株式会社プログリット 環境変化を乗り越え上場実現!秘訣は管理職の行動変革 ベストモチベーションカンパニーアワード2024(中堅・成長ベンチャー)レポート
「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(従業員エンゲージメントの指標)が高い企業を表彰するイベントです。
2024年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー企業部門」の2部門制で表彰をおこないました。「中堅・成長ベンチャー企業部門」受賞企業の中から、2社をゲストにお招きしてトークセッションを開催。株式会社プログリットからは取締役副社長の山碕峻太郎氏にご登壇いただき、「環境変化を乗り越え、上場へ 管理職の行動変革の秘訣」をテーマにお話しいただきました。
【イベント実施日】
2024年3月22日
【スピーカープロフィール】
・株式会社プログリット 取締役副社長 山碕 峻太郎 氏
【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント 甲州 優太
▼ エンゲージメントを可視化し、組織改善を行うサービス【モチベーションクラウド】はこちら
取り組み当初から、高いエンゲージメントスコアで推移
リンクアンドモチベーション 甲州: まずは、御社についてご紹介いただけますか。
プログリット 山碕氏:当社は2016年に創業し、現在は英語コーチングサービス「プログリット」が事業の主軸です。加えて、サブスク型の英語学習サービスとして、リスニング力向上に特化した「シャドテン」、スピーキング力向上に特化した「スピフル」も提供しています。従業員数は約200名で、2022年に上場しました。
当社のミッションは「世界で自由に活躍できる人を増やす」ことで、この理念のもと会社を起業し、現在も経営を続けています。一人ひとりの可能性やポテンシャルを最大限に引き出すことで、誰もがどこでも活躍できると信じています。
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。ここで、エンゲージメントスコアの推移について簡単にご紹介します。2017年、従業員数が20名程度の時からご利用いただいており、エンゲージメント・レーティング(※)AA以上を取り続けている点は非常に驚きです。2020年のAAAの状態と、現在のAAAの状態とでは、組織の違いを感じていらっしゃいますか。
※エンゲージメントの状態をDD〜AAAの11段階で評価した指標
プログリット 山碕氏:大きく違います。コロナ前の組織のAAAと今の組織のAAAは全く異なるものです。率直に言うと、コロナ前の組織のAAAは「和気あいあい」とした雰囲気で、少し仲良しサークルのような側面があったかもしれません。しかし、現在は成果にコミットする戦う集団になっており、組織としての強さが大きく向上していると感じています。
業績不振に伴う経営と現場のすれ違い
リンクアンドモチベーション 甲州:では、ここからは具体的な取り組みについて伺いたいと思います。まず一つ目の質問です。コロナ禍で組織状態が徐々に悪化していますが、どのような状況でしたか。
プログリット 山碕氏:まず、コロナの影響で業績が大きく下がり、非常に苦しい状況でした。当社の英語コーチングサービスは、お客様に3ヶ月間コミットしていただき、短期集中で英語力を上げるというものですが、コロナ禍で海外駐在や出張のニーズが急減し、かなり厳しい業績になっていました。
業績回復のために様々な施策を実行していましたが、成果に繋がらず、施策を多く実行することで組織が疲弊する悪循環に陥りました。このため、エンゲージメントスコアも低下していきました。
リンクアンドモチベーション 甲州:当時の現場の雰囲気や社内の様子について、覚えていることはありますか。
プログリット 山碕氏:創業から毎月全社ミーティングを行っていますが、当時は全部署が「未達です」と報告していたため、全社ミーティング自体が暗い雰囲気になっていました。「経営は数字だけ見て現場のことを分かっていない」「メンバーのことを考えていない」という声も出てきて、経営陣としては会社の存続のために全力で取り組んでいたものの、経営と現場との間ですれ違いが生じていました。
コミュニケーションの中核を担うマネージャーの変革に着手
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。そのような厳しい局面から、どのような取り組みを行ったのかについて伺いたいと思います。
