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労働生産性の計算方法とは? 生産性が低い原因と向上方法を紹介

政府が「働き方改革」を掲げた事も追い風になり、昨今は業務効率化や長時間労働に対する課題意識がますます高まっています。これからますます「社員の労働生産性を向上する企業と「そうでない企業」の二極化は進んでいくと思われます。

では、社員の労働生産性を向上するために企業は何ができるのでしょうか?そのポイントを一緒に見ていきましょう。

労働生産性とは

■労働生産性とは?

普段何気なく会話の中に出てくる「労働生産性」ですが、その定義は何なのでしょうか?労働生産性を一言で言うと、「従業員1人当たり、または1時間当たりに生み出す成果」を表している数値の事です。

理解を深めるためにも、ますは「生産性」の概念を見ていきましょう。生産性とは「投入資源(インプット)と産出(アウトプット)の比率」を意味します。

また、「投入資源(インプット)に対して産出(アウトプット)が大きい」場合は「生産性が高い」ことになり、「投入資源(インプット)に対して産出(アウトプット)が小さい」場合は「生産性が低い」ということになります。

上記の生産性の定義に則ると、労働生産性とは「労働成果(アウトプット)」を「労働量(インプット)」で割ったものにとなります。

この指標をモノサシとすることにより、「労働成果の向上」と「投入資源の縮減」を行うために業務の標準化や従業員のスキルアップを実現することが出来るようになるでしょう。

ちなみに、「生産性向上」と混同して使われやすい用語に「業務効率化」があります。業務効率化とは、より効率的な業務遂行を目指す取り組みです。

例えば、新たなツールを導入して業務遂行のスピードを速めることなども業務効率化の取り組みのひとつです。つまり、業務効率化は成果物の質・量を減らさずに時間やコストを削減することと言い換えることができるでしょう。

「労働量(インプット)」の方を改善するアプローチ手法だと言えます。業務が効率化すれば、生み出せる成果も自然と増えるため、生産性向上にもつながります。当然、企業全体の業績も向上させられます。

一方で「生産性向上」は、事業や会社全体の「労働成果(アウトプット)を高める」という観点から、事業の再構築やM&Aの実施などドラスティックなアクションが対策として入り込んできます。

■労働生産性の種類

また、労働生産性は、「労働成果(アウトプット)」を何で表すかによって2つの種類に分かれます。1つは「物理労働生産性」、もう1つは「付加価値労働生産性」です。

「物理労働生産性」とは、「労働成果(アウトプット)」を「生産量」や「販売金額」として置いた指標のことです。例えば製造業など、生産量が物理的に可視化出来る場合はこの「物理労働生産性」を活用します。

一方「付加価値労働生産性」とは、「労働成果(アウトプット)」を「付加価値額(新たに生み出した金銭的な価値)」として老いた指標のことです。

この場合「付加価値額」は粗利益(営業利益+人件費+減価償却費)で表記するのが一般的です。例えばサービス業など、生産したものが物理的に測定不能な場合はこちらの「付加価値労働生産性」を活用します。

■労働生産性の計算方法

上記2種類の計算方法をまとめると以下の通りです。

「物理労働生産性」に関しては「生産量 / 労働力」という計算式になります。また、「付加価値労働生産性」関しては「付加価値額/労働力」という計算式になります。どちらの場合も労働力は「1人当たり」か「1時間当たり」いずれかを規定して算出します。

労働生産性が高い国

実は「労働生産性」は個人や企業だけではなく、国家にも適用可能な概念です。安倍前総理大臣の方針でもあった「働き方改革」では、日本の労働生産性の向上にも折を見て触れられていました。

何故かと言うと日本は人口減少が進み、労働人口も今後減少することが見込まれています。

だからこそ中国やインドなどのように労働人口の数で勝負するのではなく、1人当たりの生産性を高めることが喫緊の国家課題対策として求められているのです。

では、国際的に労働生産性が高い国はどこなのでしょうか?

