catch-img

最期の瞬間に心から納得できるか?

新しい製品やサービスが続々と登場し、企業の栄枯盛衰が続く現代。これから時代はどう変わり、その中で人はどんなキャリアを築いていけばいいのか、それは若い世代にとって最大の関心事のひとつだろう。

では、今まさに新しい時代を切り拓いているトップベンチャーの若手経営者たちは、どんな視点で自らのキャリアを築いてきたのか。株式会社メルカリの小泉文明氏、株式会社メタップスの佐藤航陽氏、SHOWROOM株式会社の前田裕二氏に語っていただいた。

モデレーターは株式会社リンクアンドモチベーションの麻野耕司が務める。テレビ東京ビジネスオンデマンドが「新時代に”活きる”キャリア」をテーマに主催し、ドラマ「インベスターZ」にも登場したトークイベントをHR2048独自編集でお届けする全3回シリーズ、後編。

【イベント実施日】
2018年4月13日(金)

【プロフィール】
株式会社メルカリ 取締役社長兼COO 小泉 文明氏
株式会社メタップス 代表取締役社長 佐藤 航陽氏
SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田 裕二氏
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 麻野 耕司

従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら

▼ エンゲージメントを可視化し、組織改善を行うサービス【モチベーションクラウド】はこちら

  モチベーションクラウド|組織改善ならモチベーションクラウド モチベーションクラウドは、リンクアンドモチベーションがこれまでの組織人事コンサルティングのノウハウをもとに開発した国内初の組織改善クラウドです。組織のモノサシ「エンゲージメントスコア」をもとに「診断」と「変革」のサイクルを回すことで、組織変革を実現します。 株式会社リンクアンドモチベーション


いくつになっても「心の寿命」を尽きさせない

麻野 耕司(以下、麻野):それでは第三問に行きたいと思います。「ご自分のキャリアを考えるとき、一番大切にしていることはなんですか?」。

佐藤 航陽氏(以下、佐藤氏):すごくいい質問ですね。キャリアという小さな話ではなく人生そのものだと思うんですけども、私は「来年までしか生きられないとしたら何をするか」とよく考えていますね。

「今やっていることが大失敗して世の中から叩かれ、世界中の人が敵になっても死ぬ瞬間に納得できるかどうか」と。

キャリアについても、自分の最後の仕事だとしてやるかどうか。大失敗したとして「いやあ、やらなければよかった」と悔やんだりしないかをよく考えます。死ぬ瞬間に本当に「よかったな」と言えるか、で意思決定します。

麻野:ちなみに、これまで佐藤さんが「来年死ぬとして」と仮定しなかったら挑戦できなかったことはおありでしょうか?そういう感覚がもたらしてくれたご自身の変化とか行動とか。

佐藤氏:起業や海外展開がありますね。私は25、26歳のときに海外展開を一気にやったのですが、これは「海外展開をやらずに死んだら死んでも死にきれない」「一文なしになって住むところをなくしてもこれは絶対にやる」と思えたからなんです。

あとはファイナンス事業も、「これをやらずして終わるのは絶対に嫌だな」と思ったので実行しました。周りからは大反対されましたけれども。

麻野:どんなふうに反対されるんですか?

佐藤氏:投資家の側からすれば、投資するときに受けた説明とまったく違う事業をやると言われたわけですから(笑)。ふざけるなという話でしょうけれども、それでも引けない。これは絶対やらなきゃいけないという話をずっとし続けて、ようやく前に進めました。

成果が出てくれば納得してもらえるんですけども、やはりそれまではすごく苦しかった。それでも、やってよかったと思いましたね。

麻野:その新しいビジネスにチャレンジしたのも、来年死んだとしても悔いがないように、本当にやりたいことをやろうと思ったからなんですね?

佐藤氏:そうですね。私は体の寿命と心の寿命は違うと思っているんです。心の寿命というのは、いつまで情熱を持って「何か新しいことをやりたい」と感じられるか。だから、若い人でも心の寿命を失っている人はいるはずですよね。

もう何もやる気がない、このままでいいんだと。逆におじいさんになっても、また新しいこと、さらに脱皮をしようという人たちはまだ心が生きていると思うんです。

私は心が生きているか死んでいるかを寿命だと思っています。まだ自分の寿命があるうちにとことんやろうと思うと、与えられた時間というのは本当に短いなと。

人生であといくつプロジェクトをやれるのかについてもよく考えていますね。その中で一番優先順位の高いものをやる、というスタンスで取り組んでいます。

麻野:なるほど。私もいろいろな人を見てきましたが、ほとんどの人が「いつかどこかで本気出そう」と思っているんですよね。でも本気を出さないまま死ぬ人が世の中のほとんどじゃないですか。やっぱり本気を出すということは、佐藤さんみたいな死生観が必要なのかもしれないですね。

佐藤氏:手足が動かなくなったり事故に遭ったりということは結構な確率で起きていますよね。それを自分のこととして感じられるかどうかが生きているということなんじゃないかと、私は常々感じていますね。

一番テンションが上がることは何か?健全なエゴをキャリアの軸にする

麻野:それでは同じく「ご自分のキャリアを考えるとき、一番大切にしていることはなんですか?」という質問に対して、小泉さんお答えください。

小泉 文明氏(以下、小泉氏):びっくりしたんですけど、佐藤さんのお話はこの質問に対する私のふたつの答えのうちのひとつとまったく同じなんですよ。私はもう5人以上友人を亡くしているんです。

また、起業家に神戸出身の人が多いのは、震災で身近な人を亡くしているからだと思うんです。本当に死を身近に感じることで、やはりチャレンジしようと考える。生きているだけで儲けものだと、私はつくづく思いますね。

