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【前編】モチベーションチームアワード2022レポート 北海道スバル&トゥモローゲート エンゲージメントが高い部署づくりの秘訣とは?組織偏差値28からの改善策と、87からの改善策

「ベストモチベーションチームアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、組織変革に向けた取り組みによってエンゲージメントスコア(社員の会社に対する共感度合いを表す指数)が上昇した「部署」を表彰するイベントです。

2022年度、ベストモチベーションチームアワード受賞企業のなかからゲストをお招きして、管理職の皆様向けのトークセッションを開催。北海道スバル株式会社 函館北浜店の高慶俊人氏と、トゥモローゲート株式会社 戦略企画部の西崎隼平氏にご登壇いただき、「エンゲージメントが高い部署づくりの秘訣」をテーマにお話しいただきました。

【イベント実施日】
2022年3月10日

【スピーカー】
・北海道スバル株式会社 函館北浜店 店長 高慶 俊人 氏
・トゥモローゲート株式会社 常務取締役  戦略企画部 ゼネラルマネジャー 西崎 隼平 氏

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション 田中 峻

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とにかく話を聞き、不満を吐き出してもらった

リンクアンドモチベーション 田中:北海道スバル様は、エンゲージメントスコア28.4から62.1まで改善されました。一方、トゥモローゲート様は、元々87とエンゲージメントスコアが高かったのですが、そこから89まで向上させています。今日は、エンゲージメントスコアが低い状態から改善した企業様と、高い状態からさらに向上させた企業様ということで、二社様に取り組みの内容などを伺っていきたいと思います。まずは、北海道スバル様から、取り組み前の組織状態を教えていただけますか。

北海道スバル 高慶氏:目標を掲げていてもメンバーがそれを意識していないと言うか、目標の達成意欲が非常に低い状態だったと思います。また、他のメンバーへの関心がなく、「どうせ変わらない」「何を言っても無駄」というような諦めの雰囲気が漂っていましたね。

リンクアンドモチベーション 田中:その状態から、どのような取り組みをされたのでしょうか。

北海道スバル 高慶氏:うちの店舗は20人くらいのメンバーがいるのですが、とにかく話をして、感情を吐き出してもらうことから始めました。事あるごとにコミュニケーションを取り、「どういうふうに思ってるの?」と聞いて、不満を吐き出してもらいました。1対1だとあまり話してくれない人が多かったので、2~3人で固まっているところに私が寄っていってフランクに話しかけていた感じです。

メンバーからは様々な不満が出てきましたが、最初はどんな話であろうと否定せず、聞くことに専念しました。その次の段階からは、「もっとこうしたら良くなるんじゃない?」など、アドバイスを交えながら話すようにしました。そのときに心がけたのが、ネガティブな姿勢からいかに前向きになってもらうかということです。私自身が「前向き」「思いやり」「気遣い」という3つの言葉を大切にしていて、口癖にもなっているのですが、この3つの言葉をどんどん使って繰り返し話をしていきました。

あとは、「だって」「でも」「どうせ」という3Dを、ミーティングの場でメンバーに共有しましたね。「誰が」という点は言わずに、「こういう不満が出ているので、みんなで改善していきましょう」という共有です。また、弊社はサービス部門と営業部門がわかれて仕事をしていて、私は営業側にいることが多かったので、できるだけサービス部門のほうにも行くようにして、部署間の壁をなくせるように心がけました。


前向きなことを言うメンバーが増えたのがいちばん嬉しい

リンクアンドモチベーション 田中:取り組みの結果、組織はどのように変わっていきましたか。

北海道スバル 高慶氏:部署間の連携が良くなりましたし、みんなでやり遂げる意識が生まれてきたと思います。職場の雰囲気もすごく明るくなりましたね。私がいちばん嬉しかったのは、前向きなことを言うメンバーが増えてきたことです。「こうしたい」とか「この試験に合格したい」とか、今までだったら出てこなかった話がどんどん出てくるようになったのは良かったですね。

