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岩本隆教授講演 人的資本経営のKPIとは?「企業は人なり」を実践する企業文化づくり「HR Transformation Summit 2022 Autumn」イベントレポート

岸田内閣は、「新しい資本主義」の実現に向けて、『モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や新しいアイデアを生み出す「人的資本」、「人」である』と「人への投資」の抜本強化を示しました。人的資本経営やその情報開示への注目は増々高まり、企業においても本格的な動きが始まっています。しかし、人的資本経営の実践に際しては、経営戦略と人材戦略の連動の難しさや、人的情報の収集・活用方法など多くの課題が立ちはだかります。

「HR Transformation Summit 2022 Autumn」では、人的資本経営の推進に向けてご活躍されている方々にご登壇いただき、人的資本の実践に関する情報を共有していただきました。「基調講演①」では、山形大学学術研究院 産学連携教授 岩本 隆 氏にご登壇いただき、「日本初のISO 30414リードコンサルタントが語る『人的資本経営』実践の要締」というテーマでトークディスカッションをおこないました。

【イベント実施日】
2022年11月15日

【スピーカー】
・山形大学学術研究院 産学連携教授 岩本 隆 氏
・株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所 上席研究員 林 幸弘

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「企業は人なり」を体現するのが人的資本経営

林:本日は、山形大学学術研究院 産学連携教授 岩本隆先生をお招きして、「人的資本経営実践の要諦~プロのチーム指向につながる企業文化とは」というテーマで基調講演、トークセッションをおこなってまいります。早速ではありますが、岩本先生、基調講演をお願いいたします。

岩本氏:はい、本日はよろしくお願いします。メディアなどで「人的資本経営」という言葉を聞かない日はない昨今ですが、正しく理解している人は少ないのかもしれません。私も「そもそも、人的資本経営ってどういう経営なの?」というご相談をいただくことが増えていますが、そんなに難しい話ではありません。日本企業でも昔から言われている「企業は人なり」を体現するのが人的資本経営です。

「企業は人なり」というのは、「一人ひとりの従業員を活かす」ということに他なりません。今はどちらかと言うと、雇用を守ることや従業員の働きやすさにウェイトが置かれがちですが、原点に立ち返れば、一人ひとりの従業員が活躍することこそが「企業は人なり」であるはずです。

今、第四次産業革命と言われるように、あらゆる領域でデータやAIに関連するテクノロジーが活用されるようになり、人材マネジメントの領域でもデータを活用するのが当たり前の時代になっています。今言われている人的資本経営が昔からの「企業は人なり」と異なるのは、データやファクトを活用していく点と言えるでしょう。

どのようにデータを活用していくのかということで悩んでいる企業も多いと思いますが、本質的に重要なのは、それぞれの企業にとっての「企業は人なり」がどうあるべきかを考え、議論していくことです。データに関しては国際規格も登場していますので、それらに沿って粛々と活用していけば良いでしょう。

では、一人ひとりの従業員が活躍するためにはどうすれば良いのでしょうか。もちろん、一人ひとりをケアすることも重要ですが、もっとも重要なのは「一人ひとりが活躍できる企業文化をつくること」です。この後は、企業文化づくりにフォーカスしてお話を進めてまいります。


人材マネジメントに「ROI」の考え方を入れるのが人的資本経営

岩本氏:こちらが、人的資本経営のベースになる考え方で、海外では「Human Capital Management」と呼ばれるものです。

(出典) THE MEANING OF WORK,「Vol.1|世界における人的資本の文脈」 ,2022年4月6日


ベースになる考え方は、「人材を資源ではなくて資本として捉える」ということです。財務諸表上、人件費は経費として消化されていくので残りませんが、人的資本経営を実践していくうえでは資本に対して投資をして、資産化していきます。そして、その資産を活用して利益を出すという考え方です。

資産に対しての利益という意味では「ROA」になりますが、投資に対してどれだけ利益が出たのかという意味では「ROI」ということになります。つまり、人材マネジメントに「ROI」の考え方を入れるのが人的資本経営のベースになる考え方であり、この考え方をもとにISOの国際規格もつくられています。

