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【後編】メッセホールディングス 3年連続エンゲージメント日本一! “事業が組織に従う”経営の軌跡 ベストモチベーションカンパニーアワード2023(中堅・成長ベンチャー)レポート

「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(企業と従業員のエンゲージメントを表す指標)が高い企業を表彰するイベントです。

2023年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー企業部門」の2部門制で表彰をおこないました。「中堅・成長ベンチャー部門」受賞企業の中から、2社をゲストにお招きしてトークセッションを開催。株式会社メッセホールディングスから専務取締役の宮本茂氏と、KECグループから代表取締役の小椋義則氏にご登壇いただき、「モチベーションカンパニーづくりの秘訣」をテーマにお話しいただきました。

【イベント実施日】
2023年3月3日

【スピーカープロフィール】
・株式会社メッセホールディングス 専務取締役 宮本茂 氏
・KECグループ 代表取締役 小椋義則 氏

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション MCRカンパニー マネジャー 依光宏太

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組織が事業に従うのではなく、事業が組織に従う経営を

リンクアンドモチベーション依光:「モチベーションカンパニーづくりの秘訣」というテーマで、メッセホールディングスの宮本様にお話を伺ってまいります。

メッセホールディングス様は基幹事業であるパチンコ事業のほか、サウナやコワーキングなど居場所づくりをコンセプトにした事業を展開している企業様です。今回のベストモチベーションカンパニーアワードでは日本一3連覇ということで、殿堂入りを果たされました。そんなメッセ様の軌跡を伺っていきたいと思いますが、まず宮本様が入社された2004年当時の会社の状況から教えていただけますか。

メッセ 宮本氏:当時は、基幹事業であるパチンコ業の業況が良かったため、積極的に出店をしていました。売上も利益も上がり、新卒もどんどん採用するというイケイケな状況だったと思います。しかし、業界の規制が厳しくなったタイミングで大きく売上・利益が落ちました。当時はパナソニックさんがリストラをしていたのを参考に、我々もリストラが必要なのではないかと考え、「自立支援制度」という名の早期退職制度をおこないました。

このリストラによって、会社の雰囲気はかなりどんよりとしたものになりました。それまでは私も、「売上店数、成長!」というように攻めの姿勢で仕事をしていましたが、苦境に立たされたことで、「結局、この会社は何のために存在しているのか?」「自分は何のために働いているのか?」と、前が見えなくなってしまいました。両親である社長と副社長に悩みを伝え、3人で「これから会社をどうしていくか?」ということを考え、原点に立ち戻ったのがその時期だったと思います。

リンクアンドモチベーション依光:厳しい状況から抜け出すきっかけになったのは、どのようなことでしたか。

メッセ 宮本氏:いろんな本を読んだり、いろんな人に会ったり、しばらく模索する時期が続きましたが、そのなかで大きなターニングポイントになったのが、京セラの創業者である稲盛和夫先生との出会いです。たまたま先輩から薦められて『実学』という著書を読んだのがきっかけで、稲盛先生から勉強するようになりました。

私の両親がなぜこの会社を創業したのかと言えば、家族を養うためでした。「では今、我々は何のために経営しているのか?」と自問自答した結果、もちろん自分たち家族もそうですが、「会社に賛同して集まってくれた仲間のために経営しているんだ」ということに行き着いたんです。それが、稲盛先生がおっしゃっている京セラフィロソフィとも噛み合ったので、「これだ」と思いました。

稲盛先生はもともと、技術力で社会に貢献するために事業を始めましたが、やがて「事業と組織、どちらが大事なのか?」という問いに直面します。両方大事だけど、どちらかを優先するのであれば、組織であり、従業員であると考えて経営をされていました。欧米では、組織が事業に従うという考えが一般的ですが、我々は稲盛先生と同じように事業が組織に従う形で経営すべきだと考えました。

天才が集まっているような会社であれば、事業ありきで経営できるのだと思います。ですが、我々は自分たちが特別に強いとは思っていません。ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより力が強かったと言われますが、結局、生き残ったのは、自分たちの弱さを認め、組織になって群れることで力を得たホモ・サピエンスでした。我々も一緒で、強くないからこそ組織力で勝負していくのが個性だと考えて経営しています。

