
HR techとは?注目されている理由やサービスを展開している企業について徹底解説!
目次[非表示]
HR Tech(HRテック)とは
HR Techという言葉、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
HR Techとは、“HR (Human Resource) × Technology“を意味する造語です。クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など、最先端のIT関連技術を使って、採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行う手法のことを指します。
(出典:日本の人事部 HR Techとは 第1回 「HR Techのトレンド」|『日本の人事部 HRテクノロジー』)
この新しいテクノロジーの到来は、採用やタレントマネジメント、リーダー育成、評価、給与計算、業務改善など幅広い領域に及び、人事業務のあり方を大きく変えると言われています。
本稿は、これらが企業活動に起こす具体的な変化から、国内外での代表的なサービス紹介まで幅広く解説しており、「HR Techとはなにか」を一通り把握できる記事となっています。
▼【タレントマネジメント】に関する記事はこちら
タレントマネジメントとは?注目される背景やエンゲージメントを高めるための導入ポイントとは?
▼ エンゲージメントを可視化し、組織改善に繋げるならモチベーションクラウド!具体的な機能や得られる効果をご紹介!資料はこちら
HR Techができること
従来の人事管理業務はアナログな業務が大半でしたが、そこに大きな変革をもたらそうとする流れがHR Techと呼ばれるようになりました。従業員情報管理、人材採用、人事評価、人材育成、人材配置から、勤怠管理や給与計算、社会保険手続きなどの労務管理、リモートワーク対応やエンゲージメントサーベイ、福利厚生、健康管理やメンタルヘルス管理まで、昨今のHR Techは非常に幅広い領域をカバーするようになっています。人や組織に関わるあらゆる業務や出来事をデータ化し経営に積極活用される時代も、そう遠くはないでしょう。
なぜHR Techが今注目されているのか
■人事の重要性が高まっている
企業は、商品市場においては「顧客」から、また労働市場においては「従業員」からという2つの市場から選ばれなければいけないと言われています。これは日本の産業が製造業からサービス業中心の産業に変化したことにより発生しているものです。
何故今HR Techが注目されているのかを語る前に、まずは商品市場、労働市場それぞれの変化を踏まえ、人事の重要性が高まっている背景を説明していきます。
背景①:商品市場の変化
現在、日本全体のGDPの75パーセントを、第三次産業つまりはサービス業が占めています。
サービス業では人材がもたらす商品サービスへの影響が大きい為、商品市場で事業を成功させ、顧客から選ばれる存在になるためには、労働市場で従業員から選ばれる必要があります。
背景②:労働市場の変化
労働市場においても変化が起きています。下記に示している通り、転職者比率は年々増加しており、企業にとって従業員に選ばれ続けることの難易度は高まっています。
(出典:総務省統計局 増加傾向が続く転職者の状況 ~ 2019 年の転職者数は過去最多 ~)
これらの環境変化に合わせて、各社毎の人事戦略が必要になってきており、人事の重要度は高まっているのです。
■HR Techによる効率性、戦略性の向上が期待されている
人事の重要性が高まっている一方で、人事業務は数多くの非効率な作業に溢れており、人事担当者は効果的な人事戦略を考える余裕が無いのが現状です。
HR Techを導入することにより、業務の効率化やデータ活用による戦略性の向上を期待することができます。
■アメリカと日本のHRTech投資額の差は大きい
(出典:”Venture Capital Funding Frenzy Over HR Technology on Record Pace”. workforce.)
