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【後編】経営者の本気が伝わり、組織は劇的に変化 デザインカンパニーグッドパッチが直面した組織崩壊と2年間の逆転劇

【概要】
大企業からスタートアップまで様々な企業を支援し、モチベーションクラウドの開発にも携わる、UI/UXに特化したデザイン会社である株式会社グッドパッチ。

「正直、組織は一度、完全に崩壊しました」と語るのは、同社代表取締役社長の土屋尚史氏。2019年8月に実施したモチベーションクラウドのサーベイでは、従業員の会社への共感度合いを示す指標であるエンゲージメントスコア71.2、全国上位4%の最高ランクAAAを獲得。しかしわずか2年前、2017年10月のスコアは46.7、最低ランクCCC。2年間で底辺から頂点に駆け上がりました。

その道のりと歴史を、同社社長の土屋氏に加え、組織再建の当事者である経営企画室室長 柳沢和徹氏に伺います。

創業してから7年の間に起きた、企業拡大に伴う組織崩壊とそこからの復活ストーリー、後編。

【セミナー実施日】
2019年11月11日(月)

【スピーカープロフィール】
株式会社グッドパッチ 代表取締役社長/CEO 土屋 尚史氏
株式会社グッドパッチ 執行役員 経営企画室長 柳沢 和徹氏

【モデレーター】
株式会社リンクアンドモチベーション
中堅・成長ベンチャー企業向けモチベーションクラウド 事業責任者 田中 允樹

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新人のプレゼンが、組織の雰囲気を大きく変えた

田中允樹(以下、田中):ここまでで、組織変革の土台が固まってきました。それでは次は大きく会社の舵を切る変化のフェーズに入っていきます。1つ目は新卒のプレゼンですね。

株式会社グッドパッチ 代表取締役社長/CEO 土屋氏(以下、土屋氏):この時、徐々に心理的安全性を高めにいったのですが、離職は止まっておらず、閉塞感は未だあったと思います。

でも一方で、組織の雰囲気以外はとても良い状態でした。なぜなら、仕事は面白いし、メンバーの専門性も高いし、会社のブランドもあるし、色々なことにチャレンジできる環境で、なおかつ働き方も自由度が高くて忙しすぎない。

新しく入ってきた人は、「こんなに良い環境で、なんで文句ばかり言っているんだろう」と感じていたみたいです。でも、社内のコミュニケーションが止まってしまっていたので、そう感じていても言い出すことができない、そんな状態でした。

そんな中、17新卒が入社してきて、転機が訪れました。2017年の11月ぐらいに、アメリカのテキサスで毎年3月に開催されるサウス・バイ・サウスウエストというイベントのチケットを賭けて、全社でプレゼン大会をやることにしました。

そこに立候補した新卒メンバーのプレゼンがすごく良かったんです。彼は新卒1年目なので、「僕はまだ経験も少ないので、デザインの知識とか、皆さんにお教えできることはあまりありません。だけど、僕はこのグッドパッチが大好きです。

この会社を世界でも有名なデザイン会社にしたい。だから、この会社でサウス・バイ・サウスウエストに行くべきなのは僕だ。」というのを1年目がプレゼンしたんです。その時、会場の雰囲気が変わったのが明確にわかりました。

大きい拍手がバーっと起きました。そのときに、「そうだよね。俺たちこの会社好きだよね」「好きって言っていいんじゃん」という感じだったんです。当然そのあとの投票も圧倒的にその子が1位になりました。そのプレゼンの前後で、明らかに空気が変わった感覚がありましたね。


株式会社グッドパッチ 執行役員 経営企画室長 柳沢氏(以下、柳沢氏):特にタイミングが良かったなと思ってます。そのプレゼン大会の少し前に、組織に共感できずにいたメンバーが抜けていったりして、雰囲気が上向くかもというタイミングでした。

やっぱり、組織崩壊を生で経験したり、ダイレクトに傷付いた人ほどトラウマを抱えているので、社内のオープンな場でメッセージングすることに対する警戒心が強くありました。

ピュアな気持ちで発信してくれる、新しくジョインしたメンバー、特に新卒の若手の力を感じましたね。


社員に参加してもらいながら、バリューを再構築した

土屋氏:その新卒のプレゼンの後、僕はすぐに社長報という社内向けのブログに、もう一度会社のカルチャーを復活させたい、と書きました。

会社はカルチャーが差別化のポイントになりますが、グッドパッチのカルチャーは一度崩壊してしまっていて残ってない。もう一度、カルチャーを作り上げたいと伝えたんです。


柳沢さんもバリューの重要性は理解していて、そのタイミングを伺っていたんですよね。新卒のプレゼンがある前は、なかなかこの状況でバリューを再構築しようと言っても難しいだろうなと感じていました。

