スタートアップとは?ベンチャーとの違いやメリットを解説
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日本では、スタートアップもベンチャー企業も「新しくできた小規模な会社」という意味でひとくくりにされがちですが、実際にはスタートアップとベンチャー企業は様々な点で違いがあります。
今回は、スタートアップの定義やベンチャー企業との違い、また、スタートアップで働くメリットや活躍できる人の特徴などについて解説していきます。
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スタートアップとは?
スタートアップは、日本では「新しくできた小規模な会社」「起業したばかりの若い企業」といった意味で捉えられるのが一般的です。これは、「スタート」や「アップ」という言葉が持つイメージによるところが大きいでしょう。
しかし、欧米では意味が異なります。欧米で言うところのスタートアップは、社会に新しい価値を創出して急成長を遂げている企業のことを言います。過去に例がない斬新なビジネスモデルを生み出して新規市場を開拓し、社会に新しい価値を提供している企業がスタートアップなのです。
つまり、設立からの期間や企業規模などは関係なく、「どんなビジネスをしているのか?」という点こそがスタートアップの本質だと言えます。
■ベンチャー企業とは?
ベンチャーは「アドベンチャー(adventure)」という言葉に由来する和製英語です。日本では「成長過程にある比較的新しい企業」を指す言葉として広く認知されています。ベンチャー企業の条件があるわけではありませんが、特徴としては、設立から間もない主にスモールビジネスを扱う小規模な企業を指すのが一般的です。
スタートアップとベンチャー企業の違い
スタートアップとベンチャー企業の違いとしては、主に以下の点が挙げられます。
■革新性があるかどうかが違う
スタートアップをスタートアップたらしめている本質的な要素が「イノベーション(innovation)」です。革新的なビジネスモデルで、新しい価値を生み出している企業こそがスタートアップなのです。
一方、ベンチャー企業は、ビジネスモデルに革新性があるかどうかは関係ありません。どちらかと言うと、既存のビジネスモデルに独自の価値を加える形でビジネスを展開したり、既存の市場に参入してビジネスを拡大したりするのがベンチャー企業です。
これに対して、今までの常識を覆すような革新的なアイデア・価値観で、今までに例のない新しいビジネスを創出するのがスタートアップということです。
その意味では、日本でスタートアップと言われている企業もほとんどはベンチャー企業であり、ベンチャー企業と同義でスタートアップという言葉が使われています。欧米的な意味でのスタートアップは、日本には少ないのが現状です。
■ビジネスモデルが違う
上述した「イノベーション」とも関連する話ですが、スタートアップとベンチャー企業ではビジネスモデルが異なります。スタートアップは、非常に革新的なビジネスモデルで事業をおこないます。もっと言えば、最初はビジネスモデルすらなく、ゼロからビジネスモデルを生み出していくのがスタートアップです。一方、ベンチャー企業は多くの場合、既存のビジネスモデルをベースにして事業を展開していきます。
料理にたとえると、既存の料理に工夫をしてより美味しくするのがベンチャー企業であるのに対し、誰も食べたことがなく、見たことも聞いたこともない料理を生み出すのがスタートアップだと言えます。その料理はどんな味がするのかも、人々に受け入れられるのかどうかも、食べてみるまで分かりません。それゆえ、スタートアップは鳴かず飛ばずで終わることもありますし、そもそも料理(プロダクトやサービス)を生み出せずに解散してしまう場合もあります。
■収益モデルや成長スピードが違う
初期のスタートアップはビジネスモデルすら確立していないため、収益の目途が立ちません。そのため、起ち上げの際に投資家から運転資金を調達し、その資金でビジネスモデルを生み出していきます。
設立から数年は赤字が続くことがほとんどで、この状態は「死の谷(Valley of Death)」とも言われますが、ここを乗り越え、社会に価値を生み出すことができれば短期的に急激な成長を果たすことができます。そして、最終的にはIPOやバイアウトで大きな収益獲得を目指すのがスタートアップの特徴です。