まず前提として、国際的には労働生産性は「付加価値労働生産性」で測られることが多くなっています。

また、国家の付加価値は「GDP(国内総生産)」の事を示しています。ですので、国家レベルでの「労働生産性」とは「GDP / 労働人口」で算出されます。

そして「労働生産性の国際比較(※)」という調査によると、世界で最も労働生産性が高い国は「アイルランド」とのことでした。一方で日本は、OECD加盟36カ国の中で「21位」と平均以下の順位になっています。

※引用:労働生産性の国際比較2020

年間労働時間では労働生産性が高い国と比較して約2,000時間ほど長く働いているのが日本人。「日本人は勤勉である」と海外から称される事も多い日本ですが、ただ一生懸命働いているだけでは「あるべき状態」とは言えません。

労働時間ではなく、労働時間当たりの付加価値、即ち「労働生産性」に目を向けていくべきでは無いでしょうか。

また、これらの数値からもまだまだ日本における「労働生産性」には伸びしろがあることが分かると思います。

最近ではデジタル庁が開設されるなど、デジタルトランスフォーメーションによって国家レベルでの生産性向上を高める動きも始まっています。

更には、コロナ渦において国家や企業のIT化が10年進んだとも言われています。これらの背景も理解しながら、国民全員で日本の労働生産性向上に取り組んでいく意識を持っておけると良いでしょう。

労働生産性を上げるメリット

前述の通り、日本は国家レベルで労働生産性の向上に力を入れていくような舵取りをしています。そのような経緯もあり、企業が「労働生産性」を向上する取り組みをすることで、政府から優遇措置を受けることができます。

例えば以下の通りです。

「金利の引き下げ」

日本政策金融公庫からの設備資金の借入の際に、0.9%金利が引き下げられる

「法人税と所得税の控除」

中小企業経営強化税制との組み合わせにより、法人税と所得税について即時償却または取得価額の10%の税額控除を受けることができる

「固定資産税の控除」

設備投資にかかる固定資産税が、3年間半額になる

「IT導入補助金」

ITツールを導入した時にコストの一部を補助してもらえる

また、労働生産性が高まる事で企業成長が加速します。成長しているという事は新たな機会が得られる可能性が高まるので、採用面でも離職率の改善という意味でも良い効果が出ると思われます。

労働生産性が高まる事でワークライフバランスも改善ができる事もあるでしょう。少ない時間で大きい成果が出る為、空いた時間を自己研鑽に活用したり家族や友人に使う事もやり易くなるでしょう。

労働生産性を高めることは、自社を発展させるメリットを多方面から得られると言えます。その前提を置いた上で、経営の最優先マターとして捉えられると良いでしょう。

労働生産性の判断基準

では、そのような「労働生産性」のマネジメントを行いたいと思った場合、どのような数値を見れば良いのでしょうか?

実は労働生産性の値は、会社の規模や業種、景気によって大きく異なります。ですので「〇〇の数字以下はNG」という絶対的な基準値は存在しません。データを「相対値」で見ていく事が重要です。例えば、以下のような比較方法があります。

■「経年比較」

定期的に自社や特定部門の数値を記録して、その数字の変化を追っていきましょう。段階的に比較する事で向上しているのか、後退しているのかを確かめることができます。

■「他社比較」

自社と同業界、同ビジネスモデルの会社の労働生産性を産出するやり方です。この場合は従業員数を分母、売上や営業利益を分子にするなど他社の分かるデータをもとに自社の数値と比較する事になります。

■「属性比較」

自社の中でも、部門やチームによって労働生産性は大きく異なるもの。部門ごとの数値、チームごとの数値を算出する事によって経営課題が特定できる可能性もあります。

また、各組織の管理者に対して労働生産性の数値目標を示す事も1つの手法でしょう。

またKGIが労働生産性の向上とした場合、施策の効果を測る為のKPIを設定することも重要です。

主なKPIとして「年間総労働時間」や「1人あたりの売上高」「コスト削減率」のほか、「残業時間」「年次有給休暇取得率」などが挙げられます。

最近では「長時間労働」に対して採用応募者も敏感になっている為、残業時間の削減や有給休暇取得化は企業としては必須科目とも言えるでしょう。

生産性向上の取り組みを通して、従業員の心身の健康や採用ブランドの強化、離職率の改善など多くの果実を得られるようにしていきましょう。

業界で生産性の違いはあるのか

実は労働生産性は業界ごとに大きく差があります。そしてそれを分かつ最も大きな要因は「ビジネスモデル」にあると言えます。「ビジネスモデル」をもう少し分かりやすく言うと「資本集約型」か「労働集約型」かという区分です。