従業員を大切にするということは、いかに個性を引き出せるかということ

リンクアンドモチベーション依光:では、組織力を高めていくために大事にされているのはどのようなことでしょうか。

メッセ 宮本氏我々は、経営指針の一つとして「家族のように仲間を大切にする」ということを掲げています。この言葉だけを聞くと、むずがゆいと思われるかもしれませんが、きっかけになったのは私自身の子どもが生まれたことです。日々育児をしながら私が考えていたのは、「自分の娘ぐらい、従業員を大切にできているだろうか?」ということでした。「いや、大切にできていない」という反省が募っていき、「家族と同じくらい従業員を大切にしていこう」という思いに至りました。

「従業員を大切にする」ということを突き詰めていくと、みんなと同じことができるかどうかは重要ではなく、その人が持っている個性をいかに引き出し、引き上げていくかというところに行き着きます。子どもも同じですが、最近はみんなで同じことを同じようにやる教育ではありません。会社経営でも、よく「ダイバーシティ&インクルージョン」と言われますが、これは従業員の個性を大切にして、そのうえで連動させたり包摂したりしていこうという概念であると理解しています。

リンクアンドモチベーション依光:一人ひとりの個性を引き出すというお話でしたが、そのために具体的に取り組まれていることを教えてください。

メッセ 宮本氏様々な施策がありますが、いちばん効果が出ていると思っているのが、従業員の「パーソナルストーリー」を引き出していく研修です。

人はそれぞれ様々な体験をしており、その体験をもとにその人が成り立っていると言えます。ある書籍で読んだのですが、幼少期から20歳くらいまでの間に強烈な体験をすることによって抱いた大きな劣等感や大きな使命感が「ソース・オブ・エナジー」、つまりエネルギーの源泉になるという話があります。このようなパーソナルストーリーを抽出する研修を、幹部向けにおこなっています。

人にはなかなか言えないようなことを研修で言語化してもらうことで、その人のパーソナルストーリーを抽出していきます。抽出したものから、その人のWill (やりたいこと) を明確にしていって、それを会社のWillと連動させることで熱意を高めていくような研修です。

新卒に関しては、採用時からパーソナルストーリーを抽出するようにしており、弊社と合っているかどうかを見極めてもらったうえで入社してもらうようにしています。その結果、同じことを目指している人たちが集まってきます。しかも、表層的な共感ではなく、それぞれの個性の深いところで連動しているので、ちょっとやそっとで揺らぐことはありません。

パチンコの産業ブランドが向上し、従業員が自慢できる会社に

リンクアンドモチベーション依光:一人ひとりの従業員の個性を育むのは、やはり何かに向かって束なっていくためだと思いますが、メッセ様はどんなところに向かって束なってきた会社だったのでしょうか。

メッセ 宮本氏売上1,000億を目指していこうというとき、やはり採用が重要だということで、ある合同説明会に参加したことがあります。その合同説明会に参加していたのは、そうそうたる有名企業ばかりでした。そのなかで私はプレゼンをしたのですが、その後の座談会では、メッセのところに誰も来ないという惨めな思いをしました。

そのとき、「パチンコという産業ブランドを向上させていかなければいけない」という強い思いを新たにするとともに、「この事業だけでは、この先まずいかもしれない」という危機感を抱きました。それをきっかけに、多角化に舵を切ることになります。

多角化の方針を考えるとき、基幹事業であるパチンコ事業を因数分解してみたのですが、その結果が、「射幸心 × 居場所 × 日常の中の非日常」というものでした。この3つのどこにエッジを立てるのかと考えたとき、弊社は「居場所」の領域に強い従業員が集まっていると考え、「居場所」をもう一つの事業ドメインにしていこうと決めました。どうせやるなら世界一の居場所をつくっていこうと大きく掲げて、従業員を束ねていったという経緯があります。

この新しい事業ドメインを掲げた直後に新型コロナウイルスが流行し、テレワークやステイホームによる孤独感が社会問題になりました。そのような状況のなかで、「居場所は孤独を解消する場所である」と定義して大きく打ち出しました。

この取り組みによって、理念に共感してくれる優秀な人材がどんどん集まるようになりました。さらに、優秀な新人に既存の社員が刺激を受けるという好影響も生まれました。たとえば、本を1年に1冊も読まなかった従業員が週に1冊読むようになるなど、全体の基準の底上げにつながっていると思います。

