【前編】4年連続エンゲージメント日本一の会社が語る “理念反対派"だった社長が本気で目指す「日本一楽しいスーパー」への道
全国で49店舗のスーパーマーケットを運営する佐竹食品グループは、リンクアンドモチベーションが毎年エンゲージメントの高い会社を表彰する「Best Motivation Company Award」において4連覇を達成。日本でも有数のモチベーションカンパニーとして注目を集めている企業です。
今回は同グループの代表取締役・梅原一嘉氏をお招きし、「エンゲージメント日本一!組織偏差値40台から4連覇への軌跡」をテーマにオンラインセミナーを開催。いかにしてエンゲージメントを向上させたのか、本当に効果のあった施策について語っていただきました。
【セミナー実施日】 2021年6月22日
【スピーカープロフィール】
・佐竹食品グループ 代表取締役社長 梅原 一嘉 氏
・株式会社リンクアンドモチベーション MCRカンパニー カンパニー長 梅原 英哉
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全国49店舗、従業員2,600名、売上764億、大阪を代表するスーパーマーケット
リンクアンドモチベーション 梅原:はじめに、佐竹食品グループ様の会社紹介、事業紹介をお願いします。
佐竹食品グループ 梅原氏:我々は大阪を中心にスーパーマーケットを展開している会社で、総合食料品スーパーマーケット「satake」と、フランチャイズで生鮮特化型「業務スーパー TAKENOKO」、合計で49店舗を運営しています。正社員が約1,000名、パートさん・アルバイトさん合わせて約1,600名、合計で2,600名ほどの従業員が働いており、売上は約764億(2021年3月)の会社です。
こちらが売上と店舗数の推移ですが、本当にありがたいことに良い形で成長してきております。それに伴い、従業員数も大きく増えている状況です。
リンクアンドモチベーション 梅原:佐竹食品グループ様はエンゲージメントの高い会社を表彰する「Best Motivation Company Award」で4連覇を達成されていますが、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。4連覇に至るまでの過程で、佐竹食品様がどんな施策に取り組んできたのか、本当に効果のあった施策はどんな施策だったのか、といったところを代表の梅原様にお伺いできればと思います。
本日は、佐竹食品様のエンゲージメントスコアの推移に合わせて、第1章から第4章までの4部構成でお届けしてまいります。40台だったエンゲージメントスコア(※)を、どのように60台、70台へと高めていかれたのかを施策ベースでお話しいただきます。
※エンゲージメントスコアとは、社員の会社に対する共感度合いを表す指数です。
早速ですが、第1章「つくる」ということで、当時の状況も含めてお聞きできればと思います。
「このままでは、うちのスーパーはまずい」と感じた
佐竹食品グループ 梅原氏:当時は会社が徐々に大きくなって、従業員も増えてきた時期でした。従業員が100名、150名くらいの時期は全従業員の顔と名前を把握できていたのですが、300名、400名になってくると私のキャパシティにも限界がきました。
そんな時期に各店舗を回っていたら、カビの生えた野菜を平気で安売りしている店舗を目にしたんです。従業員が増えてきたことで、なかには「売れればいいんでしょ」というような商売をする人も出てきて、「このままでは、うちのスーパーはまずい」と悩み始めたのがこの時期でした。
リンクアンドモチベーション 梅原:この時期は「徹底的に発信し続ける」をテーマに、3つの施策を挙げていただきました。
「日本一楽しいスーパー」を理念に掲げた
佐竹食品グループ 梅原氏:まずは「理念策定プロジェクト」を立ち上げて、企業理念を作りました。その理念が、「日本一楽しいスーパー」というものです。
実は私自身、もともとは理念経営には大反対派だったんです。「毎朝、理念を唱えて売上が上がるなら世話ないわ」と思っていました。ちょうどそんなタイミングでリンクアンドモチベーションさんと出会って、「理念はもうお持ちですよ。普段から商売において大切にされていること、例えば質が低いものを安く売るのではなく、おいしいものを安く売ることが大切だ、であるとかそういった考えを言葉にしたものが理念ではないですか」と言われて、なるほどと思いましたね。
従業員が増えてくるとそれぞれの考え方や商売のやり方など、いろんなところでズレが出てきます。そういったズレをなくし、従業員をまとめていくためには指針となるものが必要だと考えるようになり、理念の策定に至ったわけです。
役員8人で半年くらいかけて理念を作ったのですが、きれいな言葉というよりは、普段商売をしながら大切にしている言葉を中心に作り上げていきました。理念のなかに「6つの基本姿勢」というものがあるのですが、当初は「正直」「感謝」「信頼」「素直」「挑戦」の5つでした。これを会長に見せたときに「根性が入っていないじゃないか、これでは根性なしだ」と言われ、もう1回みんなで集まって、最後に「根性」を加えて6つの基本姿勢となっています。
