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理念経営とは?経営理念の意味や目的、メリットから作り方、企業事例まで

世の中の多くの企業は、理念を掲げています。ミッション、ビジョン、フィロソフィ等呼び方は様々ですが、いずれも共通して企業としての「考え方」や「姿勢」を示す言葉であり、経営において非常に重要なものです。「理念」とは何なのか、経営においてどのように役立つのか、作り方から企業の事例までご紹介します。

理念経営(ビジョナリー経営)とは

理念を経営の基軸として掲げ、その実現を目指す経営のことを「理念経営(ビジョナリー経営)」と呼びます。

理念経営に関して特徴をまとめた著書に、1994年に出版された『ビジョナリー・カンパニー』があります。3MやGE、IBM、P&G、ソニー、ウォルト・ディズニーといった企業が、環境変化を乗り越え、競合よりも優れた成果を残せたのはなぜなのか分析した書籍です。書籍で紹介されている企業は、独自の理念を掲げ、組織文化に根付かせながら理念を進化させることで、長年成長を続けてきたという共通点があり、これが理念経営(ビジョナリー経営)の特徴といえます。

■経営理念とは

経営理念とは、その企業の「存在意義」や「使命」を示す言葉のことです。その中身には、

①企業経営や事業活動における基本的な「考え方」や「姿勢」
②従業員にとっての「働きがい」や「判断基準」
③顧客にとっての「企業からの約束事」や「提供価値」

を表す言葉が含まれます。

経営理念は言語化し掲げることがゴールではありません。むしろ掲げてからがスタートであり、従業員が経営理念の実現に注力することで、顧客への提供価値が高まり、社会的な責任を果たしていくことができます。そのため、言葉を決めた後には経営者を含む全従業員が内容を理解し、自分事化し、実践し続けて、風土に根付かせていくことが重要になります。

また、経営理念の内容は環境や時代の変化に合わせて変化していくものです。組織や事業の現状を踏まえて、今後の方針を経営理念に紐づけて再解釈することや、場合によっては再定義していくことが求められます。

■経営理念とビジョンの関係

先述の通り、「経営理念」とは、会社の目的や存在意義、使命を表現したものです。一方「ビジョン」とは、各企業が「経営理念」をベースに、 事業を通じて将来的に成し遂げたいことや成し遂げたい状態を言語化したものです。

経営理念は「ビジョン」に限らず、行動指針や人事ポリシーなど様々な要素を含み理念体系として成立していることが多くあります。含まれる要素としては、経営理念を活用し、一貫した施策を行うためにかみ砕いた言葉や、環境変化に適応するために中期的に使う言葉などがあります。企業によって呼び方は様々ありますが、理念体系は全体として繋がっており、企業の方向性を示す言葉になっています。

(参考) 企業理念とビジョンの違いは?

企業理念との違い

経営理念と似た言葉として企業理念という表現もあります。広義では、企業の姿勢を示すものとして同義だと捉えることができ、企業によってもその定義は様々です。

言葉の定義としては、経営理念は「経営において重要視する考え方」であり、企業理念は「企業として重要視する考え方」と区別することができます。言い換えると、経営理念は経営者が経営判断の際に用いる考え方であり、企業理念は全社員が判断する基準や仕事の意義を考えるための言葉であり、主体者が異なります。

また、企業は創業者から歴史が始まることを考えると、企業理念は「創業から受けつがれた考えや想い」とも言い換えることができ、一方で、経営理念は「企業理念を踏まえ、外部環境に合わせて示す指針」と表現することができます。

社是・社訓との違い

歴史の長い企業では、理念として「社是」や「社訓」として言葉を掲げています。これらも広義では、経営理念の一つの要素です。

社是は「会社として正しいと考えること」「会社としての行動の目標や指針とする標語」であり、社訓は「会社としての教え・守るべき範」「企業全体の従業員が心がける信条や行動指針」です。但し英語に訳すとCompany mottoやCompany credoと同じ表現になることが多く、各企業ごとの捉え方によるものだともいえます。

(参考)理念を構成する要素と効果


ポストコロナ時代に理念経営がより必要となる背景とは

新型コロナウイルスの拡大に伴い、生活や経済のみならず、働き方にも多くの変化が生まれています。企業の外部環境としては、消費者のニーズや市場環境の変化が起き、変化するニーズに対応する能力が一層求められています。また、企業の内部でも、社内でのコミュニケーションの取り方が変わり、個々人の業務状況の把握が難しくなるなど、分業の必要性が高まっています。

テレワークも一般化し、これまでと同じようにコミュニケーションが取りにくい中では、それぞれが個別で仕事を進めることが多くなり、組織としては「分化(バラバラ)」が進みやすい状況になっています。そのため、多くの企業では今まで感覚的に行っていた関係構築や組織作り、評価や指示などに多くの課題が生じています。ただ、それぞれが入社した動機やここで働く理由など「この企業に属する意味」を持っているはずです。個々人が持つ意味を経営理念で「統合(束ねる)」ことで成果を高めることができます。

経済産業省「人材版伊藤レポート」より

「企業においては、改めて、各社が企業理念や存在意義(パーパス)まで立ち戻り、持続的な企業価値の向上に向け、企業の競争優位を支え、イノベーションを通じて新たな市場を創造・獲得する上での原動力となる人材の確保・育成、イノベーションを生み出す環境の整備といった人材戦略を変革させる必要がある。」