一方で、ベンチャー企業は既存のビジネスモデルを踏襲するケースが多いため、初期段階からある程度の収益が期待できます。リスクの少ない経営で体力をつけながら、長期安定的な成長を目指すのがベンチャー企業の特徴です。
スタートアップと中小企業の違い
スタートアップと中小企業では、まず働き方の点で様々な違いがあります。一般的な中小企業は、始業時間・終業時間が決められており、基本的には会社に出勤して働きます。一方で、スタートアップは従来のルールにとらわれず、たとえば「リモートワーク」「在宅ワーク」「フレックスタイム」「ワーケーション」「副業可」などを積極的に取り入れ、多様な働き方に対応しています。
採用で求める人材にも違いがあります。多くの中小企業は協調性のある人材を求める傾向にありますが、スタートアップは野心やチャレンジ精神が旺盛な人材を好みます。
また、スタートアップに決まったビジネスモデルはありませんが、基本的にはハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルになります。一方、中小企業は労働集約型で拡張性が低いビジネスモデルを扱う傾向にあります。スタートアップのように短期的な急成長を狙うのではなく、長期的に堅実な成長を目指すのが中小企業の特徴です。
スタートアップが抱える課題
多くのスタートアップが直面するのが、リソースの問題です。スピード感をもってイノベーションを生み出すには、「人」「モノ」「カネ」といった経営資源が欠かせませんが、これらが不足しているのがスタートアップです。人材や設備を確保するために資金調達は必須になりますが、思うように資金調達ができない場合は志半ばで解散してしまうこともあります。
スタートアップで働くメリット
スタートアップで働くメリットとしてよく言われるのが以下の点です。
■成長スピードが速い
短期間での事業成長を狙うスタートアップは、意思決定のスピードが早いのが特徴です。大企業であれば1週間かかる意思決定でも、スタートアップならわずか10分の打ち合わせでジャッジすることも少なくありません。このように、スタートアップでは思考にも行動にもスピードが求められ、次々と新たな経験を重ねていくため、自分自身も短期間で大きく成長することができます。
■自分の意見が採用されやすい
スタートアップは従業員数が少ないぶん、一人ひとりの意見や提案が大切にされます。大企業であれば発言すらできないレベルのことでも、スタートアップならどんどん発言でき、自分の意見が採用されることも少なくありません。経営に近い位置で、当事者意識を持ってビジネスを推進することができるのは、スタートアップで働く大きなメリットだと言えるでしょう。
■様々な経験を積むことができる
少人数のスタートアップでは、一人ひとりが担当する業務範囲も広くなります。大企業では分業される仕事でも、スタートアップでは最初から最後まで一人で対応するのが当たり前です。そのため、業務全体の流れを把握できますし、様々な業務経験を積むこともできます。とにかくいろんな経験を積みたいという人にとって、スタートアップほど適した環境はないでしょう。
スタートアップで働くデメリット
続いてはスタートアップで働くデメリットをご説明していきます。デメリットを理解するにあたっては、企業組織の辿るモードと、それに紐づく組織症例とセットで理解することが有効です。
リンクアンドモチベーションでは企業組織のモードを下記3つに分類しています。企業組織は規模や業種に関わらず同じ成長の軌跡を辿り、各モードで乗り超えるべきハードルには一定の共通点が存在します。
スタートアップ企業は組織モードの中の「拡大モード」である企業と言え、拡大モードの企業で起こりがちな組織症例は下記の通りです。
■仕事の責任が重い(マネジメント不全症)
スタートアップでは本来マネジメントサイドにいる社員もプレイングとして現場におりることが当たり前のため、不慣れな中でも自分で仕事を進めていく責任があります。プレッシャーもかかり、ミス・失敗をしたときの影響も大きくなりがちです。この点も、人によってはデメリットになり得ます。
■ハードワークが求められる(業務過多疲弊症)
スタートアップでは担当する業務量が多く、ハードワークが求められます。「平日は定時で帰りたい」「土日はしっかり休みたい」「ワークライフバランスを重視したい」という人には向かないでしょう。
