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2019.09.24

「エンゲージメントと退職率の関係」に関する研究結果を公開

~エンゲージメント向上は、退職率低下に寄与する~

株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央、証券コード:2170、以下当社)の研究機関モチベーションエンジニアリング研究所は「エンゲージメントと退職率の関係」に関する調査を行いましたので、結果を報告いたします。

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■調査背景

当社の研究機関と、慶應義塾大学ビジネス・スクールの岩本研究室が、2018年9月18日に発表した、「エンゲージメントと企業業績」の研究結果では、エンゲージメントスコアの向上は営業利益率・労働生産性にプラスの影響をもたらすことが明らかになった。
今回は、多くの企業が課題として抱える退職率を取り上げ、「労働市場」におけるエンゲージメントの効果を定量的に検証した。

 

■調査概要

【調査対象】
リンクアンドモチベーショングループに所属する法人のうち、以下の法人に対象を絞り分析を行った。

(※1)各法人の略称、法人名及び事業概要は上記の通り。
(※2)ALT:「Assistant Language Teacher」の略で、小・中・高等学校の外国語指導講師を指す。

  

【調査方法】
2010~2018年の毎年3Q(第3四半期)に実施したエンプロイーエンゲージメントサーベイのエンゲージメントスコア(ES※3)と、該当時期の退職率(※4)との関係性を検証した。

(※3)エンゲージメントスコア(ES):社会心理学を背景に人が組織に帰属する要因をエンゲージメントファクターとして分類し、従業員が会社に「何をどの程度期待しているのか」、「何にどの程度満足しているのか」の2つの観点で質問を行う。その回答結果からエンゲージメントスコア(以下ES)、言うなれば「エンゲージメントの偏差値」を算出している。

(※4)退職率の算出方法:サーベイ実施時の社員数を分母、対象法人における各年の退職者を分子として退職率を算出した。

  
■調査結果

①エンゲージメント向上は退職率低下に寄与する。

ESと退職率の相関
ESと退職率の相関係数を各法人ごとに算出したものを、下表1に示す。
表1からLMI/LAI/LSI/LIT の当グループ4法人において、強い逆相関がみられた。
また、図1は各法人のデータを相関グラフで表したものであるが、図1から「ESが高いほど退職率が低い傾向にある」ことがわかった。この結果から、現在のエンゲージメントの高低に関わらず、「エンゲージメント向上は退職率低下に寄与する」と考えられる。

   

②エンゲージメント向上は、業務遂行を担う「メンバー層」だけでなく、管理監督を担う「ミドル層」の退職率低下にも寄与する。

ESと階層別退職率の相関
ESと階層別退職率の相関係数を各法人ごとに算出したものを、下表2と表3に示す。
表2、表3からLMI/LAI いずれの法人でも、「メンバー層」だけでなく、「ミドル層」において強い逆相関がみられた。この結果から、エンゲージメント向上は、業務遂行を担う「メンバー層」だけでなく、管理監督を担う「ミドル層」の退職率低下にも寄与すると考えられる。

(※5)当グループにおける各階層の定義は以下の通り。
シニアマネジャー:管理監督者(管理職)として、事業部全体のマネジメントを行う。(入社10~15年目)
ミドルマネジャー:管理監督者(管理職)として、事業部内におけるグループのマネジメントを行う。(入社5~15年目)
リーダー:業務遂行者として、個人成果だけでなく、チーム成果を追求する。(入社3~7年目)
メンバー:業務遂行者として、個人成果を追求する。(入社1~5年目)
なお、母集団の数が分析精度を満たさない場合は、今回の分析対象外とする。

■結論

エンゲージメント向上は、退職率低下に寄与する。
また、エンゲージメント向上は、業務遂行を担う「メンバー層」だけでなく、管理監督を担う「ミドル層」の退職率に大きな影響を与える。

 
前回行った慶應義塾大学ビジネス・スクールの岩本研究室との共同研究では、企業と従業員のエンゲージメント向上が、「営業利益率」並びに「労働生産性」にプラスの影響を与える、すなわち「商品市場」への適応に寄与することが明らかになった。今回は、多くの企業が課題として抱える退職率を取り上げ、「労働市場」におけるエンゲージメントの効果を定量的に検証した。
 