田中:反発されてしまうかもな、ということでしょうか。

土屋氏:そうです。でも、プレゼンのあとにこれはいけるんじゃないかという雰囲気を感じて、すぐに「もう1回カルチャーを作り直そう」という発信をしました。

そして、そのバリューは俺や経営陣が作るんじゃなくて、みんなで作り上げたいと言って、バリューコミッティを募集したんです。そうしたら、30~40名ぐらい応募がありました。

柳沢氏:やはり皆、組織が崩壊している状態を気持ち良いとは思っていないんです。会社は好きでなんとかしたいけど、きっかけが掴めない、そんな状態でしたね。

田中:組織のコミュニケーションが止まってしまったときに、思ってることをストレートに口に出すことがいかに難しいのかがわかりますね。

組織の問題というのは、99%は皆わかっているんですが、なぜ解決しないかと言うと、誰も問題をテーブルに上げないからなんです。組織の相互信頼を回復させ、問題をテーブルに上げやすい雰囲気を作っていくことが大事です。

土屋氏:バリューを作り直す過程は、かなりしんどかったです。皆からバリューについての意見を集めた後、一応外部のライターの方も入れて検討したのですが、結局会社のビジョン、ミッション、バリューは、最終的には経営者が決めないといけないんです。

これを残したら皆に文句言われるかもしれない、とか思いながら、バリューにする部分、しない部分を決めていかないといけない。グッドパッチでは、最終的に5個のバリューに作り上げました。柳沢さんは、これに共感できない人は辞めることになるかも知れませんって言っていましたよね。


柳沢氏:土屋さんは優しいんですよ。会社のカルチャーを壊しにかかる行動を取った人物に対しても、「会社を辞めろ」というような厳しい対応はしていませんでした。不必要なプレッシャーを掛けないことは素晴らしいことですが、優し過ぎることが裏目に出てしまったシーンもありました。

なので、「これに共感できないメンバーは辞めてしまうことになるかもしれませんが、覚悟を持ってやり遂げましょう」という話は、バリュー策定の過程で何度かしましたね。

土屋氏:やはり社長とか創業者って、社員全員が家族なんですよね。特に100人規模の会社であれば、全員の顔がわかるし、自分が最終面接に出て採用してるので、基本皆大好きなんです。

どれだけ陰で言われてようが、最終的にはお前のことを信じてるっていうスタンスなので、逆にその優しさをメンバーが期待してしまうこともあったと思います。

田中:リンクアンドモチベーションでは、リーダーが直面する葛藤には、「効率vs能率」「受容vs支配」「短期vs長期」「論理vs感覚」「分化vs統合」の5つがあると伝えています。今回のバリューの話は、分化と統合の葛藤ですね。

組織をデザインする上では、その規模の拡大に伴い専門分化を進める必要性が生じます。しかし、その一方で分化の度合いに比例して組織全体の意識統合(一体感)が弱まります。全体統合を怠ると組織がバラバラになり、分化を怠ると組織拡大のスピードが鈍ります。

グッドパッチさんのように100名規模になってくると、多様な人材が社内に在籍するようになってきて分化が強まり、そのままだと組織はバラバラになっていってしまいます。

そこで必要なのが、統合のマネジメントです。分化が強くなりすぎてしまった組織では、ミッション、ビジョン、バリューを通した、全体の意思統一を図る強いマネジメントが必要だということですね。


さて、組織変革の2つ目のステップは、Changeです。ここで重要なことは、「共感を引き出す」「納得感を醸成する」ことですが、グッドパッチさんでは、変化への共感を引き出すきっかけとして新卒のプレゼン、そしてバリューの策定を通して会社の変化の納得感を高めていったわけですね。

経営者の本気が社員に伝わった

田中:それでは最後に、Refreezeフェーズに入ります。

土屋氏:ここからはバリューの浸透ですが、策定と同時に取り組んだような形ですね。柳沢さんの経営企画室主導で動かしていきました。

柳沢氏:バリューが浸透するかどうかは、そもそも自分がそのバリューづくりに参加したなと思えるかどうかが大事だと考えました。デザインで言うところのプロトタイピングではないですが、完成したのでどうぞ!ではなく、ここまで仕上がったんだけどどう思う?を繰り返しました。