HR Techが人事にとって効果的であると期待される一方で、日本のHR Tech市場はアメリカ市場と比較をするとまだまだ非常に小さいと言えます。
ただ、日本でもHR Techに対する注目度は年々上がってきているため、先んじてHR Techの活用が進むアメリカの影響も受けつつ、日本のHR Tech市場は今後も更に拡大していくと考えられています。
したがって、ここからは、先行しているアメリカでのHR Tech事例も踏まえながら、私たちが活用するべきHR Techの具体的な内容について説明していきます。
HR Techに関連するテクノロジーの基本用語
HR Techに関連する主なテクノロジーについてご説明します。
①ビッグデータ
ビッグデータとは、人力や従来型のシステムでは処理できない膨大な量のデータのことを言います。量的側面(Volume)、多様性(Variety)、処理速度・頻度(Velocity)、正確性(Veracity)、価値(Value)の「5V」が備わっているのがビッグデータの特徴だと言われます。ビッグデータは人事評価や人材配置など、HR領域で活用されるだけでなく、経営意思決定にも用いられるなど、非常に価値の高い資産だと考えられるようになっています。
②AI(人工知能)
HR Techにおいて重要な役割を担っているテクノロジーの代表格がAI(人工知能)です。AIは、データを読み込ませると学習を開始し、それを基にしてデータの解析をおこないます。人力では解析が難しいビッグデータの解析に威力を発揮するテクノロジーであり、HRに限らず様々な領域で活用されています。人間と違い、客観的でブレない判断ができるのはAIの大きな特徴であり、HR領域でも重宝される理由の一つとなっています。
③クラウド(クラウドコンピューティング)
クラウド(クラウドコンピューティング)とは、インターネットを経由してハードウェアやソフトウェアを利用したり、インターネット上にデータを保存したりする形態のことを言います。クラウドを活用したサービスであれば自社にサーバーやシステムを置く必要がないので、コスト的にも大きなメリットがあります。自社内にサーバーなどの設備やソフトウェアを置く形態をオンプレミスと言いますが、近年はあらゆる領域でオンプレミスからクラウドへの移行が進んでおり、身近なテクノロジーの一つになっています。
④モバイル
モバイルとは、スマホなどの携帯できるデバイスのことを言いますが、近年はモバイルでできることが広がっています。特に、動画通話やSNS、チャットなどのコミュニケーションはモバイルでおこなうのが当たり前になっており、HR Techにおいても積極的にモバイル技術が活用されています。たとえば、スマホの動画通話を利用して採用面接をおこなうのも珍しいことではなくなりました。
⑤SNS
SNS(ソーシャルネットワークサービス)の代表例と言えるのは、FacebookやTwitter、Instagramでしょう。この他にも、導入企業が増えているSlackやChatwork、SkypeなどもSNSの一種として考えられます。このようなSNSはHR Techでも活用が進んでおり、たとえば、応募者の志向性やキャラクターを判断する材料として活用されたり、求人広告やダイレクトリクルーティングの手法として活用されたりしています。
⑥SaaS
SaaS(Software as a Service)とは、クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由でユーザーが利用するサービス形態のことです。ビジネスにおける身近な例としては、GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートなどが挙げられるでしょう。利用したことがある人なら便利さを実感していると思いますが、ネット環境があればいつでもどこからでもアクセスでき、複数のメンバーで共有・編集・管理をすることができます。HR Techにおいても不可欠なテクノロジーとして一般的な形態になっています。
SaaSについては、以下の記事で詳しく解説しています。
>> SaaSって?PaaSやIaaSとの違いやAPTとの連携について解説
https://www.motivation-cloud.com/hr2048/c320
⑦RPA
RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)とは、ロボットが作業を代行する技術のことを言い、「仮想知的労働者」とも呼ばれます。RPAの進化によって、かつては手作業でおこなわれていたデータ入力などの単純作業を自動化できるようになっています。手作業だとどうしてもミスやエラーが生じるリスクがありますが、RPAならその心配はありません。加えて、単純作業から解放された従業員はコアな業務に専念できるようになり、業務の質や生産性の向上が期待できます。HR Tech領域では、勤怠管理業務や給与計算業務などでRPAの活用が進んでいます。
