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ウェルビーイングとは? 意味・定義や取り組み事例について

「ワークエンゲージメント」、「マインドフルネス」など心や気持ちに関するキーワードをビジネスの中でも良く目にするようになってきた昨今、「ウェルビーイング」という言葉とそれに対する取り組みが注目を集めています。

本記事では「ウェルビーイング」の説明や企業における取り組みとメリットについてご紹介します。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイング(Well-being)は直訳すると、「幸福、安寧、福利」であり、1946年にニューヨークで61か国の代表により署名された「世界保健機関(WHO)憲章」で提唱されました。

その前文では

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。”

※出典:公益社団法人 日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」

と定義・記載されています。

ここで、

・「肉体的」の要素のみではなく、「精神的」「社会的」な要素も含まれている
・「well-being」のように「進行形」な状態であることから、「瞬間的」ではなく「持続的」に幸福かどうかが重要

の2点がポイントとしてあります。

ギャラップ社の調査

ウェルビーイングに関する調査で有名なのが、アメリカの世論調査・組織コンサルティングを行っているギャラップ社のものと、その調査を活用して国連が発表する「世界幸福度ランキング」があります。

■ギャラップ社の調査

ギャラップ社は、「Gallup Global Emotions」として大規模な調査結果を公開しています。

こちらは下記のような「ポジティブな体験」「ネガティブな体験」の両方で設問を用意し、インタビューを通して各国0~100でそれぞれ点数を算出しています。

〇「ポジティブな体験」に関する設問

・良く休めていますか?
・敬意や尊厳を持って周囲に接してもらっていますか?
・良く笑えていますか?
・何か興味がある事を学べていますか?
・日々を楽しめていますか?

〇「ポジティブな体験」に関する設問

・肉体的苦痛を感じましたか?
・何か心配事がありますか?
・何か悲しい事がありますか?
・何かストレスを感じる事がありますか?
・何か怒っている事がありますか?

「ポジティブな体験」に対する点数はパナマが最も高く、アフガニスタンが最も低い結果であり、「ネガティブな体験」に対する点数はイラクが最も高く、台湾が最も低い結果でした。

この「体験」に加えて「評価」という設問も設定しています。「評価」とは、「人生を10点満点で評価してもらう」ものです。

「終わりよければ全て良し」の逆もまた然りで、人間は「直近の体験で印象が左右される」傾向があります。そのため「体験」と「評価」の2軸でデータの網羅性を図っています。

※出典:ギャラップ社「Gallup Global Emotions」

■世界幸福度ランキング

また、ギャラップ社の「評価」を軸として毎年「世界幸福度ランキング」が国連から発表されています。こちらは下記の指標も考慮して各国の直近3年間のスコアを10点満点でランキングしたものです。

〇世界幸福度ランキングの指標

・国民1人当たりのGDPはどの程度か
・社会的サポートが享受できているか
・健康寿命はどの程度か
・人生において自由な選択肢があると感じているか
・気前のよさはあるか、他者への施しを行っているか
・国内で汚職や政治の腐敗が生じているか
・世界最低の国の平均値+3年間の調査で出た各国の残余値

2021年も、3月19日に最新のランキングが発表され、日本は153か国中56位(昨年は62位)という結果でした。

昨年に比べて順位は上昇していますが、先進国、特にG7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)の中では大きく引き離されて最下位に位置しています。

ウェルビーイングが注目されているのはなぜ?

幸福度やウェルビーイングの向上や実現は大きなテーマとして取り上げられています。では、なぜこのように注目されて取り組みが推奨されているのでしょうか。様々な理由がありますが、ここでは代表的なものについてご紹介します。

■価値観の多様化が進んでいる

近年、「ダイバーシティ」という言葉が浸透してきたように情報通信やインフラの発達により個々人の価値観や背景の多様化は急激に進んでいます。

性別や国籍はもちろん、同じ国でも趣向や個性、人格を形成するまでに至った情報や文化がバラバラな人々が集まっています。

こういった人々がある集団(国や企業、チームなど)で協力して成果を出すためにはそれぞれの個性や価値観を理解・尊重することが大切です。

特に企業経営においては、多様な価値観を持つ人材を尊重して活かすことで事業的に大きなインパクトのあるアイデア・イノベーションが生まれることが期待されます。

逆を言えば、目まぐるしく変化する市場の中で生き残るために、多様性がウェルビーイングな状態になれる環境を整備して協力できる土台を創ることは重要な経営方針であると言えるでしょう。

