株式会社山陰合同銀行 ビジネスモデル変革に挑む、全社一丸のエンゲージメント改善 ベストモチベーションカンパニーアワード2024(大手)レポート
「ベストモチベーションカンパニーアワード」は、リンクアンドモチベーションが毎年開催している、エンゲージメントスコア(従業員エンゲージメントの指標)が高い企業を表彰するイベントです。
2024年度も「大手企業部門」「中堅・成長ベンチャー企業部門」の2部門制で表彰をおこないました。「大手企業部門」受賞企業の中から、2社をゲストにお招きしてトークセッションを開催。株式会社山陰合同銀行からは人事部長の三島淳氏と人事グループ長の石倉英治氏にご登壇いただき、「ビジネスモデル変革に挑む全社一丸のエンゲージメント改善」をテーマにお話しいただきました。
【イベント実施日】
2024年3月22日
【スピーカープロフィール】
・株式会社山陰合同銀行 人事部 人事部長 三島 淳 氏(現 執行役員 石見営業本部長)
・株式会社山陰合同銀行 人事部 人事グループ長 石倉 英治 氏(現 倉敷支店長)
【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント 花岡 健太
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エンゲージメントサーベイの活用で堅調な組織変革を実現
リンクアンドモチベーション 花岡:では早速、山陰合同銀行の概要について、三島様からお話いただけますか。
山陰合同銀行 三島氏:弊行は1878年に創業し、1941年に設立されました。本店は島根県松江市にあり、従業員数は約2700名の地方銀行です。山陰地方で高いシェアを持ち、関西、岡山、広島を中心に広域な店舗ネットワークを展開しています。2024年3月末の貸出金残高は約4.7兆円で、そのうち約4割が地元山陰地方、残りの約6割が山陰地方外となっています。
リンクアンドモチベーション 花岡:直近では、「人的資本経営品質2023」の受賞や「人的資本コンソーシアム」の好事例集に取り上げられたことでも話題になりました。
山陰合同銀行 三島氏:ありがとうございます。ここで弊行のエンゲージメントサーベイの結果概要をご説明いたします。エンゲージメント・レーティング(※)で表現した場合、初回の2023年2月はBBBでしたが、2回目の2023年8月にはAAに大きく改善しました。A〜AAAの部署、言い換えれば行員同士の信頼関係が良好な部署の割合は、46%から67%に増加しました。
※エンゲージメントの状態をDD〜AAAの11段階で評価した指標
リンクアンドモチベーション 花岡:これは本当に素晴らしい成果ですね。半年間で全体の半数以上がA〜AAAに達し、最近ではDD〜DDDの組織がほぼなくなったことも非常に喜ばしいです。
本日は、エンゲージメントの高い組織が増えた理由を詳しくお聞きしたいと思います。まず、エンゲージメント向上に取り組んだきっかけをお伺いできますか。
山陰合同銀行 三島氏:まず、弊行が目指す姿からご説明いたします。私たちの経営理念は「地域の夢、お客様の夢をかなえる創造的なベストバンク」であり、長期ビジョンとして「No.1の課題解決力で持続的に成長する広域地方銀行」を掲げています。この実現に向け、コンサルティングとデジタルを両輪としたビジネスモデルへの変革を通じて、持続的な成長を目指しています。
これらの経営理念や長期ビジョンを実現するために、昨年7月に新たな人材戦略を策定し、「経営戦略と連動する人材育成方針と社内環境整備方針」を定めました。社内環境整備方針の一つの柱として、高いエンゲージメントの実現を掲げ、取り組みを強化しています。
構造改革や人事制度の改定により、従業員一人ひとりの就業環境や役割は大きく変化しています。その中で、各種施策の効果を高め、従業員がしっかりと能力を発揮できるようにするためには、全行一丸となってエンゲージメント向上に取り組むことが必要だと考えました。
全社一丸となったエンゲージメント向上
リンクアンドモチベーション 花岡:それでは、エンゲージメント向上のための具体的な取り組みについて教えてください。
山陰合同銀行 三島氏:当行は「選択と集中」と「対話」の二つを重視しています。まず、「選択と集中」についてご説明します。サーベイ結果から、上司の部下への関与度とエンゲージメントスコアに相関関係があることが分かりました。そのため、マネジメント研修を強化し、部下に対するマネジメント力を上げる取り組みを行いました。また、相対的に55歳以上や女性行員のエンゲージメントが低いことが判明したため、そうした層に対して重点的に施策を実施しました。
次に、「対話」についてです。役員が直接従業員に経営理念や思いを伝え、従業員も直接意見や考えを役員に伝える機会を設けています。特に、頭取と従業員が直接意見交換する場として、頭取との意見交換会を定期的に開催しています。従業員からは、「忌憚のない意見を交わしながら情報交換ができる」と好評です。
また、経営理念の共有を目的として、創立記念日に全従業員が経営理念について議論する機会を設けています。さらに、従業員向けの決算説明会や役員と従業員の意見交換会を年に2回実施しています。これらの取り組みは、役員と従業員の双方向のコミュニケーションを活性化させ、組織の一体感を醸成しています。
リンクアンドモチベーション 花岡:役員と従業員の双方向のコミュニケーションは、多くの企業で取り組まれています。貴行では特に若手行員が積極的に提案していると伺っていますが、いかがですか。