作業効率が上がって、残業が減ったのも分かりやすい成果だったと思います。やはり、今までは「どうせ」という気持ちがベースにあったので、仕事に身が入らないこともあったのかもしれません。そのあたりの意識が改善されたので、作業効率も改善したのだと思っています。

リンクアンドモチベーション 田中:エンゲージメントが低い組織に対する取り組みとしては、高慶様がおこなったように、感情に寄り添って改善を進めるのが一番のポイントだと思います。メンバーの「分かってくれていない」という気持ちを取り除くことが、その後のエンゲージメント向上の出発点になったのではないでしょうか。高慶様、ありがとうございました。続いて、トゥモローゲート様にもお話を伺っていきます。当初からエンゲージメントスコアは高い状態でしたが、取り組み前はどのような課題があったのでしょうか。

トゥモローゲート 西崎氏:弊社はまだまだ社員数も少なく、どうしても上司頼りで仕事を進めてしまう傾向がありました。ですが、このやり方だと、メンバーはなかなか「自分がやった」という貢献実感が得られません。これが、一つ問題だと感じていたところです。

また、弊社のメンバーには、比較的に意識が高い人も多く、全体の雰囲気として「高い目標を掲げないといけない」というような空気感がありました。メンバーは、自分で掲げた目標ではないような「やらされ感」を感じていたと思いますし、「達成できなくても仕方ないか」といった若干の諦め感もあったように思います。

やらされ感で仕事をしていてもおもしろくないですし、仮に短期的に数字を上げることができたとしても、5年先、10年先を見たときに会社として残っていけないという危機意識はありましたね。

貢献実感を得てもらうため、管理職に若手を抜擢

リンクアンドモチベーション 田中:組織改善の具体的な取り組みについて教えてください。

トゥモローゲート 西崎氏:メンバーに、仕事の成果を自分自身の成果として感じてもらいたかったので、若手にどんどん仕事を任せていこうと思いました。そのため、中途入社で1年くらい経った子と、新卒4年目の子を管理職に抜擢しました。

また、弊社はブランディングという数値に表れにくい仕事をしていますので、「弊社が関わる前と関わった後でお客様がどのくらい変わったのか」を数値として可視化できるシートを運用することにしました。この取り組み自体は顧客満足度を上げるために始めたことで、実際に顧客満足度も上がったのですが、それとは別に、メンバー自身の仕事に対する意欲も上がっていったんです。

というのも、メンバーのなかにも「自分たちが提供しているサービスには、どのくらいの価値があるんだろう?」という疑問があったからです。このシートを運用し始めたことで、そういうものが可視化されたので、「お金をもらったぶんの価値を提供できたんだ」と実感でき、自分たちのやりがいや意欲向上にもつながっていったという形です。

もう一つは、目標設定の仕方を変えて、会社のビジョンと個人のビジョンをリンクさせるようにしました。「Myビジョンマップ」と呼んでいるのですが、まずは、自分が将来なりたい姿と会社のビジョンがマッチする部分で5ヶ年ビジョンを立てます。そして、5ヶ年ビジョンを実現するために、今年はどうなっているべきなのかというように、逆算する形で目標設定をするようにしました。

リンクアンドモチベーション 田中:会社のビジョンと個人のビジョンの重なりを出すために、どのようなことをされたのでしょうか。

トゥモローゲート 西崎氏:重なりを出すための取り組みというのは特にしていなくて、そもそも、そこが重ならない人を採用してはいけないと考えています。個人として目指す将来像がうちの会社にない場合に、その人を受け入れられる器量が、まだうちの会社にはありません。まだまだ小さい会社なので、想いに共感して一緒に突っ走ってくれる人でないと受け入れられないというのが現状であり、そこは未熟な部分かもしれませんね。