⑧ピープルアナリティクス
ピープルアナリティクスとは、年齢や性別など従業員の属性データや行動データを収集・分析し、採用活動や人材教育、評価、人材配置など、様々な人事施策の実行や意思決定に活かす手法のことです。従来は、人事担当者の経験や勘に頼る部分も大きかったと思いますが、近年はAIやビッグデータなどテクノロジーの進化によってピープルアナリティクスという概念が生まれ、客観的・効率的に納得感のある人事施策をおこなえるようになりました。日本でも大手企業を中心にピープルアナリティクスを取り入れる企業が増えており、どのような事例が生まれるか、大きな注目を集めています。
HR Techの活用場面
それでは、具体的にHR Techのメリットは何なのか、3つに分けて説明していきます。
■人事業務のデータ化・一元管理が可能になる
例えば採用業務を例にとると、人事は、応募者の管理から選考プロセスの状況把握、面接評価の管理等、様々な情報を管理する必要があります。
そこに採用管理システムを導入すると、採用に関わる全ての情報をシステムに一極集中させることができ、タスク管理や、社内の情報連携の効率化を図ることができます。
■ワークフローの効率化に繋がる
有給申請のやり取りを想像してください。従業員は休みを取りたいたびに上司のハンコをもらい、有給申請書類として人事に提出し、人事は提出された書類に1つ1つ目を通し承認作業を行う。
この業務が全てシステム上で可能になったら、これまでかかっていた膨大な時間が大幅に削減されます。人事は削減された時間を使い、人事戦略の立案や実行等、より重要な業務をすることができます。
■データを基にした分析精度の向上
従業員の配置業務は人事にとって重要な仕事です。人事は従業員1人1人の評価や、入社時期、これまでの異動履歴、上司との関係性等を考慮し、どうしたら事業成果が最大化される配置になるか考える必要があります。
タレントマネジメントシステムと呼ばれる人材管理のシステムは、このような従業員に関する情報をデータ化し、適材適所に向けた示唆を与えてくれます。
HR Techによるデータ活用が進むと、感覚や経験に頼らない、より戦略的な業務の実行をシステムが手助けしてくれます。
HR Techの導入で期待できる効果やメリット
HR Techの導入で期待できる効果やメリットについてご説明します。
ヒューマンエラーの防止
HR Techを導入することで得られるメリットとして、ヒューマンエラーの防止が挙げられます。人による手作業は、どんなに注意を払ってもミスやエラーが起こるリスクをゼロにすることはできません。しかし、HR Techを活用すれば複雑な計算やデータ処理を迅速かつ正確におこなうことができるようになります。また、HR Techはデータに基づいた客観的な判断ができるという利点があります。人事担当者の感情などを挟む余地を排除でき、より的確な意思決定をサポートしてくれるでしょう。
業務の効率化
人事関連業務のなかには、給与計算や勤怠管理などのルーティンワークも多々あります。こうした業務は不可欠なものですが、手作業でおこなうのは非効率で、多くの労力・時間を費やす傾向にあります。しかし、例えばRPAを導入すれば、このようなルーティンワークを自動化・半自動化することができます。HR Techにより業務効率化を実現できるだけでなく、従業員がルーティンワークから解放されることで、よりコアな業務に時間を割けるようになったり、モチベーションアップにつながったりするなど副次的な効果も期待できるでしょう。
コスト削減
HR Techを導入して、たとえば紙ベースでおこなっていた人事業務をデータ化したり自動化したりすることで業務を効率化できれば、残業代など人件費の削減につながるでしょう。さらに拡大解釈をすれば、HR Techを採用や人材配置に活用することで、従業員の定着率を高めたり離職率を抑えたりすることができれば、結果的に採用コストの削減につながることも検討され始めています。また、人材教育にHR Techを活用することで研修費や教材費、会場費などの圧縮にもつながるでしょう。このように、HR Techの導入によって様々なコスト削減効果が期待できます。
採用の質の向上
近年、中途採用支援サービスでもAIを導入したサービスが開発され始めています。AIによるデータ解析によって、膨大な人材データベースからその企業に適した人材を抽出し、紹介してもらえます。AIをはじめとするHR Techのテクノロジーを活用することで、データを駆使した戦略的な採用活動が可能になり、企業と人材のマッチング度は大きく高まることが期待されています。人材不足が深刻になるなか、多くの企業が自社に合った人材の獲得に苦労していますが、HR Techは人材採用の悩みを解消する新たな手立てになり得るでしょう。
HR Techのサービスを展開する会社事例とは?
