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有給休暇義務化とは?変更点や注意点も解説

働き方改革の流れに沿って、2019年4月から有給休暇の取得が義務化されました。具体的には「年に10日以上の有給休暇が付与されている労働者は、必ず有給を5日取得する」という内容です。

しかしながら、この制度にはまだまだ知っておくべき内容があります。そこでこの記事で有給義務化の背景や、その内容、義務化に伴う労務管理における注意点などを解説していきます。

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有給休暇とは?

まずは有給休暇の定義からです。有給休暇を一言で言うと、「会社からの給料が発生する、労働が免除された日」と表現することができます。「会社からの給料が発生する」という部分が「有給」、「労働者が労働をすることを免除された日」という部分が「休暇」を指しています。

元々労働をする予定ではない「休日」とは異なり、労働する予定だった日から労働予定を免除する、という意味で「休暇」という表現を活用しています。

この有給休暇は労働基準法39条に定められており、使用者は労働者に対して有給休暇を与える義務があることが明記されています。

有給休暇が付与される条件は、「雇入れの日から6カ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した場合、1年ごとに最低10日を付与しなければならない」とされています。

また、この条件は正社員や契約社員などのフルタイム労働者に限らず、パートタイム労働者にも有給休暇は付与されます。

有給休暇の義務化における変更点や対策

■義務化の背景

今回の有給取得義務化の狙いには「日本企業の労働生産性の向上」があります。
歴史を紐解くと、戦後復興期から高度経済成長期に至るまで日本は「長時間労働」で成果をだしてきたという成功体験があります。

「24時間働けますか」「猛烈サラリーマン」などの言葉も飛び交っていた時代、先んじて経済成長を実現していた欧米諸国の成功パターンやビジネスモデルを素早くキャッチアップし、そこに日本人の勤勉さを加えて昇華させてきました。

その結果、わずか数十年で世界有数の経済大国にまで日本が成長した事からも、先人達の長時間労働の功績は間違いなくあったと言えるでしょう。

しかしながら、そのような過去の成功体験が原因かどうかは定かではありませんが、世界的に見ると日本の労働時間の長さ、及び有給取得率の低さは一向に改善がされていませんでした。

昨今ではインターネットの発達や仕事そのものの複雑化や高度化にともなって、「長時間働いていれば成果が出る」と一概には言えない状態になってきました。

これまでのように無尽蔵に時間を投下して結果を追い求めるスタイルから、少ない時間で大きな結果を出す「労働生産性」を追求するスタイルへと時代の常識が移り変わってきています。

また、長時間労働を繰り返すことで心身の不調を引き起こすなど、マイナスの面も多々あることが社会的にも認知されてきています。それらの背景から働き方改革促進の手段として、「有給休暇取得の義務化」に繋がったと理解してもらえると良いでしょう。

それでは、この有給休暇のポイントを見ていきましょう。

まず押さえるべきルールは「年間10日以上の有給休暇が与えられる全ての労働者に対して、年次休暇を付与した日から一年以内に最低でも5日間は取得させなくてはならない」という内容です。

そもそも有給休暇が発生する条件は、半年以上勤めていること・全労働日のうち80%以上出勤していることです。有給休暇に関しては正社員はもちろん、派遣社員やアルバイト、パートタイム労働者も、有給休暇をもらえる条件を満たしていれば、年に5日以上の有給休暇を与える必要があります。

少し細かくパートタイム労働者の条件を見ていきますと、週4日勤務かつ入社後3年6カ月継続して勤務しており、さらに直近1年間の出勤率が8割以上であれば、年10日の有給が発生します。そのため、年5日は必ず有給を取得させなければなりません。

また、週3日のパートタイム労働者も、入社後5年6カ月継続勤務しており、直近1年間の出勤率が8割以上という条件を満たしていれば年10日の有給が付与されるため、年5日の有給取得義務が発生します。

所定労働日数が週2日以下、年間120日以下の労働者の場合、有給休暇は最大でも年7日間しか付与されません。年間の有給付与日数が10日に満たない場合は、有給休暇取得義務の対象にはならないので注意しましょう。

■義務化されたことによる変更点

これまでは義務ではなかった有給取得が、2018年改正労基法(2019年4月1日施行)によって、「有給休暇が10日以上の労働者に対しては、5日の有給休暇を取得させる義務」が課せられたことが一番大きな変更点です。

■注意すべきポイント

これまで有給消化率が低かった企業に関しては、この条件を満たすための方法を定め、社内に周知をするなどの対応が必要になります。

また万が一、年5日の有給を消化できていない労働者がいた場合、管理者は有給を取得するよう声掛けを行うなどの対応をしなければなりません。そのため、労働者の有給取得状況を常に把握できるような仕組み作りが求められます。