会長も含め、役員みんなの商売にかける思いが全部詰まった企業理念になっていると思います。
リンクアンドモチベーション 梅原:続いての施策として「人事制度プロジェクト」について教えてください。
佐竹食品グループ 梅原氏:理念を発表したとき、一部の従業員には「結局、利益が上がればいいんですよね?」みたいなリアクションも見られました。もちろん利益は大切ですが、極端な話、カビの生えた野菜を売って得る利益ではなく、我々の思いがこもった商売をして利益を作ってきたいというのが第一にありました。そうするには、理念を浸透させ、一人ひとりが基本姿勢をベースに商売をしていかなければいけません。
そこで着手したのが人事制度プロジェクトで、理念の浸透を図るために理念を人事制度に組み込むことにしたんです。たとえば、「正直に商売ができているか?」という項目を人事制度に入れて、評価の指標にするというイメージですね。
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理念に対する本気度を示すためにも徹底的に発信した
リンクアンドモチベーション 梅原:続いて、「社内発信ツールの整備」という施策があります。
佐竹食品グループ 梅原氏:同じ頃、マルハンさんが理念の浸透を図るためにカレンダーを作っていることを知りました。非常に良い取り組みだと思い、弊社でもカレンダーを作ることにしました。社内から、理念を体現したようなエピソードを募集して、12個(12ヶ月分)のエピソードを選んでカレンダーを作るんです。これは長年続いている取り組みで、毎年400通くらいは応募がありますね。
エピソードが選ばれた従業員には3万円の賞金を出しているのですが、私は、動機が不純なものでも構わないと思っています。もちろん、理念浸透のために作っているカレンダーですが、「3万円もらえるなら、お客様に喜んでもらえる商売をしますよ」という動機でも、最初は全然良いのかなと。
社内報も作りました。最初は全員に読んでほしいと思っていましたが、当然読まない従業員もいるわけです。そのときは、読ませることじゃなくて、まずは伝えていくことが大事だと思い、とにかく発信し続けることにしました。
社内報だけでなく、年2回の「AllA(オールエー) AWARD JOURNAL」や、毎月発行の「おーきに新聞」、お客様に配布する「satake通信」など、どこかで目に留まってくれればと思い、とにかくいろんなツールで発信し続けました。社内の休憩室にはサイネージを設置して、理念を出したり、各店の業績を出したりしました。
理念を策定し、日本一楽しいスーパーを目指すことを宣言したわけですが、「それ、どこまで本気なんですか?」と思っていた従業員もいたはずです。この頃は、私の理念に対する本気度を問われている時期だったと思うので、本気度を示すためにも徹底的に発信していきました。
部門のみんなが燃える「志」を掲げた
リンクアンドモチベーション 梅原:発信量にこだわり、会社の行く先を知ってもらったのが第1章というわけですね。続いて、第2章「育てる」のお話を伺いたいと思います。
佐竹食品グループ 梅原氏:会社として目指すべき方向が定まった一方で、各部門が「何をしていいのか分からない」という状況に陥ったのがこの時期でした。現場から「日本一楽しいスーパーを作るために、私たちは何をしたらいいんですか?」というクエスチョンが出てきて、理念をどうやって各部門に落としていくべきかと悩んでいました。
リンクアンドモチベーション 梅原:この時期は「徹底的に役割を示す」ということで、3つの施策を挙げていただきました。
佐竹食品グループ 梅原氏:まず始めたのが、「部門の志」策定プロジェクトです。スーパーマーケットには、青果部門や鮮魚部門、精肉部門などいろんな部門がありますよね。会社として日本一楽しいスーパーを目指すにあたって、「青果部門はどうあるべきか?」「精肉部門は何をしたらいいのか?」という、部門ごとの「志」を作ったのがこのプロジェクトです。
たとえば、鮮魚部門は「魚嫌いを魚好きにする」という志を掲げました。「魚離れが起きている現状を何とかしたい」「お客様に魚を好きになってもらいたい」といった思いが反映された志だと思います。私もディスカッションには参加していますが、それぞれの志を作ったのは部門のリーダーたちです。結局、最後は現場のみんながその志に対して燃えないと意味がないですからね。
リンクアンドモチベーション 梅原:次の施策として、「次期店長/店長強化プロジェクト」というものがあります。
佐竹食品グループ 梅原氏:これは、店長や主任の役割を明確にするプロジェクトです。日本一楽しいスーパーを実現するために、店長や主任はどういう存在であるべきで、どういう仕事をするべきなのかということを明確にしました。
