【前編】三菱重工業株式会社 コミュニケーションの強化により、組織風土改革が事業成果に直結 モチベーションチームアワード2023レポート

「モチベーションチームアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、組織変革に向けた取り組みによってエンゲージメントスコア(社員の会社に対する共感度合いを表す指数)が上昇した「部署」を表彰するイベントです。

2023年度、モチベーションチームアワード受賞企業のなかからゲストをお招きしてトークセッションを開催しました。今回は、「エンゲージメントを高めるためのコミュニケーションのあり方とは 」をテーマに、三菱重工業株式会社様に登壇いただいたトークセッションの模様をお届けします。

【イベント実施日】
2023年3月3日

【スピーカープロフィール】

・三菱重工業株式会社 787主翼工作部 主翼艤装課 課長 宮原裕介氏
・三菱重工業株式会社 787主翼工作部 主翼艤装課 作業長 中原信之氏

【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション MSCカンパニー カンパニー長 植竹達郎

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コロナ禍で事業が低迷するなか従業員のモチベーションも下がっていた

リンクアンドモチベーション 植竹:本日は三菱重工業株式会社、787主翼工作部 主翼艤装課 課長の宮原裕介様、および同課 作業長の中原信之様にご登壇いただき、「エンゲージメントを高めるためのコミュニケーションのあり方とは」というテーマでトークセッションをおこなってまいります。
まずは、三菱重工様の会社のご紹介、および部署のご紹介をいただければと思います。

三菱重工 宮原氏三菱重工業株式会社はエネルギー、航空機、宇宙など、社会インフラ基盤を支えるものを製造している会社です。弊社は、アメリカのボーイングという航空機メーカーに構造部材を出荷しているのですが、そのなかでも「翼」の部分を作ってボーイング社に届けているのが我々の部署です。

製造業にも様々な形態がありますが、我々は航空機というかなり大きなものを、かなり複雑な工程で、かなり多くの部品を使って作っているという特性があります。それゆえ、一人ひとりの作業というより、チームが一体感を持って作業に取り組むことが求められる製造現場だと言えます。

リンクアンドモチベーション 植竹: お二方の部署では弊社のエンゲージメントサーベイ「モチベーションクラウド」をご利用いただいておりますが、エンゲージメントスコアが45.6という低い状態から、約1年で62.0という高水準まで向上されていらっしゃいます。

まず、エンゲージメントが低かったときを振り返っていただきたいのですが、当時は事業面、組織面においてどのような課題があったのでしょうか?

三菱重工 宮原氏最近は落ち着いてきましたが、新型コロナウイルスの影響は非常に大きかったです。ここ数年は飛行機の運航が減り、新しい航空機の製造も需要が少なくなるなど、航空機産業が全体的に冷え込んでいました。新規受注が減少するなか、操業を一時停止して生産調整をおこなうなど、これまでになかったような苦しい事業環境が続いていました。

三菱重工 中原氏:このように先行きが不透明な状況のなか、組織面でも従業員のモチベーションは大きく低下していました。組織の弱みに対して「自分には非がない」と考えるなど、受け身の状態になっている従業員が多かったと思います。また、事業環境の変化にともない一人ひとりの役割も変わってきましたが、その変化に対応できない従業員も少なくありませんでした。

エンゲージメント向上施策①上司との1on1の強化

リンクアンドモチベーション 植竹:エンゲージメントを向上させるために、どのような取り組みをおこなったのでしょうか?

三菱重工 中原氏:大きく3つの取り組みをおこないました。1つ目が、「上司との1on1の強化」です。
 
モチベーションクラウドのサーベイの結果を見て、まずチームでミーティングをおこないました。そのときに出てきたのが、「仕事中になかなか上司と会話できない・・・」「自分の強みや特性を理解してくれているのだろうか・・・」といった不満の声でした。これはサーベイのデータとしても明らかになっていたことでしたから、上司との1on1ミーティングを導入することにしました。

リンクアンドモチベーション 植竹:1on1ミーティングを導入する企業は増えていますが、特に製造業の場合、1on1の時間を確保するのも大変だというお話をよく耳にします。時間を確保するために工夫したポイントなどはありましたか?