■HR Techサービスの全体像について
具体的なHR Techのサービスについて1つずつ細かく紹介する前に、まずはどのような領域が存在するのか、その全体像について説明していきます。
ここでは、従業員の入社前・入社後に大きく分類し、それぞれ必要な業務とサービスについて分類しています。概要を下記に紹介します。
◆入社前(採用時)HR Techサービス
・応募
人材を採用する上で、最初のステップとなる人材の「応募」段階での業務を支援するサービスです。具体的には、候補者を募る為の求人掲載系のサービスや、候補者の管理ができるサービスがあります。
・選出
「応募」の次のステップとなる、人材の「選出」段階での業務を支援するサービスです。採用候補者について、一定の条件で絞り込んでくれるスクリーニング系のサービスや、人材の採用が決まってから入社後の活躍までを支援するエントリーマネジメント系のサービスがあります。
◆入社後(既存社員向け)HR Techサービス
・人材育成
人材が会社で活躍する為の、スキル獲得や学習機会を支援するサービスです。人材の入社後のサポートをするオンボーディング系のサービスや、中長期のキャリア支援、経営幹部の育成の支援等様々なサービスがあります。
・組織開発
人材育成が個人に目を向けたサービスだったのに対し、組織開発は会社全体や部署毎等、組織としての力を最大化させる為のサービスです。
組織内で活躍した社員を称賛/表彰するツールや、組織内のコミュニケーション状況を分析するツール、社員に組織に関するアンケートを行う従業員調査等に分類されます。
・管理
人事の業務の中でも労務、勤怠、給与などの管理業務に関わるサービスです。勤怠状況を記録できるシステムや、給与や福利厚生の管理や支援をするサービス等、多数のサービスが存在します。
これらの各領域ごとに、便利なHR Techのサービスを提供する会社が数多く存在します。ここでは、それぞれの領域ごとに、代表的なサービスを1つずつ紹介していきましょう。
■Manatal:入社前(採用時)×応募
ManatalはATS(Applicant tracking system)と呼ばれる採用管理のシステムで、現在世界100カ国以上の企業で導入されています。
このサービスでは、各候補者が採用プロセス全体でどの段階にいるのかを、履歴書等のデータと共に一元管理することができます。また、AIを活用し、採用条件にあった候補者を見つける事もできます。
Manatalを活用することにより、採用における進捗管理が効率的に実行できるだけではなく、データを活用した、戦略的な採用活動が可能になります。
(参照:AI Recruitment Software | Leading Applicant Tracking System)
■TestGorilla:入社前(採用時)×選出
TestGorillaは、候補者の選考段階において使用できるスクリーニングテストの設定から結果分析まで行うことのできるシステムです。テスト内容は、性格診断や言語テスト、ソフトウェアスキルテスト等様々あり、企業の採用条件にあったテストの設定をすることができます。
このサービスを使用することにより、選考段階での業務効率化が可能になることはもちろんのこと、面接官によるバイアスを減らし、より企業と候補者の適切なマッチングを期待することができます。
(参照:Pre-Employment Screening Tests and Assessments | TestGorilla)
■Cornerstone:入社後(既存社員向け)×人材育成
Cornerstoneは、世界7,500万人以上のユーザーが活用している、従業員の学習管理を中心とした人材管理システムです。
日本国内にも支社があり、日立製作所やリコーをはじめ、日本企業からも数多く導入されています。
このサービスでは、従業員のスキル獲得を中心に、評価やキャリア形成といった、人材育成全般の業務のサポートが可能です。一貫した人材管理が可能なため、中長期視点での人材の育成や配置業務に活かすことができます。
(参照:コーナーストーンオンデマンド|人材管理プラットフォーム)
■モチベーションクラウド:入社後(既存社員向け)×組織開発
モチベーションクラウドは、リンクアンドモチベーションが提供する組織開発のシステムです。