店長で言えば、「リーダーシップ」「マネジメント」「コンシェルジュ」「パイプ役」の4つの役割を定義しました。店長は、店舗におけるリーダーであるべきであり、従業員に対してきちんとマネジメントができなければいけません。お客様にとってはコンシェルジュである必要があります。また、パイプ役として現場の意見を吸い上げるのも店長の仕事ですし、会社の思いを現場に落とすのも店長の仕事です。このように店長の役割を明確に示したうえで、育成のための研修をおこないました。
ミドル層と部下の双方を育てる1on1
リンクアンドモチベーション 梅原:続いて「1on1面談の実施」ですね。
佐竹食品グループ 梅原氏:ミドル層が各従業員に会社や部門の目指す姿を伝える1on1の面談を始めました。これは、ミドル層と部下の双方を育てるという目的がありました。
また、弊社はパートさんやアルバイトさんも多いので、「店長ランチ」という場を設けました。これは、店長が赴任したら、その店舗のスタッフ全員と個別にランチに行くというものです。たとえば、1日4時間勤務のパートさんからしたら、いきなり1対1で店長と面談することになっても緊張するだけですよね。
どんな話でもいいから、お昼を食べながら気軽にコミュニケーションをとりましょうというのが店長ランチの目的です。今はコロナで中断していますが、会社からランチ代が出るので店長はみんな喜んで行っていましたね。
リンクアンドモチベーション 梅原:徹底的に役割を示すことで、部門やミドルの役割を明確にしたのが第2章というわけですね。ありがとうございました。
ここまでで、視聴者のみなさまからいただいている質問をいくつかご紹介します。まず、「人事制度を運用に乗せるために心がけていたことはありますか?」という質問をいただいているのですが、梅原様いかがでしょうか。
佐竹食品グループ 梅原氏:人事制度の理解度が重要だと考えています。評価する側が「どう評価していいのか分からない」ではいけませんし、評価される側も「何を基準に評価されているのか分からない」では困ります。誰が、何を、どのように評価するのかを明確にするためにも、弊社が大切にしているのがフィードバックです。1対1の面談で、評価のポイントや上がった理由、下がった理由などをきちんとフィードバックしています。
もう一点、評価制度を策定したタイミングで変えたのが評価の回数です。弊社では4ヶ月に1回、年に3回の評価をおこなっています。以前は年に1回の評価でしたが、人って11ヶ月前の出来事なんて覚えてないじゃないですか。年に1回の評価だと適正さが欠けたり、次の目標へのつながりが薄れてしまったりするのではないかと考え、年に3回の評価にしています。大変ですけど、フィードバックはしやすくなりましたね。
シラケている従業員がいても、問題はない
リンクアンドモチベーション 梅原:別の質問で、「理念を発信しても響かない従業員もいると思いますが、どんな対策をしましたか?」という内容もいただいております。こちらについてはいかがでしょうか。
佐竹食品グループ 梅原氏:理念の浸透を図っていた頃、休憩室に入ったら社内報がごみ箱に捨てられていたことがありました。「わざわざ給料袋に添えて渡してるのになんで・・・」ってショックでしたよね。ですが、「もう捨てられてもいいや」と思って配る量を増やしました。100人に100部配ったら、捨てたのは誰なんだろうと気になりますが、100人に100部 × 3回配ったら、もう誰が捨ててるとか気にならなくなるんです。
よく「自燃性」「他燃性」「不燃性」って言われますよね。私が発信すると「社長、頑張りましょう!」と応えてくれる自燃性タイプもいれば、周りに触発されて「なるほど、じゃあ頑張ろうか」という他燃性タイプもいます。
一方で、理念やビジョンに熱くならない不燃性タイプもいます。ですが、私はシラケた従業員がいても別にいいと思っています。シラケているように見えて実は表に出すのが苦手なだけで、話してみると「自分も楽しいスーパー作りたいっす」ってボソッと言う子もいますしね。不燃性でも沸々と燃えている子もいれば、燃えにくいだけで何かのきっかけがあれば一気に燃える子もいます。
ただ、問題なのが消火器を持ってくるタイプで、昔はそういう従業員もちらほらいました。こっちはビジョンに向かって頑張ろうとしているのに、「何でそんなんやってんねん」と火を消そうとしてくるわけです。そういうタイプの従業員には「別に乗ってこなくてもいいけど、足を引っ張るのはやめてくれ」と言いました。ですから、シラケてる従業員は全然問題なくて、それよりも注意したいのは「消防隊」ですよね。
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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等はイベント実施当時のものです。
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