山陰合同銀行 三島氏:はい、当行には「ジュニアボード」という企画があり、若手有志がさまざまな企画を考え、それを経営に提言しています。ジュニアボードからの提案の一つに、エンゲージメント向上のための施策がありました。その一つが、社内コミュニケーションを活性化するためのツールの導入です。このツールは社内限定のSNSのようなもので、導入した結果、縦横斜めの関係を強化することができました。
丁寧な発信とメリハリをつけた改善活動
リンクアンドモチベーション 花岡:エンゲージメント向上の取り組みとして、管理職から始めることは一般的ですが、若手行員も積極的に取り組んでいるのは素晴らしいですね。施策を実施する上で工夫したポイントがあれば教えてください。
山陰合同銀行 三島氏:はい、3点ご紹介します。まず1点目は、全社一丸となって取り組む風土の醸成です。全店長会議や役員による社内向けの説明会で、役員や人事部長からエンゲージメント向上の主旨・目的を繰り返し説明しました。また、サーベイ結果は従業員向けのニュースやIR資料で積極的に開示し、役員会議や取締役会議でも報告しています。
2点目は、モチベーションクラウドの運用方法の周知徹底です。新しい取り組みに対する負担感を軽減するため、所属長向けの研修、独自のマニュアル、フロー表などを作成しました。その結果、全部署がアクションプランを策定し、改善に取り組むようになりました。
3点目は、結果に応じたメリハリのある改善活動です。スコアが高い部署は自発的に改善に取り組み、スコアが低い部署は人事部が訪問し、重点的にフォローを行いました。
リンクアンドモチベーション 花岡:ありがとうございます。山陰合同銀行様を担当させていただいて驚いたのは、管理職の結果閲覧サイトへのログイン率やアクションプランの策定率が100%だったことです。また、臨店(※)活動も非常に効果的ですが、実行のポイントについて教えていただけますか。
※臨店:店舗を訪問すること
山陰合同銀行 石倉氏:臨店の必要性が認められる場合、積極的に訪問し、所属長との面談を行いました。また、可能であればその部下とも面談を重ね、所属長に伝えたいことを私たちが汲み取り、それを所属長に伝えました。こうした活動を繰り返したことが効果につながったと思います。
「エンゲージメント」に対する全行員の意識醸成とキーワード化
リンクアンドモチベーション 花岡:所属長だけでなく、周囲も巻き込むことが重要ですね。それでは、3つ目の質問として、実際にどのような変化や成果があったか教えていただけますか。
山陰合同銀行 三島氏:はい、大きな変化がありました。当初は「エンゲージメント」という言葉や考え方が社内に浸透していませんでしたが、今では支店長同士がエンゲージメントについて議論するようになりました。さらに、他の部署も施策を立案する際に従業員のエンゲージメント向上を考慮するようになっています。このように、「エンゲージメント向上」は社内でキーワード化しています。
時代を捉えた今後の展望
リンクアンドモチベーション 花岡:それでは、最後に今後の展望について教えていただけますか。
山陰合同銀行 三島氏:はい。今年の4月から新しい中期経営計画がスタートしています。この計画の柱の一つは、人材が最も重要な資産であるという考え方です。個々の能力を最大限に発揮できるウェルビーイングな職場環境を実現することを目指しています。そのためには、高いエンゲージメントの実現が不可欠です。主要な目標として、エンゲージメント・レーティングをAA以上に設定しました。
リンクアンドモチベーション 花岡:従業員規模を考えると、とても高い目標ですね。さらに、女性管理職の割合を25%以上にすることや、地方銀行業界で初めて女性の代表取締役が就任するなど、注目すべきニュースが続いています。このような大胆な施策を実行する秘訣は何でしょうか。
山陰合同銀行 三島氏:これからの時代、多様性を取り入れて新たな変化を生み出すことが経営層の課題です。女性活躍や外国人取締役の任用はその一環であり、期待されています。
今後の展望について少しお話させていただくと、高いエンゲージメントの実現に向け、弊行の特徴に基づいた改善活動を継続していくことが重要です。
サーベイから見えた特徴として、若手行員のエンゲージメントが相対的に低いことが分かりました。また、エンゲージメントの高い部署では「理念・戦略の浸透」や「上司・部下のコミュニケーション」に対する満足度が高いことが分かっています。そこで、具体的な施策として次の3点を掲げています。
まず、挑戦意欲を高め、より能力を発揮できる人事制度への改定です。次に、風通しの良い職場環境と職場一体感の醸成を図るため、行内コミュニケーションツールを活用してコミュニケーションを活性化させます。最後に、経営理念や長期ビジョン、新たな価値観「GOGIN Five Values」の浸透を次の課題としています。
リンクアンドモチベーション 花岡:ありがとうございました。最後に、お二人から皆様へのアドバイスを一言ずつお願いいたします。
山陰合同銀行 三島氏:企業は「人」が大切と言われますが、その人々のモチベーションを測るのは難しいと感じていました。しかし、モチベーションクラウドを利用することで、数値化と可視化ができ、適切な対応を検討しながら進めることができました。これは心強い羅針盤のように感じています。
山陰合同銀行 石倉氏:最初の結果から、若手の仕事に対するやりがいや成長実感・貢献実感がやや不足していることが分かりました。これを改善するためには、面談の機会と内容を充実させることが重要だと考えました。若手だけでなく、ベテラン層も含め、全ての行員がより良い環境で活躍できるよう、人事部として引き続き取り組んでいきたいと考えています。
リンクアンドモチベーション 花岡: ありがとうございます。お二人とも貴重なアドバイスをありがとうございました。
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