三菱重工 中原氏:チームに管理職が二人いるのですが、そのうちの一人がメンバーと入れ替わって作業に入ることで時間を確保したり、他のメンバーが少し時間外に作業することで時間を確保したりと、みんなの協力のもとで1on1の時間を捻出していきました。

三菱重工 宮原氏もし、一部の管理職だけがサーベイの結果を見て改善施策を考えたとすると、たとえその施策が的確なものでも、メンバーからすると「やらされ感」が生まれてしまうと思います。ですから、サーベイの結果は管理職だけでなくメンバーにも共有して、みんなで集まって「今の状態を改善するにはどうしたらいいだろうか?」といった議論をしました。
 
その結果、メンバーの声として「上司との1on1」のニーズが上がってきたので、多少は負担が増えてもみんなで協力してやっていこうという空気が生まれたのだと思っています。

リンクアンドモチベーション 植竹:1on1の場では、どのようなことに気を付けていましたか?

三菱重工 中原氏:前提として、部下の話を聞くことを心がけていました。部下自身が考える自分の強みを聞いていくのと同時に、私から見た部下の強みも伝えていきます。ただ、良いところばかりでなく、「今後成長していくために、もっとこうしたほうが良いのではないか」という点も積極的に伝えるようにしていました。
 
もう一つが目標設定です。サーベイでも目標設定に関する不満が多かったので、1on1では部下と一緒に半年~1年の短期目標を設定していきました。

リンクアンドモチベーション 植竹:1on1のために普段から心がけていたことはありますか?

三菱重工 中原氏:普段から部下をよく見ることを心がけていましたが、すべてに目を配るのは難しいこともあります。そのため、リーダー層に「部下に関する良いニュースがあったら教えてほしい」と伝えていました。そうするとリーダーがフィードバックしてくれるので、自分が直接見えていない部分も認識できていたかとは思います。

リンクアンドモチベーション 植竹:1on1で把握した情報は、仕事のアサインや部下のキャリア形成に活かしていくのでしょうか?

三菱重工 中原氏:はい、そうですね。次のステップに進むためにはどのようなスキルや経験が必要になるだろうかと考えて、それぞれの部下に必要だと思う仕事を割り振るようにしていました。


エンゲージメント向上施策②メンバー間でのミーティング、メンバー同士での1on1

三菱重工 中原氏:2つ目の取り組みが、「メンバー間でのミーティング」「メンバー同士での1on1」です。日々、作業をしているなかでメンバー同士もそれほど話ができていない状況がありました。「仕事の相手がどう思っているのか分からない・・・」「なかなか意思疎通が図れない・・・」といった背景から、あるメンバーが自発的にチームでミーティングをしたいという話を出してくれました。同じような問題意識を持ったメンバーも多かったので、メンバー間でのミーティングを設けることにしました。
 
文字どおり、メンバー間でのミーティングなので、私たち管理側は入りません。あくまでも、メンバー同士で普段思っていることを共有し合う場です。

三菱重工 宮原氏メンバー間でのミーティングは班のメンバー全員が一斉に仕事から抜けることになるので、気軽におこなうことはできません。ですから、向こう1ヶ月くらいのスケジュールを見て、「ここなら」というタイミングを決め、その前後の仕事を調整することで時間をつくっていきました。
 
とはいえ、サーベイの結果をみんなで共有したうえで、みんなで問題について話し合いをしたいねという流れで始まったミーティングなので、メンバーは非常にモチベーションが高く、協力姿勢があります。その点も、うまくいっているポイントの一つかなと思っています。

リンクアンドモチベーション 植竹:「メンバー同士での1on1」はどのような取り組みなのでしょうか?

三菱重工 中原氏:上司との1on1ミーティングで目標設定をすると申し上げましたが、自分一人で目標を達成するのは難しいケースも多々あります。そこで、それぞれの目標をメンバー同士が共有し、それぞれのメンバーの目標達成に向けて周りが協力し合えるきっかけとなるよう、メンバー同士の1on1を設けています。

三菱重工 宮原氏目標の共有だけでなく、お互いの「人となり」を理解する場としても機能しています。たとえば、出身や家族構成、休日の過ごし方なども話しますし、日々の仕事のやり方や考え方、「後輩の育成が心配で・・・」「会社の財務状態ってどうなの?」といった話もしているようです。
 
メンバー同士の1on1で相互理解が深まることで、ふとしたときに「そういえば、彼はこういう目標を掲げていたよな」とか、「あの人は、こういうことに興味があったよな」というように、仕事上での協力や新たな情報共有につながっていきます。人となりも含めてオープンにすることで、メンバー同士の関係性が良くなり、仕事がうまく回るようになったのを実感しています。 