導入実績7,680社、194万人以上という国内最大級のデータベースによる精度の高い組織診断と、コンサルタントの併走による実行力のある改善が可能です。
組織診断から課題に対するアクションの進捗管理がシステム上で行える為、継続的な組織の改善を期待することができます。
【参考資料のご紹介】
モチベーションクラウドの具体的な機能や得られる効果が分かる資料「3分でわかるモチベーションクラウド」はこちらからダウンロードいただけます。
組織の診断・改善のサイクルを回す、【モチベーションクラウド】がわかる動画はこちら
■onpay:入社後(既存社員向け)×管理
onpayは給与管理から健康保険、福利厚生等の業務をサポートする、労務管理のシステムです。30年以上の実績があり、特に多くの中小企業への導入実績があります。
給与や税金を自動で計算し、給与の支払いや納税の実行が行えるだけではなく、労災保険の手続き等も行うことができる為、人事は労務業務にかかる時間を大幅に削減することができます。
(参照:Online Payroll +HR That Small Businesses love|OnPay)
■Workday:入社後(既存社員向け)×プラットフォーム
Workdayは人事と財務の情報が統合されたシステムです。人材の採用から退職までのあらゆるデータと財務情報を管理し、システム上での計画、実行、分析まで行うことができることが魅力です。
2005年の創業以来、急速に顧客数を伸ばし、現在はフォーチュン50の60%、フォーチュン500の40%が導入しており、国内でも株式会社日立製作所や株式会社ファーストリテイリング等が導入しています。
(参照:デジタルトランスフォーメーションの基盤となるエンタープライズ|workdays
東洋経済オンライン 「ワークデイ」が有名企業に注目される理由)
日本国内のHR Techの動向
デロイトトーマツ ミック経済研究所の「HRTechクラウド市場の実態と展望 2021年度版」によると、2021年度のHR Techクラウド市場は、2020年度比で30.2%増の578億円となっています。2021年度のHR Techクラウド市場は、コロナ禍のなかでもテレワークや非対面の業務推進を支援するストックビジネスが強みを発揮し、拡大が続きました。2022年度の同市場は、2021年度比で32.2%増の764億円となる見込みを示しています。さらに2024年度は、2025年の大阪万博を控えて上昇傾向を見せ、リニア新幹線開業が目前となる2026年度には2,270億円の市場規模に達すると同社は予測しています。
※参考:デロイトトーマツ ミック経済研究所の「HRTechクラウド市場の実態と展望 2021年度版」
HR Techの導入方法と流れ
HR Techを導入する際の流れ・プロセスについてご説明します。
HR Techの導入目的を明確にする
HR Techの導入にあたっては、まず導入する目的を明確にすることが重要です。システムを導入することが目的になってしまうことがよくありますが、本来の目的は「システムを導入することで何を実現したいのか?」「HR Techを活用してどのような組織にしたいのか?」というように、もっと先にあるはずです。「何となく役に立ちそうだから」といった漠然とした理由でHR Techを導入しても、宝の持ち腐れになるだけです。
日々の業務を棚卸しする
HR Techを導入する目的を明確にしたら、日々の業務の棚卸しをおこないます。洗い出した業務について「本当に必要な業務なのか?」を考察することが重要です。古くから慣例的におこなっている業務のなかには、今は必要ない業務もあるものです。このような業務が残っていると、HR Techの効果が阻害されたり、逆にコストアップにつながったりするおそれもあります。HR Techの導入を機に業務を見直し、業務のスリム化を図りましょう。
HR Techで代替できる業務を精査する
業務の棚卸しが終わったら、「目的を達成するためには、どの業務をHR Techで代替すべきか?」ということを判断していきます。たとえば、HR Techの導入目的が業務効率化による人件費削減であれば、既存業務に要している工数は重要なチェックポイントになります。特に工数を要している業務をピックアップして、HR Techによる代替でどの程度の工数削減が期待できるのかを試算していきましょう。
最適なHR Techソリューションを検討する
