
「帰属意識」の意味とは?帰属意識を高めエンゲージメント向上に寄与するポイントとは?
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帰属意識を持って働く社員は会社への定着率が高く、熱心に働いてくれる存在です。しかし、終身雇用制度が崩壊しつつある現状、社員が持つ帰属意識が希薄になりつつあります。
さらに、働き方改革など労働環境の変化によって、従来のように会社に忠誠心を持って働く時代ではなくなっています。
帰属意識が低くなれば離職率が高まり、仕事や会社に対するモチベーションの低下が懸念されます。企業の発展のために、企業と社員が一体となり、運営できる環境づくりをするには、帰属意識の向上が欠かせません。
今回の記事では、自社の帰属意識の測り方や、帰属意識を高めるためにすぐに取り組める施策をご紹介します。
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帰属意識とは?
■帰属意識について
帰属意識とは「特定の集団に所属しているという意識」のことです。家族やコミュニティ、企業など、幅広い範囲を指します。ビジネスシーンでは「その会社の一員であるという自覚」を意味する言葉として使われます。
近年では雇用の流動化や、非正規労働者の増加、働き方の多様化などにより、従業員の帰属意識は低下しつつあると言われていますが、企業への帰属意識が高いということは、愛着があり「頑張って貢献したい」という意識が自然と芽生えている状態だといえるでしょう。
また、企業そのものだけではなく、企業が供給する商品やサービス、自分が所属する部署への帰属意識も存在します。このように、企業への帰属意識の持ち方は社員ごとに異なります。そして帰属意識が高い社員がいれば、帰属意識が低い社員もいて当然です。
また、帰属意識の類語に「共属意識」や「所属意識」、または「帰属感」や「所属感」が挙げられます。「共属意識」と「所属意識」は、一つの集団に属している意識のことで、「帰属感」と「所属感」は一つの集団に属している感覚を意味しています。
▼帰属意識に関する記事はこちら
■ロイヤリティとは
また「帰属意識」と似た言葉に「ロイヤリティ」があります。これは英語の「loyalty」が語源で、忠誠心や誠実さを意味します。「忠誠心」とは特定の個人や集団に尊敬の念もって服従して献身する態度を指し、「誠実さ」は私利私欲を捨てて特定の個人や集団に接する態度を指します。
会社と社員の関係における「ロイヤリティ」は、会社が上位で社員が下位という力関係のもと、社員が会社に献身的な態度を示すことを指します。
「帰属意識」と「ロイヤリティ」の違いは、「ロイヤリティ」は会社と社員において力関係があることを前提にしていますが、「帰属意識」は前提にしていません。
■従業員エンゲージメントを左右する帰属意識の4要素
また「帰属意識」と似た意味の言葉に「従業員エンゲージメント」があります。エンゲージメントとは、本来「約束」「誓約」という意味を持つ言葉ですが、人事用語では「組織に対する従業員の帰属意識や貢献意欲」を指します。
従業員エンゲージメントが高いということは、従業員が「その企業で働くことに誇りを感じている」、または「企業の方向性を理解した上で、前向きに業務に取り組んでいる」という状態を指します。
つまり、従業員エンゲージメントは帰属意識を測る一つの指標であり、これを高めると帰属意識も高まると考えられます。
また、「従業員エンゲージメント」と似た意味の言葉に「従業員満足度」があります。これは、従業員個人が組織や仕事内容、職場環境や人間関係などに、どれぐらい満足しているのかを測る指標です。
従業員満足度が高いということは、従業員が自社に対して「働きやすい」と感じている状態を指します。従業員満足度は、「従業員エンゲージメント」や「帰属意識」のベースにあるものと言えるでしょう。
つまり、従業員満足度を高めることで、従業員エンゲージメントも高まり、その結果、帰属意識を高めることにもつながります。
では、その「従業員満足度」はどんな要素で構成されているのでしょうか。それは様々な考え方がありますが、マーケティングの考え方で4P分析があるように、従業員満足度にも以下の4つのPの考え方があります。
・「Philosophy(目標の魅力)」
・「Profession(活動の魅力)」
・「People(人材の魅力)」
・「Privilege(特権の魅力)」
従業員満足度を高めるうえでは、これら4つのPのどれを従業員が求めており、現状をどのようにとらえているのかを把握したうえで、社員と相互理解していくことが大切なのです。
■従業員の帰属意識を高めるメリット