プログリット 山碕氏:コロナに入ってから色々な施策を試みましたが、なかなかうまくいきませんでした。その時に、「この期間は、提供価値とサービスを磨ききる期間にしよう」と決めたんです。
コロナ禍が明ける時が必ず来ると信じていましたし、その後に英語が必要になることは間違いないと思っていました。この期間に私たちが強くなることで、コロナ後に飛躍的な成長ができると信じ、そう決めて行動しました。
当社が提供している英語コーチングサービスは、一人一人のお客様に対して専任のコンサルタントがつき、英語学習を徹底的に伴走します。ここで重要なのは、コンサルタントがどれだけ本気でお客様に向き合えるかという熱量、コンサルタントのスキル、そしてテクノロジーの融合です。この3つを徹底的に磨くことに集中しました。
リンクアンドモチベーション 甲州:なるほど。そんな中で「経営陣を信頼し、経営の視点で考えられるマネージャーへの変革」をテーマに掲げていましたね。マネージャーの変革に着手しようと考えた理由を教えてください。
プログリット 山碕氏:マネージャーは現場と経営陣の橋渡し役として重要な存在です。彼らが経営の視点を持ち、現場の声を正確に反映できるようになることで、組織全体のエンゲージメントを高めることができると考えました。マネージャーが経営陣を信頼し、自分たちの役割を理解することで、組織全体が一丸となって目標に向かって進むことができるようになると思ったんです。
プログリット 山碕氏:組織の課題は様々ありますが、それらは私たち経営陣が思っていることが、適切にメンバーに伝わっていないことに原因があると考えました。伝言ゲームのようになっているため、中間地点を担うマネージャーの言葉次第で、メンバーの解釈が変わるんです。これがマネージャーの変革に着手したきっかけです。
加えて、私たちの思いや考え方が伝わっていないだけでなく、メンバーの意見も適切に収集できていないのではないかと感じました。これにより、マネージャーの存在が一層重要になりました。
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。現場の声が経営陣に届かないのは、どんなところで感じていましたか。
プログリット 山碕氏:本当に些細なことからですが、メンバーの悩みや、逆にポジティブな感想もなかなか伝わってこなかったんです。すぐに解決できることも、マネージャーの考えで取捨選択されているかもしれないなと感じていました。
組織変革を実現した3つの取り組み
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。その状況をどのように変えていったのかをお伺いしたいです。取り組みは、「階層を減らす」「経営の情報を圧倒的な量で共有する」「マネージャー向け研修」の大きく3つあるとのことですが、なぜその3つを選んだのでしょうか。
プログリット 山碕氏:今振り返ると、きれいに3つにまとまっていますが、実際は色々と試行錯誤した結果、大事な点がこの3つだったと感じています。
1つ目は、「階層を1つ減らす」ということです。以前は、プログリット事業には事業責任者、統括マネージャー、マネージャー、メンバーという階層がありました。
この統括マネージャーのポジションを廃止し、事業責任者とマネージャーが直接やり取りできるようにしました。加えて、副社長である私が直接事業責任者を兼任しました。今の私たちの組織規模や体制を考えると、階層が少ない方が、情報が適切に伝わると考えたからです。
2つ目は「経営の情報を圧倒的な量で共有する」ことです。これは、経営陣とマネージャーの情報量の差を解消するための取り組みです。当時、マネージャーにもっと当事者意識を持ってもらい、会社としての意思決定を、背景を理解した上で自分の言葉でメンバーに伝えてほしいと考えていました。
しかし、経営陣との情報量格差が大きいと、それは難しいと実感しました。そこで、経営の情報をできるだけ多く共有することにしたんです。意思決定の結果だけでなく、その背景や議論の過程も含めて全て共有することを決めました。
具体的には、週に一回の経営会議の後に必ずマネージャー陣を集めてその内容を共有する時間を設けています。また、月に一回全拠点のマネージャーを集め、丸一日時間を確保して、情報共有やディスカッションを行う場を設けています。会社としての今後の計画も基本的には全て共有しています。
これにより、マネージャー陣やメンバーが経営陣と同じ内容を話せるようになることを目指しています。回数を重ねるごとに、説明を聞いている時の表情や質問の質がどんどん変わっていきました。
3つ目はマネージャー研修です。代表の岡田が月に一回、「岡田塾」という名前の研修を行なっており、マネージャー陣からの質疑応答の機会も設けています。