もうひとつ、キャリアを考える上で私が大切だと思っているのは、エゴを持つことです。健全なエゴ、欲望。私のエゴは何かというと、やはり自分のところのプロダクトやサービスをなるべく多くの人に、なるべく多くの時間使ってほしいということです。「時間を奪いたい」というか。

こういうことはミュージシャンやアーティストが言うとかっこいいんですけど、私たち起業家が言うとちょっと危なっかしいと思われてしまうかもしれない。でもそういうエゴを持つことはすごく大事だと思います。

ミクシィもメルカリもそうなのですが、私はコンシューマー向けのインターネットサービス以外はあまりやりたくないんですよ。やっぱり多くの人に触れてもらいたいし、その人たちのライフスタイルが変わることが私にとって一番テンションが上がることですから。

逆境の中で諦めかけている人のためにも、圧倒的に勝ちたい

麻野:なるほど。前田さん、いかがですか?

前田氏:実は僕も、ふたつ考えていることのうちのひとつがまったくお二人と同じなんです。僕も結構身近な人が亡くなっていて、起業しようと思った直接のきっかけも、大学時代にやっていたバンドのメンバーが亡くなったことなんです。

彼は日本にいて僕はアメリカにいたのでまったく実感が湧かなかったのですが、35歳くらいで突然亡くなってしまって。だから先ほど佐藤さんが言われたように、1年後どころか1週間後には生きていないかもという感覚を、常に強烈に持っています。

バンドの友人が亡くなった当時、私はまだ外資系証券会社で働いていたのですが、その時、「仮に自分が1週間後に死ぬとして、それでも今までどおりこの会社で同じ仕事を続けるだろうか」と真剣に考えました。そこからすぐに動いて、会社を辞めて、起業したい、と上司に話したのを覚えています。

僕は8歳で両親がいなくなっているので、小さいときから死生観を強く持っている自覚はありました。そして身体も心もさらに成熟した25歳のときに、お話したようにバンド時代の友人が亡くなり、それが自分の死生観を更に深めるきっかけとなった。

そこで「リスクを取ってでも0→1を産みたい。代替不可能な仕事がしたい」と強く思うようになりました。

もうひとつの「大切にしていること」についてですが、僕は成人するまでにあまりにいろいろなことがあり過ぎて、「自分は不幸だ」と強く思っていました。両親が亡くなったり、貧困の中で悔しい思いをしたり、いろいろな困難に直面しました。

そうした逆行と向き合っていた当時は「何で、どうして自分だけこんなに不幸なんだろう」と、とてもネガティブな気持ちになっていました。

けれどもあるとき「待てよ」と。自分はそういった逆境に置かれていたけれども、そんな僕が後天的に頑張って成功したら、例えば今同じように難しい局面に置かれている人たちが、もしかしたらちょっとでも励まされるんじゃないかと思い至ったんです。

それがモチベーションのふたつ目です。

だから、もう圧倒的に成功しなきゃいけない。裕福に生まれた人や何かチャンスに恵まれて育った人に比べて、100倍差・1000倍差で勝たなきゃいけないと強く強く思っているんです。そうすることによって「後からでも頑張ればいくらでも成功できるんだな」と思える人の数を増やしたいんですよね。

だから「努力がフェア(公正)に報われる社会を創る」というのを会社の理念にもしています。これは何があっても絶対にブレることがない、永続する我が社の価値観です。

「もういいんじゃないの」という人もいるかもしれませんが、全くもって、満足していないです。だって僕たちは今、明確に、負けている。たとえばアメリカや中国をライバルと捉えた時に、なぜここまでも大きな差が開いてしまっているのか。

インターネットの世界では原則アメリカがルールを作る側に回っていて、日本はその後塵を拝する格好となっている。

ルールを一度作ってしまわれると、そのルールの中でどれだけ頑張っても、なかなかひっくり返すのは難しく、海外での事業展開において、そもそもスタートラインからして違う、という感覚を持っている経営者は多いかもしれません。

でも、「結局は先に何らか恵まれたところに生まれた人たちが勝っているよね」という世界を、僕はぶっ壊したい。だからなんとしても僕らの世代で勝つんだ、全力で勝負するんだと。そう思っているんです。

小泉さん、佐藤さんも、心から煮えたぎるようなパッションで勝負しようと思っている。このお二人が私は本当に好きなんですよ。こういう場だから言うのではなく、すごく心がシンクロするんです。

麻野:ありがとうございます。今日は日本を代表するベンチャー企業のトップの皆さんにお話を伺ってきました。

キャリアについてという切り口でしたが、「これから社会は、世界はどう変わっていくのか」「その中でどういうふうに一人ひとりが生きていくのか」というような、かなり熱くて深いお話が聞けたのではないかと思っています。本日は誠にありがとうございました。

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

従業員エンゲージメントを可視化・改善する​​​​​​​モチベーションクラウドはこちら

▼関連記事▼

本編の前編となる「トップベンチャー社長がいま就職したい企業とは?」はこちら

本編の中編となる「見える化されていく時代に「信用」が新たな価値を生む」はこちら

この記事を読んだ人は、こんな記事にも興味を持っています

人気記事ランキング

※過去1週間のPV数より集計

新着記事

あなたの組織にも、課題はありませんか?

組織改善のお役立ち資料が無料ダウンロードできます

3分でわかる
モチベーションクラウド

モチベーションクラウド
入門ガイド

モチベーションクラウド入門ガイド

エンゲージメント向上施策集

エンゲージメント向上施策集