※参考:「ダイバーシティの意味とは?背景や企業が推進すべきことを解説」

■働き方改革の推進が行なわれている

2015年10月に発足した第3次安倍晋三改造内閣は「一億総活躍社会の実現」を目的として日本企業の労働環境の大幅な見直しを行い、それは下記の9項目を軸にして「働き方改革」として実行されています。

〇働き方改革の9項目

1)同一労働賃金など非正規雇用の処遇改善
2)賃金引き上げと労働生産性の向上
3)時間外労働の上限規則の在り方など長時間労働の是正
4)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育問題
5)テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
6)働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
7)高齢者の就業促進
8)病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
9)外国人材の受け入れ問題

これに併せて厚生労働省が発表したように、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働き方のニーズの多様化」などの問題解決に取り組んでいますが、

「年齢」「雇用形態」「ワークライフバランス」といった個々人の事由に柔軟に対応できる事を目指しています。

これは「労働時間を短くする」「福利厚生を充実させる」のみで解決できるものではなく、「しっかりと個々人が仕事を苦しい事ではなく、楽しい事だと感じられるようにする」事が大切です。

そのためにはウェルビーイングの説明でも触れたような、「精神的」「社会的」な充足・幸福をいかに生み出すかを考えなければなりません。

どのような労働環境であれば、従業員が幸福である(ウェルビーイングな状態である)と感じて、能動的に仕事に取り組むことができるかを考えて推進することが求められています。

■人材が流動化している

「年功序列」「終身雇用」であった日本の就業意識にも変化が起きています。海外諸国と比較するとまだまだではありますが、「転職」といった言葉は当たり前になり国内で人材の流動化が進んでいます。

※出典:総務省統計局「増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~」

上図でも分かるように、リーマンショック以降は転職者数は右肩上がりで増加しています。新型コロナウイルスによるリモートワークの定着により更に労働者の就労観は変化する事も予想されます。

このような労働市場の変化の中では、労働者から「選ばれる企業」と「選ばれない企業」の二極化が進んでいきます。当然、働き手がいなくなれば企業活動は鈍化して業績も向上しにくくなってしまいます。

そのため、企業にとって「個人に選ばれる会社づくり」の重要性は増しており、そこには工夫も必要になってきています。

※出典:内閣府「特集 就労等に関する若者の意識」

上図は「初職の離職理由」ですが、離職理由としては様々なものが存在しています。単純に「お金」や「ポスト」では人材を惹きつけられなくなっている事が分かります。

個々人の会社への帰属意識を高めるためには、働き方、人間関係、仕事のやりがい、生活とのバランスなど複合的な要素で満足することが重要です。

「この会社にいる事で自分は幸せな生き方を選んでいる」というウェルビーイングの考え方を従業員が持てる環境を創ることが企業の人材獲得・定着力、ひいては事業における競争力に繋がると言えるでしょう。

■労働生産性の向上が必要

「働き方改革」の項目にも付随しますが、下図の様に少子高齢化に伴う労働人口の低下が叫ばれている中で「労働生産性の向上」は大きな課題になっています。

※出典:総務省「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の概要」

多くの企業が、「労働生産性」=「成果」÷「労働時間」という考えの元で「成果」の増加、「労働時間」の減少に着手しています。

しかし、いきなり「これまで2日かかっていた仕事を半日で終わらせよう!」と言っても中々難しいものです。要求のみをされた従業員は不満を抱き、会社を去ってしまう可能性もはらんでいます。

この問題に対しても、「ウェルビーイング」の考え方が重要です。マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム氏が提唱した「組織の成功循環モデル」では、「結果の質の向上」(今回は労働生産性の向上)のためには、「関係の質の向上」から始めることが効果的だと提唱されています。

※参考:「組織の成功循環モデルの例」

上図のように、「この会社では自分は大切にされている」「自分の人生において望ましい場所だ」と従業員が思えるようにする事で望ましいサイクルが生まれて労働生産性も向上します。

ウェルビーイングの取り組み事例

ここまで、「ウェルビーイング」とは「何か」、「なぜ」注目されるのかについてご説明しました。ここからは「どのように」企業において推進するのかをご紹介します。

■アカツキ

ゲーム事業を主とする株式会社アカツキでは、「ハートドリブンな経営」の一環として、ウェルビーイングの推進を行っています。

・拍手の文化

誰かが何かを発言したら、他者は拍手を行います。発言の質はもちろんですが、「発言をしたこと」そのものへの承認と賞賛を意識しています。

・「理解」と「同意」を分ける

自分の考えとは異なる意見でも、「あなたはそう感じたんだね」と一旦「理解」して、「同意」するかどうかはまた伝えることを行っています。

「感情」への理解を示すことと、「意見」を正すことを分けることで発言がしやすいようにしています。

・はだし文化

リラックスして仕事をしてもらうために、オフィスでは靴を脱ぐことを推奨しています。スリッパやルームシューズを履くことも出来ますが、裸足で勤務する従業員もいるそうです。

