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名和教授×丸紅CHRO×ベネッセ人財開発部長 “志” を大切にした人的資本経営 〜従業員の働きがい向上をイノベーションにつなげる〜 「HR Transformation Summit 2023」イベントレポート

人的資本経営に注目が集まる昨今ですが、人を「資本」として捉え、価値創出につなげることの重要性は過去から変わっていません。その核心は「ステークホルダーとのエンゲージメント」にあると私達は考えます。従業員に、投資家に、顧客に、自社らしさを届けて関係を築くことが、人的資本経営の実践において欠かせない要素だと捉えています。
 
この度、人的資本経営の実践を後押しする最高峰の議論をお届けすべく、「HR Transformation Summit 2023」を開催しました。Day2では、一橋大学 大学院経営管理研究科 国際企業戦略専攻 客員教授の名和高司氏、丸紅株式会社 執行役員CHROの鹿島浩二氏、株式会社ベネッセホールディングス Digital Innovation Partners DX人財開発部 部長の後藤礼子氏にご登壇いただき、「“志”を大切にした人的資本経営〜従業員の働きがい向上をイノベーションにつなげる〜」というテーマで基調講演・トークセッションをおこないました。
 
【イベント実施日】
2023年7月27日
 
【スピーカー】
・一橋大学 大学院経営管理研究科 国際企業戦略専攻 客員教授 名和 高司 氏
・丸紅株式会社 執行役員CHRO 鹿島 浩二 氏
・株式会社ベネッセホールディングス Digital Innovation Partners DX人財開発部 部長 後藤 礼子 氏
 
【モデレーター】
・株式会社リンクアンドモチベーション 常務執行役員 川内 正直

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一橋大学 名和教授が語る「パーパス経営の実践」

リンクアンドモチベーション 川内:本日は、「志を大切にした人的資本経営」というテーマで基調講演、トークセッションをおこなってまいります。早速ですが、名和先生、基調講演をお願いします。
 
一橋大学 名和氏:私からは「パーパス経営の実践」というテーマでお話をさせていただきます。そもそも、なぜ今、パーパス経営が求められているのかということからおさらいしておきましょう。企業は、顧客市場、人財市場、金融市場という3つの市場に向き合っているわけですが、それぞれの市場で「○○シフト」が起きているという現状があります。



顧客市場における「ライフシフト」というのは、人生100年時代を迎えているということです。人財市場における「ワークシフト」は、転職するのが当たり前の時代になっており、企業は労働者から「選ばれる側」になったということです。金融市場における「マネーシフト」は、もはやサステナビリティに取り組まない企業にはお金が回らなくなっているという流れのことです。このようなシフトが起きているなかで企業が価値を発揮し続けていくためには、会社としての志を掲げることが重要であり、それゆえ、パーパス経営が求められるようになっています。
 
パーパス経営も経営であることに変わりはないので、大事なのは、いかにしてパーパスをプロフィットに転換するかということです。企業がパーパス経営を実践することで以下のような変化が生まれます。私はこれを「パーパスの十字架」と呼んでいます。


 
短期的には売上が上がり、コストが下がります。マーケティングコストやオペレーションコストも下がりますが、もっとも下がるのが人財コストだと言われています。後にも触れますが、人財コストは1/2~1/3になります。これは、人数が1/2~1/3になるのではなく、今と同じ人数で売上が2~3倍になるということです。
 
長期的にはリスクが下がり、無形資産が高まっていきます。リスクというのはコンプライアンスリスクのことです。一人ひとりの従業員が自社のパーパスに誇りを持ち、パーパスを自分ごと化できていればセルフガバナンスが働きます。そうなれば当然、コンプライアンスリスクは下がります。無形資産は、大きく4つあると言われます。1つ目はブランドや組織文化、価値観など「組織資産」と呼ばれるものです。2つ目が「知識資産」で、ナレッジやノウハウが蓄積されれば企業にとって大きな財産になるということです。3つ目が「ネットワーク価値」で、4つ目が「人財資産」です。この4つの無形資産をプロフィットに転換する流れができるかどうかが、パーパス経営の重要なポイントだと言えるでしょう。
 