リンクアンドモチベーション依光:パチンコという産業のブランドを向上させていこうというお話がありましたが、現状の手応えはいかがでしょうか。

メッセ 宮本氏メッセの拠点がある地域では、昔のパチンコのイメージは大きく変わっているのではないかと自負しています。業界全体で見たらまだまだですが、良くなっているのは間違いありません。従業員が、自分がどこで働いているのかを口にしにくい時代もありましたが、今、弊社の従業員は「僕、あそこで働いているんです」と自慢するようになっています。その点でも、だいぶ変わってきたことを実感しています。

縦・横・斜めのコミュニケーションを活性化させて組織を束ねる

リンクアンドモチベーション依光:組織を束ねていくうえではコミュニケーションが不可欠な要素になりますが、コミュニケーションに関しては、どのような取り組みをされていますか。

メッセ 宮本氏縦・横・斜め、この3つの方向を意識してコミュニケーションを促しています。まず、縦のコミュニケーションは「1on1」を徹底しています。私の場合、直下の10人くらいの幹部とは週に1回、第2階層の20人くらいの従業員とは月に1回、そして全社員と半年に1回、1on1をおこなっています。これを毎回、朝一番のフレッシュな状態でおこなうのが私のこだわりです。

横のコミュニケーションは、「山脈組織」を意識しています。一般的なピラミッド型の組織の場合、横にいる人はライバルの関係になると思います。一方、我々は他者との水平の比較ではなく、自身を垂直に見て、過去より未来をいかに良くしていくかというところにこだわっています。これを、我々は「山脈組織」と呼んでいるのですが、山脈組織を目指すうえでは、横にいる人はライバルではなく助け合う存在になります。ですから、横の関係でも綿密なコミュニケーションがおこなわれています。

斜めのコミュニケーションは、性別や階層、役割にかかわらず参加できる「部活」の制度によって促しています。最大規模の部活がバーベキュー部で約100人の部員がいるのですが、それ以外にも全部で10個以上の部活があります。その他、新規事業プロジェクトや委員会など、斜めのコミュニケーションが促される場所がたくさんあり、様々な従業員がごちゃ混ぜになることで多くの刺激が生まれています。

このように縦・横・斜めのコミュニケーションを活性化させることで、何かあったときにみんなが迅速に動ける組織をつくっています。

リンクアンドモチベーション依光:宮本様が、メッセホールディングスの経営者で良かったなと思うのはどんなときでしょうか。

メッセ 宮本氏仕事と言うと、「嫌なことをする対価としてお金をもらう」というような雰囲気が過去にはあったと思います。ですが、私自身そのような感覚は皆無であり、正直、仕事を愛しています。ですから、私個人は毎日仕事をするのがすごく楽しいですし、幸せを感じています。

会社全体で見ても、みんな楽しそうに働いていて、お客様やパートナー企業様からも「メッセの子ってみんなキラキラしていますよね」と言われることが多々あります。これは、私にとってすごく嬉しいことです。今はエンゲージメントスコアも上がっていて、事業としての売上も伸びていてすごく良い状態なので、これを続けていきたいと思っています。

エンゲージメントスコアは、その組織の愛情の大きさを示す指標

リンクアンドモチベーション依光:弊社のモチベーションクラウドをご活用いただいていますが、宮本様にとってエンゲージメントサーベイとはどのようなものでしょうか。

メッセ 宮本氏経営を「事業」と「組織」に分けたとき、事業の指標にすべきはお客様からの「ありがとう」であり、それが売上につながっていきます。一方、組織の指標にすべきはエンゲージメントスコアだと考えています。

もう少し情緒的に言うなら、エンゲージメントスコアは、その組織の愛情の大きさを示す指標です。従業員をどれだけ大切に思っているかという「愛情の指標」だと言えるのではないでしょうか。

リンクアンドモチベーション依光:最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか。

メッセ 宮本氏抽象的な話になりますが、私は「明るく前向きな日本へ」ということを従業員と共有しています。稲盛和夫先生の師匠に中村天風さんという哲学者の方がいらっしゃいます。その方は、人生いろいろあるけど、結局は明るく前向きであることが大切だというシンプルな教えを説いており、我々もその教えを重視しています。

人口減少もそうですし、たとえばパチンコという産業に対するイメージもそうですが、一見すると良くないものはあります。しかし、明るく前向きに自分たちの良さを捉えていけば、成果を出していくことはできます。そのような姿を我々が体現することで、どんよりとした今の日本に、明るく前向きなものを示していけたらいいなと思っています。

リンクアンドモチベーション依光:以上をもちまして、本日のトークセッションは終了とさせていただきます。宮本様、本日はありがとうございました。

メッセ 宮本氏ありがとうございました。

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