■0からつくる必要がある(組織ルール不足症)
スタートアップでは、ビジネスモデルから社内制度まですべてを自分たちでつくっていく必要があります。「0→1」が苦手な人には向かない環境だと言えるでしょう。
スタートアップに向いている人、活躍できる人の共通点
■主体性を持って仕事ができる人
スタートアップでは、若手にもどんどん仕事が任せられます。研修もなしに、いきなり現場に放り込まれることも少なくありません。自分で会社を動かしていくという意識がなければ務まりませんし、自分で勉強していかなければ仕事についていけません。逆に言えば、主体性を持って仕事に取り組める人ならスタートアップで活躍できるでしょう。
■新しいことや変化を楽しめる人
スタートアップは、未開拓の分野で革新的な事業を展開していきます。想定外のことが起きるのは日常茶飯事ですし、毎日が変化の連続です。新たな環境での挑戦を楽しめる人や、変化を楽しめる人ならスタートアップで活躍できるでしょう。また、既存のビジネスではなく、未知のビジネスに携わりたいという人にもスタートアップがおすすめです。
■将来起業を考えている人
スタートアップは社員数が少なく、経営者との距離が近いのが特徴です。そのため、経営に関する考え方やノウハウなどをどんどん吸収することができます。将来、起業を考えている人はスタートアップで働くのがおすすめです。スタートアップで経験したことや学んだことは、将来、起業するときに大いに役立つはずです。
スタートアップ企業を選ぶ基準
スタートアップ企業に限らず、人が組織に魅力を感じる因子は大きく4つに分けることができます。(下図参照)
■理念・ビジョンや事業内容に共感できるか?(Philosophy)
高いモチベーションを保って生き生きと働くためには、会社が大切にしている理念や、目指しているビジョンに共感できることも大切です。理念・ビジョンに共感できるスタートアップに入ったほうが仕事にやりがいや意義を感じやすく、日々前向きに働くことができるでしょう。
■事業内容が魅力で成長性がありそうか?(Profession)
会社の事業内容に共感しているか否かも重要なポイントです。また、スタートアップは不確実性が高い企業ですが、だからこそ、成長性の高い市場で勝負しているかどうかが重要になってきます。
例を挙げるとすれば、AIやブロックチェーン、IoTやドローンなどの市場は大きく成長しているため、そこで勝負をしているスタートアップも恩恵を受けやすいと言えます。このように、スタートアップで働くなら、事業のスケールが見込める企業を選ぶのが良いでしょう。
■経営層や社員が魅力的か?(People)
理念や事業内容だけでなく「どのような人と働くか?」もポイントです。社長やメンバーが魅力的かという観点に加え、その組織が有する組織風土も対象となります。素早い意思決定スピードや比較的フラットな階層構造など自身のパフォーマンスが最大化される環境を選ぶことが重要です。
■資金調達ができているか?またストックオプションが魅力的か?(Privilege)
スタートアップが事業を成長させていくためには資金力が不可欠であり、資金繰りがうまくいかなくなると事業を継続できなくなるリスクもあります。
スタートアップを選ぶ際は、資金調達ができているかどうかをチェックすることも大切です。資金調達ができているスタートアップは、投資家やベンチャーキャピタルから高い評価・期待を受けていると見ることができるので、一定の信頼を置けるはずです。
またスタートアップというリスクのある環境に飛び込むため、リターンとしてどれほどのストックオプションや待遇が得られるかも重要です。
ここでは、組織の魅力因子についてお伝えしましたが、重要なのは自分にとってどの因子が重要なのかを見極めることであり、自分なりの軸をもとに会社を選ぶことが重要と言えるでしょう。
まとめ
スタートアップは事業の成否が見通せず、不安定です。そのため、スタートアップで働くことに不安を覚える人も多いと思います。しかし、スタートアップで働かなければ経験できないこともたくさんあります。とにかく経験を積みたい人や短期で成長したい人、将来起業してやりたいことがある人などはスタートアップに飛び込んで、なりふり構わず働いてみるのも良いでしょう。
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