先ほど、パーパス経営によって人財コストが下がると申し上げましたが、その裏付けになる「やる気があると生産性が上がる」という調査結果があります。
 
ベイン・アンド・カンパニー社とプレジデント社の合同調査によれば、満足していない社員(生産性71%)に比べると満足している社員(同100%)は生産性が1.5倍になることが分かります。さらに当事者意識がある社員(同144%)は2倍超、やる気に溢れる社員(同225%)は3倍超の生産性を発揮します。
 
(出所) プレジデントオンライン「"3人に1人"の不満社員を奮起させるには」(2017/10/31)
https://president.jp/articles/-/23480?page=1 (2023/09/29参照)
 
このような状態を目指すために、組織はどのように進化していけば良いのかを考えてみましょう。



上図の横軸は規模・範囲の経済を示し、縦軸は、スキル・スピードの経済を示しています。スタートアップは左下から始まり、通常は右のほうに動いていきます。そうなると規模や範囲は取れますが、中央集権型の組織になりやすく、大企業病に陥って失速してしまうケースが少なくありません。一方で、上に向かっていく企業もあります。上に向かうことでスキルやスピードは高まりますが、規模や範囲の経済を取れないのでインパクトのある仕事をすることはできません。
 
ということで、私は右上にある創発型組織「DACO(Decentralized, Autonomous but Connected Organization)」を提唱しています。DACOの「C」は「Connected」の「C」で、一人ひとりの従業員は自律しながらも分散せず、みんなで手を組み合っている組織だとお考えください。みんなが手を組み合うためには、真ん中にパーパスがなければいけません。パーパスを軸に従業員同士がコネクトしているのが、これからの企業の目指すべき姿です。
 
パーパス経営の現場には、「新M字カーブ」が存在します。



上図のように、20~25歳と50~60歳で2つの山ができています。MZ世代の若者は「ムキムキに成功して金持ちになりたい」という人はあまりおらず、「何かしら世の中の役に立ちたい」と考える傾向があります。また、50~60代になると「世の中にインパクトを残したい」と考える人が増えてきます。この2つの層は総じてパーパスへの関心が高い状態にあります。
 
入社時はみんなパーパスに共感して入ってきますが、やがて「会社の業績を上げるためにはパーパスなんて青臭いことを言ってる場合じゃない」という人が増えてきて、30~40代を迎えます。この年代になるとパーパスへの関心が低下します。
 
先ほど申し上げたとおり、従業員がパーパスを自分ごと化できると生産性は2倍にも3倍にも高まります。パーパス経営においては、30~40代の従業員にいかにパーパスを浸透させるかが重要なポイントになってくるでしょう。
 
そのための仕掛けとして私が推奨しているのが「パーパスワークショップ」です。会社のパーパスは非常に抽象的で、自分ごと化しにくいものです。パーパスを自分ごと化するためには、まず「組織ごと化」してもらうことが大切です。
 
たとえば、各事業や各部門において「会社のパーパスって自分たちの組織にとっては何だろう?」ということを考えてもらいます。その際は、「顧客にとって何なのか?」「社員にとって何なのか?」「社会や地球にとって何なのか?」という3つの視点で考えて言語化します。こうして会社のパーパスを組織ごと化したうえで、自分ごと化していくのがポイントです。

丸紅CHROが語る「丸紅の人事制度改革」

リンクアンドモチベーション 川内:続きまして、丸紅の鹿島様、基調講演をお願いします。
 
丸紅 鹿島氏:私からは「丸紅の人事制度改革」というテーマでお話をさせていただきます。2017年頃の話になりますが、当時、弊社は経営陣を中心に大きな危機感を抱えていました。DXに代表されるような急激な変化によって時代が大きな転換期を迎えるなか、自分たちが変わらなければ生き残っていけないのではないかという危機感です。
 
そこで、「既存の枠組みを超える」という変革のスローガンを掲げ、2018年に「丸紅グループの在り姿」を制定します。これは、「こういう丸紅グループになっていこう」というもので、今で言うパーパスに近いものです。



「丸紅グループの在り姿」の制定を受け、「CDIO(Chief Digital Innovation Officer)」を新設し、そのCDIO傘下に「次世代事業開発本部」という組織を設けました。いずれも、組織・国境を越えてイノベーションを創出しようとしたものです。そのうえで、「既存の枠組みを超える」というスローガンのもと、「人財」×「仕掛け」×「時間」という観点から様々な施策を実施していきました。これらの施策の多くに手挙げ式の要素が入っていることが特徴的であり、本日のテーマである“志を大切に”に合致している部分と思います。
 
