自己効力感とは?3つのタイプや高めるための方法、自己肯定感との違いも解説
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自己効力感とは、自分がある状況において、目標達成したり、遂行できる可能性を認知していることを指します。
その自己効力感を強く持てる人材は、ビジネスシーンでも積極的に挑戦したり、周囲にも良い影響を与えるため、マネジメントの分野においても非常に重要なテーマといえるでしょう。
今回は、自己効力感とは何かを紐解きながら、そのメリットや高める方法について、具体的にご紹介していきます。
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自己効力感とは
自己効力感とは目標達成能力を自分自身が持っていると認識することを意味します。端的に言うと「自信」です。ある状況下で結果を出すために適切な行動を選択し、かつ遂行するための能力を自らが持っているかどうか認知するための言葉です。
また自己効力感は「優越感」や「劣等感」といった感覚とも大きな関係があります。
自己効力感が高まるにつれ、その人は優越感を強く抱けるようになり、ある分野において自分が十分な能力を有しているという認識に背中を押され、行動できるためです。
その一方、自己効力感が低くなるにつれ、劣等感は強くなります。ビジネスシーンでは、自己効力感を高め、適切な優越感を覚えるようになることが大切です。
■自己効力感の提唱者
自己効力感は、社会的認知理論の中で使用される心理学用語の一つで、スタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ博士によって提唱されたものです。
きっかけは、博士がさまざまな恐怖症を克服した人たちにインタビューを行ったことで、そこにある共通点を見つけたことです。
それは恐怖症という極めて困難な病を克服することができたことから、
「自分は困難を克服できる」
「自分は現状を変えることができる」
と信じるようになれたというものでした。
このインタビューがきっかけとなり、その後の継続的な研究によって自己効力感を保持する人は、失敗や壁、困難や難問にぶつかっても、挑戦する、(失敗しても)比較的早く立ち直る、という傾向にあることが分かりました。
自己効力感と自己肯定感の違い
自己肯定感とは、自己を尊重し、自身の価値を感じることができ、自身の存在を肯定できる力を言います。 自己肯定感が高い状態では、ありのままの自分を受け入れられるため、仮に失敗した時でも「次は頑張ろう。」「失敗してもいいんだ。それでも自分には価値がある。」と考えることができます。 一方で、自己効力感とは、人が行動や成果を求められる状況下において、「自分は必要な行動をとって、結果を出せる」と考えられる力を言います。 そのため「自分は達成できる。その能力がある」という確信があれば「自己効力感が高い」状態にあり、「自分には無理だ。その能力がない」と考えていれば「自己効力感が低い」状態であると言えます。 つまり、自己効力感とは「できると自分を信じられる力」であり、自己肯定感とは「できても、できなくても、ありのままの自分を受け入れられる力」となるわけです。
自己効力感の重要性
近年、自己効力感の重要性は、ビジネスシーンではもちろんのこと、教育、予防医学、産業の分野など様々な場面で活用されています。
それは、自己効力感が行動変容を引き起こす客観的な先行要因になっていたり、変容を可能とする認知的変数となっていたり、行動変容を確実に生み出す力がある、といった特徴が広く社会に認知されたためと考えられます。
必要性を実感しても行動変容まで発展しない状況が多い中、自己効力感は、確実に行動変容を生み出す効果を期待できます。
自己効力感のタイプ
心理学的では、自己効力感は3つのタイプに分けられます。
■自己統制的自己効力感
簡単に言い換えると「自分ならできるはず」という気持ちです。できると信じられるからこそ、失敗しても完全に心は折れず、むしろチャレンジ精神を高めて出直そうと考えられます。自己統制は、自己効力感の種類ではもっともスタンダードなタイプです。
また、自己統制的自己効力感では、自分の行動をコントロールすることについて肯定感を抱けます。
