慶弔休暇とは?取得できる日数や注意点、対象となるケースや導入方法を解説
目次[非表示]
- 1.慶弔休暇とは?
- 2.慶弔休暇の日数
- 3.慶弔休暇中の賃金の支払い
- 4.慶弔休暇の対象とならない場合
- 5.慶弔休暇を設ける際の注意点
- 6.慶弔見舞金制度の設置について
- 7.就業規則に記載する際のポイント
- 8.記事まとめ
はじめに、あなたは人事担当者ですか?
Yes(人事担当者の方)
⇒組織改善に役立つノウハウ資料を無料ダウンロード
No(それ以外の方)
⇒このまま続きをお読みください。
皆さんは「慶弔休暇」をご存じでしょうか?
慶弔は「けいちょう」と読み、慶弔休暇とは喜ばしく祝う出来事である「慶事」、おくやみごとや不幸な出来事である「弔事」があった際に取得できる特別な休暇のことを指します。
今回はその詳細について見ていきたいと思います。
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら
▼ 心理的安全性を生み出し、良いチームをつくる4つの方法とは
慶弔休暇とは?
まず、企業で働く人が取得できる休暇には、2種類あります。一つは、法律によって定められている「法定休暇」と、もう一つは企業が独自で定めている「法定外休暇」の2種類です。
「法定休暇」には産前産後休暇、年次有給休暇、生理休暇、介護休暇、育児休暇、子の看護休暇、裁判員休暇などがあります。
その上で、慶弔休暇はこれには入らず、「法定外休暇」の1つです。そのため、会社が必ず慶弔休暇を付与しなければならないわけではありません。
またその内容をどのように定めるかも各会社の裁量に任されているので、結婚や葬式などで取得した休暇が「欠勤扱い」になっても違法にはなりません。
しかし、実際には多数の企業が「慶弔休暇」を特別に取得できるよう認めています。
平成30年度に、厚生労働省が無作為抽出した民間企業1万2,000 社と、そこで働く従業員約5万 4,000 人を対象にしたアンケ―トによれば、慶弔休暇制度を設けている企業が90.7%、慶弔見舞金制度についても86.5%の企業が導入しているとのことでした。
引用元:厚生労働省「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」
▼【有給休暇】に関する記事はこちら
年次有給休暇とは?雇用側の義務や違反時の罰則、付与日数などの注意点を解説
▼【特別休暇】に関する記事はこちら
特別休暇とは?種類や有休無給のケース、付与条件や導入の流れを解説
近年多くの企業が導入している慶弔休暇ですが、ここからは慶弔休暇の日数や賃金など制度の詳細から制度設計のポイントまで解説していきます。
慶弔休暇の日数
慶弔休暇は、従業員本人と慶事や弔事との関係で決める場合が多いですが、それぞれどれくらいの日数、取得できるものなのでしょうか。
■慶事休暇の場合
一般的な慶事の際の休暇日数は下記のようなものがあります。
<例>
- 結婚休暇…従業員本人が結婚する場合:5日
- 子供の結婚休暇…従業員の子が結婚する場合:2日
- 配偶者出産休暇…従業員の配偶者が出産する場合:2日
「連続取得が可能かどうか」「分割取得は可能か」といった細かな条件を確認すると同時に、出産の場合は、女性従業員であれば、法定休暇である産前産後休暇や、男性であれば育児休業の申請をすることもできます。
■弔事休暇の場合
一般的な弔事の際の休暇日数は下記のようなものがあります。
- 0親等の配偶者が亡くなった場合・・・10日
- 1親等の父母、子供であれば・・・7日間
- 1親等の義理の父母が亡くなった場合・・・5日間
- 2親等の兄弟姉妹・祖父母・義理の父母・孫が亡くなった場合・・・3日間
- 3親等の親族が亡くなった場合・・・1日間
通夜や葬儀会場によっては、往復に必要とされる日数を加算する制度設計も可能です。
慶弔休暇中の賃金の支払い
慶弔休暇中の賃金の支払に関する法律の規定はありません。そのため、慶弔休暇を取得した従業員に対し、当該慶弔休暇を有給とするか無給とするかは、会社が独自に定めます。
ただし、就業規則に賃金の支払に関する規定を設けると、使用者はこの規定に拘束されることになります。
また、慶弔休暇を「有給」として取り扱う企業が一般的です。そのため、慶弔休暇に関する規定があるにもかかわらず賃金の支払について明記せずにいると、労働者が「有給として取り扱われる」と誤解し、トラブルに発展する可能性もあります。
慶弔休暇を無給とする場合は、就業規則にその旨を明記することが重要となります。
慶弔休暇の対象とならない場合
尚、慶弔休暇に該当しない例外もあります。企業が慶弔休暇制度を考える上でも、例外の見極めが非常に重要です。今回は3つの例をあげて説明します。