「人財」に関する施策は、従来とは異なる価値観や思考、経験に触れる環境を創り、人財の発想力を拡幅するという狙いがありました。たとえば、「丸紅アカデミア」はイノベーションを生み出せる人財の育成を目指すプログラムで、国内外から集まった約30名のグループ社員が年4回のセッションを開催しています。「社外人財交流プログラム」は文字どおり、社外との人財交流をおこなうプログラムで、社員が出向し合うような形で様々な企業と交流をしています。「トライアングル・メンター」は3人1組で運用するメンター制度です。3人のうち、1人は必ず新人で、残りの2人は新人と違う部署、違う世代の社員を選び、所属組織・世代を超えた対話を促進しています。
 
「仕掛け」に関する施策は、多様なアイデアを喚起し、具現化することを目的にしています。たとえば、「ビジネスモデルキャンバス」は、弊社グループが持つ約300のビジネスモデルを見える化したものです。弊社は多様なビジネスを展開していることもあり、自組織以外の部署が何をやっているか知らない社員が少なくありませんでした。そのため、どの部署が何をやっているかを同じフォーマットで見られる仕組みを構築したものです。「ビジネスプランコンテスト」は公募型のビジネス提案プロジェクトで、優勝したら会社から提供される資金や人財を活用して、実際に事業化に挑戦することができます。形にしたいアイデアを持つ社員がそれを実現できるようにする施策です。
 
「時間」に関する施策は、新たな価値を生み出すための時間を確保することを目的にしています。たとえば、「15%ルール」は就業時間の15%の時間を使い、自分の業務以外で丸紅グループのためになる活動に取り組むことができるようにする仕組みです。
 
このように様々な施策を実施しているため、会社が変わろうとしている気持ちは社員に伝わっていると思いますし、社員がやりたいことを実現しやすい環境になってきていると感じています。
 
2019年には、中期経営戦略「GC2021」を公表しました。



ホライゾン1が既存事業、ホライゾン2が既存事業の発展、そして、今までやっていない領域や新たなビジネスモデルがホライゾン3です。時間はかかるかもしれないですが、ホライゾン3に取り組まないと、持続的成長の先にある爆発的な成長は見込めません。そのため、GC2021では3つのホライゾンを同時に推進することを明確に宣言しています。
 
また、この中期経営戦略を実現するための人財戦略として「丸紅人財エコシステム」を掲げました。マーケットバリューの高い多様な人財が活き活きと働いて、新たな価値を生み出していく。そこにまたマーケットバリューの高い多様な人財が集まってくる。このようなサイクルを回していくのが、丸紅人財エコシステムです。



この丸紅人財エコシステムを実現するには、人事制度を抜本的に改革する必要があると判断し、経営陣と議論を重ね、実行しました。



人事制度改革ではまず、「実力本位」「チャレンジ」「現場」「オーナーシップ」「オープンコミュニティ」というコアとなる5つの概念を定め、これらをベースに具体的な施策を策定していきました。
 
たとえば、「ミッションレーティング」はその期のミッションを明確に定め、ミッションの大きさに基づき報酬を決めていく等級制度です。「貢献度加算」は管理職層のボーナスの算定方法です。従来は、「標準プラス1であれば何%アップ」という決め方でしたが、それを原資配分に変えました。上司に原資を配り、上司が部下の成果に応じて配分を決める形です。「クロスバリューコイン」は、先ほどお話しした「15%ルール」に関わってきます。自部署以外の仕事に貢献した社員がいても、タテの評価の中ではそのことが評価されません。ですから、そのような社員が貢献した先の本部長からコイン(クロスバリューコイン)をもらえるようにして、ボーナス支給時にコインをキャッシュ化できる仕組みを設けました。その他、タレントマネジメントに関する施策や働く環境に関する施策も新たに導入しています。
 
現在取り組んでいる中期経営戦略「GC2024」も基本的な方向性は「GC2021」と変わりませんが、新たに力を入れている取り組みとして「タレントマネジメントコミッティ」を説明します。これは、社長やCSO、CAO、CHRO、経営企画部長、人事部長をメンバーとする人財戦略会議です。経営戦略と人財戦略をしっかりアラインさせていくために、タレントマネジメントコミッティで人財戦略について継続的に議論をしていくものです。
 
