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【後編】慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本 隆氏 「HR Techの発展により、人間はもっと自由になれる」

Cutting Edge な人やテーマを取り上げていく「Cutting Edge_HR Tech」。
今回 は、日本の HR Techの第一人者としてもその名を知られる、岩本 隆氏をお迎えします。
HR Techに注目した背景、そして日本の HR Techの未来とは。HRの未来の道標となるような内容は必読です。

【プロフィール】
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本 隆氏

データ化された「変数」マネジメントが求められる時代へ

-今後、マネジメントはどのように変化していくとお考えでしょうか?

岩本 隆氏(以下、岩本氏):プロスポーツの世界は、個人データもチーム成果も全てが、数字で表されますよね。「ID バレー」と呼ばれて、試合中も iPad を片手に選手に指示を出す元全日本女子バレーボール監督の眞鍋政義氏がやっておられたようなことは、欧米企業ではもうすでに行われていることです。

ラインマネジャーは、人事データが入ったタブレットを手に、その場で指示する んですね。これまで月1回の面談でしかフィードバックしていなかったスタイルから、即時フィードバックのスタイルへと変わってきています。

テクノロジーが進むと人間同士のかかわりが減るのではないかという声もありますが、実は、データを活用することでフェーストゥフェースのコミュニケーションが増加するという現象が起こっているんです。むしろ「ヒューマンの価値」がより鮮明になってきていますよね。

フェーストゥフェースのコミュニケーションが弱いと、今後、ラインのマネージャーではいられなくなるでしょう。

また、企業においては、経営学の父と言われるフレデリック・テーラーが、人 間の作業を数値化したことがはじまりですが、製造業特に工場に限るものの、 人の付加価値が定数で測れるとされてきたんですね。

しかし欧米では、20~30 年前から製造業の流出が起こり始めて、定数で測れるビジネスがなくなっていった。

一方で日本は、すべての工場労働者が同じ品質で作業ができることに強みを発 揮して、製造業で発展を遂げてきた国ですが、近年ではアジアに工場を設立す るなどして国外に出るようになった。

欧米同様で、同じ生産性でマネジメントするという、製造業のようなビジネスを国内で抱えることが少なくなりましたよね。日本の現在の GDP(国内総生産)の 75%はサービス業ということも、それを証明しています。

ただ、サービス業の本質とも言える「提供する付加価値によって、お客さんの感じ方が変わる」という考え方自体は、日本にはまだ根付いてはいません。欧米はチップ文化なので、サービスによってチップに差が出るという分かりやすさに慣れており、価値を変数で測ることが定着しやすいんですね。

サービス業に従事する人の付加価値を変数化していくことが、サービス業の生産性向上にとっては不可欠であることを考えると、日本では課題がまだ残りますね。一方で、コンサル業界なんかは比較的分かりやすいんじゃないでしょうか。

人によって付加価値が違って、1億円稼げる人もいれば 2千万円しか稼げない人もいるでしょうし。ラインマネジャーの役割は、いかにその稼ぐ金額を高めるマネジメントができるのか。

つまりはメンバーの変数をマネジメントできるのかだと思いますので、コンサル業界は他に先駆けて、すでにプロスポーツ化していると言っていいかもしれません。

日本のHR Techは、東南アジアや中東諸国を狙って発展すべし

–今後の日本の HR Techは、どのような展開を迎えるでしょうか。

岩本氏:企業側においては、来年はより多くの成功事例が出始めると思います。これまでの日本の企業というのは「勘と経験」で経営してきた会社が多いんですね。

だからこそ、少しでもデータ分析を活用すれば、すぐにテコ入れすべきポイントが見つかる。だからこそ、成果が出るのが意外に早かったりするんですよ。

むしろ問題は、サービスプロバイダ側です。やはりアメリカという国は、サー ビス領域で強いんですね。タレントマネジメント領域における商品・サービスも、完全に外資企業に占拠されてしまいましたし。アメリカにおける HR Tech系のスタートアップ企業も 400~500 社あるので、今後彼らが日本に参入してきたら、勝ち目はないでしょうね。

とは言え、日本のユーザーマーケットはこれから開けていくところです。なので、日本のベンダーは、まず国内企業のシェアをしっかりと獲っていくことだと思いますね。実際のところ、アメリカやヨーロッパでのシェアを獲っていくことの難易度は高いですが、アジアでは戦えると思います。

中国のトップ企業やシンガポールの企業は進んでいますが、ターゲットとすべきは他の国ですね。東南アジアや中東諸国は、日本の経営をベンチマークしています。あとはミャンマーやベトナム、インドネシアです。

それから、今まさにハイテク国家に変わろうとしているイランもターゲットになりますね。欧米流に習いたくなく、日本をベンチマークしている国のシェアを確実に獲っていくことが重要です。

機械を使う側の、人間の成長が問われる時代

-HR Tech が進んでいく先の社会や企業の在り方についてはどうお考えですか。

岩本氏:機械でできることは全部機械に任せる流れになるでしょうね。なので、このままだと機械に仕事を奪われて終わりということになりますが、やはり人間にしかできないことが何かということです。今の機械ができることというのは、左脳の機能の一部だけなんですね。計算力などといった部分では確かに、人間より遙かに能力が高いです。

この領域で最も進んでいると言われる、ある企業の方が「機械は、人間には絶対勝てない」「100 年後だとしても、機械が人間を超える世界は来ない」という話しをしていました。機械が得意な分野は機械に任せて、機械を使う側に立つ人間の成長が今後問われてくると言えますね。実際、私はこれからもっと面白い世の中になっていくと思っているんですよ。

今までは、会社に行って事務作業を一日やって疲れて帰る生活だった人間ですが、事務作業の部分を機械が担ってくれるので、会社ではクリエイティブな仕事だけをしていれば良くなる。つまりは、ずっと楽しいことだけをしているイメージですよね。そんな世界になるんじゃないかなと。

昨年、HR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)を立ち上げた際に「今年は HR テクノロジー元年になる」と勝手に宣言したんですが、まさにその頃に HR Techにかかわるベンチャー企業が出現し始めたんですね。

そして今年は、アー リーアダプタ的なグループが出てきた。2017 年は、多くの企業が、自社で HR Techに取り組み始めてるので、成功事例が世の中に出てくるのではと期待して います。日本の HR Tech自体が次のフェーズに進む一年になるのではないでしょうか。 

▼こちらの記事もぜひご覧ください

【前編】慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本 隆氏「HR Techの発展により、人間はもっと自由になれる」はこちら

※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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