例えば「社内の人を多数巻き込みながら、プロジェクトを成功させる」という行動には、かなりのモチベーションと忍耐力が必要です。その際には、自分の行動を制御し成長し続けなくてはなりません。そのようなとき、自己統制が役立ちます。
(参考)モチベーションとは何か?維持する方法やメリット、ビジネスでのマネジメント成功事例について解説
■社会的自己効力感
対人関係において役立つのが「社会的自己効力感」です。この感覚は乳児期や児童期の経験において最も発達し、大人になってからも持続します。
この自己効力感が強いと、他者に共感して寄り添うことができます。そのため、良好な人間関係を築きながら、社会の中で立ちまわることができます。
例えば、ビジネスシーンでも、何らかの理由で敬遠される人も少なくありません。その人と協働する際にも「自分ならきっと仲良くなれるはず。うまくいくはず」とポジティブに考えられます。
■学業的自己効力感
これまで通ってきた学校、塾などでの学業における達成感によって「学業的自己効力感」は育まれます。難関校に合格するなど、学習や学業で目立った成果を残した人ほど、この感覚は強まります。
ビジネスシーンでは「新しい知識やスキル、ノウハウを獲得する」時などに力を発揮します。また「決められたカリキュラムに従って勉強を進めていく」時にも学業的自己効力感が必要です。
社会に出ても新しい分野についてスキルの習得を求められることも出てきます。そのようなとき、どれだけ真剣に取り組めるかが価値となるのです。
自己効力感と自尊心・自己肯定感(Self-esteem)の違い
自尊心とは、「自分の人格を大切にする気持ち」「自分の思想や言動などに自信を持ち、他からの干渉を排除する態度」といった意味を持つ言葉で、「プライド」と言い換えることもできます。「プライドが高い」という表現は、「高慢である」「意固地である」といったネガティブなニュアンスを含んで使われるケースが少なくありません。
また、自尊心という言葉は、能力や容姿などの根拠をもとに「だから、自分に自信がある」というニュアンスで使われることが多いのに対し、自己肯定感という言葉は、「根拠はないけど、ありのままの自分を認めている」という意味で使われるケースが多いです。
一方、自己効力感という言葉は、特定の事柄に対し「自分にはそれを達成できる能力がある」と信じる自信の度合いを示す言葉です。
自己効力感と社会的認知理論の関係
自己効力感は、カナダ人の心理学者であるアルバート・バンデューラが提唱する「社会的認知理論」の中核となる概念の一つです。社会的認知理論は、日常生活において社会から受ける様々な情報を人がどのようにして認知するかというプロセスを説いた理論です。自己効力感は、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していることを言います。分かりやすく言えば、「自分ならできる」と思える自信です。
自己効力感が高い人ほど、実際にその行動を遂行できる可能性が高いと言われます。バンデューラによると、誰もが自己効力感を通して物事を検討・決断したり、感情や行動をコントロールしたりしており、学習やスポーツ、仕事など、人生の様々なシーンで自己効力感が大きな影響を及ぼしているということです。
自己効力感を構成する要素
自己効力感を構成する要素に、行動遂行の先行要因があります。
これは「このようにやれば成功するであろう」や「成功する方法で実行できる」といった行動遂行を導くための意識的要因のことです。具体的には、下記2つの先行要因があります。
■結果予期
これは、過去得られた知識や、今までに積み重ねてきた経験といった「過去」をもとにして、特定の行動を取った際に生じる結果を予測し、今後について推測することを示す言葉です。ビジネスシーンでの例をご紹介します。
ある部下より、新入社員のマネジメント方針について悩んでいると相談された場合を例に見てみましょう。
-部下が抱えている問題や課題について、まずはきちんと話を聴く
-自分の言葉で問題を整理させる
-自分自身で解決策に気付くきっかけを与える
などを自分の経験を踏まえて考えることが結果予期です。
生み出す結果のイメージを明確に持ち、結果を生み出すメリットを感じることです。
■効力予期
次に効力予期です。効力予期は、ある結果を生み出すために必要とされる行動を、自分自身が上手に実行できると確信することを意味します。ここでもビジネスシーンでの例をご紹介しましょう。
部下から、新入社員のマネジメント方針について悩んでいると相談された場合