人的資本開示の動きについても、少し触れておきましょう。人的資本開示の動きは、もともとはリーマンショックが大きなきっかけになっていますが、背景としては産業構造が変化していることもあります。「モノづくりからコトづくりへ」シフトする企業が増えているように、近年はソフトウェアやデータ関連の産業が急成長しています。それにともない、企業価値に占める無形資産の割合が高まり、資本市場や労働市場から人的資本開示のニーズが高まってきたという流れがあります。

法的には財務諸表だけ開示すれば良いのですが、投資家からすると「財務諸表だけを見ても企業価値を測れない」という悩みが生じます。無形資産のなかでもとりわけ重要な「人材」について開示してくれないと、投資判断ができませんということです。

2011年に、ISOで人材マネジメントの専門委員会「ISO/TC 260」が創設され、人的資本経営をするための国際規格の開発が始まりました。2018年12月には、人的資本報告のガイドラインであるISO 30414が出版されています。これは「Guidelines for internal and external human capital reporting」というタイトルで、日本語では「内部・外部への人的資本に関するレポーティングのガイドライン」となります。内部へのレポーティングは各企業が内部で活用するもので、外部へのレポーティングが人的資本開示ということになります。このドキュメントが出されたのがきっかけとなり、世界的に人的資本開示の政策の議論が加速することになりました。 


どの人的資本領域に投資したら企業のROIが高まるのかを考える

岩本氏:ISO 30414では、以下の11の人的資本領域が示されています。

1. Workforce availability(ワークフォース可用性)
2. Diversity(ダイバーシティ)
3. Leadership(リーダーシップ)
4. Succession planning(後継者計画)
5. Costs(コスト)
6. Productivity(生産性)
7. Recruitment, mobility and turnover(採用、異動、離職)
8. Skills and capabilities(スキル、ケイパビリティ)
9. Organizational culture(企業文化)
10. Organizational health, safety and well-being(健康、安全、ウェルビーイング)
11. Compliance and ethics(コンプライアンス、倫理)

(出典) ISO 『ISO 30414:2018 Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting』, 2018年12月

岸田総理が言う人的資本投資は、給料を上げることと人材育成に投資することがメインになっていますが、この2つだけでなく、「採用、異動、離職」「企業文化」「ウェルビーイング」「コンプライアンス」「ダイバーシティ」など、様々な領域があります。これらの人的資本領域を総合的に見たときに、「どのような優先順位を付けて、どのように投資をしたら企業のROIが高まるのか?」ということをデータで整理して、投資していくことが重要です。

日本の人的資本開示の政策は、金融庁と内閣官房が進めています。金融庁のほうは、有価証券報告書が法定開示になっています。内閣官房のほうは、義務化ではなく推奨ですが、「このようなイメージで開示してみてください」という指針が出ています。

(出典) 内閣官房 非財務情報可視化研究会,「人的資本可視化指針」,2022年8月30日

この指針では19の人的資本開示事項が示されており、左のほうが企業価値向上の観点の高いもので、右のほうがリスクマネジメントの観点の高いものになっています。各企業が、自社にとってどの領域・項目が重要なのかを考えて、自社なりの優先順位付けをしていただければと思っています。


KPIを構造化し、どこにどう投資するのかを決めるのが人的資本経営の妙

岩本氏:人的資本報告においては、よく使われる3つの言葉があります。一つは「Metric(メトリック)」です。これは、企業報告の分野の専門用語で「測定基準」という意味があります。もう一つは「Indicator(インディケータ)」です。これは「指標」と訳されるもので、「KGI(Key Goal Indicator)」や「KPI(Key Performance Indicator)」などでも使われている言葉です。もう一つが「Index(インデックス)」です。これは「指数」と訳されるもので、複数の状況を比較する際に使われる言葉です。

ISOでは58のメトリック(測定基準)が示されており、各メトリックの測定結果は「数値」「金額」「比率」「指数」などで表されます。「数値」で表されるものとしては従業員数などがあります。「金額」で表されるものとしては人件費や人材育成への投資額などが、「比率」で表されるものとしては研修受講比率などが挙げられます。「指数」は従業員エンゲージメントなど、サーベイによってスコア化されるものです。