HR Techで代替する業務を決定したら、最適なソリューションを探していきます。昨今のHR Tech市場は急拡大を続けており、様々なサービスが乱立しています。そのため、自社に合ったサービスを見極めるのも難しくなっています。2~3のソリューションをピックアップしたら、デモ利用やトライアル利用で使用感などを確認したうえで導入すべきソリューションを決定しましょう。システムそのものの機能だけでなく、カスタマーサポートが充実しているかどうかも重要なポイントです。
HR Techを導入する際の注意点
HR Techを導入する際の注意点についてご説明します。
HR Techだけに依存しすぎないようにする
HR Techを人事評価に活用する企業が増えていますが、人事評価の対象は「人」であり、単純にデータだけで評価できるものではありません。人事評価には、従業員の成長意欲やチームへの影響力、他のメンバーへの動機づけなど、数値化しにくいポイントも多々あります。HR Techだけに依存した人事評価をおこなうと、従業員の不満や不信を招き、離職につながってしまうリスクもあります。
人事評価にAIなどのHR Techを活用することには大きなメリットがある一方で、使い方には注意が必要です。たとえば、評価に納得がいかない従業員が「なぜ、自分はこの評価なのか?」と質問したとします。それに対して、人事担当者が「AIが出した評価だから間違いない」と答えたらどうでしょうか。評価の根拠を過度にデータだけに求めすぎることなく、データの扱い方について評価者にインプットする仕組みを並行して取り入れ、データに現れない貢献を評価したり、丁寧にフィードバックをしたり、重要なポイントは人がジャッジしたりするなど、HR Techを導入したとしても、HR Techに依存しすぎない人事評価の仕組みをつくることが重要です。
情報セキュリティ対策を徹底する
HR Techが扱う情報には、従業員や応募者の氏名、住所、連絡先、経歴、異動履歴など、重要な個人情報が膨大に含まれています。さらに、個人のスキルや資格、マインドや志向、コンピテンシー、過去の人事評価などが含まれてくる場合もあります。万が一、このような情報が漏えいしてしまうと大きな問題に発展し、企業が責任を問われる可能性も少なくありません。HR Techを導入する際は、情報セキュリティ対策に万全を期す必要があります。ベンダーとの間で取り交わす個人情報の取扱いに関する契約も、その内容を十分に検討する必要があるでしょう。また、社内でのアクセス権限なども慎重に取り決めて、運用・管理していかなければいけません。
自社にあったHR Techの活用を
人材獲得/人材活用の難易度が増している中で、HR Techは人事の仕事を効率化するだけではなく、より効果的な人事戦略の策定、実行を手助けしてくれます。
あらゆる領域のHR Techサービスがある中で、今後人事は自社に最適なHR Techの導入、活用が求められるでしょう。まずは自社の課題を明らかにし、どんな目的でHR Techを導入するのか検討してみてはいかがでしょうか。
HR Techに関するよくある質問
Q:HR Techの導入によって期待できる効果は?
HR Techを導入する効果としてよく言われるのが、人事関連業務の効率化や人材採用におけるミスマッチの低減です。加えて、人事異動や人事評価など、客観的なデータをもとにした組織マネジメントができることもHR Techの導入によって期待できる効果だと言えるでしょう。採用のミスマッチ低減や組織マネジメントの適正化は、結果的に従業員の定着率向上、離職率低減に直結するものですし、個々の従業員が適材適所で活躍できることは、仕事のやりがいやエンゲージメント向上にもつながっていきます。
Q:HR Techのなかでも注目されている分野は?
HR Techのなかでも注目が高まっているのが、タレントマネジメント領域です。目標設定や評価、学習履歴管理やキャリア開発など、従業員の能力開発や将来のリーダー候補育成を目的にタレントマネジメントシステムを導入する企業が増えています。もう一つが、採用領域です。母集団の形成や選考プロセスの効率化はもちろん、ミスマッチの低減に大きな効果を発揮するのがHR Techです。選考プロセスで得た従業員のデータを現場に共有することで、業務のアサインや目標設定、将来の配置転換などにも役立てることができます。