イノベーションが生まれる仕組み・風土づくりをしていますが、社内でイノベーションを含む新規ビジネスを担当する人だけが重要だということではありません。今の会社を支えているのは既存事業であり、そこから発展するビジネスです。ここがしっかりしていないと、会社として存続していくのは難しいでしょうし、イノベーションを活かすこともできません。全社員がイノベーションの意識を持ちながら、ホライゾン3にチャレンジしている社員も、ホライゾン1、2で既存事業を支え、発展させている社員たちも同様に大事だという思いで取り組んでいます。

ベネッセ人財開発部長が語る「パーパスの実現に向けた組織変革」

リンクアンドモチベーション 川内:続きまして、ベネッセホールディングスの後藤様、基調講演をお願いします。
 
ベネッセ 後藤氏:私からは「パーパスの実現に向けた組織変革」というテーマでお話をさせていただきます。弊社は、社名にもなっている「Benesse = よく生きる」を企業の不変の哲学として掲げています。また、グループとして「誰もが一生、成長できる。自分らしく生きられる世界へ。ベネッセは目指しつづけます」というパーパスを掲げています。
 
弊社の事業の中心は教育と介護です。教育も介護も事業そのものは不易・不変のものですが、昨今、我々を取り巻く外部環境は非常に速いスピードで変化しています。少子高齢化やコロナ、価値観の変化など様々な影響を受けるなかで、あらためて事業戦略を作り直しています。教育と介護を柱にしながらも、今後は新たな事業領域を拡大し、事業ポートフォリオを変えながら安定的な成長を遂げていきたいと考えています。そのために、どのような組織変革にチャレンジしているのかをお話しさせていただきます。
 
人事としては、「志」と「ラーニングカルチャー」が組織の駆動輪になると考えています。具体的に「このスキルを身に付けなければならない」というお題目ではなく、一人ひとりの社員が現場でお客様と向き合っていくなかで、「自分のやりたいことを実現するには、こういう力が足りない」と切実に思うことから学びが始まり、力を付けていくのだと思います。そのなかで、自分一人ではどうにもならないことがあることに気付き、自分にはない強みを持っている人とつながって、チームとして成長しながら社会価値の拡大に向かっていく。このようなサイクルが回るようになるのが理想です。



このサイクルが回っていくなかで、今できていることよりも学び続けていることに対して「すごいね」と称え合えるような価値観や風土がラーニングカルチャーの礎になるのだと思います。このようなカルチャーがあることを前提に、人事の制度・仕組みを作っていくことが大切だと考えています。
 
具体的な取り組みとしては、学びを支える制度を拡充しました。弊社は古くから個人の能力開発を支援してきましたが、それに加えて全員が学べるUdemyのプラットフォームを利用したり、DXスキル育成のプログラムを整えたりしています。
 
弊社は、「最終学歴」以上に「最新学習歴」を誇れる社会づくりを目指しています。私はこのスローガンが大好きなのですが、これを実現するためには、第一に社員自身が学習を続け、最新学習歴を誇れるようにならなければいけません。



リスキリングの取り組みについても少しお話しさせていただきます。まず、目指す姿を明確にしたうえで、カンパニー主導で要員計画やリスキル計画を立案しています。どのような方向性で、どのくらいの人をリスキルするのかという計画です。そして、今いる社員のレベルなど現状を可視化してギャップを把握し、そのギャップを埋めるためのラーニングプログラムや機会を作っています。座学で学ぶだけでなく打席に立って試行錯誤する機会も設け、異動配置もセットにして、「今どこまで到達しているのか」を確認しながらサイクルを回しています。



会社としてこのようなサイクルを回しているわけですが、最後の最後は一人ひとりのモチベーションだと思っています。リスキリングは戦略の一つではありますが、最終的には一人ひとりがどのように学んでいくかに委ねられています。
 