「数値」「金額」「比率」で表されるものは計算式が共通しているので、他社比較が可能です。一方で、「指数」で表されるものは各企業独自のサーベイなどを使って指数化しているので、他社比較が難しいです。ただ、「今年はこういう取り組みをしたので、スコアが68点から80点に上がった」など、時系列で変化や改善度合いを見ることはできます。もちろん同じベンダーのツールを使っていれば他社比較も可能なので、今後は様々な指数が比較できるようになってくるのではないかと思っています。

人的資本経営を実践するにあたっては、メトリックでデータ化することが基本になりますが、メトリックが重要なのではなく、メトリックのなかから「インディケータが何なのかを導き出すこと」が重要です。KGIを設定し、そのKGIをドライブするKPIを明確にするということです。データが揃っていればデータを根拠に設定することができますが、日本企業を見ていると、データは揃っていないけど「エイ、ヤー」でKPIを設定して取り組んでいるところも少なくありません。ただ、それはそれで大事なことだと思っています。

それぞれのKPIに影響を与える「サブKPI」もありますので、これらを構造化して「どこに、どのような投資をしていくのか?」を決めるのが人的資本経営ということになります。

ISOは、KGIの例をいくつか示しています。たとえば、「人的資本ROI」です。

(出典) THE MEANING OF WORK,「Vol.1|世界における人的資本の文脈」, 2022年4月6日

人的資本ROIとは、人件費に対してどのくらい利益を出しているかというもので、20~30%の企業が大半ですが、業界によっては90%くらいの企業もあります。算式を見て分かるとおり、分母である人件費を下げれば人的資本ROIは高まりますが、それでは社会も従業員も納得しない。最近言われている「ステークホルダー資本主義」では、従業員やサプライヤーを酷使して利益を上げるのではなく、従業員もサプライヤーも大事にして、かつ売上を上げてROIを高めていきましょうという考え方をします。この算式のそれぞれの数字を横比較すれば、企業の実態が見えてくるでしょう。


人的資本経営のKPIの一つ「従業員エンゲージメント」を高めるには?

岩本氏:日本企業でよく使われる人的資本経営のKPIは、大きく4つあると思っています。

1.リーダーシップと後継者計画
2.従業員エンゲージメント
3.ウェルビーイング
4.コグニティブダイバーシティ

1つ目が「リーダーシップと後継者計画」です。特に、後継者計画は不十分な企業も多く、取り組みを開始する日本企業が増えています。

2つ目のKPIが「従業員エンゲージメント」です。これはエビデンスも豊富で、現在多くの企業が活用していますね。イギリスの「Engage for Success」という研究グループは、従業員エンゲージメントが高まるイネーブラーが4つあることをエビデンスとともに示しています。

(出典) THE MEANING OF WORK,「Vol.2|世界における人的資本の文脈」,  2022年5月18日​​​​​​

1つ目が「戦略的ナラティブ」です。ナラティブは「物語」という意味で使われる言葉ですが、「ストーリー」とはニュアンスが異なります。ストーリーが、語り手が語りたい一方的な物語であるのに対し、ナラティブは、聞き手が腹落ちする物語のことを言います。たとえば、経営トップが従業員にメッセージを発信したときに、従業員が腹落ちするかどうかということですね。従業員エンゲージメントを高めるためには、戦略的にナラティブを語ることが重要だと言われています。

2つ目が「エンゲージメントを高められるマネージャー」で、3つ目が「従業員の声」となっています。最後の「組織的インテグリティ」とは、組織に一貫性があるかどうかということです。立派な理念を掲げているけど、外に向けて言っていることと実際にやっていることが違うという企業も見受けられます。企業として掲げている考えが従業員にまで浸透していて態度や行動が一貫していれば、組織的インテグリティが高く、すなわち従業員エンゲージメントも高まりやすいということになります。

従業員エンゲージメントをKPIとしたとき、この4つがサブKPIになってきます。どれが効くかは企業によって異なりますので、それを見極めて優先的に投資をすることが重要です。