また、ストレングスファインダー研修や1on1の勉強会、チームビルディング研修など、様々な研修を3ヶ月に一回実施しています。
圧倒的なコミュニケーションの量と質で「本気」を伝播
リンクアンドモチベーション 甲州:すごいですね。取り組みを行う中で意識しているポイントはありますか。
プログリット 山碕氏:そうですね。「学ぶ、真似る、徹底する」ということです。私たちが行ったことは新しい観点やイノベーティブな施策ではなく、基本的なことです。例えば、メンバーと1on1を行う、情報共有を徹底するなど、当たり前のことを徹底的に行うことがポイントです。
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。加えて、経営陣が「何をするかではなく、どう向き合っているか」、というポイントがあったとのことですが、ご説明をお願いします。
プログリット 山碕氏:簡単に言えば、「徹底する」ということだと思います。経営陣や人事が本気で組織を良くしようとしているのか、施策をやること自体が目的になっていないかを、メンバーは見ています。結局のところ、いかに本気であるか、徹底できるか、という姿勢が重要であり、メンバーもそれを見ています。
本気の姿勢が伝わるためには、まず一つ目にどれだけ時間をかけているかが重要です。経営陣や人事が組織を良くしようとどれだけの時間を費やしているか、どれだけの労力を注いでいるかが大事だと思います。
二つ目に、一対一のコミュニケーションにどれだけこだわっているかも重要だと思います。15分や30分の面談の際に、どんな姿勢でその人の話を聞いているか、どのようなコミュニケーションを取っているか、ということです。
リンクアンドモチベーション 甲州:メンバーとのコミュニケーションを意図的に増やしていたのですか。
プログリット 山碕氏:そうですね。プログリット事業部を担当するタイミングで、事業部のメンバー約100名と1on1を実施しました。また、毎月の全社ミーティングの後には各拠点別に質疑応答の時間を設け、分からないことを解消する場を作っています。
さらに、他部署1on1も行っています。これは、経営陣やマネージャー陣が他の部署のメンバーと1on1を行うもので、そこで様々な話をしています。
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。次のポイントは、「期待し、信じて、待つ」とのことですが、これに込めた思いについて教えてください。
プログリット 山碕氏:大切なのは、メンバーが組織を良くしたいと思うようになったら、その状態を阻害しないことです。せっかく良くなってきたり、芽が出てきたりした時に、トップダウンで決定を行うと、メンバーを信じていないと思わせてしまいます。組織が良くなってきたら、マネージャー陣に任せて、待つことが大切です。
リンクアンドモチベーション 甲州:ありがとうございます。では、実際にどのような変化が起きたのでしょうか。
プログリット 山碕氏:まず、マネージャー陣のメンバーに対するコミュニケーションの内容が変わりました。以前はメンバーからの質問に対して適切な返答ができていないことが多かったのですが、現在は経営陣の意思決定にメンバーが疑問を持った際に、マネージャー陣がその意図や背景を説明できるようになりました。
また、マネージャー陣が、全体最適で意思決定できるようになりました。例えば、創業から7年半、一人当たりのコンサルタントが担当できるお客様数を変えていませんでしたが、昨年9月にマネージャー陣から「今の状態なら変えられる、増やせる」という意思決定がなされました。その後、それに伴って必要な業務改善も推進されています。
さらに嬉しかったのは、自分の後任としてプログリット事業の責任者をマネージャーから登用できたことです。これは、マネージャー陣が経営視点を持ち、高い視座で事業運営に取り組んでくれた結果です。
会社を磨き、日本を元気にする
リンクアンドモチベーション 甲州:今後の展望や皆様へのメッセージをお願いします。
プログリット 山碕氏:「磨き続ける」という精神を持ち続けたいと思います。組織は生き物であり、常に磨き続けなければ、反抗期が来たり、成長が止まったりすることがあります。重要なのは、自分自身がこの組織に対してコミットし、磨き続ける姿勢で施策を続けることだと思っています。
私たちも完璧ではなく、日々悪戦苦闘しています。しかし、組織が成長するには、そんな中で努力し続けることが最も大事だと思います。経営者や人事の皆さん、ぜひ一緒に本気で組織に向き合い、会社や日本を元気にしていきましょう。
▼ エンゲージメントを可視化し、組織改善を行うサービス【モチベーションクラウド】はこちら