-自分の言葉で問題を整理させる
-その問題にアドバイスすれば、部下はまた意欲的に育成方針について提案してくれる
-自分は部下の中にある課題の本質を引き出すことができる
といった確信を持ちます。
このように、効力予期とは自分は行動を起こすことが出来るという確信です。
自己効力感が高い人と低い人の違い
自己効力感が高い人の特徴としてよく言われるのが以下のような点です。
- ポジティブで自信に満ちている。
- 積極的に行動・チャレンジする。
- ストレスに強い。
- 失敗を恐れず、困難にも立ち向かう。
- 簡単にあきらめない。
- 立ち直りが早い。
自己効力感が高い人は「自分ならきっとできる」という気持ちを持っているので、最初はうまくいかなくても、結果が出るまで頑張ることができます。簡単にあきらめないので、困難を乗り越えることができるのです。
一方で、自己効力感が低い人の特徴としてよく言われるのが以下のような点です。
- ネガティブで自分に自信がない。
- 失敗を恐れ、挑戦を避ける。
- やる前からあきらめてしまう。
- 努力することができない。
- 立ち直りが遅い。
自己効力感が低い人は「自分にはどうせできない」という気持ちを持っているので、少しでも不安や困難があるとあきらめてしまいます。実は能力や可能性を秘めていても、「自分にはできない」という気持ちが邪魔をして、それを発揮できなくなってしまうのです。
自己効力感を高めるメリットとは
■自己効力感が低い場合のデメリット
自己効力感が低い場合は、下記のような悪循環が生まれます。
「自分にできるはずがない。きっと失敗する」といった気持ちが大きくなり、行動する意欲も減退します。そのため、いくら能力を保有していたとしても、結果を出すことは難しいでしょう。
そして、更に結果が伴わないと、「やっぱり自分にはできない。また失敗する」というネガティブな気持ちが雪だるま式に膨らみ、結果、自己効力感の低下に拍車がかかり、悪循環に陥ってしまうのです。
■自己効力感を高めるメリット
では一方で、自己効力感を高めるメリットにはどんなものがあるでしょう。
<周囲から学ぶ姿勢やチャレンジ精神を育む>
何事にも恐れずに、積極的にチャレンジすることができるようになるでしょう。そのため、周囲から学ぶ姿勢も常に怠りません。また実行に移すまでのスピードも速くなります。
<過度に落ち込まない>
失敗してしまったときも、前向きに「次はどうすればうまくいくか」を考えることができたり、「できない理由探しより、出来る方法を考える」ことに時間を費やします。そのためポジティブな発信も増えるでしょう。
いずれも、能力開発や生産性向上など、長期的に大きな成果をもたらす根源となるものばかりであることがわかります。
<モチベーションを維持できる>
自己効力感を高めることで、モチベーションを高く維持できるとされています。自己効力感が高い人は、達成感を感じることができるため、より長期的な目標に向けて取り組むことができます。また、自己効力感が高い人は、困難に直面しても諦めず、自分自身を鼓舞することができます。
▼モチベーションを高める方法について詳しくはこちら
モチベーションをアップさせる方法は?原因や組織レベルで行う施策を解説
自己効力感が低いとどうなる?
自己効力感が高い人の特徴としてよく言われるのが以下のような点です。
・ポジティブで自信に満ちている。
・積極的に行動・チャレンジする。
・ストレスに強い。
・失敗を恐れず、困難にも立ち向かう。
・簡単にあきらめない。
・立ち直りが早い。
一方で、自己効力感が低い人の特徴としてよく言われるのが以下のような点です。
・ネガティブで自分に自信がない。
・失敗を恐れ、挑戦を避ける。
・やる前からあきらめてしまう。
・努力することができない。
・立ち直りが遅い。
特に、自己効力感が低い場合は、下記のような悪循環が生まれます。
「自分にできるはずがない。きっと失敗する」といった気持ちが大きくなり、行動する意欲も減退します。そのため、いくら能力を保有していたとしても、結果を出すことは難しいでしょう。
そして、更に結果が伴わないと、「やっぱり自分にはできない。また失敗する」というネガティブな気持ちが雪だるま式に膨らみ、結果、自己効力感の低下に拍車がかかり、悪循環に陥ってしまうのです。
自己効力感が高い人と低い人の違い
自己効力感を高めるために大切なポイントとは?