とはいえ、学ぶモチベーションを高めるためには「学ぶつながり」も大事です。そのため、社員同士がお互いの学びの取り組みをシェアし合ったり、リスキリングによってキャリアの道が広がった社員を「ラーニングヒーロー」として紹介したりしています。ロールモデルを見て「私もこういうふうになりたいな」と思えることは、学びのきっかけやモチベーションにつながるはずです。このように、一つひとつの取り組みは大きなものではありませんが、小さなことの積み重ねがラーニングカルチャーの醸成につながっていくのだと思っています。
 
最後に弊社の組織変革のポイントを3つお伝えします。1つ目が「『危機感』から『共感』へ」です。危機感をシェアすることも大切ですが、それよりも自分たちの駆動輪を見つけて、それを共感の柱にしながら組織変革の施策を設計していくことが大事だと思っています。弊社の場合、駆動輪になるのは社会課題解決への志やラーニングカルチャーです。
 
2つ目のポイントが「『ために』から『ともに』へ」です。人事の立場だと「人事が社員のために何をしようか?」と考えがちですが、現場を主役として考えなければいけません。事業部と社員個人が主役になったとき、どういう仕掛けやサポートがあると駆動しやすいのかを考えて、制度や施策にしていくことが重要です。
 
3つ目のポイントが「『スローガン』から『事実』へ」です。リスキリングの方針を示すだけでなく、数値や達成基準として可視化して、その事実を会社と社員が共同注視していくことが前に進むポイントだと思います。パーパスは思いや感情に拠るものであるからこそ、一方で可視化して進めることの大切さを感じています。

多様な事業を抱えるなかで、いかにパーパスを浸透させているのか?

リンクアンドモチベーション 川内:ここからは、質問をもとにトークセッションを進めてまいります。「異なる領域の事業を抱えるなかで、どのようにパーパスを掲げ、浸透させているのか?」という質問に関してはいかがでしょうか。
 
ベネッセ 後藤氏:弊社の場合、「Benesse = よく生きる」という北極星に当たるものがあるので、それをベースに、グループ全体で「そのときに必要とされることは何?」というように時代性に即してパーパスを翻訳し直しています。さらに、事業計画を立てるタイミングで事業ごとにパーパスを見直していて、たとえば、高校生向けの事業であれば、「高校生にとって私たちはどういう存在でありたいのか?」というようにブレイクダウンしています。このワークは、現場も一緒になって考えていくので、そのなかで共通認識が醸成されているのだと思います。できたものを浸透させるというより、一緒に作っていく形ですね。

 

丸紅 鹿島氏:先ほど申し上げたとおり、2018年に「丸紅グループの在り姿」を制定したのですが、それに続いて、各営業本部でも自組織の在り姿についてディスカッションをして、それぞれの本部が在り姿、パーパス的なものを作っています。さらに、その内容を当時からアップデートしている本部もあれば、ビジネス形態が近い本部が集まって、グループでパーパスを考えたりもしています。この様に現場で自主的に考えることで、現場にも浸透しやすいのかなと思っています。


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パーパスの取り組みと企業成果・成長をどう結びつけるのか?

リンクアンドモチベーション 川内:「パーパスやエンゲージメントの取り組みと企業成果/成長をどう結びつけるのか?」という質問に関してはいかがでしょうか。
 
一橋大学 名和氏:人財も含め、私は「非財務」という言葉は使わず、「未財務」という言葉を使っています。将来、財務に変わるものであるという意味で「未財務」と言っているのですが、この「財務に変わるストーリー」を描くことが重要です。ストーリーは仮説でも構いませんし、証明は後からでも構いません。いかに株主に納得・共感してもらえるストーリーを作れるかです。
 
ストーリーの根幹になるのは、売り手よし、買い手よし、世間よしという「三方よし」の精神だと思っています。売り手は社員であり、社員がまずパーパスを自分ごと化することが大事です。それをお客様に共感してもらい、ファンになってもらい、その結果、利益が生まれ、株主がきちんと潤う。この流れが必要です。
 
丸紅さんの創業者も近江商人だったと思いますが、三方よしの精神は、日本企業はもう何百年も前から体現してきています。これを時代に合わせてきちんと言語化し、理解・共感を得ていくことができれば、必然的に企業成長につながっていくのではないでしょうか。



リンクアンドモチベーション 川内:以上をもちまして、トークセッションは終了とさせていただきます。ご登壇いただいたお三方、ならびに視聴者のみなさま、ありがとうございました。

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