※参照:株式会社アカツキ「アカツキの風景」

※参照:塩田元規『ハートドリブン』

このような取り組みによって、心理的安全性が高まり社員同士のコミュニケーションの活性化、新しいアイデア・事業が生まれやすい環境になっています。

■イトーキ

ワークプレイス事業やそれに伴う設備機器事業を主な事業としている株式会社イトーキでは、「健康経営」に積極的に取り組んでいます。

・健康経営宣言

従業員の心身の健康を重要な経営課題と捉えて、戦略的な健康経営を更に推進するため、2017年2月に「健康経営宣言」を制定しました。

社内組織、健康促進、禁煙など、12項目の健康経営に関する取り組みを行っています。

(参照:株式会社イトーキ「イトーキ健康経営宣言」

・人と活動を基軸としたオフィスづくり

本社オフィスである「ITOKI TOKYO XORK」では、ウェルビーイングの考えに即した空間づくりを行っています。

ABW(Activity Based Working)として、従来のように階層や組織、チームといったフレームに基づいて作られた場所で働くのではなく、個々の活動(アクティビティ)にふさわしい場を用意し、活動に応じて従業員が自ら自立的にワークプレイスを使い分けるようにしています。

※参照:株式会社イトーキ「ITOKI TOKYO XORK」

自社の事業をウェルビーイングの促進として体現する事で、ブランディングにも繋がっています。

■アシックス

大手スポーツ用品メーカーである株式会社アシックスでは、「ASICS健康経営宣言」を掲げて従業員とその家族のウェルビーイングを目指しています。

・ASICS HEALTH CARE CHECK

自社開発の健康増進プログラムで、現在の健康度の評価や将来の健康寿命の予測を行い、無理なく継続可能な個別の健康増進プランを提供しています。

・運動推進セミナー

ノー残業デーを活用して、従業員向けの運動機会の提供やセミナーを実施しています。

・SANA LUNCH

社員食堂で、アスリートが食べる食事をコンセプトにした特別メニューを定期的に作っています。

・メンタルヘルス研修

全社員向けに、統一したメンタルヘルスの研修を実施して、上司と部下間でのケアや、自分自身でのメンタルヘルスのコントロール手法を提供しています。

※参照:株式会社アシックス「アシックスの健康経営」

フィロソフィーである、「健全な身体に健全な精神があれかしー“ANIMA SANA IN CORPORE SANO”」を社外のみではなく、社内でも提供して「エンゲージメント(会社の目指す姿への共感度合い)」を体験を通して高めやすくなります。

■味の素

大手食品メーカーである味の素株式会社では、「人財に関するグループポリシー」に則り、社員のこころとからだの健康を維持・推進できる職場環境づくりを推進しています。

・健康状態の可視化と活用

個人の各種健康データを集約した「My Health」、日々の食事や運動記録などを入力する「カロママプラス」というアプリを活用して社員のセルフケアの向上を促進しています。

・禁煙への取り組み

敷地内の全面禁煙、就業時間内の禁煙を推進して、受動喫煙の対策をおこなっています。

・社員の健康に関する取り組みの指標化

施策だけではなく、社員の健康状況をKPIとして設定しています。

味の素健康保険組合と連携して、厚生労働省が推奨するコラボヘルスを強化し、従業員の健康状態をデータ化して各グループ会社や各事業所にフィードバック・方針の提案まで行っています。

※参照:味の素株式会社「健康宣言&外部からの評価・表彰」
※参照:味の素株式会社「健康でいるための約束(味の素グループ健康白書)」

データを活用し、全社の経営指標として推進する事で心身ともに健康な働き方を実現しています。

■楽天

プラットフォームサービスを提供している楽天株式会社では、「ウェルネス」と呼ばれる“従業員 一人ひとりの心と体の健康の発展と維持を目的とした取り組み”を推進しています。

・ダイバーシティの促進

ライフステージにキャリアが左右されやすい女性従業員向けのキャリアセッションの実施や、パパ・ママ向けのサポートとして社内託児所の設置など、個々人が能力を活かしやすい環境づくりを積極的に行っています。

加えて、LGBT従業員サポートとしてのコミュニティづくり、同性パートナーへの福利厚生や障がい者雇用の推進も行っています。

・ハラスメント対策

ハラスメントや苦情の相談・報告を受け付ける機密のハラスメント相談窓口の設置や、ハラスメント研修の実施など、ハラスメント防止やホットライン・実態の把握に注力しています。