自己効力感とは、個人が自身の能力を信じ、目標達成が可能であると感じる心理状態を指します。この感覚を高めることは、モチベーションの向上、ストレスの軽減、そして生産性の向上に直接的に寄与します。以下に、自己効力感を高めるための重要なポイントを具体的に説明します。
成功体験や達成感を感じられるようにする
自己効力感を高める最も効果的な方法の一つは、積極的に成功体験を積むことです。これは、自分自身の能力を信じる自信を築くための重要なステップであり、小さな目標から始めることがお勧めです。目標は現実的で達成可能なものであるべきで、そのような目標を設定することで、自分自身の能力を信じることができます。
そして、その目標を達成した際には、それを自己評価することで、自分自身の成長と進歩を確認することができます。
他人の成功体験を見たり聞いたりする
他人の成功体験から学ぶことは、自己効力感を高めるための非常に有効な手段であり、自己成長と自己啓発にも寄与します。特に、自分自身と似たような状況、つまり自分が直面している問題や困難を経験している他の人々の成功例を目にすることで、自己効力感を強化することができます。
「もし彼らができるのなら、自分にもできるはずだ」という前向きな感覚を育てることができ、これは自己効力感の育成において重要な要素です。
褒めたり、励ましたりしやすい環境に整える
肯定的なフィードバックとサポートは、自己効力感、つまり自己の能力を信じる感覚の向上に必要不可欠です。家庭や職場、学校などの日常生活の場面で、他人を積極的に褒めたり、励ましたりするポジティブな文化を創造することが重要です。
なぜなら、自己効力感は他人からの肯定的な反応や評価によって大きく強化され、これが自信を構築する支えとなります。個々の自己効力感の高まりは、困難な状況に直面したときの対処能力を高め、成功体験へと繋がる可能性を増大させます。
健康的な状態を保つよう心掛ける
身体的および精神的な健康は、自己効力感を高めるうえで極めて重要な要素です。規則正しい生活を送ること、適度な運動を取り入れること、そしてバランスの取れた食事を摂ることは、心身の状態を最適に保つのに大いに役立ちます。これらの健康維持の基本的な要素は、自己の生活の質を向上させ、一日のエネルギーを維持し、さらには自己の幸福感を高めるためにも必要不可欠です。健康的な状態は、日々の課題に対する自己成長を促進し、達成感を引き出します。
自己効力感を測るには?
ここまで、自己効力感の定義やその重要性について紹介してきましたが、実際にその自己効力感の有無やその程度は、どのようにして測ることが出来るのでしょうか。
今回は、個人の自己効力感を測る方法のうち、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)についてご紹介します。
■一般性セルフ・エフィカシー尺度
一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)は、自己効力感を測定するための尺度でGSESはGeneral Self-Efficacy Scaleの略語です。これを提唱したのは、アルバート・バンデューラ博士です。
博士は、私たち人間の行動を、「先行要因」「結果要因」「認知的要因」という3つのカテゴリーに分類し、自己効力感はこれらの行動を決める認知的変数になると説明しました。
そして、自己効力感を測定する項目として全16種類の質問を用意し、アンケート形式にて「はい」か「いいえ」で回答してもらい、自己効力感を測定します。答えた得点が高ければ高いほど、自己効力感が高いということになるのです。
この一般性セルフ・エフィカシー尺度の特徴として「一般的な認知的傾向が測定可能であること」や「アセスメントで利用範囲が広いこと」また「効果測定に関しても応用範囲が広いこと」などが挙げられます。また単なる測定にとどまらず、その効果を発揮させるための職場環境整備などにも応用できるのです。
近年では、一般性セルフ・エフィカシー尺度は広く認知されるようになり、ビジネスの世界以外でも、教育や臨床、予防医学といった分野で幅広く活用されています。
【参考資料のご紹介】
エンゲージメント向上に成功した企業・部署のトップが実際に語った事例資料「日本一働きがいのある会社~部署が変われば企業が変わる~」はこちらからダウンロードいただけます。
■セルフ・エフィカシー尺度の具体的な項目
日本では、坂野雄二氏、東條光彦氏によって一般性セルフ・エフィカシー尺度が確立されました。この尺度は、以下の3つの項目に設問を設け、「はい」「いいえ」で回答してもらい、自己効力感を測定します。