企業の持続的成長と相関性があるコグニティブ・ダイバーシティ

岩本氏:人的資本経営のKPIの3つ目が「ウェルビーイング」です。最近は「働き方改革から働きがい改革へ」とシフトチェンジする企業も増えていますが、コロナ禍になって急速に重要性が高まっているのがウェルビーイングです。ギャラップ社は、ウェルビーイングは5つの要素で構成されると言っています。

1. キャリアウェルビーイング
2. ソーシャルウェルビーイング
3. フィナンシャルウェルビーイング
4. フィジカルウェルビーイング
5. コミュニティウェルビーイング

(出典) Gallup 「The Five Essential Elements of Well-Being」,2010年5月4日

「キャリア」「ソーシャル」「フィナンシャル」「フィジカル」「コミュニティ」の5つですが、このなかでも「キャリアウェルビーイング」が従業員の幸福感にもっとも寄与すると言われています。その企業で働くことによってどのくらい幸せなキャリアを歩めるか?というもので、「キャリア充足度」と言い換えることもできるでしょう。人的資本経営を実践するうえでは、従業員のキャリア充足度をいかに高めていけるかが重要になってきます。

4つ目のKPIが「コグニティブ・ダイバーシティ(認知的なダイバーシティ)」です。この数年、世界中で研究が活発化しています。ダイバーシティには、デモグラフィック・ダイバーシティやコグニティブ・ダイバーシティが含まれています。

デモグラフィック・ダイバーシティとは、性別や人種、年齢など、人口統計学的属性におけるダイバーシティのことです。差別をなくすという意味では重要ですが、企業の持続的成長やイノベーションにはあまり関係がないと言われています。

より関係があると言われているのが、コグニティブ・ダイバーシティです。コグニティブ・ダイバーシティとは、思考スタイルや職務経験・スキル、個性やワークスタイルなど、人間の努力で向上させられるものに関するダイバーシティです。

ここまで4つのKPIについてご説明してきましたが、人的資本経営を実践するうえでは、この4つのKPIの数字がきちんと高まっていくような企業文化をつくることが何より重要だと考えています。


各分野のプロが同じ土俵で忌憚なく議論できる企業文化を

岩本氏:イノベーティブな組織にするには、「Multi-Disciplinary Practice」が機能する企業文化をつくることが重要です。

「Multi-Disciplinary Practice」とは、様々な学問領域が掛け合わさった在り方というような意味で、いろんな分野のプロが同じ土俵で忌憚なく議論でき、それを取りまとめるプロデューサーがいるというイメージです。プロデューサーは、質の異なる話を整理・統合して、ファシリーテートできなければいけません。

異なる分野のプロ同士は通常、コミュニケーションが成り立たないので、このような企業文化をつくるのは簡単なことではありません。しかし、異分野のプロ同士が軸を合わせて議論するのが当たり前なカルチャーをつくっていければ、イノベーションが生まれやすい組織になるはずです。

冒頭で申し上げたとおり、日本では昔から「企業は人なり」と言われており、これを実践するのが人的資本経営です。自社にとっての「企業は人なり」がどう在るべきなのかということを、しみじみと考え、議論していただければと思います。一人ひとりの従業員が活躍できる企業文化をつくる方法を、現在の自社の企業文化と対比しながら考えてみてください。そして、データと照らし合わせながら自社の人材戦略に落とし込んでいただければと思います。

時間になりましたので、私からのプレゼンは以上とさせていただきます。

林:岩本先生、ありがとうございました。


一人ひとりの従業員が腹落ちすることで企業文化が根付いていく

林:ここからは、岩本先生にいくつかご質問をする形でトークディスカッションを進めてまいります。最初の質問が「人的資本経営を実践するうえで、企業文化とどう向き合うべきですか?」というものです。基調講演でお話しいただいた内容とも通じるところもあるかと思いますが、補足をいただけますか。

岩本氏:私の前職では4つほどの社是があり、それを徹底的に従業員に腹落ちさせていました。たとえば、「成長する」という社是がありましたが、それが浸透していたので、従業員は「成長しないとここに居づらい」と感じるようになっていました。また、「付加価値を出す」という社是が浸透していたので、従業員は「何とかして付加価値を出さなければ」と様々な工夫をしながら仕事をしていました。