メンバーの主体性が醸成されたのは大きな変化

リンクアンドモチベーション 田中:取り組みの成果についてお伺いできますか。

トゥモローゲート 西崎氏:部門売上が昨対で130%超えだったのですが、もっとすごかったのが、抜擢した若手の売上が194%アップを果たしたことです。人って、任せるとこんなに成長するんだなということを実感しましたね。もともと優秀だったので抜擢したのですが、2倍近くもの成果を上げたのには驚きました。

若手を抜擢したことで、全体の雰囲気も変わってきました。僕らが言っても伝わらないのですが、自分の数個上の先輩が体現していると、やはり伝わり方が全然違います。「◯◯さんがあれだけやっているのに、自分がこれじゃダメだ」「もっとやらなきゃ」というように、メンバーの主体性の醸成につながったのは大きな変化だったと思っています。

あとは、コミュニケーションの量が増えました。抜擢した若手が間に入るようになったので、僕たちがメンバーに直接言うのではなく、若手のメンバー同士のコミュニケーションが増えた感じですね。

リンクアンドモチベーション 田中:エンゲージメントが高い組織の場合は、主体性を育むのが重要なポイントだと思います。西崎様がおこなったように、若手に期待をかけて抜擢し、主体性を醸成するというのは理想的な取り組みだったように思います。ありがとうございました。質問をいくつかいただいておりますので、ご紹介します。「若手を抜擢する際はどんなことに配慮しましたか?」という質問なのですが、西崎様、いかがでしょうか。

トゥモローゲート 西崎氏:今回、若手を抜擢して期待以上の成果を上げてくれたので、どんどん任せていこうと思っていますが、誰にも彼にも任せたほうがいいとは思っていません。どれだけ成果を上げている人でも、会社が向かっていく方向性に共感していない人をマネジャーにしてしまうと、マイナスの影響が出やすくなると思っています。ですから、そこはしっかり見極めなければいけないですよね。

単純に数字を上げる人を抜擢すると、「数字だけ上げればいいんでしょ」という組織になりかねません。それが、会社の方向性や文化とマッチしているのであれば良いのですが、マッチしていないのであれば、管理職に上げるのはちょっと危険だなと思いますよね。ですから、考え方とか他の大事な部分についても話を聞きながら、抜擢する人を決めていかなければいけないと思っています。

リンクアンドモチベーション 田中:ありがとうございます。もう一つ、「様々な課題があるなかで、どのように優先順位を付けていますか?」という質問もいただいています。こちらは、いかがでしょうか。

トゥモローゲート 西崎氏:弊社では、サーベイの結果をメンバーにも共有して、「どこがいちばん問題なんだろう?」という話し合いをするようにしています。そのときに、役員やマネジャー陣が「ここが問題だよね」というように判断するのはあまり良くないと思っています。それよりも、メンバーがどこを課題に感じていて、「それはなぜなのか?」という声を聞くことが大事だと思っています。ですから、現場のメンバーが感じている課題が、いちばん最初に改善すべき課題だろうというように優先順位を付けていますね。

リンクアンドモチベーション 田中:現場の声から優先順位を決めるという点に関しては、北海道スバル様も同じなのではないでしょうか。高慶様もメンバーの話を聞いて不満を出してもらったわけですが、そこでの話から取り組みの優先順位を付けていった形ですよね。

北海道スバル 高慶氏:はい、そうですね。

リンクアンドモチベーション 田中:ありがとうございます。お時間になってしまいましたので、最後にお二方からコメントをいただければと思います。

北海道スバル 高慶氏:トゥモローゲート様のお話を聞いていて、組織の段階によってやるべきことが変わっていくんだなということをすごく意識することができました。本日は良い機会をいただいて、ありがとうございました。

トゥモローゲート 西崎氏:うちの会社は人数が少ないから成り立っているだけであって、北海道スバル様のように大きくなるにつれて、もっと複雑な問題が出てくるのだろうなと思っています。ですから、今日はいろんなお話を聞けて非常に参考になりました。本日はありがとうございました。

リンクアンドモチベーション 田中:お二方、ありがとうございました。これにてトークセッションは終了とさせていただきます。

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