■行動の積極性
- 何か仕事をするときは、自信を持ってやるほうである。
- 人と比べて心配性なほうである。
- 何かを決めるとき、迷わずに決定するほうである。
- 引っ込み思案なほうだと思う。
- 結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでいくほうだと思う。
- どんなことでも積極的にこなすほうである。
■失敗に対する不安
- 積極的に活動するのは、苦手なほうである。
- 過去に犯した失敗や嫌な経験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある。
- 仕事を終えた後、失敗したと感じることのほうが多い。
- 何かをするとき、うまくいかないのではないかと不安になることが多い。
- どうやったらよいか決心がつかずに仕事に取り掛かれないことがよくある。
- 小さな失敗でも人よりずっと気にするほうである。
■能力の社会的位置づけ
- 友人より優れた能力がある。
- 人より記憶力が良いほうである。
- 友人よりも特に優れた知識を持っている分野がある。
- 世の中に貢献できる力があると思う。
自己効力感を高めるには、過去の成功体験を振り返ることが有効です。自分が過去にどのような困難に直面して、どのように乗り越えたかを思い出すことで、自己効力感を高めることができます。また、成功体験を積み重ねることで、自己効力感を高めることができます。自分の能力を高めるために、新しいスキルを学んだり、挑戦的なタスクに取り組んだりすることも有効です。
自己効力感を高める方法は?
ここからは、下記の4つの観点から自己効力感を構成する方法を紹介します。
■1.直接の成功体験による高め方
自分自身の力でやり遂げたという、自分自身の成功体験による高め方です。
困難なことにチャレンジし、自分の力でそれを克服することができた、という体験は「やればできる」という自信を深めます。
この方法により自己効力感を高めていく場合、とにかく数を積み重ねることです。もちろん、大きな目標を立てて達成できればそれだけ自己効力感も得られますが、実力に不相応な目標へと向かっても未達成が繰り返され、逆に、自己効力感が下がっていくことにもなりかねないのです。
まずは目標達成が簡単な小さい目標を用意し、徐々にその規模を大きくしたり、難易度を高めていくのがポイントです。
また、すでに成功経験を得ているにもかかわらず、自分で気づいていないだけのこともあります。そこで、過去の経験をリストアップしてみるのもひとつの方法です。
その中で、自分では見えていなかった行動と結果の関係に気づくこともあり、その瞬間に認知が形成され、自己効力感が生み出されることもあります。
■2.代理的体験による高め方
他者の行動を観察し、あたかも自分がそれをやっているようにイメージする代理的体験による高め方です。スポーツの世界で行われるイメージトレーニングもその一つです。
ここでのポイントは、結果ではなく過程を見ることです。成功という結果だけを追っていても健全な自己効力感は生まれず、自分の体験にあてはめて「自分にもできそう」「自分も頑張らなければ」と切実に思うには、成功の過程をしっかりと調べることです。
また、代理体験では、つい著名人の成功例を参考にしがちです。ただ、時代や成功の規模が違いすぎると自分に同化するのが難しくなります。あるいは健全な認知が行われず、自信過剰になってしまい、感情を制御しにくくなるなどのトラブルも招きかねません。
そのため、身近な例を探すのが得策です。同僚や友人、家族などで成功者を見つけたほうが、類似性も優位性も感じやすくなります。先述の通り、成功までのプロセスを詳しくさかのぼれるのも大きなメリットです。
■3.言葉の説得による高め方
説明や励ましなど、言葉の説得による高め方です。「こうすればできる」という説明や「あなたならきっとできる!」という励ましの言葉は、その行動に取り組んでみようというモチベーションに繋がります。
一方で、他者の言葉に影響されて自己効力感を下げてしまうことも少なくありません。そこで、ポイントになるのが、他者の言葉を変換して受け入れることです。自分に与えられた評価をポジティブに変換するよう心がけていきます。
たとえば、「どうして○○ができないのか。他のことに集中しすぎているからじゃないか」と叱責されたとします。それを「自分はダメな人間だ」と思えば、肯定的な認知につながりません。