・従業員をサポートする設備

昇降式のデスクの設置や、社内カフェテリア、フィットネスジムの整備を行い、社員が自分なりに健康的な働き方を選べる用にしています。

様々な角度から多様性を活かす施策・仕組みにより、楽天株式会社の強みである「イノベーション創出」による事業成長を実現しやすくしています。

■デンソー

車両部品メーカーである株式会社デンソーでも、社員の健康増進を経営課題のひとつとして掲げて施策を実施しています。

・メンタルヘルスケア

「こころの相談室」を設置して、専任の医療スタッフが相談対応できる体制を整え、職場と密接に連携した支援をしています。

また、労働安全衛生法改正に先駆けて社員が毎年ストレスチェックを受けられる環境を整備しており、個人への結果報告に加え、職場には集団分析結果をフィードバックして必要な支援をすることで、社員の心の健康づくりをサポートしています。

・復職支援制度の整備

休職社員が出来る限りスムーズに復帰できるように、産業医や専任のスタッフが上司と密に連携して復職前後のサポートをしています。

・生活習慣病の対策

現在の体力や健康状態をしっかり把握するために、39歳到達者を対象に、健康診断、体力測定、保健指導、健康教育、食事指導、40代に向けた健康の目標設定など等を行う1日研修を実施しています。

※参照:株式会社デンソー「社員とともに進める健康づくり」

自分なりのウェルビーイングを実現するための選択肢を整備することで自主的な健全な働き方を促進し、能動的な人生設計→キャリア促進の実現を行なっています。

企業におけるメリット

数々の企業がウェルビーイングへの投資を行っていますが、実際にどのようなメリットが企業にとってあるのでしょうか。主なメリットをご紹介します。

■健康経営の推進と認知

経済産業省は、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。従業員の健康管理・健康増進が「経営の取り組むべき事である」という考えです。

従業員の健康を企業が促進することで、その人が最も効率的にパフォーマンスを発揮できる柔軟な働き方や、モチベーションの向上に繋がり、結果として業績にも反映されます。

ウェルビーイングを個々人に任せるのではなく経営課題・方針として取り組むことで事業成果に繋がる健康経営の促進が実現します。

また、上記の企業の多くは「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」として政府から認められています。

求職者はもちろんですが、事業環境が目まぐるしく変化する昨今では、「どれだけこの波を乗り越えられる組織力があるか」を投資家も見ています。

財務面以外での企業のブランディングとしても大変効果的だと言えるでしょう。

■人材の流出防止と意欲向上

ウェルビーイングに取り組むことで、自然と従業員が心身ともに良好かを把握する機会が増えることになります。(福利厚生の実施度合いや満足度調査など)

その際に、適切にコンディションの把握が出来るので、大切な人材が突然離職してしまうような事態を未然に防ぐ事ができるでしょう。

また、ウェルビーイングへの取り組み自体で従業員は「この会社は自分達の事を考えてくれている」と感じて帰属意識や貢献意欲が高まります。仕事への意欲が高まり、成果にも繋がりやすい状態が実現できるでしょう。

■エンゲージメントと業績の向上

ウェルビーイングへの取り組みは、従業員が期待する事に対する経営からのアンサーともなるため、「エンゲージメント(会社と社員の相思相愛度合い)」の向上にも繋がります。

また、「エンゲージメント」の向上は「企業の業績」と関連があることが分かっています。

株式会社リンクアンドモチベーションと、慶應義塾大学ビジネス・スクール岩本研究室の共同研究により、企業と従業員のエンゲージメントを測る指数、

エンゲージメントスコアを基にした格付けランクである「エンゲージメント・レーティング」の上昇に合わせて、売上・純利益の伸長率が高くなる傾向が見られています。

※参考:「エンゲージメント経営とは? 導入メリットや課題、実践方法を解説」

遠回りなように見えて、ウェルビーイングへの投資は事業成果に大きな影響を与えるものです。

■採用の効果向上

企業のブランディングも影響しますが、上記のウェルビーイングへの取り組みによりエンゲージメントの高まった従業員は採用シーンで大きな役割を果たしてくれます。

面談、リクルーター活動で自社の魅力を力強く語ってくれることで

・求職者・応募者の志望度
・優秀な人材を口説く

ような効果が見込めます。

ウェルビーイングの理論や手法

ウェルビーイングの事例や効果をご紹介したところで、代表的な理論や手法もご紹介します。他社の取り組み事例と併せて、自社に合ったウェルビーイングへの取り組みを検討してみましょう。