具体的には、チーム会を土屋と私で一つずつ回って意見を交わしました。バリューについてのユーザーインタビューをしているようなイメージですね。

田中:確かにそれは大事ですね。土屋さんや柳沢さんのような経営陣が丁寧に一人ずつ意見を聞くということで、経営側の本気も社員の皆さんに伝わりますね。

土屋氏:やっぱり組織変革で一番大事なことは、経営者がどれだけ組織に本気で取り組むかだと思います。今回のこのゲスト登壇イベント、1年前にはクラウドワークスの吉田さんが登壇されていましたが、僕と柳沢さんはそのイベントに参加しているんです。

そのときは、エンゲージメントスコアは56とかそれぐらいのときで、比較的スコアの高いヨーロッパを除いた東京オフィス単体で見ると50ちょっとぐらいのときです。どうやったらランクAなんていけるの?と思っていました。

でも、僕は去年100人の会社の社長で、このセッションでインプットして、1年後に自分も絶対第2のクラウドワークスになろうと決めたんです。絶対ランクAAAを取ると。そして今、有言実行でここまできました。

社長が本気でコミットしているかどうかで、温度感は天と地ほどの差が生まれます。組織変革は代表が動かないと絶対に成功しません。間違いなく。


ランクがAAAまで上がり、明らかに組織の雰囲気が変わった

田中:スコアやランクが上がって、組織にはどんな変化がありましたか?

土屋氏:直近のスコアで71.2を出してAAAになりましたが、最後AAとAAAの間の半年間って、こんなに組織って変わるんだって思いましたね。

柳沢氏:目に見えて良くなった感じがしますね。全社イベントで良いニュースの発表があった時など、拍手や合いの手など、良い反応が増えてきていると思います。

また、イベント事などで「これ誰かやろうよ」と呼びかけたことに対する共感の声や、手を上げる人が明確に増えました。建設的な議論がとても活発になりましたね。

土屋氏:毎月やってる月末の締め会があるんですけど、組織が悪かったときはひどかったですね(笑)。そもそもの参加率が悪いのは勿論ですし、うちのオフィスは2階にキッチン、3・4階にオフィスがあるんですけど、2階にある締め会の食べ物だけ取りに来て、3・4階のオフィスフロアに戻っていってました。

でも組織状態が良くなった今は、夜10時、11時ぐらいまでキッチンの周りでみんなで話して、飲んでたりします。


組織変革に一番必要なことは、「経営者のコミット」

田中:ここまでありがとうございました。それでは最後に、お二人から一言ずついただければと思います。

柳沢氏:皆さま、今日はありがとうございました。崩壊してから上に上っていくまでは色々な施策をあれもやろう、これもやろうと頑張るんですけど、結構長い間手ごたえがない時期が続きます。

ほぼみんなが関心を持ってくれない状態から、少ない仲間で何とか耐えながらやってるんですけど、その間は結構長いトンネルで何やってるのって周りから言われたりもしますが諦めないでください。


土屋氏:先ほども言いましたが、やはり一番重要なのは経営のコミットです。トップが組織に向き合わない会社に未来はありません。間違いなく。もしあなたがトップではなかったら、いかにあなたの本気で、トップの火をつけられるかが大事です。

そのためには、本気が伝わるかどうかということが重要です。「今のままではビジネスはうまくいくかもしれないけども、決して人が働き続けたいと思えるような組織になってない。このままでは駄目です」ということを伝えられるかどうかです。

組織の状態が良くなると、毎日会社に行くのが楽しいって、そういう雰囲気になるんです。そして勿論それだけではなく、売り上げも上がります。組織崩壊時は、売上は上がるもののなかなか利益は出ていなかったんですが、組織が良くなってから普通に毎月利益が出るようになりました。

これは正直、因果関係はわからないです。でも、モチベーションクラウドのスコアが上がったら、売り上げが増えて利益が増えるんです。

多分、組織の状態が良いと、メンバーのパフォーマンスに影響するんです。なので、これは普通に経営課題として絶対に取り組むべきことだと思います。うちですら、AAAが取れたので、どこの会社も絶対に取れるはずです。

だって47のときに、AAAとか嘘でしょと思ったんです。70とかあんな数字出るわけない、どうやったらあんな数字出るの、みたいな。あれは言わせてるんじゃないか、ということを思ってました。

でも、そんな僕たちの会社ですらAAAは取れたので、どの会社でもできるはずです。そのためには、経営者が向き合うことと諦めないこと、それだけですね。頑張ってください。

田中:ありがとうございました。

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※本記事中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。


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