「機械や設備や仕組み」がアウトプットを出す主体である資本集約型産業は、労働生産性が高くなっています。具体的には「鉱業、金融・保険業、電気・ガス・熱供給・水道業、不動産業、物品賃貸業」などが該当します。

このような資本集約型産業の業界では、設備投資の度合いや生産技術の改善を経て大きく生産性向上を実現する事を検討するのが良いでしょう。

一方、「人」がアウトプットを出す主体である労働集約型産業は、労働生産性が低くなっています。具体的には「飲食サービス業、医療・福祉業、教育・学習支援業、宿泊業、生活関連サービス業、娯楽業、小売業」などが該当します。

このようなサービス業を中心とした労働集約型産業の業界では、従業員のスキルやエンゲージメントの高低が大きく生産性に響いてきます。

育成の仕組みを整える事はもちろん、エンゲージメント向上における施策を導入する事で生産性向上を実現する事を検すると良いでしょう。

また、近年では労働集約型産業のデジタルトランスフォーメーションも大きく進んでおり、長期的には労働生産性の底上げが実現できると思われます。

労働生産性が低い原因と対処方法

労働生産性が低い原因にはある程度の法則があります。
ここではフレームワークを活用しながら説明をしていきます。

下記はリンクアンドモチベーションが「企業」を網羅的に捉える為のフレームワークです。企業を構成する要素を5つに分類し、それぞれの要素の頭文字5つがMである事から「5M(ファイブエム)」という名称をつけています。

上段左が「Message」。これは企業の中でも「事業戦略」に関する部分です。商品サービスなど事業面に関する要素が該当します。

上段右は「Motivation」。これは企業の中でも「動機形成」に関する部分です。従業員エンゲージメントに関する要素が該当します。

平たく言うと事業と組織なのですが、この2つがバランスしている事(どちらかに偏り過ぎていないか、整合性は取れているか、好影響を及ぼし合っているか)が大切になります。

また、そのバランスを取る為の操作変数が下の3つだと考えてください。

下段左は「Membering」。これは人材開発に関する箇所であり、人材採用、人材育成、人材配置が該当します。

下段真ん中は「Mission」。これは役割編成に関する箇所であり、理念浸透、階層設計、機能設計が該当します。

下段右は「Monitoring」。管理制度に関する事であり、等級制度、評価制度、報酬制度が該当します。

上記の前提のもと、それぞれにおける労働生産性の課題と対策を見ていきましょう。

■事業戦略面(Message)での課題と対策

労働成果は労働生産性の算出の際の分子になる為、事業成果が芳しくない場合は当然ながら労働生産性は下がります。

事業成果が芳しくない状態が長く続くようなら、顧客ターゲット、商品サービスのメッセージ、アプローチ方法などを今一度検討し、成果の最大化に注力する事が大切です。

■動機形成面(Motivation)での課題と対策

慶應義塾大学との共同研究の結果、従業員エンゲージメントが低下すると労働生産性も低下する事が分かっています。

集中力、連携意識、成果へのコミットメントの低下が生じる事がその理由ですが、エンゲージメントを高い状態に保つ事に注力する事が大切です。

■人材開発面(Membering)の課題と対策

従業員のスキルやマインドが十分でない場合にも、労働生産性は下がってしまいます。

そもそも自社の方針に共感している人間を採用しているか?スキル面、マインド面の教育は十分か?適材適所の配置を行い、全員のポテンシャルを活かせているか?などを見直し、脆弱な箇所に対策が打てると良いでしょう。


■役割設計面(Mission)での課題と対策

会社の目指す方向である理念や判断基準となる行動指針の浸透が十分でない場合、適切な数の階層間での意思疎通が十分でない場合、関連部署間の連携が十分ではない場合などは労働生産性に悪影響を与えます。