しかし、「他の部分はできているということ。そして自分は未来に期待されているから言ってもらえるのだ」と解釈すれば、社会的説得を得ているのと同じ状態です。
それと同様に、自分自身を評価するときも、短所より長所に注目します。色々と出来ないことに直面した際には、「入社当初よりはまともになってきた。この分ならまだまだ成長できるはずだ」と、できていることにも目を向けます。
ネガティブな思考を頭に残さないよう、自分にかける言葉をポジティブに変換するよう努めれば、自己効力感は高まっていくのです。
■4.情緒的な喚起による高め方
行動中に自分の生理的な状態(=いつもと同じ)を意識することで生まれる自信によって高める方法です。血圧や心臓の鼓動が平常であることを認識することで「意外と大丈夫!」という自信や意欲に繋がります。
そのため、ポイントは健康状態を保ち続けることです。睡眠不足や不規則な食事などはもってのほか。また、ストレスや疲労感なども放置していると深刻な症状を発症させます。
まずは自分の生活リズムを見直し、乱れた生活習慣を直していきましょう。また簡単にできる趣味、身近な人への相談といった対処法でストレスをためないことも大事です。
さらに、乱れた生活を正した上で、健康習慣を取り入れることもお勧めします。筋トレやストレッチなど、手軽にできる運動を毎日続けていると、仕事や人間関係で嫌な出来事があっても、気持ちがリセットされたり、良質な睡眠にも繋がり、良いサイクルが生み出せるでしょう。
■5.目的を意識の中に組み込む高め方
「何のためにそれをおこなうのか?」という意味に価値を置いている人ほど自己効力感が高く、課題とされている行動をとる率が高かったことが報告されています。つまり、行動に対する意味づけや必要性が自己効力感の向上につながるということです。
■6.行動の方略による高め方
ある課題を達成するための方略を知っていて、それを活用できることが自己効力感を高める要素であることが明らかにされています。
■7.原因の帰属による高め方
教育心理学者のD.H.シャンクは、算数の学習プログラムにおいて、努力帰属のフィードバックを与える要因と能力帰属的フィードバックを与える要因を組み合わせた条件を設定し、それが自己効力感とスキルに及ぼす影響を検討しました。その結果、帰属的フィードバックを受けた児童は、統制群の児童に比べて自己効力感とスキルの両方で大きな伸びを示すことが明らかになりました。そのなかでも、特に能力帰属のフィードバックのみを受けた群の児童が、もっとも自己効力感やスキルを大きく伸ばすことが明らかになりました。
分かりやすく言うと、子どもが自分の成功や失敗といった結果を受け止めるとき、「あなたの能力の結果だ」と言われるほうが「あなたの努力の結果だ」と言われるより自己効力感が高く保たれるということです。
■8.ソーシャルサポートの活用による高め方
活用できるソーシャルサポートを多く認識している人ほど、自己効力感が高められることが報告されています。
■9.認知能力による高め方
自己効力感を高めるためには、過去や未来という時間を自分と関係づけることや、自分自身を振り返る反省といった能力が必要であり、それらは具体的操作期と言われる7歳から12歳頃に備わってくると考えられています。このような認知能力が高い人ほど、自己効力感も高い状態を保てるという相関関係があります。
■10.健康状態の維持による高め方(セルフマネジメント)
老人の場合、身体的な衰えが自己効力感を低下させる要因になるなど、健康状態の良し悪しが自己効力感に影響を及ぼしていると考えられています。
※参考:日本看護科学会誌|自己効力感の概念分析|江本リナhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jans1981/20/2/20_39/_pdf
▼セルフマネジメントについて詳しくはこちら
「セルフマネジメントとは?重要性やセルフマネジメント能力を高める方法を解説」
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記事まとめ
いかがでしたでしょうか。自己効力感が高い人はチャレンジ精神にあふれ、困難を乗り越えながら成功体験を積み重ねます。
そして結果としての成功を得れば、自分への自信に繋がり、更に良いサイクルを生み出すことができます。自己効力感のあり様と高め方を理解し、意識して過ごすことで、人生をより豊かにしていきたいですね。
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自己効力感に関するよくある質問
Q:自己効力感が低い原因は?
