「CHROー最高人事責任者が求められる時代」 サイバーエージェント 取締役 人事管轄 曽山 哲人氏 × リンクアンドモチベーション 取締役 麻野 耕司
様々な企業の中で閉じられていた組織人事のナレッジをシェアし、日本のべンチャー企業の発展に貢献していくことを狙いとしている「Strategic HR Summit」。
第3回のテーマは「経営者は CHRO(最高人事責任者)をどう生み出すべきか」。
「CHRO と言えば誰か?」の問いには必ず名前が挙がる、株式会社サイバーエージェント取締役の曽山哲人氏をゲストに迎え、株式会社リンクアンドモチベーション取締役 麻野耕司とのセッションが行われました。
当日は、経営者・人事責任者約 80 名の参加者に加え「FRESH!by CyberAgent」によるライブ配信で2,000 名近くの方々に視聴いただくなど、熱気あふれる時間となりました。
【イベント実施日】 2017 年 1 月 30 日
【登壇者】
株式会社サイバーエージェント 取締役 人事管轄 曽山 哲人 氏
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 麻野 耕司
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価値観を言語化し実行することで、サイバーエージェントは成⻑した
麻野 耕司(以下、麻野):まず、このセッションを企画した背景からお話したいと思います。
普段、色々な企業さまの組織変革をサポートさせていただく中で「いい人事いない?」「サイバーエージェントの曽山さんみたいな人事責任者ってどうやったらできるの?」という質問を経営者の方から多くいただきます。
であれば、直接曽山さんにお話を聞いてみようということでご登壇いただきました。
曽山 哲人氏(以下、曽山氏):ありがとうございます。サイバーエージェントの組織づくりにおけるキーワードは、企業文化が組織にあるのかどうかです。
例えば、私たちは、チームプレイを重視していることを「チーム・サイバーエージェント」という言葉で表現しています。
また「セカンドチャンス」というキーワードも大事にしていて、チャレンジして失敗したすべての人に、再度チャンスをあげようという考え方を持っています。
クレドやバリューと呼ばれるものかもしれませんが、サイバーエージェントでは、ミッションステートメントと呼んでいるものです。価値観が言語化されているか、そしてそれが実行されているかということを大切にしています。
また、1998 年にはネット広告事業、2004 年にはメディア事業、2009 年にはゲーム事業を開始するなど、事業ポートフォリオを変え単一事業だけに頼らない経営をしている点も特徴です。
その中でも、2006 年に開始したあした会議(経営幹部全員で、サイバーエージェントのあしたにつながる新規事業と中⻑期の課題解決案を考える会議)と
2008 年の CA8(独自の取締役交代制度。2年毎に原則2名の取締役を入れ替える)という人事制度を始めているのですが、これらの人事制度が会社の成⻑を加速させたとも言えます。
また「内部育成」というキーワードがありますが、サイバーエージェントは M&A 依存せず、昨年度の売上 3,000 億円以上も、ほぼ自社で事業を立ち上げ、伸ばしてきた事業から成り立っています。
若い人を採用し、事業もゼロからつくる。つまりは、内部育成を重視しているということです。
市場において人材から選ばれることが、企業の命題
麻野:ありがとうございます。今日曽山さんと話していきたいテーマは「なぜ、CHRO(最高人事責任者)が求められているのか?」。
その前に少し私からお話ができればと思いますが、そもそも企業は、商品市場・資本市場・労働市場の3つの市場から選ばれなければいけないと言われています。
以前は第二産業、つまりは製造業が中心として商品市場が構成されていましたが、現在は第三次産業、IT・サービス業が増えてきていて、商品市場の 75%を占めています。
第三次産業中心の時代となり、設備投資はそこまで必要ではなくなった。
商品・サービスをつくり出し届けるためには、人材が重要であるという流れがあります。これは第三次産業だけではなくて、製造業であっても商品がソフト化しているので、この傾向は加速していくと思われます。
ですので、労働市場で選ばれることは、企業経営において命題となっています。
そういった中で、人事はどうなっていくのか。これまでの人事というのは、右肩上がりの経済成⻑の中で、新卒一括採用・年功序列・終身雇用という固定化されたシステムを運用する「オペレーション人事」でした。
ですが現在は、人材採用手法は多様化しており、インターンや紹介会社経由だけでなく、ダイレクトリクルーテイングやリファラル採用など、様々な選択肢が出てきています。
人事制度についても複雑化しています。正社員だけでなく契約社員や派遣社員 といったように雇用形態のオプションが増加し、働き方改革の影響を受けて、 元来のものでは通用しなくなってきている。
多くの会社の人事はまだまだ、オペレーション人事であるということが実情かと思いますが、多様な採用や制度のあり方から、会社毎にカスタマイズして、仕組みそのものをつくり上げていく、戦略的な人事が求められています。
同時に、戦略人事を司る CHRO が非常に重要になっていると言えます。
私も昨年アメリカに視察に行く機会があったのですが、アメリカの企業は人事の重要性にいち早く目をつけており、CHRO を登用することが当たり前になってきています。
ですが、日本の現状は、COO(最高執行責任者)や CFO(最高財務責任者)はいても、CHRO はいません。
各社、CHRO をどうつくっていくのか、そして COO や CFO と対等に経営に戦略的にかかわる CHRO をどう生み出していくのかが、問われてくると思います。
戦略人事は、事業戦略と組織戦略をリンクさせて考える
「CHRO に求められるもの」は何かを、3つに定義してみたいと思います。
まずは「事業」と人事のリンクですね。これまでの、運用中心の「オペレーション人事」はどうしても人事の中で閉じてしまい、経営と人事が分断されていることが多くありました。
私たちが人事コンサルティングに入らせていただくときは、どんな事業・ビジネスモデルで展開しているのか、そしてそのビジネスモデルが、仕組みで担保されているのか人によってのものなのを理解することから始めます。
ちょうど図のようなイメージです。事業と人事の関係について、曽山さんはどのようにお考えでしょうか。
事業に基づくからこそ、人事が活きる
曽山氏:そうですね。まず、人事のトップとしてやらなければならないことのひとつとして「どんな組織をつくりたいのか」を経営陣と議論することが挙げられると思います。
これを議論していないと、人事は動けない。経営陣と人事のトップが、共通言語を持つことが重要です。そして、サイバーエージェントのモデルが他社に転用できるのかというと、まずできません。
それは何故なら、生業が違うから。ビジネスモデルに合わせた組織をつくらなければならないので、 自分たちのビジネスモデルの理解がまず必要ですね。人事制度などの設計はその後だと、今日改めて思っています。
麻野:今日やってはいけないことは、サイバーエージェントの施策をそのまま、自社に取り入れようとすることと言えます。
曽山氏:とは言いながら、具体的な取り組みをお話ししていきますが。サイバーエージェントでは月に一度、人事の立場から役員会で提言する場を設けています。
私自身、いち人事部⻑としてその場によく持って行っていたのは「こみみシート」です。A4一枚に、ポジティブな話とネガティブな話両方の、小耳に挟んだ話をメモしているものです。
具体的には「将来マネジャーに挑戦したいという宣言があった」・「キャリアに悩んでいる」など。具体的な個人の名前と併せることで、見えてくることがあります。
麻野:なるほど。現場にある、経営陣が見えてない情報を提供できることで、人事としても経営陣に価値を提供できるということですね。
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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。