■経営理念を掲げるメリット

経営理念で束ねることで具体的には下記の4つの大きなメリットが生まれます。

①経営や管理職が判断した際に、経営理念を共通言語として効果的・効率的に伝えることができる
意図や背景を、状況に応じて説明したり、個々人に合わせて説明したりする時間が短縮化され、判断コスト・コミュニケーションコストを削減することができる


②組織としての価値観が明確なことで、組織や職場に一体感・安心感を生むことができる
お互いの様子が見えない中でも大事にしていることが共有できるため組織に所属する意識が高まり、生産性向上・離職防止につながる


③企業としてのメッセージが明確になり、「この企業に属する意味」が明確になる
事業・仕事だけではなく、理念や風土によって他社と差別化し、優秀人材の保持や獲得につながる


④企業として一貫した行動がとられることで、商品・サービスを通じて顧客の共感を生むことができる
連携や分担においても同じ方向性を目指し、顧客に価値として提供することで顧客が信頼や期待を持つことができ、ブランド価値につながる

上記のいずれの場合においても、経営理念が「あること」では意味がありません。実践し続けることや組織風土に根付いていることでようやくメリットが生まれるため、常に実践できているか、基準は十分に高いかというモニタリングが必要になります。

■永続する企業には理念がある

企業理念の有用性は過去の企業が証明してきたものでもあります。『ビジョナリーカンパニー』で分析した対象は、いずれも経営交代が続いた上でも、業界で卓越した地位を築き、社会へ影響を与え、数十年続いた企業です。また、近年、理念経営を行っている企業は株価の上昇率も高いという研究成果も発表されています。

成長だけではなく、永続するためには多くの関係者から共感を得ることができる理念の存在が重要であると言えるでしょう。

■エンゲージメントとの相関性

昨今、政府主導の働き方改革推進の流れにおいて、長時間労働の撲滅といった量に関するテーマだけではなく、労働生産性向上といった質に関するテーマにも注目が集まっています。そして、労働生産性向上のための最重要課題として、従業員との「エンゲージメント」が取り上げられることが増えてきています。エンゲージメントとは、言いかえれば「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」のことです。

(参考)慶應義塾大学との研究結果を公開~エンゲージメントスコアの向上は営業利益率・労働生産性にプラスの影響~

経営理念とエンゲージメントは相関関係が見られます。リンクアンドモチベーションの調査では、「経営陣に対する信頼」「理念の現場浸透度」がエンゲージメントに相関性の高い上位8項目に含まれています。つまり、従業員エンゲージメント向上のためには、方向性を提示し、一貫性を生み出す理念の存在が欠かせません。

(参考)【研究レポート】「従業員エンゲージメントの近年の傾向」に関する研究結果を公開

経営理念を創る際には、現状把握を行った上で、課題を特定し、言葉を作り上げていきます。ただ、メリットが生まれるのは従業員が実践してこそなので、経営理念を創る際にはどのように現場に浸透させていくかまで予め考えておくことが重要です。
(参考)経営理念(企業理念)浸透コンサルティング

その際のポイントは大きく3つです。

①現状把握:状況が見えにくい組織にものさしを入れ、現状を見える化する。同時に、目指す状態の組織状態を定義し、課題を具体化する。

②巻き込み:経営理念を創るタイミングから現場を巻き込み、現場が当事者意識が持ちやすい形で進める。

③組織づくり:経営理念が現場に浸透するようにエンゲージメントの高い組織を先につくっておく。

どれほど良い経営理念が掲げられても、実現されなかったら意味がありません。また、人は感情を持つ生き物だからこそ経営理念の中身(コンテンツ)だけではなく、説明する人(チャネル)によっても大きな影響を受けます。だからこそ、理念経営の実践においては組織作りが非常に重要な意味を持ちます。

経営理念を掲げる企業事例

経営理念を掲げて成長している企業は数多くあります。

分かりやすい例で言えば、ウォルト・ディズニーやスターバックス、星野リゾート、Appleなどが挙げられます。これらの企業は、サービスのクオリティの高さに加えて、提供してくれる価値が明確であることが共通しています。そしていずれもマーケットに後から入ってきた中でも圧倒的な成長と継続性を見せています。

理念経営による組織改善事例

具体的な組織改善の事例もご紹介します。

・日本航空株式会社
3万5千人のスタッフにJALブランドを浸透させ、 再生へと、加速する。
https://solution.lmi.ne.jp/org_development/case/3320

・大塚製薬株式会社
「経営リテラシー」と「自社らしさ」のモノサシを当て「変革型リーダー」に導く
https://solution.lmi.ne.jp/hr_development/case/1215

まとめ

長期的に成長する企業の特徴とも言われる理念経営(ビジョナリー経営)について取り上げましたが、社会的な意義や働きがいが求められる現代では理念は一層重要になってきています。但し、理念の決め方のみ工夫しても意味がなく、その前提となる組織の現状把握や、目指す姿を策定することから改善が必要です。理念経営においても組織文化の醸成が鍵になるからこそ、事業と組織の両輪にものさしを入れ、一歩ずつ前進していくことが求められます。

林 優里香
林 優里香

【プロフィール】 新卒でリンクアンドモチベーション入社。 以降、一貫して大手企業向けクラウド事業に従事。 現在、幅広い西日本企業のクラウド運用をサポート。

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