■ギャラップ社の理論と手法

先述したギャラップ社の調査手法からウェルビーイングの要素が見えてきます。

〇ウェルビーイングの5つの要素

・キャリアの健全性:Career Well-being

「自分でこのキャリアと仕事を選んでいる」という自己選択性と納得感があるか。キャリアに沿って自分の時間の使い方を考えることや、好きなことを仕事にすることで人生への充実度が高まります。

・関係性の質:Social Well-being

家族、職場、友人など、生活の中で他者と深い関わり合いを持つことができているか。良好な人間関係の中で強い信頼関係や愛情を感じられます。

・財務の管理:Financial Well-being

支出や収入をきちんと管理・運用することで、経済的に満足できているか。自分で人生を支える資産を運用できていることで安心感を感じられます。

・心身の健康:Physical Well-being

身体的、精神的に健康な状態であるか。物事・仕事を進める上で十分ポジティブでエネルギーが生まれます。

・地域社会との繋がり:Community Well-being

地域社会と関わりを持ち、住んでいる地域に根ざしていると感じられているか。適切な所属意識で充実感が生まれます。

■デジタルウェルビーイング

ネット社会、スマートフォンの普及と共に、「スマホ依存症」「ガジェット依存症」といった言葉を耳にする機会が多くなりました。

そのような時代背景の中で「デジタルウェルビーイング」がGoogle社にから提唱されました。その主旨としては「中毒を回避し、テクノロジーと実生活の適切なバランスを図る」ことです。

「デジタルデトックス」が現在注目されていますが、プッシュ通知やSNSのやり取りにより集中力の欠落や不安・焦燥感を解消することは情報化社会のウェルビーイングの大きなテーマになっています。

企業・個人共にチャットツールやSNSに触れるメリハリをつけることがデジタルウェルビーイングの第一歩になるでしょう。

※参照:Google「Find your balance with new Digital Wellbeing tools」

■3つのウェルビーイング

日本的ウェルビーイングの促進のためには、3つの観点が提唱されています。

・医学的ウェルビーイング

心身の機能が不全でないかを問うもので、医学の領域と言えるでしょう。これは、私たちが普段受けるような健康診断やメンタルヘルスに関する質問紙などで測定可能です。

治療(ウェルビーイングへの阻害要因を失くす)、予防(未然にウェルビーイングでなくなることを避ける)、促進(ウェルビーイングとなる要因を増加させる)といった医学的なアプローチで対処できます。

・快楽主義的ウェルビーイング

現在の気分の良しあしや快・不快など、一時的、かつ主観的な感情に関する領域です。表情や心拍、ホルモンなど、生理指標で計測できます。

アメリカの心理学者であるダニエル・カーネマン氏は「人間は完全合理的な経済人(合理的な判断で動く)」のではなく、「限定合理的な感情人(感情によって動く)」と提唱しています。

そのため、企業としては「お金や地位」といった「金銭的な報酬」のみではなく、「承認や称賛」といった「感情面での報酬」を提供することが重要です。

・持続的ウェルビーイング

心身の潜在能力を発揮し、意義を感じている「いきいきとした状態」を指すものです。フローリシング(flourishing)という言葉でも表現されます。

これまではウェルビーイングというと、快楽主義的なものが対象でしたが、近年はウェルビーイングを持続的かつ包括的に捉えようとする考えが主流となっています。

※参照:科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)「日本的 Wellbeing を促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」

■PERMA理論

アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマン氏はウェルビーイングについて5つの要素を提唱しました。

「PERMA」とは、

・Positive emotion:ポジティブな感情

喜びや面白さ、楽しさ、感動、感謝、希望などを感じていること

・Engagement:物事への没頭

時間を忘れて何かに没頭・集中して取り組むこと

・Relationship:良好な関係性

他者との相互扶助の関係にあること

・Meaning:意味や意義を感じること

人生において「なんのために生きるか」「どういうことを実現したいか」が考えて実行できていること

・Accomplishment:達成感

何か一定の目標を達成すること

の頭文字をとったものです。

この5つの要因がそれぞれ満たされることがウェルビーイングであることの要件だと主張しています。

記事まとめ

ウェルビーイングの考え方や取り組みは、慣れていない方からすると少々難しかったかもしれません。

ただ、個々人が幸福だと感じること、自分の人生に意味や納得感を感じられることで、周囲の環境に対する関わり方は大きく変わります。

個人のウェルビーイング実現は今後企業の成長エンジンになる可能性は高いので、まずはできるところから意識して行動してみてはいかがでしょうか。

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