では、従業員の帰属意識が高い企業には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
①離職率の低下
企業への帰属意識が高いと、仕事面において様々な好循環が生まれます。まず、企業への愛着があるため長期にわたり働いてくれる傾向にあり、離職率を低く抑えられます。
労働人口の減少により人手不足が叫ばれる昨今において、社員に帰属意識を持ってもらうことは、長期的な人材確保に繋がります。
②生産性の向上
帰属意識が高い職場では、従業員同士の結び付きが強く、チームの一体感も得やすいといったメリットがあります。そのような組織では相互での協力やコミュニケーションが活性化しやすくなり、その結果、業務の効率化や生産性向上に繋がりやすくなります。
従業員の帰属意識が注目される背景
■事業環境の変化による従業員の貢献意欲の必要性の高まり
ここでは従業員の帰属意識が必要とされる背景にも触れておきたいと思います。一つは「VUCA時代への突入」ということで事業環境が変化したためです。VUCAとは、社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている状態を示す造語です。予測が困難な要因として4つの時代特性をあげ、頭文字を取って作られました。
V:Volatility(変動性)
U:Uncertainty(不確実性)
C:Complexity(複雑性)
A:Ambiguity(曖昧性)
VUCA時代以前は、V:あまり変化がなく、U:確実に先を見通せて、C:単純で、A:明快な物事が多かった時代でした。そのため、その時代の環境適応方法としては、勝てる戦略や商品を、拡大するマーケットに対して、迅速かつ丁寧に決められた手順で行っていれば一定の成果がついてくる「勝ち筋の徹底」が求められる時代でした。
しかし、VUCA時代へ突入すると、戦略や商品は「勝利」が保障されておらず、市場も飽和状態のため、挑戦し、失敗し、アジャストし、勝ち筋を見つけるという「勝ち筋の創出」が成功の鍵を握る時代になりました。
誰も正解が見えない中で組織成果を上げるには、より従業員が所属する自組織、企業に対する貢献意欲から、自分で考え、自分で行動することが必要なのです。
■労働市場の変化によるリテンションマネジメントの重要性の高まり
また「労働市場」においても変化が起きています。「終身雇用」「年功序列」が当たり前の時代から、一度採用した後も企業は優秀な人材をリテンションし続けなければすぐに会社を辞めてしまう。これらの環境変化に合わせて、各社毎の人事戦略が必要になってきており、労働市場で従業員から選ばれる企業をつくることは、重要度も難易度も上がっているのです。
■社会的制約の増大によるマネジメント難易度の高まり
さらに、そのような時代の変遷に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多数の企業がリモートワークを導入。
上司や部下、社員同士のリアルな場でのコミュニケーション機会が減ったことにより、プロセスよりも「成果重視」が一層進み、「一人の人間として気にかけてくれているのか」「この仕事を通じて本当に成長できているのか」というように、今までは抱かなかった不安を助長させてしまうこともあります。
そのため、現在の新しい働き方においては、より「従業員の帰属意識」を高めていく難易度が増しているのです。
従業員の帰属意識を高める具体的な施策
さて、ここからは実際に「従業員の帰属意識」を高める具体的な施策について、先に紹介した「従業員満足度」の4つの捉え方「Philosophy(目標の魅力)」「Profession(活動の魅力)」「People(人材の魅力)」「Privilege(特権の魅力)」に沿ってお伝えします。
■目標の魅力を向上させる施策
目標の魅力を向上させるには、会社の普遍的な存在意義となる「企業理念(特にミッション)の設計」「理念浸透」「インナーブランディング」が欠かせません。
(参考)理念の策定/浸透のポイント
(参考)インナーブランディングのポイント
■活動の魅力を向上させる施策
次に活動の魅力を向上させる施策として「キャリアデザイン」が重要となります。キャリアに対する考え方が重要性を帯び、「自分がやりたいこと」と「会社で求められていること」をより明確に結びつけること。つまり「キャリアビジョンを明確にすること」が有効的です。
(参考)キャリアデザインのポイント
■組織の魅力を向上させる施策
〜社内のコミュニケーションの活性化〜
次に組織の魅力を向上させる施策として「社内コミュニケーションの活性化」が重要となります。組織の上下、左右、内外のコミュニケーションラインを意識し、充足させる様々な施策を講じていくことが重要です。
■待遇の魅力を向上させる施策
