていく。次に書いてある「言語化文化」と一緒ですね。言語化を社内でやっていく。社内でナレッジマネジメントがちゃんとできているっていうことが重要で、そのための「言語化文化」でもあります。

リンクアンドモチベーション 田中:アンチテーゼがありますね。デザイン会社は普通、言語化されないとか、職人的な人材で束ねられて、結局組織が大きくならない、みたいなことも多いですよね。

質疑応答 「成長できる人材とは?」「なぜ、グッドパッチは上場をしたのか?」

リンクアンドモチベーション 田中:ご質問もいただいております。「成長できる人材の定義」があれば、教えて下さい、とのことです。

グッドパッチ 土屋氏:グッドパッチでいうと、2つありまして、1つ目は本質を考えられる人です。表層の課題なのか本質の課題なのか見分けられる人ということです。もう1つは、修正の勘どころが良い人。失敗して、学んで、修正するというのは当たり前のことなのですが、一回失敗へのフィードバックをしたら、ちゃんと受け取って、その本質を抜き出して、本質までぐっと近寄ってくる。これが一回で出来る人は優秀だなと思います。

リンクアンドモチベーション 田中:続いて、「なぜ上場したか、教えて下さい」、と来ています。

グッドパッチ 土屋氏:創業当初は、上場については創業当初は全く考えていませんでした。なぜ、上場を目指したかというと、簡単にいうと、ビジョン・ミッションを決めるときに、社会にとってなぜグッドパッチが必要かを考えたんです。そしたら、やるしかないかな、と思って。

当時、デザインは社会からなかなか認められていなかったのですが、それでもグッドパッチには、デザインの力を信じてる人たちが集まっていました。一方で、デザインが今後の日本の中でより重要になってくるのは明らかなわけです。それは、人口減少社会の中では、単純労働ではなく、想像力とかクリエイティビティを駆使して、新しい価値を作ることが重要になるからです。ですから、デザイナーというのは、ものすごく重要な職種なんです。けれども、経済産業省の統計データとかだと、平均年収が400万となっている。平均年収400万のマーケットには、優秀な人が入ってくるわけがない。そしてそんなマーケットには未来はないんです。ですから、このマーケット自体を、しっかりと世の中に認められるような状況にしなくてはいけない、ということを思ったんです。
UI/UX領域のデザインは、デザイン業界の中でも最後の波です。スマートフォンが普及して、それによって出てきた新しい領域がUI/UXデザインで、その波の先頭に僕がいる。もし、僕が会社を売却したりして、その波から下りてしまったら、デザインの価値を世に広めることをミッションとして掲げる会社が、二度と出てこないだろうなと思ったんです。そうしたら「自分たちしかいないだろう」「やるしかないな、」と思えたんです。売却という選択肢を全部捨てて、いくら借金を抱えようが、絶対につぶさず、絶対に上場させるということを、6年前に決めました。

リンクアンドモチベーション 田中:ありがとうございます。最後にメッセージを頂ければと思います。

グッドパッチ 土屋氏:「短期ではなく長期」。自分たちだけが勝つという考えではなく、産業自体を発展させていく、ということが本質だと思っています。あとは、課題が出たときには、経営トップが一番表に立つということ。この2 つがとても重要だと思います。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等はイベント実施当時のものです。

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公開日:2020.12.24

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