エンゲージメント向上施策③情報のオープン化

三菱重工 中原氏:3つ目の取り組みが「情報のオープン化」です。この取り組みも、サーベイの結果で「会社の情報が分からない・・・」という不満が多かったことからスタートしています。私自身、「この情報は必要ないだろう」などとフィルターをかけ、上から下りてきた情報を部下に全部共有していませんでした。このような部分も、サーベイの結果としてしっかり現れてきたと思っています。

三菱重工 宮原氏部下に、どこまでの情報を共有していいものなのか迷うこともありました。ですが、サーベイの結果を見て、組織としてみんなで同じ方向に向かっていくためには、みんなが同じ情報を持つべきだと考えるようになりました。ですから今は、共有すべきかどうか悩むくらいなら共有しようという方針で、情報をオープンにしています。

リンクアンドモチベーション 植竹:情報のオープン化によって、現場にどのような変化が生まれましたか?

三菱重工 中原氏:共有した情報を基に、メンバー同士で話をするシーンが増えています。今までは知り得なかった情報が入るようになったので、たとえば「今は経営状態がこうだから」といった現場より高い視点での話も聞かれるようになりました。メンバーから、「あの話は今後、どうなるんですか?」などと話しかけられることも増えましたね。

エンゲージメント向上により不具合の50%削減につながった

リンクアンドモチベーション 植竹:ここまでお話を伺った3つの取り組みの結果、組織面でどのような変化がありましたか?

三菱重工 中原氏:以前に比べ、コミュニケーションが活発におこなわれるようになりました。チーム内でメンバー同士の理解が深まったので、以前のように「言いたいことがあるけど言いにくい」というような雰囲気がなくなり、気軽に話をしたり情報共有できる雰囲気になっています。目標に対する動き方も変わってきており、取り組みを始める前と比べたら、明らかにメンバーの意欲やモチベーションが高まっているのを感じます。



リンクアンドモチベーション 植竹:スライドにもあるように、エンゲージメントスコアにおいても取り組みの成果が出ています。組織が変わったことで、事業面、業務面ではどのような変化がありましたか?

三菱重工 中原氏:我々は不具合のことを「スコーク」と呼んでおり、スコークの削減を部署として重要な課題と位置付けています。とは言うものの、以前は何となく「スコークを減らしていこうね」という話をするだけでした。
 
しかし、メンバーのなかから改善責任者をアサインして、各自に役割を持たせることでメンバーが自分ごととして捉えるようになり、スコーク削減に向けたアクションが一気に加速しました。メンバーからどんどん提案が出てくるようになり、結果的に約50%のスコーク削減につながっています。

リンクアンドモチベーション 植竹:最後に、今回の取り組みを総括して視聴者のみなさまにメッセージをお願いします。

三菱重工 中原氏:今回の取り組みをスタートする前は、職場のなかに「言いたいことがあるけど言えない」「これを言ったらこう思われそうだから、言うのをやめておこう」といった雰囲気がありました。ですが、上司との1on1やメンバー同士の1on1などを通して、個々のメンバーが相手の思いや考えを理解できるようになりました。
 
その結果、仕事中はもちろん、たとえば休憩中にも活発なコミュニケーションがおこなわれるようになり、それが仕事上の問題解決につながるなど、好循環が生まれています。今後も引き続き、組織変革活動に注力して、現場をさらに活性化させていきたいと思います。

三菱重工 宮原氏私は、事業を良くするためには組織を良くしていく必要があると思っています。「組織風土をどのように変革すべきか?」、あるいは「エンゲージメントをどのように高めるべきか?」ということにずっと悩んでいましたが、モチベーションクラウドは私の悩みを解消する手立てになりました。サーベイによって組織状態が見える化され、どこに施策を打てば組織に響くのかが分かったので、非常に効果的な活動につながっています。
 
「エンゲージメントが高くなって、何か良いことあるの?」と言われることもありましたが、今回の取り組みを実施したメンバーは事業面でもしっかりとアウトプットを出してくれ、エンゲージメントを高めた結果、事業でも成果が出たという事例を作ってくれました。このグッドサンプルを社内に広めていくことで、もっと多くの組織が良くなって、事業が伸びていけばいいなと思っています。
 
一人ひとりが主体的に働ける組織こそが、目まぐるしい変化が起きている今の世の中で通用する組織だと考えていますので、そのような組織を増やしていきたいなと思います。

リンクアンドモチベーション 植竹:以上をもちまして、三菱重工様とのトークセッションは終了とさせていただきます。宮原様、中原様、本日はありがとうございました。

三菱重工 宮原氏ありがとうございました。

三菱重工 中原氏:​​​​​​​ありがとうございました。

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