自己効力感が低い原因としては様々なことが考えられます。たとえば、知識不足や経験不足も自己効力感が低い原因になり得るでしょう。自己効力感は「自分ならできる」と思える力のことですが、そう思えるためには、一定の知識や経験が必要です。「知らなければできない」ことはたくさんありますし、「やったことがないからできない」と考えるのも自然なことです。知識や経験が豊富な人は、「自分ならできる」と思えることも多いはずです。
また、幼少期の環境も自己効力感に影響を及ぼすと考えられます。幼少期に親や先生から「何をやってもうまくできない」「どうしてできないの?」「だめな子だ」などと言われて育つと、自信を喪失して、自己効力感の低い人になってしまうことがあるようです。過去のトラウマも同様です。大人になってからでも、失敗を馬鹿にされたり、何かにチャレンジしようとしたら周囲に反対されたりした経験は、自己効力感の低下を招くと考えられます。
また、自己肯定感が低い人は自己効力感も低い傾向にあるようです。自己肯定感とは、自分の良いところも悪いところも含めて、ありのままの自分を肯定する感覚のことを言います。「他人と比べて優れている」といった相対的な理由からではなく、誰とも比較しなくても、今の自分の全部を絶対的に「そのままでいい」と認めて尊重する力です。
Q:自己効力感の高い人を採用するにはどうしたらいい?
自己効力感は目に見えにくいものですが、「一般性セルフ・エフィカシー尺度」を使うことで自己効力感を可視化することができます。一般性セルフ・エフィカシー尺度では、「行動の積極性」「失敗に対する不安」「能力の社会的位置づけ」という3つのカテゴリの16個の質問に答えることで、自己効力感を測定します。以下の質問に「はい」か「いいえ」で回答するだけの簡単なテストなので、採用の選考過程に導入して応募者の自己効力感を測ってみてはいかがでしょうか。
▼行動の積極性
(1)何か仕事をするときは自信を持ってやるほうである。
(2)人と比べて心配性なほうである。
(3)何かを決めるとき、迷わずに決定するほうである。
(4)引っ込み思案なほうだと思う。
(5)結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでゆくほうだと思う。
(6)どんなことでも積極的にこなすほうである。
(7)積極的に活動するのは苦手なほうである。
▼失敗に対する不安
(8)過去に犯した失敗や嫌な体験を思い出して、暗い気持ちになることがよくある。
(9)仕事を終えた後、失敗したと感じることのほうが多い。
(10)何かをするとき、うまくゆかないのではないかと不安になることが多い。
(11)どうやったらよいか決心がつかずに仕事に取りかかれないことがよくある。
(12)小さな失敗でも人よりずっと気にするほうである。
▼能力の社会的位置づけ
(13)友人より優れた能力がある。
(14)人より記憶力が良いほうである。
(15)友人よりも特に優れた知識を持っている分野がある。
(16)世の中に貢献できる力があると思う。
このなかで、(1)(3)(5)(6)(13)(14)(15)(16)に「はい」と答えた人は自己効力感が高い傾向にあり、(2)(4)(7)(8)(9)(10)(11)(12)に「はい」と答えた人は自己効力感が低い傾向にあります。
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