■3親等以上は認めない
3親等以上とは、伯叔父母や曾祖父母といった親族です。慶弔休暇では3親等以上の慶弔休暇を認めない場合もあります。
先述の通り、そもそも慶弔休暇は法定外休暇のため、企業は独自に慶弔休暇の規定を定められるのです。そのため、3親等以上の死亡を慶弔休暇として認めないと規定することに何ら問題はありません。
■喪主になる場合
喪主とは、葬式の際の当主のことです。0親等である配偶者が死亡した場合には通常喪主となりますが、それ以外の親族の死亡でも喪主を務める場合が考えられます。
その場合、就業規則で規定している慶弔休暇の取得日数に加算された日数を取得できるケースがあります。この場合、加算された日数が有給なのか、無給なのかも企業内の規程によって異なります。
■遠方の葬儀に列席した場合
遠方の葬儀に列席した場合、往復に要する時間を考え就業規則で規定されている日数よりも1~2日多く休暇を与える場合があります。
この場合も就業規則に記載されている取得日数を超えた部分の日数については、有給か無給かを企業が独自に定められます。
慶弔休暇を設ける際の注意点
慶弔休暇を会社で規定する際、従業員と会社との間で誤解が生じないよう、注意・配慮する点がいくつかあります。
<対象者の観点>
- 正社員のみにするのか、パートタイマー、アルバイトも対象とするのか
- 勤続年数によって取得に差を設けるのか(入社半年以内は申請できないなど)
<取得日数の観点>
- 日数は労働日のみを計算するのか。土日を含めるのか。
- 5日という場合は、連続して5日であるのか、分割して2日、3日と分けて取得することを認めるのか。
<時期の観点>
- 弔事休暇は近親者が亡くなった日から何週間以内とし、慶事休暇に関しては、半年~1年程度などどこで定めるのか。
など、上記の疑問が想定される場合は、規約に明記するのが望ましいでしょう。
そして慶弔休暇はその申請のフローについても企業が自由に決めることができます。そのため、申請書のフォーマットを用意しておくとスムーズでしょう。
「申請者名」「申請希望日程(期間・日数)」「理由」「連絡先」などの簡潔な内容で構いません。
また、慶事の場合は前もって申請しておくことが可能ですが、弔事の場合は突然起こり得るため、事後に申請することがある点を考慮しておく必要があります。
慶弔見舞金制度の設置について
「慶弔休暇」と併せて導入されている場合が多い制度として、「慶弔見舞金」という制度があります。
慶弔見舞金とは、従業員やその家族の慶事・弔事に対して、企業から支給するお金です。慶弔休暇と同じく、法定の制度ではありませんが、この制度を導入すると、労働者の企業への帰属意識や愛着心を強めることに繋がるでしょう。
<慶弔見舞金と支給額の例>
- 結婚祝金・・・本人が結婚した際に支給される(3~5万円)
- 出産祝金・・・本人または配偶者が出産した際に支給される(1万円)
-
死亡弔慰金・・・本人が亡くなった際に支給される(100~3000万円)
※業務中か業務外での死亡かで異なる - 傷病見舞金・・・本人が病気やケガなどで会社を欠勤したり、入院した際に支給される(10~50万円)
- 災害見舞金・・・本人が地震や台風などの自然災害、火災や事故等の人為的災害で被害に合った際に支給される見舞金(2~5万円)
また、慶弔見舞金を支給するには、慶弔休暇同様、社内規約に制度の存在を明示し、所定の手続き方法を決めておくことも必要です。
会社の経費として処理する事柄になるので、実際に慶事・弔事があったことを証明する書類の提出も求めておくことが望ましいでしょう。
就業規則に記載する際のポイント
最後に、これらを就業規則に記載するポイントを明示しておきたいと思います。
1.慶弔休暇を取得できる従業員の範囲
2.休暇の対象となる事由と休暇日数
3.慶弔休暇取得時の賃金の取扱い
先にも記載の通り、従業員と企業との間でトラブルを発生させないためにも、上記ポイントに沿って記載するようにしましょう。
【参考資料のご紹介】
「心理的安全性を生み出し、良いチームをつくる4つの方法」はこちらからダウンロードいただけます
記事まとめ
いかがでしたでしょうか。一言で「慶弔休暇」といっても、様々な種類が存在することや、具体の設計内容も企業によって異なるが分かりました。
しかし、慶弔休暇は定めるだけでは意味がありません。実際には誰も使っていないという状況では従業員にとって「使いづらい」というネガティブな印象を与えてしまったり、入社後のミスマッチに繋がりかねません。
制度の目的や会社の方向性を考慮しながら十分に検討すると共に、分かりやすく明示し適切に従業員とコミュニケーションをとりながら運用していきましょう。
従業員エンゲージメントを可視化・改善するモチベーションクラウドはこちら