〜ワークライフバランスの推進〜
最後に待遇の魅力を向上させる施策として、「ワークライフバランスの推進」があるでしょう。この推進によって労働時間の削減を行い、長時間労働によるストレスの問題などを改善していくことで、社員の多様な働き方を実現することができます。社員が長く働ける環境を整えることで、自然と帰属意識が高まる傾向にあります。
帰属意識を高めるポイント
■全ての帰属意識の要因を高めようとしない
このように、4Pに沿って従業員の帰属意識を高める動きをすることが大切ですが、注意も必要です。それは、資源には限りがあるということです。施策を行うお金も、施策を実行する人数も有限です。また、「待遇の魅力」を上げ続けるにも限界があります。
■従業員の「期待」と「満足」を知る
そのため企業側は、帰属意識の要因のどこから手をつけるべきか、4Pにおけるそれぞれの「期待」「満足」をきちんと把握し、課題の優先順位をつけて、適切な施策を講じていくべきなのです。
エンゲージメント向上により帰属意識を高めた事例
最後に、従業員の「目標の魅力」を高めることにより、従業員エンゲージメントと帰属意識を向上させた事例を紹介します。
【企業の概要】
・事業内容:総合食料品スーパーマーケットの運営、生鮮特化型業務スーパーの運営
・従業員数:1,700名 (※パート・アルバイト800名含む)
【課題】
この会社では順調に従業員数と店舗数を伸ばしていました。150人規模までは、社長から見て従業員の顔と名前が一致していましたが、300人、400人と増えていくうちに一致しなくなってしまいました。
そこで弊社組織診断ツールであるモチベーションクラウドで現状を把握したところ、「従業員が理念を期待していない(=従業員が理念を重要視していない)」という結果があらわれました。
そこで、インナーブランディングの【策定フェーズ】と【浸透フェーズ】の2つのステップを丁寧に踏み、理念の浸透を図ってきました。以下では、特に【浸透フェーズ】の取り組み内容についてご紹介します。
①全社総会の実施
店舗を丸1日休みにして、従業員に理念の「必要性」を伝えることを目的とした全社総会を実施しました。その中で、なぜこの理念が出来上がったのか、どんな思いが込められているのか、背景を説明したのち、今後の向かうべき方向性を、社長自ら全従業員に伝えて行きました。
1日営業日を止めることによって1億円の売上が減りましたが、その月は過去最高益を出すことができました。理念を伝えていくことで、従業員ひとりひとりの行動に変化があらわれた結果といえるでしょう
②部門ビジョンの策定
また全社の企業理念だけではなく、部門の理念も策定しています。理念を従業員にとってより身近なものにし「継続的に」理念を意識してもらうための施策です。
その中の一例として、本社部門の事例をご紹介します。本社というのは経理や人事・総務を担う部署のため、店舗に立って接客することはありません。
そのため、接客を通じてモチベーションが上がる機会もほぼなく、「日本一楽しいスーパー」をビジョンに掲げるこの会社では、実際にお客様にどれだけ喜んでいただけたかが主軸になってくるため、本社メンバーにとっては、ビジョンへの貢献感が実感しづらかったのです。
そこで部門ビジョンを策定しました。そもそも本社にとってのお客様は誰なのか、根本的なところから考え始め、メンバー全員が納得できるビジョンにするため、できるだけ具体的なイメージが湧くものにしたそうです。
「本社メンバーにとっては、関わる全ての人がお客様である」。そう定義することで、今まで曖昧だったビジョンがぐっと身近にイメージしやすくなりました。議論の末に辿り着いたビジョンが「現場が商売に専念できる状態をつくる」というものでした。
「日本一楽しいスーパー」を実現する現場を支えるために本社は何ができるのか。何をするべきなのか”というイメージが具体的になったことにより、本社にいてもビジョンに貢献できているという実感が持てるように変わっていきました。
【参考資料のご紹介】
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まとめ
いかがでしたでしょうか。帰属意識を高めることで、離職率の低下や生産性の向上など様々なメリットが期待できます。
また帰属意識を高めるためには、そもそも自社の「従業員満足度調査」などを活用し、企業に対する「期待」と「満足」をきちんと知ることで課題の優先順位付けをすることが重要だとお伝えしてきました。
まずは、「診断」して「変革」するという2つのステップに取り組み、従業員の帰属意識を高めてみてはいかがでしょうか。
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