分析の結果、エンゲージメント向上は、退職率低下に寄与することが明らかになった。中でも特筆すべきは、エンゲージメント向上が、業務遂行を担う「メンバー層」だけでなく、その管理監督を担う「ミドル層」の退職率低下にも寄与する点である。この結果は、単なる「退職率改善」という枠組みでは語り切れない問題を示唆している。
 
「終身雇用」「新卒一括採用」「職能主義」といった特徴を持つ日本固有の「雇用システム」が、日本の高度経済成長期を支えてきたことはまぎれもない事実である。現在は「人材の流動化」に伴い、従来の「雇用システム」が揺らぎつつあるものの、大手企業をはじめとした多くの日本企業において、コア人材の長期雇用を前提とした育成や配置・登用が行われているのもまた事実である。
こうした状況において、一人前に育てた「メンバー層」の退職は、これまでの投資に対して期待した成果が得られなかったという点で、企業にとっては損失である。
 
他方で、「ミドル層」についてはどうか。将来の幹部候補となるコア人材の流出は、管理者不在による現場の混乱や投資に対する効果の域を超えて、暗黙的に今後も続くと考えられてきた「雇用システム」そのものの維持を危機的なものとするのだ。また、その損失を埋めるのは不可能に等しいといっても過言ではない。今回の結果が示したことは、エンゲージメントの向上が、こうした「ミドル層」の流出を止める一助となることであろう。
 
言い換えれば、コア人材の長期雇用を前提として「雇用システム」を維持したいと考えるのであれば、エンゲージメント向上は、今後の経営における最重要課題になる時代が到来したといえるのではないだろうか。
 「人材の流動化」が叫ばれる今だからこそ、従業員は何を期待し、何に満足しているのか、従業員の生の声を継続的にとり、真摯に耳を傾ける必要がある。

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■発行責任者のコメント

中長期的に見た労働力人口の減少や、新卒・中途採用を問わない売り手市場の現状を踏まえ、多くの企業において人材採用の重要度・緊急度は高まっています。

同時に、せっかく採用した人材に長期的に活躍してもらうためにも、「若手を中心とした早期退職者の低減」が重要なテーマとなってきています。今回のレポートはリンクアンドモチベーショングループ内での分析結果を元にしていますので、過度な普遍化・一般化には慎重になるべきですが、「エンゲージメント向上」が「早期退職者の低減」に寄与していることは注目したい結果ですし、実際にマネジャーとして多くの若手をマネジメントしている経験値とも合致する結果です。
 
加えて、会社として、ゆくゆくは経営人材としての活躍を期待している管理職層の退職低減にもエンゲージメント向上が寄与しているという結果も得られています。管理職というポストや昇格に伴う昇給だけで「あとはよろしく頼む」という考え方ではなく、管理職が何を期待し、どの程度満足しているのかを把握し、継続的にエンゲージメント向上を図ることが大切だということでしょう。エンゲージメント向上を、付け焼刃的な流行りものとして捉えるのではなく、企業経営のど真ん中として捉えることが重要なのではないでしょうか。

モチベーションエンジニアリング研究所 所長  大島 崇  Takashi Oshima
<プロフィール>
大島 崇(おおしま たかし)
株式会社リンクアンドモチベーション
モチベーションエンジニアリング研究所 所長

2000年 京都大学大学院エネルギー科学研究科卒業
2005年 住商情報システム株式会社を経て株式会社リンクアンドモチベーションに入社
2010年 モチベーションマネジメントカンパニー 執行役部長に就任
     大手企業向けの組織変革や人材開発で多くのクライアント  を担当。同時に商品統括ユニット、モチベーションエンジニアリング研究所を兼任し、新商品を開発
2015年 モチベーションエンジニアリング研究所 所長に就任

リンクアンドモチベーショングループの概要

  • 代表取締役会長:小笹 芳央
  • 資本金:13億8,061万円
  • 証券コード:2170(東証プライム市場)
  • 本社:東京都中央区銀座4丁目12−15 歌舞伎座タワー 15階
  • 創業:2000年4月
  • 事業内容
    組織開発ディビジョン(コンサル・クラウド事業、イベント・メディア事業)
    個人開発ディビジョン(キャリアスクール事業、学習塾事業)
    マッチングディビジョン(海外人材紹介・派遣事業、国内人材紹介・派遣事業)
    ベンチャー・インキュベーション

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