理念の策定や浸透施策の実施、効果的な組織図の設計、部署間同士のコミュニケーション強化などを実施できると良いでしょう。

■管理制度面(Monitoring)での課題と対策

等級と人材レベルの不整合、評価に対する不納得感、インセンティブやペナルティ設計の未整備などが起きている場合は「頑張っても報われない」という心情になり、労働生産性が下がってしまいます。

等級制度の再設計、評価基準、手順、項目の具体化、金銭報酬や感情報酬(承認欲求、親和欲求、成長欲求、貢献欲求という社会人に備わっている欲求を満たすためのコミュニケーション報酬)を提供する為のルール整備に取り組んで「頑張りたい」という気持ちを呼び起こす事が効果的です。

生産性向上施策をする前の注意点

前述のような生産性向上の取り組みをする際に、押さえておくべき前提が幾つかあります。これらを理解しておくと施策浸透がスムーズに進みます。

■「組織観、人間観」を持っておく事

そもそもの組織観として、企業は「要素還元出来ない協働システム」であるという前提を持つと良いでしょう。要するに、何かの施策を行うときはその施策が他のものに与える影響を考えた方が良いという事です。

仮に管理職の生産性が上がる施策(例えば1時間毎に部下に業務報告をさせる仕組み)を導入したとしても、その結果部下の生産性が下がるのであれば、個別具体としては改善しているかもしれませんが全体で見ると改善がされていない訳です。

また人間観としては、従業員は「限定合理的な感情人」であるという前提を持っておく事も重要です。要するに、どれだけ正しく見える内容でも、気持ち的にNOが出てしまったらその施策は受け入れられません。

相手が「やりたい、やるべき、やれる」と思えるような方針の提示をして、納得感を持って施策を推進してもらう事が大切になります。

■「結節点の重視」をする事

生産性向上施策をリリースした所で、それだけで勝手に全員が実施して貰えるわけではありません。

かといって経営者や人事が全社員に逐一指示をする事も不可能なので、各組織の長である管理者に生産性向上施策の意図や背景を伝え、実施モチベーションが湧くコミュニケーションを取ってもらう必要があります。

どのようにコミュニケーションを取れば従業員の貢献意欲を引き出せるかなどは、事前に管理者とすり合わせておけると良いでしょう。

それでも実行が覚束ない組織がある場合は、管理者の優先度が下がっていないか?上手く情報編集・情報圧縮して経営の意図を部下に結節(繋いでいる)しているか、を確認する仕組みがあると良いでしょう。

■「信頼感の醸成」をしておく事

生産性向上の仕組みや施策を導入した際に、合わせて仕組みや施策運用に必要なルールも提示をすると思います。一方ルールには幾つかの宿命がある為、その内容を理解した上でルールを扱う事が大切です。

まずは「硬直性」。一度定め、運用させたルールはそう簡単には撤回する事が出来ません。環境変化が激しい企業活動に置いて、一度決めたルールに思考や行動が縛られる事を念頭に、ルールの発信や運用後の検討を行うことが必要です。

次に「不透明性」。あらゆるケースを想定しルールを作るとルールの文言が多くなり過ぎて機能しない事態が生じます。だからこそルールには適度に解釈が残る不透明な余地はどうしても残す必要があります。

最後に「非効率性」。出来るだけ精緻なルールを作ろうとして複雑なものにすると、そのルールを遵守、運用する際に爆発的なコストがかかるため、適度な精緻さに抑える必要があります。

そしてこれらの宿命を乗り越えるには日頃から「信頼感を醸成」しておく事が大切です。上司⇄部下、会社⇄従業員の中で信頼感が醸成出来ていれば「きっとやってくれる」「必ず意味があるはず」とポジティブな判断でルールを運用してもらえるもの。

そのような信頼インフラの構築なきままのルール運用は上手く行かないため、生産性施策の成功の為には大事な要素になります。

記事まとめ

いかがでしたでしょうか?労働生産性の概要や労働生産性を向上させるためのポイントについてご紹介しました。労働人口が減る日本にいる我々だからこそ、労働生産性は常に重要度が高いテーマ。

労働生産性を軸にした企業経営をする事で、成果に拘る風土や従業員エンゲージメントへの意識、人材育成やルール面でもクオリティが上がるものも多いと思います。この記事が皆様の労働生産性向上に向けて1つでもヒントになったのであれば幸いです。

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