たとえば、有給休暇の取得率が低い会社なら、計画年休制度を取り入れることで、取得状況の確認や声かけがしやすくなるでしょう。一方、自発的に有給を取得する風土が根付いている会社であれば、労働者が希望日を自由に決められる個別指定方式を導入するのもひとつの方法です。

違反したときの罰則について

今回の有給取得の義務化には、国家として働き方改革を推進するという意図が込められています。そのため、違反した際には罰則を受ける可能性があります。

具体的には有給休暇を付与された全社員に年5日以上の有給休暇を取らせることができなかった場合、企業は労働基準法違反で処分を受けます。

また、仮に取得義務化に対して対応する意思がないとみなされてしまった場合は、「罰金」が課せられます。仮に有給休暇を年5日取得できなければ、労働基準法の第39条7に反することになり、同法の第120条により労働者1人につき30万円以下の罰金が科せられます。

1人当たり30万円になりますので、仮に50人が該当したら1,500万円の罰金を支払う必要があります。

そのため、従業員の自主性に任せるのではなく、期限までに該当者全員が有給取得を完遂するまで勤怠の管理を実施することが重要です。

有給休暇を取得するメリット

有給休暇を取得する最も大きなメリットは「労働生産性の向上」だと言えるでしょう。我々は機械とは異なり心身のコンディションが労働生産性と著しくリンクします。

だからこそ年間5日の休暇を有効活用することで、パフォーマンスの最大化に繋げることは本人にも、企業にも、国家にとっても願ったり叶ったりの結果だと言えるでしょう。

またエンゲージメントの観点で言うなれば、企業が従業員に提供する魅力要因である「4つのP(社会心理学)」の1つが、「制度待遇」に関する魅力になっています。

従業員のエンゲージメントに関する項目の一翼を担っている「制度待遇」の要素を高めることが出来れば従業員エンゲージメントの向上に繋げることも可能です。

加えて、学術的な話をするとアメリカの臨床心理学者「フレデリック・ハーズバーグ」が提唱した概念で「二要因理論」という考え方があります。

これは、従業員の仕事における満足度は、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)のそれぞれがあり、この両方が満たされることで高いモチベーションが保たれるというものです。

有給休暇に関しては、「心身の健康状態」「会社での人間関係」「職場環境」が該当する「衛生要因」に関わる要素だと言えます。だからこそ、ここの満足度を高め切らないと、どれだけ動機付けをしたとしても穴の開いたバケツのように効果が出ない結果となってしまいます。

有給取得による労働環境の改善は従業員エンゲージメントの観点でも必須要件だということが出来るでしょう。

有給休暇を取得するデメリット

有給休暇取得にデメリットがあるとするならば、会社の費用負担が挙げられます。
「休日」とは異なり有給休暇の場合は給与支払いが発生するため、労働していない際の給与支払いによる人件費負担が、企業にとってはデメリットと言えるでしょう。

また、仮に職場の中で同一タイミングで有給所得をした場合は、職場の業務負担が一時的に高くなることも考慮に入れておけると良いでしょう。

誰が、どのタイミングで何日間の有給を所得するかどうかを、職場内で共有がされていることが好ましいと言えます。

有給休暇の義務化において必要なこと

有給休暇の義務化に関しては、従業員に対する取得管理が必要です。そして、その管理をよりスムーズに進める為に「計画的付与制度」というやり方を覚えておけると良いでしょう。

「計画的付与制度」とは、会社と過半数労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことで、有給休暇のうち5日を超える部分について、協定の定めに従って計画的に有給休暇を割り振れるというものです。

計画的付与制度の導入により、労働者の有給休暇を個別に管理する手間が軽減されます。また、業務への支障が少ない時季を選んで付与日を指定でき、会社側からの指定であれば、労働者も気兼ねなく有給休暇を取得することができるといったメリットがあります。 

ただし、導入時には労使協定を結ぶ必要があることが条件となりますので注意してください。一度指定した付与日は、会社都合で変更することは出来ませんので事前の周知が重要になります。

また、計画的付与を実施する方法は大きく3つあります。

1つ目は「一斉付与」

すべての労働者に同一の日に年次有給休暇を付与する方式です。同一タイミングで会社を一斉休業にしても支障がない会社であればこの方式が適しています。

2つ目は「交代制付与」

労働者全体を班やグループに分け、交代で有給休暇を付与する方式です。
こちらは会社全体の一斉休業が難しい会社での導入に適しているといえます。

3つ目は「個人別付与」

会社が作成した年次有給休暇計画表に労働者が取得希望日を記入し、その希望に基づいて個人ごとに有給休暇を付与する方式です。ワークライフバランスを重視する会社での導入に適しているといえます。