このように、私の前職では社是に基づいた企業文化が根付いていました。最近はよく「パーパス経営」と言われますが、社是でもパーパスでもビジョンでも言葉は何でも良いので、価値基準や信念を徹底させて、当たり前化することは大きいと思っています。

林:今のお話に関連する内容で、「従業員が腹落ちしているかどうかは目に見えにくいと思いますが、それをデータ化していくという意味で言うと、たとえば、どのようなやり方がありますか?」という質問をいただいています。こちらに関してはいかがでしょうか。

岩本氏:リンクアンドモチベーションさんも「モチベーションクラウド」というサーベイを提供していますが、やはりサーベイなどが有効だと考えます。たとえば、「上司の物語に腹落ちしていますか?」というような設問で腹落ち度合いを測ります。なおかつ、このようなサーベイを比較的早いサイクルでとっていくことが大切なのではないでしょうか。


サーベイで本音を得るには、測るだけではなく改善することが大事

林:続いて、組織文化に関する質問です。「岩本先生は国際的なネットワークをお持ちでいらっしゃいますが、組織文化のつくり方について、国内外の企業を見ていて思うところはありますか?」という質問をいただいています。岩本先生、いかがでしょうか。

岩本氏:実は先日、サッカー日本代表の岡田元監督とご一緒する機会がありました。そのときに伺ったお話で印象的だったのが、「サッカー選手は目立とうとして真ん中のほうを走る選手はたくさんいるけど、長友選手みたいに外を走る選手はあまりいない。監督になって、外を走る選手を評価したらチームがすごく強くなった」というお話でした。

このように、黒子に徹して組織に貢献できるのは、実は日本企業の特徴であり、逆に欧米の企業はあまり得意ではないところです。欧米の企業は一人ひとりが目立っていて、目立っている個人が活躍するという形が多いのですが、日本の場合、ラグビーが典型的ですが「One for All、All for One」の動きができます。海外のチームが日本の組織づくりを学んで体系化しているという話もありますので、このような部分は日本の組織の大きな強みになっていると思います。

林:少し角度の違う質問で、「無言の退職について、どのようにお考えですか?」という質問もいただいています。無言の退職に頭を悩ませている経営者や管理職の方は多いのかなと思いますが、こちらに関してはいかがでしょうか。

岩本氏:先ほどお話しした「従業員エンゲージメントの4つのイネーブラー」の一つに「従業員の声」がありました。日常的に従業員の声を吸い上げる仕組みができていないと、無言の退職が起こりやすいのではないかと思います。日本企業の場合、忖度してなかなか本音を言わないという話もあるかもしれませんが、本音を捉えられなければエンゲージメントを高めることもできません。まずは、従業員の本当の声を吸い上げるにはどうすればいいのか?を考えてみることではないでしょうか。

林:従業員にメリットがないと、なかなか本音を引き出せないという話もありますが、一方で、従業員の本音を吸い上げてエンゲージメントを高めている会社もあります。この差を分かつものについて、岩本先生はどのようにお考えでしょうか。

岩本氏:サーベイなど「測る」ツールはたくさんありますが、測るだけでなく「改善する」ことが重要です。PDCAを回し、アクションをして、改善するところまで従業員に見えていないと、やはり本音で答える気にはなれないでしょう。

林:ありがとうございます。お時間になりましたので、最後に岩本先生からひと言頂戴して、終了とさせていただきます。岩本先生、お願いします。

岩本氏:「企業は人なり」とは昔から言われていることですが、その中身が曖昧な企業もあると思います。ですから、自社にとっての「企業は人なり」がどう在るべきか?ということを、ぜひ議論していただきたいなと思います。人的資本経営で重要なのは、どのような「企業は人なり」を求めていくかということなので、2023年はぜひそれを深く考え、しみじみと議論をしてみてください。

林:以上をもちまして、トークセッションは終了とさせていただきます。岩本先生、そして視聴者のみなさま、ありがとうございました。 

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