更には、お盆やゴールデンウィーク、シルバーウィークなどと計画的付与を組み合わせることで連休を伸ばすことも可能になります。年間の中で5日間をどこに割り振ることで企業成果の最大化と、個人意欲の極大化が狙えるかはしっかりとした方針を持って計画的付与を行えると良いでしょう。

最後に留意点としては、計画的付与の日を指定する場合、基本的には使用者からも、労働者からも日程の変更ができないことは覚えておいてください。日程の変更を要する事情が生じたケースでは、改めて労使協定を締結し直す必要があります。

有給休暇取得率向上により、業績が上がった企業事例

有給休暇の有効活用によって、事業に良い影響を与えている企業の事例をいくつかご紹介します。どの制度も「義務だから」ではなく「有効活用しよう」と有給休暇のユニークな活用をしているのが特徴です。

・ヤフー株式会社:課題解決休暇

ヤフーでは、年に3回まで、誰かのための課題を解決するために使える有給の制度を儲けていました。地域のボランティアに参加したり社会の課題解決に取り組んだりする方が学習効果も高く、経験値が上がり、ネットワークも広がっていくという考えを基に作られました。

最近では副業人材の募集も行うなど、「外部からの視点」を有効活用し、
自社に新たな刺激を入れて成長を促進させていこうという動きが活発なヤフー株式会社。休暇においてもひと工夫を凝らしているのが分かります。

参考:WORK&STYLE「【休暇制度事例30選】あなたの会社、休めてる?ユニークな社内制度をご紹介!」


・株式会社ノバレーゼ:アイデア休暇

ブライダル業界のノバレーゼは、業界的に1年~3年未満で辞める人が多い業界の姿を変えようという目的から休暇制度改革に取り組む必要を感じていましたた。

そこで2010年3月に「アイデア休暇」という有給休暇制度を導入。嘘か本当かを問わず、「サッカー日本代表に選ばれた」「石油王と結婚」などを理由に休んでも良いというユニークな制度です。

エンターテインメント性が求められる業界だからこそ、楽しいことを自ら考えて実行するという姿勢を磨くことも企図して設置されました。

参考:ダイヤモンド・オンライン編集部「これで堂々と休める!ユニークな有休制度を大紹介」

・株式会社リンクアンドモチベーション:ピットイン休暇

リンクアンドモチベーションでは「世の中の4倍の速度で成長する」というコンセプトのもと、目標設定や評価、部署の計数管理などをすべて四半期サイクルに合わせています。

また、そのサイクルを組織面にも応用し、四半期ごとに全社員が集まる総会を実施しているのと、その直後に3日間の「ピットイン休暇」をセットで取っています。

(四半期を「1年」とみなして4倍速の成長を実現しようとしているため、全社総会は「忘年会」、その直後の「年末年始休暇」という位置づけで休暇をまとめて取得)

「ピットイン」の意味はF1レースから来ており、立ち止まって心身のリフレッシュや長期のキャリアを考える時間を取ることによって、休み明けのパフォーマンスを高めることを狙いとしています。この休暇と有給を併せることで大型の休暇にも膨らませることが可能です。

以上、3社の有給休暇活用事例をお伝えしました。

共通しているのは「ただ5日間の有給取得を促す」という手段ベースではなく、「どうしたらこの制度を業績やモチベーション向上に繋げられるだろうか?」という観点で制度活用を考えて頂くと効果的かと思います。

あくまで事例は一例ですが、無味乾燥な内容では無く、自社らしい遊び心を加えることで能動的な活用が促進されることもあるかと思いますので、参考にしてください。

記事まとめ

いかがでしたでしょうか?有給休暇の義務化によって会社にはさまざまな変化がもたらされます。大切なのは「いかにしてこのルールを有効活用するか」と考えることだと思います。

やり方次第では、有給休暇の取得を活かして事業成果の最大化と個々人のモチベーションの極大化の同時実現に繋げることもできる有給休暇の義務化。これからの時代に即した働き方を実現するためにも。会社の中でルールの設計と運用を進めて頂けると幸いです。

坂上 進一郎
坂上 進一郎

【プロフィール】 2010年リンクアンドモチベーション入社。 大手、中堅・スタートアップ企業などあらゆる規模のコンサルティングに従事。 「理念策定・浸透」「採用戦略構築」などを主な領域としながら、 のべ200社を超える企業のエンゲージメント経営支援の経験を持つ。

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